2017 Volume 59 Issue 3 Pages 125-132
MicroRNA(miRNA)は,長さ20~25塩基の1本鎖RNAで,標的遺伝子の発現を抑制するノンコーディングRNAであり,発生,形態形成,細胞増殖,ガン,炎症等の疾患に関与する1-6)。そこで,歯周炎の発症と進行に関係するmiRNAの解析およびそのメカニズムを解明するために,炎症歯肉と健康歯肉での遺伝子発現およびmiRNA発現量の違いについて解析を行った。中等度~重度慢性歯周炎患者の歯周外科手術時に,切除除去された上皮と結合組織を含む炎症性歯肉と,インプラント埋入または2次手術時に切除除去された炎症の無い歯槽堤歯肉から全RNAを抽出し,DNAマイクロアレイおよびmiRNAマイクロアレイを行った。マイクロアレイで発現の増減が認められた遺伝子およびmiRNAは,リアルタイムPCRで再解析を行った。炎症歯肉では,炎症性サイトカインであるinterleukin-1β(IL-1β),IL-1α,IL-6,エナメル芽細胞および接合上皮で発現するamelotinおよびodontogenic ameloblast-associated protein(ODAM)の遺伝子発現の増加,asporinおよびaggrecan遺伝子の発現減少が認められた7)。さらに,hsa-miR-150,hsa-miR-223,hsa-miR-200bの発現の増加と,hsa-miR-379,hsa-miR-199a-5p,hsa-miR-214の発現の減少が認められた8)。我々は,Toll Like Receptor 4(TLR4)遺伝子の3'側非翻訳領域(3'-UTR)の一塩基多型が,miRNAの結合を介してTLR4の発現量と歯周炎の発症に関連することを共同研究で以前に報告しており9),歯周炎発症と進行に重要なmiRNAと関連遺伝子を解析することで,新たな診断基準となる病因論の解明を目指したいと考える。
歯周炎は歯の支持組織の炎症性疾患であり,特異的細菌やウイルス感染によって,歯根膜の破壊や歯槽骨吸収が生じ,歯周ポケットを形成する10,11)。歯周炎の発症と進行には,細菌因子に加え宿主因子と環境因子がさらに関与し,細菌とその産生物に対する免疫応答の結果,産生された炎症性サイトカイン等が歯周組織の破壊に関与することが示唆されている10,12)。
miRNAは,1本鎖の長さ20~25塩基のノンコーディングRNAで,1000以上のmiRNAがヒトゲノムで同定されている1)。miRNAは,複数のmRNAの3'-UTRに部分相補的に結合し,mRNAの翻訳を抑制することで,様々な遺伝子発現を抑制する1,2)。また,miRNAは細胞の発生,増殖,分化,ガン,リウマチや炎症などの多くの生命現象の調節に関与することが報告されている3-6)。
歯周病とmiRNAの関係については,健康歯肉と歯周炎罹患歯肉中でのmiRNAの発現を比較検討した我々の報告を含む4つの論文が報告されている8,13-15)。さらに,肥満者の歯周炎歯肉中では,健常者と比べで幾つかのmiRNAの発現量が上昇することが報告された16,17)。また,miR-146が歯周炎の病態を調節し,歯根膜細胞の分化誘導を示唆する論文が報告されている4,18,19)。
本レビューでは,歯周病とmiRNAに関する過去の研究と我々の最近の結果とあわせて紹介したい。
中国のShanghai Jiao Tong大学附属Ninth People's Hospitalのグループは,10名の歯周炎患者の5 mm以上の歯周ポケット部位からフラップ手術時に採取した炎症歯肉と,10名の健康歯周組織の3 mm未満のポケット部位の歯冠長延長術時に採取した健康歯肉を使用してmiRNAマイクロアレイ(miRCURYTM array microarray kit,v.11.0,Exiqon,Denmark)を行った。91のmiRNAが,健康歯肉に比べて炎症歯肉で発現が増加し,その中の5つのmiRNAは5倍以上発現が増加した。一方,34のmiRNAは2~5倍の範囲で発現が減少した。増加した代表的miRNAは,hsa-miR-126*,hsa-miR-20a,hsa-miR-142-3p,hsa-miR-19a,hsa-let-7f,hsa-miR-203,hsa-miR-17,hsa-miR-223,hsa-miR-146b,hsa-miR-146aであり,減少した代表的miRNAは,hsa-miR-155,hsa-miR-205であった。上記12のmiRNAの増減は,リアルタイムPCRによる解析でマイクロアレイの結果が再確認できた。hsa-miR-146a,hsa-miR-146bおよびhsa-miR-155は,炎症疾患におけるToll-like receptor(TLR)の作用に関係するmiRNAであるため,7名の患者の健康および炎症歯肉からのサンプルを使用してリアルタイムPCRを行い,3つのmiRNAの発現を解析したところ,hsa-miR-146aとhsa-miR-146bの発現は炎症歯肉で有意に増加し,hsa-miR-155の発現は有意に減少していた13)。
韓国のPusan National Universityのグループは,歯周炎患者の5 mm以上の歯周ポケット部位から歯周外科手術時に採取した炎症歯肉と,健康歯周組織の3 mm未満のポケット部位の歯冠長延長術時に採取した健康歯肉を使用し(論文中に患者人数の記載なし),miRNAマイクロアレイ(RT2 miRNA PCR array system,SABiosciences,Frederick,MD,USA)を行った。6つのmiRNA(let-7a,let-7c,miR-130a,miR-301a,miR-520d,miR-548a)が炎症歯肉で発現が8倍以上増加し,21のmiRNA(let-7b,let-7d,let-7e,let-7f,let-7i,miR-101,miR-106b,miR-125a,miR-125b,miR-130b,miR-181b,miR-19b,miR-211,miR-23a,miR-23b,miR-30a,miR-30d,miR-340,miR-34c,miR-381,miR-548d)が4倍以上増加した。以上の中で,炎症関連miRNAであるmiR-181b,miR-19b,miR-23a,miR-30a,let-7a,miR-301a,miR-520d-3P,miR-548a-3Pの8つを選んでリアルタイムPCRで再解析を行った結果,miR-181b,miR-19b,miR-23a,miR-30a,let-7a,miR-301aの発現の増加が認められたことから,上記6つのmiRNAが炎症と関連する可能性が高いと結論付けた14)。
米国のColumbia University College of Dental Medicineのグループは,86名の歯周炎患者からの198の歯肉サンプル(内訳は,bleeding on probing(BOP)があり,5 mm以上の歯周ポケット部位からの158の炎症歯肉サンプルと,BOPが無く,4 mm以下のポケット部位からの40の健康歯肉サンプル)を使用して,miRNAマイクロアレイ(Agilent Platform with microarrays carrying probes for 1,205 human and 144 human viral miRNAs,Agilent Technologies,CA,USA)を行った。159のmiRNAが健康歯肉に比べて炎症歯肉で発現量が有意に増減し,その中でhsa-miR-451,hsa-miR-223,hsa-miR-486-5p,hsa-miR-3917の4つのmiRNAが炎症歯肉で最も発現が増加していた。一方,hsa-miR-1246,hsa-miR-1260,hsa-miR-141,hsa-miR-1260b,hsa-miR-203,hsa-miR-210,hsa-miR-205*の7つのmiRNAの発現が減少していた15)。
我々は,3名の慢性歯周炎患者(6 mm以上の歯周ポケットと6 mm以上のクリニカルアタッチメントレベルを2か所以上有する患者)のフラップ手術の際に採取した炎症歯肉と,3名のインプラント手術時に切除除去した歯槽堤歯肉を使用して,miRNAマイクロアレイ(human miRNA microarray 8×15k kit,Agilent Technologies,CA,USA)を行った。17のmiRNAが炎症歯肉で発現量が増加し,22のmiRNAが炎症歯肉で発現量が減少した(図1)。その中で,hsa-miR-150,hsa-miR-223,hsa-miR-200bの発現量が最も増加し,hsa-miR-379,hsa-miR-199a-5p,hsa-miR-214の発現量が最も減少し,上記のmiRNAの増減は,リアルタイムPCRによる解析で再確認できた(表1)。Ingenuity Pathway Analysis(IPA)解析の結果,hsa-miR-150,hsa-miR-223,hsa-miR-200bは,炎症疾患,生物負傷,異常,泌尿器疾患およびガンと関連していると考えられた8)。

炎症歯肉と非炎症歯肉を使用したmiRNAマイクロアレイの結果

炎症歯肉と非炎症歯肉で発現が増加または減少したmiRNAのリスト
歯周炎歯肉と健康歯肉,さらに肥満の有無により,歯肉中で発現するmiRNAの変化を定量miRNA PCRアレイで88の候補miRNAの中から解析した。肥満者(平均BMI 35.3 kg/m2 ± 4.5)の健康歯肉では,miR-18aとmiR-30eの発現上昇が認められ,肥満でない(平均BMI 25.1 kg/m2 ± 2.5)患者の歯周炎歯肉では,miR-30eとmiR-106bの発現上昇が認められた。肥満者の歯周炎歯肉では,肥満者の健康歯肉および肥満のない歯周炎患者歯肉に比べてmiR-15a,miR-22,miR-30d,miR-103,miR-106b,miR-130a,miR-142-3p,miR-185,miR-210の発現上昇が認められた。以上の結果から,肥満は歯周炎組織でのmiRNAの発現量を変化させ,歯周炎の病態の変化に関与することを示唆していた16)。
BMIが20-24.9 kg/m2の正常体重または30 kg/m2以上の肥満者の歯周炎患者から歯肉組織を歯周外科手術時に採取し,miRNAアレイ(Affymetrix GeneChip miRNA 3.0 arrays)を行った。肥満者の歯周炎歯肉中では,肥満のない歯周炎歯肉に比べて13個のmiRNAの発現が増加し,22個のmiRNAの発現が減少した。その中から増加(miR-323a-3p,miR-200b-5p,miR-188-5p)および減少(miR-4721,miR-577およびmiR-196a)したmiRNAを,変化量とP valueから3つずつ選び,リアルタイムPCRで再解析を行った。miR-200bは,肥満者の歯周炎歯肉中で有意に発現が増加し,miRNAアレイで発現が減少したmiR-4721とmiR-577は,リアルタイムPCRの結果では,有意な発現増加が認められた。残りの3つのmiRNAは,有意な変化は無かった。51個のmiR-200bのターゲット遺伝子を機能解析したところ,その中の24個が細胞分化,9つが上皮細胞分化,7つが幹細胞分化,11が血管新生,6つが上皮細胞遊走,18が免疫,19が転写,33が刺激への細胞反応,32がシグナリングに関係する遺伝子であった。さらに,肥満者の歯周炎歯肉中でのmiR-200bと転写因子であるZEB2とGATA2およびZEB1とKDRの遺伝子発現に有意な負の相関が認められた17)。
ApoE-/-マウスにPorphyromonas gingivalis,Treponema denticola,Tannerella forsythiaの3菌種を隔週4回ずつ,16週間,合計32回口腔内感染させ,16週後に上顎と脾臓でのmiRNAの発現変化を解析したところ,両臓器でmiR-146aの発現量の有意な増加が認められた。一方,miR-132およびmiR-155の発現量に変化は認められなかった。TNF-αの発現は脾臓で増加し,IL-1βの発現は,上顎と脾臓の両方で増加した。ヒトTHP-1単球細胞を上記3菌種で刺激すると,miR-146aの発現量の有意な増加が認められた。miR-146aはadaptor kinases IL-1 receptor-associated kinase 1(IRAK-1)とTNF receptor-associated factor 6(TRAF6)の発現を抑制し,慢性歯周炎での病態を直接または間接的に調節していると考えられた4)。
ヒト歯肉線維芽細胞をP. gingivalisから抽出したLPSで刺激すると,miR-146aとmiR-146b-5pの発現量の増加がmiRNAマイクロアレイで認められ,リアルタイムPCRによる再解析でも発現量の増加が再確認できた。歯肉線維芽細胞でmiR-146aまたはmiR-146b-5pの発現を抑制すると,IL-1β,IL-6およびTNF-αのタンパク発現量およびIRAK-1のmRNAとタンパク発現量が増加した。一方,TRAF6のmRNAとタンパク発現量は変化しなかった。IRAK-1の3'-UTRを挿入したルシフェラーゼコンストラクトの転写活性が,両miRNAを過剰発現させると抑制されることから,miR-146aとmiR-146b-5pはIRAK-1の3'-UTRに結合することで,IRAK-1の発現を抑制すると考えられた。以上の結果から,miR-146aとmiR-146b-5pは歯周炎の炎症を負に調節していることが示唆された18)。
Telomerase reverse-transcriptase遺伝子を導入することで不死化させた歯根膜細胞を300 μMまたは500 μMアスコルビン酸,100 mM β-グリセロリン酸を含有した培地で10日間培養するとalkaline phosphatase(ALP),osteopontin(OPN),osteocalcin(OC)およびperiostin(PON)のmRNA量の増加が認められたが,石灰化結節の形成は認められなかった。300 μMアスコルビン酸存在下で不死化歯根膜細胞を培養すると,ALPタンパク質の発現が増加し,コンフォーカル顕微鏡観察すると,歯根膜細胞表面にALPタンパク質が認められた。さらに,miR-146a発現量の増加が認められた。不死化歯根膜細胞でmiR-146aを過剰発現させるとALP,OPN,OCおよびPONのmRNA量の増加とALPおよびOPNタンパク質の発現増加を認め,細胞増殖の遅延と石灰化結節形成が観察された。miR-146aを過剰発現させた不死化歯根膜細胞では,IRAK-1とTRAF6のタンパク質発現量の減少が認められたことから,miR-146aはNF-κBシグナルを抑制して,歯根膜細胞の分化を促進していることが示唆された19)。
我々は,miR-223と歯周病の関係に注目し研究を行った。歯肉線維芽細胞を,IL-1β(1 ng/ml),IL-6(1 ng/ml)およびTNF-α(10 ng/ml)で24時間刺激すると,歯肉線維芽細胞でのmiR-223発現量の増加が認められた。歯肉線維芽細胞にmiR-223発現プラスミドを導入すると,コントロールプラスミドを導入した歯肉線維芽細胞と比べて,IL-1β mRNA量の増加が認められ,さらにIL-1βまたはTNF-αで24時間刺激すると,両サイトカイン刺激で増加したIL-1β mRNA量がmiR-223過剰発現によりさらに増加した(図2A)。歯肉線維芽細胞にネガティブインヒビターまたはmiR-223インヒビターを導入し,IL-1βまたはTNF-αで刺激すると,ネガティブインヒビターを導入した細胞でIL-1β mRNA量の増加が認められ,miR-223インヒビターを導入すると,IL-1βまたはTNF-α刺激で増加したIL-1β mRNA量は有意に部分抑制された(図2B)。歯肉線維芽細胞にコントロールまたはmiR-223発現プラスミドを導入し,IL-1βまたはTNF-αで24時間刺激すると,IL-1β刺激で増加したIL-1βタンパク質発現量はmiR-223過剰発現でさらに増加した。一方,TNF-α刺激で増加したIL-1βタンパク質発現量はmiR-223過剰発現では変化しなかった(図3A)。Inhibitor of kappa-B kinase α(IKKα,別名conserved helix-loop-helix ubiquitous kinase(CHUK))およびMAPK phosphatase-5(MKP-5,別名dual specificity phosphatase 10(DUSP10))は,miR-223の標的遺伝子であり,両遺伝子とも3'-UTR配列中にmiR-223結合配列を有する。歯肉線維芽細胞をIL-1βで刺激してもIKKα mRNA量は変化しなかったが,TNF-αで24時間刺激すると,IKKα mRNA量は有意に減少した。しかしmiR-223を過剰発現してもIKKα mRNA量は変化しなかった(図3B)。歯肉線維芽細胞をIL-1βまたはTNF-αで24時間刺激すると,MKP-5 mRNA量は増加し,miR-223の過剰発現によりMKP-5 mRNA量は有意に減少した(図3C)。ウエスタンブロットの結果,歯肉線維芽細胞でのIKKαタンパク質発現量は,IL-1βおよびTNF-α刺激で減少し,miR-223の過剰発現によりさらに減少した。p38 MAPKリン酸化はIL-1βおよびTNF-α刺激で増加するが,miR-223の過剰発現でさらに増加した20)。以上の結果から,miR-223は,歯周組織において炎症性サイトカインの発現をIKKαおよびMKP-5を介して調節していると考えられた。

A:IL-1βmRNA発現量に対するmiR-223の影響。歯肉線維芽細胞にコントロールプラスミドまたはmiR-223発現プラスミドを導入し,IL-1β(1 ng/ml)またはTNF-α(10 ng/ml)で24時間刺激を行った。B:歯肉線維芽細胞にネガティブインヒビターまたはmiR-223インヒビターを導入し,IL-1βまたはTNF-αで24時間刺激した細胞でのIL-1βmRNA量の変化。

A:IL-1βタンパク質発現量に対するmiR-223の影響。歯肉線維芽細胞にコントロールプラスミドまたはmiR-223発現プラスミドを導入し,IL-1β(1 ng/ml)またはTNF-α(10 ng/ml)で24時間刺激を行い,ELISAにて培地中のIL-1βタンパク質量を定量した結果。B:IKKα mRNA発現量に対するmiR-223の影響。歯肉線維芽細胞にコントロールプラスミドまたはmiR-223発現プラスミドを導入し,IL-1β(1 ng/ml)またはTNF-α(10 ng/ml)で24時間刺激を行った。C:MKP-5mRNA発現量に対するmiR-223の影響。歯肉線維芽細胞にコントロールプラスミドまたはmiR-223発現プラスミドを導入し,IL-1β(1 ng/ml)またはTNF-α(10 ng/ml)で24時間刺激を行った。
miRNAマイクロアレイ解析の結果8),炎症歯肉で発現が増加した3種類のmiRNA(miR-223,miR-150およびmiR-200b)に焦点を絞り,炎症組織での役割を解明したいと考える。miR-223は,血小板から分泌され,終末糖化産物により誘導される血管内皮細胞のアポトーシスを引き起こし,ガン,炎症,2型糖尿病,リウマチ,自己免疫性疾患等に関与することから21-26),歯周病への関与が示唆される。miR-150の過剰発現は,インバリアントNKT(iNKT)細胞の減少を引き起こす。リウマチ,シェーグレン症候群,全身性エリテマトーデス,全身性強皮症等の自己免疫性疾患では,iNKT細胞の減少が認められることから,miR-150の自己免疫性疾患への関与が示唆される27-30)。miR-200bは,肥満者の歯周炎歯肉中で有意に発現が増加していた17)。2型糖尿病マウスの血管平滑筋細胞(VSMC)では,炎症性サイトカインとmiR-200の発現が増加しており,miR-200bはE-box結合転写抑制転写因子であるZeb1を抑制し,炎症の進行に関与すると考えられる31,32)。以上の研究成果を基に,miRNAマイクロアレイと同じ全RNAを使用したDNAマイクロアレイの結果を総合し,炎症歯肉組織におけるmiRNAとmiRNAに関連した遺伝子を同時に解析し,歯周外科手術時に切除除去した炎症性歯肉中のmiRNAの発現をin situハイブリダイゼイションで,miRNAの作用で発現が変化する関連タンパク質発現を免疫組織化学で検索することで,miRNAおよびmiRNAの作用で発現が変化する遺伝子またはタンパク質の歯肉組織中での局在および発現する細胞等を明らかにしたいと考える。新たな視点に立った歯周病の病態の理解が,新しい治療および予防法の開発に繋がることが期待される。
今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。