2023 Volume 40 Issue 3 Pages 129
甲状腺乳頭癌に対しては術前・術中の所見を基に,初期治療である手術の術式や術後の補助療法,経過観察法を計画するRisk-Oriented Managementが行われます。甲状腺腫瘍診療ガイドラインによると,通常は,超低リスク乳頭癌にはActive Surveillanceまたは片葉切除が,低リスク乳頭癌には片葉切除が,高リスク乳頭癌には術後の放射性ヨウ素内用療法やTSH抑制療法を視野に入れた全摘が推奨され,これらの治療方針についてはおおよそコンセンサスが得られているものと思われます。
一方でこれらのいずれにも属さない中リスク乳頭癌については,片葉切除あるいは全摘(±術後補助療法)の両者の選択肢が容認されており,リンパ節郭清の範囲も推奨がありません。従って,患者の状態や治療環境,各施設・地域・主治医の治療に対する考え方の違いから,同じ進行状態の中リスク乳頭癌患者であっても施設によって異なった対処が行われています。実際の皆さんの日常臨床でも,再発やがん死のリスクの捉え方,術式の選択基準,合併症の発生頻度や患者目線での術後評価などについての多くの疑問や意見があると思います。しかし,これまで中リスク乳頭癌の治療成績についてまとまった検討がなされることは非常に少なかったと思われます。
本特集では,第123回外科学会のパネルディスカッション「甲状腺癌中間リスク群の手術法と予後について」で発表された日本を代表する施設の先生方に,自施設での中リスク甲状腺乳頭癌の治療の現状,対処の考え方などをまとめていただきました。読者の皆さんの臨床に大変役に立つ内容ではないかと思います。是非ご参考になさってください。