Nihon Shishubyo Gakkai Kaishi (Journal of the Japanese Society of Periodontology)
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Review Article
Mechanisms of Lymphocytes Infiltration in Periodontal Lesion
Yoshitaka Hosokawa
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2015 Volume 57 Issue 2 Pages 61-69

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はじめに

歯周炎はデンタルプラーク中に含まれる歯周病原性細菌により惹起される慢性炎症疾患であり,その発症および進行には宿主の免疫応答が関与している事が明らかとなっており,付着上皮の歯面からの剥離,歯周ポケット形成および歯槽骨吸収を特徴とした病態形成に関わっている。歯周炎病態形成に関与する免疫担当細胞の中でもT細胞に着目した研究が多数報告されている。EbersoleらはT helper 1(Th1)細胞が産生するinterferon(IFN)-γがmacrophageを刺激し,interleukin(IL)-1βやtumor necrosis factor(TNF)-αを誘導する事により骨芽細胞などのreceptor activator of nuclear factor-кB ligand(RANKL)発現を上昇させる事が破骨細胞の活性化に繋がり歯槽骨吸収が引き起こされる事を報告している1)。また,Th1細胞自身がRANKLを発現しており,それが破骨細胞を活性化する可能性も報告している2)。一方,Seymourらは,歯周炎病変局所のT helper 2(Th2)細胞はB細胞の増殖を引き起こし,その結果自然免疫応答が低下し,歯周炎が悪化する可能性を示している3)。さらに,近年新規T細胞サブセットであるT helper 17(Th17)細胞が発見され注目されている。TakayanagiらはTh17細胞が発現するRANKLは他のサブセットより高く,Th17細胞が産生するIL-17Aは線維芽細胞や骨芽細胞のRANKL発現を誘導する事により破骨細胞が強く活性化され炎症性の骨吸収が引き起こされる事を示した4)。ここ20年あまりの研究によりNaïve T細胞からeffector T細胞への分化制御機構が明らかとなり,それらの浸潤を調節するケモカインレセプターがeffector T細胞特異的に発現している事が報告されてきた(図1)。本稿ではeffector T細胞浸潤をコントロールするのに重要な役割を果たしているケモカインに着目し,歯周炎におけるケモカイン発現ならびに産生メカニズムについてこれまでに私と共同研究者が行ってきた研究を中心に総説する。

図1 ヘルパーT細胞の分化機構

1. Th1細胞・Th2細胞と歯周炎

Th1細胞およびTh2細胞が産生するサイトカインの歯周炎病変局所における存在は20年ほど前より明らかとされてきた。FujihashiらはIFN-γ mRNA発現CD4陽性細胞は歯周炎組織に存在するが,IL-4 mRNA発現CD4陽性細胞は存在しなかったと報告している5)。Takeichiらも歯周炎組織から分離したT細胞の多くがIFN-γ mRNAを発現している事を示している6)。一方,Yamazakiらは免疫組織化学的解析を用い歯周炎組織においてIL-4が最も顕著であるサイトカインである事を報告している7)。このように,歯周炎におけるTh1/Th2関連サイトカイン発現に関しては様々な報告があり不明な点が多かった。私が研究を始めた当初CC chemokine receptor(CCR)58)およびCXC chemokine receptor(CXCR)39)がTh1細胞に,CCR310),CCR411)ならびにCCR811)がTh2細胞に有意に発現しており,そのリガンドであるケモカインがTh1細胞およびTh2細胞の浸潤・集積に関与している事が明らかとなった。そこで我々はそれらのケモカインレセプターを発現している細胞が歯周炎病変局所に存在するかどうかを確認するために検討を行った。免疫組織化学的解析を行った結果,CCR5陽性細胞あるいはCXCR3陽性細胞が歯周炎組織に多く浸潤しており,CCR4陽性細胞の浸潤はわずかである事が明らかとなった。この結果よりTh1細胞が歯周炎組織で多く存在する事が示唆された12)

Th1細胞あるいはTh2細胞の浸潤を制御するケモカインの歯周炎病変局所での発現や産生機構に関する結果が我々の論文も含め報告されている。CCR5のリガンドであるCC chemokine ligand(CCL)5は健常者と比較して歯周炎患者の歯肉溝浸出液で高濃度に認められている13)。また,ヒト歯肉線維芽細胞をTNF-αで刺激するとCCL5発現が誘導される事も明らかとなっている14)。さらにKawaiらはTh1細胞の選択的な血管外遊出にCCL5が関与している事を報告しており15),歯周炎におけるCD4陽性CCR5陽性細胞つまりTh1細胞の浸潤にCCL5が積極的に関わっている可能性が高いと思われる。他のCCR5のリガンドとしてCCL3の研究もなされている。Gemmellらは歯周炎組織においてCCL3陽性細胞が認められ,CCL5陽性細胞より多いことを報告している16)。また,GarletらはCCL3発現が侵襲性歯周炎組織で多く認められる事も報告している。さらにin vitroの研究により,LPSやIL-1βが歯肉上皮細胞のCCL3発現を誘導する事17)や,Cytomegalovirus感染が歯肉線維芽細胞のCCL3産生を上昇させる事も報告されている18)。ゆえにCCL3もCD4陽性CCR5陽性細胞の歯周炎組織への浸潤への関与が示唆される。

また,CXCR3のリガンドであるCXC chemokine ligand(CXCL)10の歯周炎における発現に関する報告もなされている。GarletらはCXCL10発現が侵襲性歯周炎組織で上昇していたことを報告している19)。さらにTaubmanらもCXCL10が慢性歯周炎の炎症歯肉組織において発現上昇が認められる事を報告している2)。そこで我々は歯周炎組織におけるCXCL10産生機構を明らかとするために歯周組織構成細胞を用いて研究を行ってきた。その結果,Th1サイトカインであるIFN-γ刺激によりヒト歯肉線維芽細胞のCXCL10産生が誘導される事を明らかとした20)。また,同時にIL-1β,TNF-α,tumor necrosis factor superfamily(TNFSF)14などの炎症性サイトカインを加えると相乗的にCXCL10産生が増加した20,21)。さらにTh2サイトカインであるIL-4,IL-13を加えるとCXCL10産生は抑制される事も明らかとした20)。ゆえに歯周炎病変局所においてはTh1サイトカインであるIFN-γが存在すると歯周組織構成細胞にTh1ケモカインであるCXCL10が産生されTh1細胞が局所に集積する。さらに炎症が増悪し,炎症性サイトカイン産生が起こると炎症局所においてCXCL10の産生が亢進されTh1細胞が多量に浸潤し歯周組織破壊が進行する可能性が考えられる。さらに,Th2細胞はIL-4やIL-13を産生する事によりCXCL10発現を抑え,Th1細胞の過剰な集積を防ぐ事ができる事が示唆された(図2)。CXCL11の歯周炎での発現・産生に関しての報告は少ないが,我々はIFN-γが誘導したヒト歯肉線維芽細胞のCXCL11産生をTNFSF1421)やmuramyldipeptide22)が増強する事を明らかとしており,CXCL10だけではなくCXCL11もCXCR3陽性細胞の歯周炎病変局所への浸潤に関与している可能性が考えられる。CXCL9に関しては口腔上皮細胞や線維芽細胞に産生能があるという報告はあるが,歯周組織構成細胞に関しての報告はなく,検討が必要であろうと考えられる。

Th2ケモカインの歯周組織発現に関してはCCR3リガンドのCCL11とCCR4リガンドのCCL17に関する報告がなされている。CCL11は歯周炎患者の歯肉溝浸出液で認められ歯周炎治療を行うとその量は減少する事が報告されている23)。しかしながら,同時にCCL3やCCL5濃度も減少しており,炎症が軽減されるとTh2ケモカインだけでなく,Th1ケモカイン量も減少するようである。我々とCardosoらは歯周炎組織においてCCL17発現が健常者歯肉と比較し上昇する事を報告している24,25)。また,我々はCCL11とCCL17産生機構を明らかとするために歯周組織構成細胞を用い検討した。CCL17産生はTNF-αとIL-4あるいはIL-13存在下においてヒト歯肉線維芽細胞で誘導された24)。また,ヒト歯根膜由来細胞をIL-1βとIL-4あるいはTNF-αとIL-4で刺激すると多量のCCL11産生が誘導された。IL-4単独刺激では少量のCCL11産生が認められたのみであった26)。これらの結果より歯周炎局所で炎症が増悪し炎症性サイトカインが産生され,さらにそこにTh2細胞が存在しIL-4を産生するとTh2ケモカイン(CCL11,CCL17)産生が歯周組織構成細胞に誘導されTh2細胞浸潤・集積が起こることが示唆された(図3)。

これらの結果より歯周炎病変局所のTh1/Th2バランスは炎症局所に存在する様々なサイトカインバランスによって決定され,歯肉線維芽細胞や歯根膜細胞など歯周組織構成細胞によるケモカイン産生によりTh1/Th2バランスが決定されている事が示唆された。

図2 我々の研究から考えられる歯周炎病変局所へのTh1細胞浸潤機構
図3 我々の研究から考えられる歯周炎病変局所へのTh2細胞浸潤機構

2. Th17細胞と歯周炎

Th17細胞はTh1細胞やTh2細胞と異なる新規のヘルパーT細胞集団として2005年に報告された27)。Th17細胞はIL-17を産生することを特徴としており,他のサブセットと比較しRANKL発現が高いこと,IL-17が炎症組織中の骨芽細胞や線維芽細胞のRANKL発現を誘導し破骨細胞の活性化に関与していることからTh17細胞は関節リウマチなどの炎症性骨吸収に積極的に関与していることが報告された28)。歯周炎においては歯周炎組織中においてIL-17発現が上昇することは知られていたが,その産生細胞に関しては不明な点が多かった。また,Th17細胞の存在の報告後,2007年にHirotaらはTh17細胞にCCR6が高発現しており,そのリガンドであるCCL20がTh17細胞の集積,浸潤に関与していることを明らかとした29)。我々はすでにCD4陽性CCR6陽性細胞が歯周炎病変局所に多く浸潤していることを報告していたが,それらの細胞のサブセットに関して当時は不明であった30)。しかしながら,Hirotaらの報告から当時不明であったCD4陽性CCR6陽性細胞がTh17細胞である可能性が高いと思われた。2009年にはCardosoらが免疫組織化学的解析を用い,IL-17を産生するCD4陽性細胞の歯周炎組織中での存在を報告し,Th17細胞の歯周炎での存在を明らかとした31)

また,我々はTh17細胞の浸潤・集積に関与するケモカインであるCCL20に着目し研究をおこなってきた。免疫組織化学的解析ならびにRT-PCR法により正常歯肉組織と比較し,歯周炎組織においてCCL20のmRNA発現ならびに蛋白発現が上昇していることを明らかとした32)。また,炎症性サイトカインであるIL-1β,TNF-αならびにEscherichia coli LPSがヒト歯肉線維芽細胞のCCL20産生を誘導することを明らかとし,歯周組織構成細胞が積極的にTh17細胞浸潤に関与していることを明らかとした32)。さらに,我々は歯周炎組織に存在するサイトカインを含む様々な因子がCCL20産生を調節していることを報告してきた。Th17細胞はIL-17だけではなくIL-22産生もすることが知られている。そこでIL-17およびIL-22のCCL20産生に与える影響を調べたところIL-1βが誘導したヒト歯肉線維芽細胞のCCL20産生を相乗的に増強することが明らかとなった33,34)。さらに,我々が歯周炎組織での存在を明らかとした新規TNF superfamilyであるtumor necrosis factor-like weak inducer of apoptosis(TWEAK)の影響に関しても調べたところTWEAKはIL-1βが誘導したCCL20産生を増強した35)。さらに,炎症局所では組織構成細胞や免疫担当細胞の壊死が起こっていることが考えられるため,死細胞が放出するRNAを認識するtoll-like receptor(TLR)3のリガンドに関して調べたところIL-1βが誘導するヒト歯肉線維芽細胞のCCL20産生を増強することも明らかとなった36)。また,Th17細胞の分化に関与し歯周炎での発現上昇も報告されている炎症性サイトカインであるIL-6はIL-6 receptor存在下においてIL-1β刺激ヒト歯根膜由来細胞のCCL20産生を増強した37)。一方,Th1が主に産生するサイトカインであるIFN-γはIL-1βが誘導したヒト歯肉線維芽細胞のCCL20産生を抑制した(図432)。我々の報告以外にも神経ペプチドであるsubstance Pがヒト歯根膜細胞のCCL20産生を誘導するという論文38)や,Protease-activated receptorsのリガンドが歯肉上皮細胞のCCL20産生を上昇させるという論文39)もあり,歯周炎病変局所では線維芽細胞,歯根膜細胞,歯肉上皮細胞などの歯周組織構成細胞からのCCL20産生が様々なサイトカインや細菌由来因子により複雑に調節され,Th17細胞浸潤がmodulateされていることが想像される。歯周炎にはさらに多くの炎症性メディエーターが存在し,前述の細胞以外にもマクロファージや樹状細胞等の免疫担当細胞などが存在することよりTh17細胞の歯周炎病変局所への浸潤メカニズムを明らかにするにはさらなる研究が必要であろうと思われる。

図4 我々の研究から考えられる歯周炎病変局所へのTh17細胞浸潤機構

3. 制御性T細胞と歯周炎

制御性T細胞(regulatory T細胞,Treg細胞)は免疫応答の抑制的制御や,免疫の恒常性維持で重要な役割を果たすことが知られている。炎症性疾患においては過剰な炎症を抑制する働きを担っていると考えられている。歯周炎においてはCardosoらがCD4陽性CD25陽性Treg細胞の歯周炎組織中における存在を明らかとしている25)。また,彼らは歯周炎に存在するTreg細胞がCCR4を高発現している事からそのリガンドであるCCL22がTreg細胞の炎症局所への浸潤に重要であることを示唆している25)。さらに,Treg細胞を歯周炎治療に用いようとする研究も近年報告されており,マウスの歯周炎モデルにおいてCCL22がTreg細胞の歯周炎病変局所への浸潤に重要な役割を果たしており,Treg細胞浸潤が炎症性骨吸収を減少させたとの報告がある40)。ヒトにおいてもTreg細胞を効果的に炎症局所に浸潤させることができれば歯槽骨吸収を抑制できるかもしれない。

一方,forkhead box P3(Foxp3)を発現している制御性T細胞がTh17産生細胞に変化し,炎症性骨吸収を引き起こすという報告が近年なされた。Komatsuらは関節リウマチの炎症局所において滑膜線維芽細胞が産生するIL-6がFoxp3発現Treg細胞をIL-17の産生能があるFoxp3陽性細胞(exFoxp3Th17細胞)にconvertさせる事を報告している41)。また,exFoxp3Th17細胞はTh17細胞と比較してより破骨細胞活性化能が高く,CCR6を高発現している事も明らかとなっている41)。歯周炎病変局所においてもFoxp3陽性IL-17陽性細胞の存在が報告されており42),その細胞がexFoxp3Th17細胞である可能性も高いとも思われ,高い破骨細胞活性化能を有している可能性もある。また,我々が以前報告したCD4陽性CCR6陽性細胞がexFoxp3Th17細胞である可能性もあり,さらなる検討が必要であると考えられる。

4. ケモカイン産生制御に着目した歯周炎治療への応用

前述のように,歯周炎にはTh1細胞・Th2細胞・Th17細胞などのeffector T細胞が歯周炎病態形成に関与し,それらの浸潤に種々のケモカインが関与している事が示唆されている。我々は歯周炎病変局所でのケモカイン産生を調節できれば,effector T細胞の過剰な浸潤・集積を軽減する事により歯周炎の進行を防げる可能性があるのではないかとの仮説のもと,ケモカイン産生を抑制する物質に着目して検討を行ってきた。

茶に含まれるポリフェノールは抗癌作用,抗酸化作用,抗炎症作用など様々な生理活性作用がある事が明らかとなっており,様々な疾患の治療への応用が期待されている。我々はポリフェノールの中でも緑茶に含まれるカテキンならびに紅茶に含まれるテアフラビンに着目し歯周組織構成細胞のケモカイン産生に与える影響に関して検討を行ってきた。その結果,エピガロカテキンガレート(EGCG)ならびにエピカテキンガレート(ECG)はIL-17Aが誘導したヒト歯肉線維芽細胞のCCL20産生を抑制できる事を明らかとした43)。また,EGCGはoncostatin Mが誘導したヒト歯肉線維芽細胞のCXCL10産生も抑制した44)。さらに,EGCGはIL-1β/IL-4あるいはTNF-α/IL-4刺激が誘導するヒト歯肉線維芽細胞のCCL11産生も抑制した45)。これらの結果より,緑茶カテキンはある特定のケモカインを抑制するのではなく,多種のケモカインを抑制する事により歯周炎局所の炎症自体を軽減できる可能性が示唆された。In vivoの研究でもマウスの歯周炎モデルにおいて,LPSが誘導する歯槽骨吸収を緑茶カテキンが抑制したとの報告もあり46),緑茶カテキンは歯周炎治療の新しい薬剤の有力な候補として考えられる。また,我々は紅茶ポリフェノールであるテアフラビンの一種であるTheaflavin-3,3'-digallate(TFDG)がヒト歯肉線維芽細胞のoncostatin M誘導CXCL10産生を抑制できる事を発表した47)。TFDGはTNFSF14が誘導するヒト歯肉線維芽細胞のIL-6産生も抑制できる事も明らかとされており48),紅茶ポリフェノールも歯周炎の炎症軽減に使用できる可能性もある。In vivoの実験も含め,さらなる検討が期待される。

漢方薬は日本において様々な疾患治療に古くから用いられている。しかしながら,歯周炎治療に漢方薬を用いようとする試みは少なく,漢方薬を用いてT細胞の浸潤をコントロールしようとする研究はほとんどない。我々は漢方薬に用いられる生薬の一つである山梔子(クチナシ果実を乾燥させたもの)に含まれる生理活性物質であるgenipinに着目して検討を行った。その結果,genipinはIL-1βが誘導したヒト歯根膜由来細胞のCCL20産生を抑制した49)。近年,漢方薬に含まれる生理活性物質ではなく漢方薬自体を用いて歯周炎治療を行おうとするコンセプトのもと,基礎実験が報告されている。小柴胡湯や半夏瀉心湯はヒト口腔粘膜細胞の抗菌物質であるカルプロテクチン産生を誘導する事も近年明らかとされた50,51)。これらの研究結果より歯周炎治療に漢方薬を用いる事ができる可能性が示された。動物実験などによりさらなる検討が必須であると思われる。

おわりに

歯周炎病変局所へのリンパ球浸潤機構を解説するために,effector T細胞の浸潤をコントロールするケモカインの歯周炎病変局所での発現ならびに産生機構に関して我々の研究を中心に総説した。今回説明したケモカイン以外にもT細胞浸潤を調節するケモカインの歯周組織での発現は明らかとなっているが,その産生機構に関しては解明されていないものもある(表1)。また,歯周炎病変局所にはT細胞以外にもマクロファージ,樹状細胞,B細胞等多種類の免疫担当細胞が浸潤しているが,どのようなメカニズムで集積しているのか不明な点が多い。さらに今回紹介したTh1細胞,Th2細胞,Th17細胞,Treg細胞以外にもTh22細胞52)やTh9細胞53)など他のeffector T細胞も存在すること,さらにTh1サイトカインのIFN-γを産生できるTh17細胞が存在する事54)も近年報告されるなど,T細胞をめぐる知見は日々アップデートされている。それらの新しい情報をもとにし,歯周炎でどのような現象が起こっているかを調べる事は歯周病の病態を明らかとするためには必要不可欠であり,まだまだ明らかにされるべき事はつきないと思われる。我々も歯周炎における免疫の役割についてさらなる研究を行い,歯周病学の発展に貢献したいと考えている。

表1 歯周組織構成細胞におけるTh1細胞,Th2細胞およびTh17細胞浸潤に関与するケモカイン産生報告のまとめ

謝辞

稿を終えるにあたり,歯科保存学分野に入局以来,歯周炎に関する研究を続けさせて頂いている松尾敬志教授に心から感謝いたします。また,実験の方法論だけではなく,研究の厳しさから楽しさまで幅広く教えて頂いたフォーサイス研究所の河井敬久先生に深く感謝いたします。

最後に細川育子先生をはじめ私の研究活動を支えて頂いたすべての関係諸先生方に感謝いたします。

References
 
© 2015 by The Japanese Society of Periodontology
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