2025 Volume 29 Issue 1 Pages 1-8
目的:
がん看護エキスパートナースが,がん患者の痛みの意味を捉えて痛みを全人的に理解する体験を明らかにし,がん患者の痛みの理解における新たな看護の示唆を得ることである.
方法:
がん患者の痛みの意味を理解した体験のあるがん看護エキスパートナース3名の協力を得て,半構成的面接法で行った.データは,現象学的アプローチであるGiorgiによる方法論を用いて分析した.
結果:
3名のがん看護エキスパートナースががん患者の痛みを全人的に理解する体験からは,1) エキスパートナースの患者に真摯に向き合う在りようが患者と心のつながりを生む,2) 人間と人間の関係の中で,エキスパートナースが患者固有の痛みの理解を得る,3) エキスパートナースが自分を生きる患者を支える,これら3つの共通する構造が明らかとなった.
考察:
エキスパートナースの痛みを理解しようとする在りようが患者との間に人間同士のつながりを生み,それはBuberの示す〈われ〉―〈なんじ〉の関係であった.〈われ〉―〈なんじ〉の関係のなかで,エキスパートナースは患者を唯一の存在として捉え,患者の抱える固有の痛みの理解を得ていた.
結論:
がん患者の全人的苦痛を理解するためには,看護師が患者と人間同士の関係を築く必要があり,その関係構築に向けた看護師の在りようが重要であった.エキスパートナースの患者に真摯に向き合う在りようを目指すために,まずは看護師自身の人格を出した向き合い方が必要である.そして,①専門的知識と技術を学び高める努力,②タッチや傾聴する時の共感的姿勢の育成,③患者と共に痛みを感じる覚悟に向けた看護師の内面的な準備が必要であると示唆を得た.
Objective:
The present study aimed to reveal the experiences of expert cancer nurses as they interpret the meaning of pain felt by patients with cancer and gain a holistic understanding of their pain, while also aiming to obtain new nursing practice suggestions for understanding the pain of patients with cancer.
Method:
Semi-structured interviews were conducted with the cooperation of three expert cancer nurses who had experience in understanding the meaning of pain felt by patients with cancer. Data analysis used the methodology of Giorgi's phenomenological approach.
Results:
The experiences of three expert cancer nurses holistically understanding the pain of patients with cancer revealed the following three common structures: 1) the expert nurse's sincere attitude towards patients created an emotional connection with the patients; 2) through interpersonal relations, expert nurses gained an understanding of patient-specific pain; and 3) expert nurses supported patients living their own lives.
Discussion:
The expert nurses' attitudes trying to understand pain created a human connection with the patients, in essence, the 'I' - 'Thou' relationship described by Buber. In the 'I' - 'Thou' relationship, expert nurses perceived each patient as a unique individual and understood the unique pain that each patient was going through.
Conclusion: To understand the total pain experienced by patients with cancer, nurses need to establish interpersonal relationships with the patients, and the nurses' attitudes toward building such relationships were found to be important. To acquire the expert nurses' sincere attitude toward patients, there is a need for nurses to first adopt ways that show their own personalities. Furthermore, it was suggested that the following are needed: (1) efforts to learn and enhance specialized knowledge and skills; (2) nurturing empathetic attitudes for engaging in touch and active listening; and (3) internal preparation of the nurses toward their resolve to experience pain together with the patients.
2012年以降,国内では第2期がん対策推進基本計画により,がん診療に携わるすべての看護師が基本的な緩和ケアを提供できる体制整備が推進されている(中澤,2019).それにより,がん医療に従事する看護師の緩和ケア実践能力習得は不可欠である.
痛みは,多くのがん患者が有しており,患者のQOLを著しく低下させる.そのため,疼痛マネジメントは緩和ケアの中でも優先度が高く,患者の身近にいる看護師が担う役割も大きい.しかし,臨床の場では看護師の疼痛マネジメントへの関心は高いものの,実践への自信の無さと困難感がある(青木ら,2016).その理由として,がん患者の有する全人的苦痛の理解の難しさがある.身体面だけでない複雑な痛みは多くの看護師に困難さをきたしており(岩脇ら,2012),特に経験年数の少ない看護師は患者が訴える身体的苦痛にしか目が向けられていないとの指摘がある(市橋ら,2019).また,緊急性の高いケアを優先する必要からがん患者と関わる時間に限りのある急性期病棟では,全人的苦痛の視点から疼痛管理をしているとはいえない現状が報告されている(中木・江口,2020).そのため,がん患者の全人的苦痛の理解に苦慮している看護師は多く,支援する方策の探求は必要である.
痛みを持つがん患者は「がん」と「痛み」という二側面から,これまでになかったような経験をし,さらに病気のプロセスの中で必ずといってよいほど死の恐怖に直面する(梅田,2015).看護師ががん患者の全人的苦痛を理解しようとするとき,治療による身体の変化,痛みのために制限される生活など様々な体験によりもたらされた痛みを知り,なぜ患者が痛みを感じているのか,患者にとっての痛みの意味を理解していく必要がある.がん患者の痛みの持つ意味にはFerrelら(1991)が,「挑戦」「罰」「方略」「解放」「取り戻すことができない喪失」があると明らかにしている.さらに,小迫(2001)は,「死」への恐怖心が痛みの意味に反映されると報告している.また,平原(2006)は,「痛みの意味」を考えていくなかで,がん患者の持つ全人的苦痛というものが「その人の人生の意味」であり,痛みの意味の探究の援助が,がん患者の全人的痛みに対するケアの本質であると述べている.これらより,がん患者の痛みの意味を理解することは,全人的な理解につながり,それは全人的ケアにもなるといえる.
がん患者の全人的苦痛の理解に一般病棟の熟練看護師も困難感を抱える(岩脇ら,2012)なか,がん看護のエキスパートナース(以下エキスパートナースとする)は,専門的知識と技術により「実践」「指導」「相談」を行い(關本,2019),スタッフの実践モデル(石岡ら,2020)として教育的役割を担っている.このことから,エキスパートナースは洗練された専門的知識と技術,さらには経験知によりがん患者の全人的苦痛を理解しているといえる.渡邉(2004)は,がん患者の痛みの理解について,がん性疼痛看護認定看護師が初めに身体的な痛みを把握し,その後,患者との関係性を築きながら,患者の抱える痛みが何かを包括的にアセスメントしていたことを明らかにしている.がん性疼痛看護認定看護師である宇都(2006)は,がん患者へ全人的にアプローチをするため,痛みの意味を知ることの必要性について指摘している.このようなエキスパートナースの体験を明らかにすることが,痛みの理解に苦慮している看護師に必要だと考えるが,これを探究した研究は現在ない.
そこで本研究は,エキスパートナースががん患者の痛みの意味を捉えて痛みを全人的に理解する体験を明らかにし,痛みの理解における新たな看護の示唆を得ることを目指す.それにより,痛みの理解に苦慮している看護師の理解を深め,疼痛緩和における看護の質向上を図る.しいては,がん患者のQOL向上が期待できる.
全人的苦痛である.それは,身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな4つの苦痛から成り立っている.
2. 痛みの意味:がん患者にとって身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛として痛みが示しているもの.
3. 痛みの全人的な理解:エキスパートナースが痛みの意味を統合して理解すること.それは,エキスパートナースが患者の言葉や表情,行動などあらゆる反応に集中して,痛みが過去から現在,イメージされる未来の影響を受けて生み出されることを患者との関わりから理解すること.
4. 体験:中木・谷津(2011)の体験を参考にして,個々の主観のうちに直接的または直観的に見出される生き生きとした意識過程や内容であり,看護師が内省的な眼差しによって捉え直した意味のあるもの.
目的は,エキスパートナースががん患者の痛みの意味を捉えて痛みを全人的に理解する体験を明らかにし,がん患者の痛みの理解における新たな看護の示唆を得ることである.
本研究は,現象学的研究法を用いた質的記述的研究である.がん患者の痛みを理解する体験は,看護師個人の主観的なものである.それを明らかにするためには,一切の先入観を除き,看護師の視点に立って起きた現象を捉える必要がある.そのため,対象者の生きられた経験をあるがままに捉え,記述することを目指しているGiorgiの方法(野村,2015)が適していると考えた.
1. 研究参加者がん患者の痛みの意味を理解した体験のあるエキスパートナースである.その選定基準は,①がん患者の疼痛緩和に関する専門的知識・技術を有するがん専門看護師,がん性疼痛看護認定看護師,緩和ケア認定看護師とする.②がん患者の痛みの意味を理解したうえで,ケアを行った結果,疼痛緩和が図れた体験のある者とする.疼痛緩和が図れたという判断は,痛みが軽減したことをペインスケールのほか,患者の言葉や表情,行動に変化が見られたこととし,これらの条件を満たす者とした.
2. データ収集方法半構成的面接法に基づいて研究参加者にインタビューを行った.質問内容は,患者の痛みへの関わりと患者の反応,理解した痛みの意味である.研究参加者にインタビューガイドを基に問いかけつつも,研究参加者のありのままの体験を重視するため,研究参加者が自由に語ることを大切にしながら進めた.研究目的を達成するために,研究参加者には過去の痛みの意味を理解するまでの体験について,特に印象に残っている患者との関わりを想起してもらい,研究者が誘導することなく詳細に語ってもらった.そして,研究者が解釈した意味を研究参加者に返したり,適宜状況に根ざした質問を挿入しながらインタビューを展開した.インタビュー内容は,研究参加者の承諾を得た後,ICレコーダーに録音した.
3. 調査期間2017年7月~2018年2月
4. データ分析方法本研究はGiorgi(2009/2013)の現象学的分析方法を基に以下の手順で分析を行った.1) ICレコーダーから逐語録を起こし,全体の意味を捉えて熟読した.2) 本研究目的である「いかに痛みの意味を理解したか」を念頭に置き,逐語録の文章を区切り,意味単位を特定した.3) 特定した意味単位の文章を,研究参加者の意味であるように研究者の言葉に変換し,一貫性のある記述に統合して体験の記述を完成させた.4) 体験の記述を,研究参加者が痛みの意味を理解していく場面の変化ごとに区切り,その場面を成り立たせている中心的意味を抽出した.5) 中心的意味を一連の意味のまとまりで分け,それぞれの中心的意味を構成する要素を捉えて体験の構造として表した.6) 全ての体験の構造を,類似性に基づき整理して,体験のテーマとテーマの持つ意味を見出した.7) 3名の研究参加者のテーマの意味から共通する構造を抽出した.
5. 本研究における真実性の確保語られた内容の分析結果の一部について,研究参加者よりフィードバックを受けた.具体的には,逐語録の中から研究テーマに関連した部分を抽出し,抽出したものを研究参加者に封書にて渡し,確認と修正を依頼した.その後,返送された内容に基づき分析を進める中で,不明な点は全て研究参加者よりフィードバックを受けた.それを受けて修正した体験の記述を研究参加者全員に確認を行った.さらに,確認が可能な1名の研究参加者に関しては,分析最後に面会し,テーマまでの内容を共有して内容に間違いがないことを確認した.また,看護学の研究者より客観的アドバイスを得て,データの解釈が操作的かつ先入観に捉われないよう努めた.分析過程においては,現象学の知識のある看護研究の専門家より指導を受け,検討を重ねた.
6. 倫理的配慮本研究は,香川大学医学部倫理委員会の承認後実施した(承認番号:平成29-003).研究者は,研究参加者に,口頭と書面で研究の目的及び方法,プライバシーの保護,倫理的配慮について説明し,口頭と書面での同意を得た.本研究は,過去の事例に関して思い起こしたくないつらい体験について質問する可能性があるため,研究参加者の体調や心情の変化に注意し,配慮した.
本研究参加に同意を得た施設は,がん診療連携拠点病院の3施設であり,各施設1名の研究参加者が得られた.3名の研究参加者は,がん看護経験年数14年~20年の女性であった.面接は,1人2回ずつ,平均68.5分(50~91分)実施した.表1にその概要と面接時間を示す.
研究参加者の概要と面接時間
A | B | C | |
---|---|---|---|
性 別 | 女性 | 女性 | 女性 |
資 格 | がん性疼痛看護 | 緩和ケア認定看護師 | がん看護専門看師 |
認定看護師 | がん看護専門看師 | がん看護専門看師 | |
がん看護経験年数 | 20年 | 18年 | 14年 |
資格取得後の勤務場所/勤務期間 | 緩和ケアチーム専従/9年 | ホスピス病棟/9年,緩和ケアチーム専従/4年 | 外科病棟/1年,緩和ケアチーム専従/4年 |
面接時間1回目 | 65分 | 85分 | 50分 |
面接時間2回目 | 56分 | 91分 | 64分 |
合計面接時間 | 121分 | 176分 | 114分 |
語られた患者は,40~50歳代の男女であり,3名ともステージⅣの進行がんであった.表2にその概要を示す.
語られた患者の概要
患者d | 患者e | 患者f | |
---|---|---|---|
年 齢 | 50歳代 | 40歳代 | 40歳代 |
性 別 | 女性 | 女性 | 男性 |
関わった期間 | 治療期~緩和ケア移行期 | 告知期~治療期 | 治療期~緩和ケア移行期 |
病 名 | 胃がん | 両側乳がん | 胃がん |
進行度 | ステージⅣ | ステージⅣ | ステージⅣ |
治 療 | 化学療法 | 化学療法 | 術後化学療法 |
オピオイド治療 | オピオイド治療 | オピオイド治療 | |
職 業 | 有 | 無 | 有 |
家族構成 | 離婚歴あり | 独身 | 両親と同居 |
子供と同居 | |||
宗 教 | 無 | 無 | 無 |
3名のエキスパートナースが痛みを全人的に理解する体験からは3つの共通する構造が抽出された.それは,1) エキスパートナースの患者に真摯に向き合う在りようが患者と心のつながりを生む,2) 人間と人間の関係の中で,エキスパートナースが患者固有の痛みの理解を得る,3) エキスパートナースが自分を生きる患者を支えるである.1) 2) 3) について,研究参加者A,参加者B,参加者Cのテーマとテーマの意味,特徴的な体験の記述を示す.記述内の「」は研究参加者の語りの引用であり,()は研究者が補った箇所である.
1) エキスパートナースの患者に真摯に向き合う在りようが患者と心のつながりを生む ① 研究参加者A 【テーマ1 患者dの話せる心を信じて沈黙を待ち続け,心の声を聴ける】(テーマの意味)信じる心で向き合い,心の蓋が開かれる
Aは,がんの進行に伴う身体の痛みで「うなだれ泣いている」患者dを見て,話せる気持ちになるまで信じ「待つ」ことを決めた.Aは,がんにより派生する背中の痛みに対し疼痛緩和を図る知識を使い,さらに患者dの痛む身体に触れて「(あなたと)一緒に(私は)います」という思いを込めてさすった.長い沈黙の後,Aは「息子や親には絶対にこんな姿を見せたくない.昼も夜も一緒なほど痛みで寝ることもできず,病気は仕方ないけど,痛いのだけは絶対に嫌なんです」とこれまで抑え込んできた患者dの思いが聴けた.
【テーマ2 心の声を中心に置き,在るべき行動を定め,本来の姿を取り戻せた患者dに出会う】(テーマの意味)心の声に忠実に応えて,本来の姿に出会う
Aは,医療用麻薬の導入が始まるなか,主治医を気遣い自分の痛みを素直に言えない患者dに気づいた.Aは,身体の痛みを取りたいという患者dの思いに応えるため,「痛みが本人にしか分からない」からこそ,患者dが自分で痛みを伝えられるよう働きかけた.すると,Aはこれまでとはまるで違う着飾った患者dに出会い,「身体の痛みが取れて化粧までする気持ちになれました」「ありがとうございます」と伝えられた.
【テーマ3 新たに生じた独自の苦しむ心を受け入れ,苦しい時を共に在りたい存在になる】(テーマの意味)独自の苦しみを分かち合い,絆が生まれる
Aは,治療結果の説明になると「受験生」のように心が揺れ動き,「駄目だった」絶望感から苦境に立つ患者dに気づいた.Aは,その精神的な痛みに,外来時は患者dの時間を保証し付き添った.Aは,「(子供に)バッドニュースを伝えるつらさ」に耐えられないと涙を流す患者dの側で,「一緒に苦しみを背負う」ように沈黙を聴きながら,苦しみを感じた.Aは身体の痛みの増強で「(患者dが)泣いている」というカルテからの情報を目にすると「ただ今の素直な気持ち」が聴きたいと会いに行った.横になることすらできない身体状況のなか,「どうぞ座ってください」と手で指し示す患者dの動作から,Aは「話を聞いて欲しい」という患者dの「希望」が自分に向けられていると思い,共に過ごした.
② 研究参加者B 【テーマ1 恐怖のある心を感じ,行動を定めて,助けを求められる心に出会う】(テーマの意味)目の前の心と純粋に向き合い,本来の心に出会う
Bは,強烈な身体の苦痛の緩和を求めて,望んでいた病院に来れたのに震えている患者eに「違和感を感じ」,患者eの思いを知ろうとした.Bは,患者eにとって医療者が脅威になっていると分かり自分の考えていた看護は行わず,患者eに関心を持ち続けて距離を置いた.Bは,身体の痛みの和らぎと共に「身体の痛みを取って欲しいと助けを求められるようになった」患者eの心の変化に気づいた.
③ 研究参加者C 【テーマ1 素直に心を受け止めて,怒りの奥にある苦しみに気づく】(テーマの意味)素直に心と向き合い,奥にある感情を掴む
Cは,主治医への怒りと身体の苦痛を訴えて何度も電話をしてくる患者fに,看護師として適切に答えるも聞き入れられず,「(患者fの)思いを知りたい」と素直な気持ちを伝えることで,患者fに受け入れられた.Cは,患者fの思いを否定せずに受け止め,怒りの奥にある「(主治医に)思いを分かって欲しいのに分かってもらえない」患者fのつらい思いに気づいた.
【テーマ2 苦しむ心に合わせて行動し,生きたい心が表れる】(テーマの意味)求める感情に応え,本来の心と出会う
Cは,主治医に思いを分かってもらえず助けて欲しいという患者fの思いを受け取り,患者fの積極的治療を続けたい思いを代弁した.Cは,専門的な知識をもとに患者fの身体の痛みを和らげる方法を伝えることで少しでも身体の痛みが軽減できるよう努めた.Cは,両親の希望により真実を言えず主治医も困っている状況を知った.主治医に見捨てられていると荒れ狂う患者fに対し,Cは患者fに真実を伝えることを決め,両親の信頼を得て,主治医より真実が伝えられたことで,主治医への怒りが消えた患者fから「生きたい」という思いを聞いた.
【テーマ3 独自の苦しみの理解が深まり,必死に思う気持ちが遂に伝わる】(テーマの意味)独自の苦しみを共に感じ,心がつながる
Cは,身体がしんどい時に「思い通りにならない」と怒る患者fの電話を受けた.Cは,怒りの奥に病状の悪化に苦しむ患者fの心を感じた.Cは,病状を危惧して積極的治療を許可しない病院へ来ることが患者fにとって生きることへの諦めであり,耐えがたい苦しみになると理解して患者fの意に沿う行動を取った.Cは,電話を通して患者fの身体の限界を感じ,緊急入院ではなく,患者fの思いを分かって対応できる医療者がいる時に病院へ来るよう患者fに必死に訴えた.Cは,拒否し続けられていた患者fに「あなたがいうのなら」と必死な思いを受け入れてもらえた.
2) 人間と人間の関係の中で,エキスパートナースが患者固有の痛みの理解を得る ① 研究参加者A 【テーマ 何よりも自分を大切にして欲しいと心が変化し,自分を我慢する行動の奥にある患者dの生き方に気づき,痛みの理解へ結びつく】(テーマの意味)あるがままの自分で在ることを願い,人生の痛みの理解につながる
Aは,患者dが「自分よりも相手を大事に考える人」だと知りながらも「遠慮して自分の思いを言えない」患者dをもどかしく思った.Aは,化学療法をしないことが「親としての役割を諦めてしまう」という患者d独自の意味を知り,「化学療法を受けたい」という強い思いを伝えられた.譲れない思いがあるにもかかわらず,主治医に言えず「耐えている」患者dに対し,Aは「親として」「患者として」あるべき姿を生きる患者dの「生き様」に気づき,それが苦しみとなり,痛みにつながっていると気づいた.
② 研究参加者B 【テーマ 心のまま生きて欲しいと心が変化し,独りで生きる患者eの生き方に気づき,痛みの理解へ結びつく】(テーマの意味)あるがままの自分で在ることを願い,人生の痛みの理解につながる
Bは,患者eが「誰にも頼りたくない人」だと知りながらも,残り僅かな人生を前に,自分の亡くなった後の対応をしてもらうために母親のもとへ帰ろうとする患者eの「事務的」な決意に納得できなかった.Bは,患者eの触れられたくない母親の話を聞き,心の痛みに触れることで,人に迷惑をかけて生きてはいけないという患者eの生き方に気づき,痛みにつながっていると気づいた.
③ 研究参加者C 【テーマ 患者から独自の存在へと関係が変化し,人となりが苦しみに影響していることに気づき,痛みの理解へ結びつく】(テーマの意味)一人の人間として捉え,固有の痛みの理解につながる
Cは,これまで患者fが自分の意思を貫く人だと理解して病気に苦しむ患者fの思いを受け入れてきたが,自分の意思を人に押しつけようとする患者fに理解できなくなった.Cは,患者fとの関わりを振り返り,どんなに無理なことでも自分の意思を推し通そうとする患者fに,自分の意思を諦める術のない人だと分かり,「諦められたら楽やのに」と患者fの痛みに気づいた.
3) エキスパートナースが自分を生きる患者を支える ① 研究参加者A 【テーマ 自分が生み出す痛みと向き合うよう背中を押し,乗り越えようとする患者dを支える】(テーマの意味)痛みに向き合い,自分の人生を生きるのを支える
Aは,退院を前に「痛みがゼロにならないと帰れない」と訴える患者dの言葉に「違和感」を感じ,親としての責務を果たせないことに苦しむ患者dに気づいた.Aは,患者dだけの力では限界だと判断し,「(親に)助けを求める」ことを提案し,気持ちを推した.Aは,患者dが病気を隠し続けてきた父親に助けを求める決断をしたことに安堵した.Aは,患者dが現実に苦しむ父親の姿を見て緩和ケア病棟に移行する時期だと悟っていくのを気づき,悔いのない人生を求めて患者dに尋ねることで,元夫の中で生き続けたいと自己の在り方を定めた患者dの決意を理解した.
② 研究参加者B 【テーマ 生き方が生み出す痛みに向き合う力となり,前向きに歩み始める患者eを支える】(テーマの意味)自分の人生を歩み始める生き方を支える
Bは,母親に迷惑をかけたくないと一向に連絡しない患者eを見て,母親と向き合うことを避ける患者eに気づいた.Bは,母親の「もちろんです.自分の娘なので」という迷いのない言葉から確かな親子の絆を感じた.Bは,患者eに母親の愛情を感じて欲しいと思い,母親に本当の思いを出すよう患者eの心に訴えた.Bは,母親と向き合う痛みに直面しながらも,母親の愛情を感じ,「母親のもとに帰る」と生きる目標を定めた患者eと共に自己の意思を固めた.Bは,再度独りで生きることを選び苦しむ患者eに,人に頼ることの意味を伝え,生きる目標を叶えるための協力者を連れてこれた患者eに嬉しく思った.そして,Bは人と関係を結びながら生きる患者eの生き方を支えた.
③ 研究参加者C 【テーマ 乗り越える術のない痛みと闘い続け,自分の人生を必死に生き抜く患者fを支える】(テーマの意味)課せられた痛みを背負い生きる生き方を支える
Cは,患者fの強い希望により免疫療法が行われるも,悪化する身体に「なんで治らんのや」と何度も怒り叫ぶ患者fの苦しみを感じた.Cは,痛みを伴いながらも必死に生きようとする患者fの側で,一緒に苦しみを感じながら居続けた.Cは,「険しい顔」をしたまま亡くなっていく患者fに,死が訪れるその時まで「諦めずに頑張って闘っている」生き様を見届けた.Cは,母親より「あなたともう一人の看護師だけは息子がものすごく頼りにしとった」と伝えられ,必死で関わり続けてきたことが「患者eの役に立っていた」と安堵した.
3名のエキスパートナースががん患者の痛みを全人的に理解する体験からは,3つの共通する構造が明らかとなった.それは,1) エキスパートナースの患者に真摯に向き合う在りようが患者と心のつながりを生む,2) 人間と人間の関係の中で,エキスパートナースが患者固有の痛みの理解を得る,3) エキスパートナースが自分を生きる患者を支える,である.この一連の流れには,患者と看護師から人間と人間への関係の変化があり,これは,Buber(以下ブーバーとする)の述べる,〈われ〉―〈なんじ〉の関係への変化であると考える.ブーバー(1923/2021)は,人間存在の基本的な関係には〈われ〉―〈それ〉,〈われ〉―〈なんじ〉の2つの関係があるとし,どちらも人間が生きるために必要であり,自己のとる態度によって変わるという.しかし,人間が人間として生きるためには〈われ〉―〈なんじ〉の関係において,初めて相手と真に出会い,人格的関係を築くことが必要であると指摘している.この〈われ〉―〈なんじ〉の関係への変化が,痛みの全人的な理解に関係していると考え,3つの共通する構造に基づきエキスパートナースと患者との間に何が起きているのかをブーバーの人間存在の考えを用いて考察する.
1. 痛みを全人的に理解する体験を支える人間存在の在りよう 1) エキスパートナースの患者に真摯に向き合う在りようが人間同士のつながりを生むエキスパートナースが患者の痛みを理解しようと患者に関わる時,エキスパートナースは一人の人間として真摯に向き合っていた.Aが,患者dの痛む身体に触れて沈黙を待ち続けるところには,相手を信じるという覚悟あるAの在りようがあった.エキスパートナース3名とも,患者に自分がどう向き合うか,自分自身の在り方があった.加藤(1996)は,「われ―なんじ」の関係の仕方は,主に看護師の人格を傾け看護する方向であり,患者との関係の中で患者の苦痛や苦悩を共感的に解ろうとし,解る,解り合うという体験を通して看護する方向であると述べている.エキスパートナースの在りようも,自身の人格を傾け〈われ〉―〈なんじ〉の関係を築く看護の方向であるといえる.
そして,このような在りようは,エキスパートナースと患者双方に心の変化をもたらした.Aは,患者dの苦しみを感じ,今思いを聴きたいと会いに行くと,患者dもまたあなたに話を聴いて欲しいとAの訪れを待っていた.ブーバー(1923/2021)は,〈われ〉―〈なんじ〉の関係性の世界について,〈われ〉―〈なんじ〉の〈われ〉は〈なんじ〉と呼びかけが聞こえた〈われ〉である.そしてその〈われ〉もまた〈なんじ〉と呼びかける存在であるという.Aと患者dの間に起きた現象も,〈われ〉―〈なんじ〉の関係性の世界であるといえよう.このことから,エキスパートナースの真摯に向き合う在りようにより,〈われ〉―〈なんじ〉の関係が始まり,人間同士のつながりが生まれたと考える.
また,エキスパートナースが患者に真摯に向き合う時には,①専門的知識と技術を用いる,②タッチや傾聴を行う,③患者と共に痛みを感じる覚悟を持つ,という3つの関わり方があった.まず,①専門的知識と技術を用いるについて述べる.エキスパートナース3名とも,現にある身体の痛みと医学的根拠を関連づけて的確に身体の疼痛緩和を図るために専門的知識と技術を用いていた.そして,久保・遠藤(2022)はエキスパートナースが既存の知識と自らの経験にてらし,患者やその状況の個別性を加味して疼痛緩和を実践していることを明らかにしている.これらのことから,エキスパートナースは医学的根拠に基づいた的確な疼痛緩和を図るだけでなく,患者個々により異なる痛みに応じた疼痛緩和を検討するために専門的知識と技術を用いていたといえる.また亀岡・舟島(2015)は,専門的知識と技術は患者の信頼を得るために重要であるといい,岸見・古賀(2022a)は対人関係の基礎は「信用」ではなく「信頼」によって成立していると述べている.つまり,専門的知識と技術は単に疼痛緩和を図るだけでなく,患者と看護師の関係構築の基盤となっていた.次に②タッチや傾聴を行うについて述べる.AとBが行っていた痛みのある身体へのタッチやマッサージは,患者と言葉を介さない中でも患者の心にアプローチする手段となっていた.看護師の共感的な姿勢によりタッチを受けた患者について,髙木ら(2014)は心身ともに安楽を得ており,看護師に対し〈自分だけのために〉や〈涙が出るほど嬉しい〉という気持ちを明らかにしている.つまり,全人的苦痛を有する患者にとってタッチは,痛みによる恐怖や苦しみを癒す心のケアになっていた.そして,タッチを通して患者は痛みを解ろうとするエキスパートナースの存在を認識し,心が通う体験をしていた.それは傾聴においても同様にみられ,看護師の患者の痛みを解ろうとする姿勢がすべてのエキスパートナースの体験にあった.つまり,タッチや傾聴における共感的姿勢は,看護師と患者が心を通わせる関係を築いていくために必要であるといえる.最後に,③患者と共に痛みを感じる覚悟を持つについて述べる.坂下(2008)は,看護師が全人的苦痛を抱える患者を前にした時,苦しむ患者に重圧感や混沌とした不安を感じ踏み込めず逃げ出したい看護師の心の構造を明らかにしている.今回,エキスパートナース3名とも患者を前に逃げ出したいというネガティブな感情はみられず,患者の痛みを懸命に感じようとする姿があった.患者の痛みを共有する看護師もまた,患者と同様に苦しみを伴っていたと考える.そのため,全人的苦痛を抱える患者に向き合う看護師にとって,患者と共に痛みを感じる覚悟は必要であろう.
以上より,①専門的知識と技術を用いる,②タッチや傾聴を行う,③患者と共に痛みを感じる覚悟を持つことは患者に真摯に向き合う看護師の在りように必要な関わり方だといえる.
2) 人間と人間の関係の中で,エキスパートナースが患者固有の痛みの理解を得る人間同士のつながりが生まれた後,エキスパートナースにとって理解できていた患者が,理解できない人へと変化していた.Cは,自分の意思を貫く人だと理解していた患者fが,心のつながりが生まれた後,自分の意思を人に押しつける人へと変化し理解できなくなった.このことについて,ブーバー(1923/2021)の示す〈われ〉―〈それ〉は,相手を客観的に見た理解であり,〈われ〉―〈なんじ〉は相手の側からその人の生きる世界を理解しようとする見方である.つまり,〈われ〉―〈それ〉の関係では,相手の本質に触れることはできず,〈われ〉―〈なんじ〉の関係において,初めて人間として真に理解でき,より深い理解に至る.〈われ〉―〈なんじ〉との関係は言わば,未知の他者との出会いともいえよう.このことから,これまでエキスパートナースが理解していた患者は,〈われ〉―〈それ〉の関係の中で自分の世界の中から見た相手であり,対象化した相手であった.つまりエキスパートナースは,初めて患者と出会った時,患者と看護師という〈われ〉―〈それ〉の関係の中で患者と出会い,自分の中で固定化していた.しかし,人間同士のつながりが生まれ〈われ〉―〈なんじ〉の関係が始まったことで,これまで理解できていた患者は未知の他者となり,理解できない相手になった.この変化によって,エキスパートナースが患者もまた自分と同じ自分を生きる人間であり,決して対象化できない唯一の存在として捉えられるようになった.以上より,痛みは知りたいからといって知り得るものではなく,人間同士の関係を築くことで看護師は患者への理解が深まり,患者固有の痛みの理解を得ることができる.
3) エキスパートナースが自分を生きる患者を支えるエキスパートナースは,患者固有の痛みの理解を得て,独自の痛みに苦しむ患者と関わった.Bは,人に迷惑をかけてはいけないという考えから独りで生きることを選び苦しむ患者eに対し,人に頼ることの意味を伝えた.それにより,患者eは生きる目標を叶えるための協力者を連れてくることができた.ここでの言葉は単なる言葉ではなく,患者eの心を揺さぶるような力をもった言葉であった.それは,相手との関係の中で生き,より深く患者eのことを理解しているBだからこそ言えた言葉である.ブーバーについて研究している稲村(1987)は,語られた言葉がその人に応答を呼び起こし,それによってその人を新しくつくり変えてしまう.言葉は生命をもち,力を持っている.言葉は存在者を存在せしめてゆくと述べている.Bの言葉もまた,患者eに対し人を信じようとしない自分を自覚させ,人と関係を結びながら生きる自分へと変えたと考える.
また,3名のエキスパートナースは,患者の限りある人生を共に考え,自分の人生を生きようとする患者を支えていた.ここには,ブーバー(1923/2021)が,〈われ〉―〈なんじ〉の関係にある時,人は相手を助け,癒し,高め,教え,救うと述べているように,ケアする者―ケアされる者という感覚はなく,エキスパートナースと患者が一人の人間として相互に関係し生きる姿があった.
2. 痛みを全人的に理解すること本研究においてがん患者の痛みを全人的に理解することは,患者の生き方や人となりを含めて患者を深く理解することであった.そのためには,看護師自身の人格を出して,患者と人間同士の関係を築くことが必要である.加藤(1996)は,「われ-なんじ」の関係でこそ人間とは何かを探究できるという.さらに,人格同士が触れ合うことについて,お互いの心や体験が振動として伝わり相互に関係し合うと述べている.このことから,人間同士の関係を築くことで,看護師は患者がどういう人間なのかを探究し始め,実感的に解ることを通して患者の全人的な理解が深まると考える.
さらに,本研究で患者の生きることを支えるというのは,自分を生きる生き方を支えることであった.これは,本来の患者が望む生き方を見極め支えることである.AとBは,他者のことを考えて生きる患者に対し本心に従い生きられるよう働きかけていた.岸見・古賀(2022b)は,他者からの承認を求め,他者からの評価を気にすることは他者の人生を生きることになるという.このことから,AとBもまた他者ではなく自分がどう在りたいか,本来の患者が望む生き方を求め患者が自分の人生を生きられるよう支えていた.それは,エキスパートナースと患者が人間同士の関係の中で生き,エキスパートナースが患者もまた自分と同じ自分を生きる人間として患者を捉えていたからこそ成し得たのだと考える.Cも同様に自分を生き抜く患者を支えていた.そして,川端(2015)は〈私で在ることの肯定〉は自分らしく生きることを支える力という.つまり,患者が本来望む生き方を支えることは,がんになり強烈な痛みに苛まれながらも患者が悔いのない人生を生きる力になっていたといえよう.
3. 看護への示唆看護師ががん患者の痛みを全人的に理解するためには,患者と人間同士の関係を築く必要があった.そして,その人間同士の関係を築くためには,エキスパートナースの患者に真摯に向き合う在りようが重要であった.その在りようを目指すためには,まずは看護師が患者にどう向き合っていたのかに気づき,患者に対しどう在りたいかを考え,そのような看護師自身の人格を出して患者に向き合う必要がある.それは,患者を前に自分がどう感じ考えているのかについて内省することや,他者からのフィードバックを受け取ることによってできると考える.また,患者に真摯に向き合う看護師の在りように必要な関わり方として考察より導き出された3つについて述べる.①エキスパートナースが専門的知識と技術を用いて的確に疼痛緩和を図っていたように,看護師は疼痛緩和に関する研修の受講など,知識や技術を学び高める努力が必要である.それは,患者の看護師としての信頼を得ることにもつながる.そして,②エキスパートナースが患者の苦悩を感じ解ろうとタッチや傾聴を行っていたように,看護師はタッチや傾聴する時の共感的姿勢を培う必要がある.それは,タッチや傾聴をした時の患者の反応を意識的に捉え,自己のアプローチを改善していくことで培うことができるであろう.さらに,③エキスパートナースが患者と共に痛みを感じる覚悟を持っていたように,看護師は自身の内面的な準備を整える必要がある.それは,疼痛緩和の実践能力を高めることで自信を築き,自己の努力や成長を認めていくことで可能になると考える.
3名のエキスパートナースががん患者の痛みを全人的に理解する体験からは,1) エキスパートナースの患者に真摯に向き合う在りようが人間同士のつながりを生む,2) 人間と人間の関係の中で,エキスパートナースが患者固有の痛みの理解を得る,3) エキスパートナースが自分を生きる患者を支える,これら3つの共通する構造が明らかとなった.このことから,がん患者の全人的苦痛を理解するためには,看護師が患者と人間同士の関係を築く必要があり,その関係構築に向けた看護師の在りようが重要であった.エキスパートナースの真摯に向き合う在りようを目指すために,まずは看護師自身の人格を出した向き合い方が必要である.そして,①専門的知識と技術を学び高める努力,②タッチや傾聴する時の共感的姿勢の育成,③患者と共に痛みを感じる覚悟に向けた看護師の内面的な準備が必要であると示唆を得た.
本研究は,エキスパートナースが捉えた患者の痛みの意味を研究のデータとして用いた.患者にとっての痛みの意味であるかの整合性については,過去の患者との体験であることから限界が生じた.しかし,エキスパートナースの語りは患者との相互作用により生じており,患者との関係の中で痛みの理解を得ていたエキスパートナースの理解の構造は貴重な結果だといえる.また,研究参加者が語った患者はすべてがんの進行度ステージⅣの40~50歳代の患者であった.そのため,結果に偏りが生じている可能性がある.今後は,研究参加者を増やし多様なデータを分析することで,結果の偏りを軽減し信頼性と有用性を高めていくことが課題である.
本研究を行うにあたり,ご理解・ご協力下さいました参加者の皆様,医療関係の皆様に心よりお礼を申し上げるとともに,ご指導を賜わりました先生方に深く感謝申し上げます.なお,本論文は香川大学大学院医学系研究科修士論文に加筆・修正したものである.また本論文の一部は34回日本がん看護学会学術集会にて発表を行った.
本研究における開示すべき利益相反は無い.
NFは研究の着想およびデザイン,データ収集,分析,論文作成に貢献:OMは研究プロセス全体への助言および原稿への示唆,すべての著者は最終原稿を読み,承認した.