2018 Volume 60 Issue 1 Pages 4-12
近年,欠損補綴にインプラント治療を用いることが多くなり,その予知性の高さから多くの患者がその恩恵を受けている。歯科用インプラント材の生産と輸入数量を薬事工業生産動態統計調査より見てみるとH14年で50万個程度であったのが,H25年で116万個と10年で約2倍に増加したことがわかる。しかし埋入したインプラント体にも破損や脱落が生じることもある。その中で,天然歯と同様に,周囲組織炎症の病態を呈するインプラント周囲疾患に罹患すると,初期の頃はインプラント周囲の組織に発赤や出血が認められる程度であるのが,進行するとインプラント周囲の骨吸収や排膿を伴い,脱落に至ることもある。
インプラント周囲疾患は,インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎に分けられ,6th European Workshop on Periodontologyで,インプラント周囲炎は支持骨まで炎症が波及し支持骨を喪失するものと定義された1)。この罹患率は,インプラント埋入患者の20%から56%程度に認められると報告されている2,3)。本学会が調査した結果ではインプラント周囲炎の罹患率は9.7%であった4)。インプラント周囲炎の原因の一つとしてプラーク・バイオフィルムがある5,6)。これに似た疾患は整形外科のインプラントにおける人工関節周囲感染症として存在し,バイオフィルムが原因と考えられている7,8)。
一方で,インプラントの表面性状も時代とともに変化している。初期のインプラントは平滑な表面性状を呈していたが,チタン表面の加工技術の進歩により表面の凹凸を付与した粗面加工型が多くなり,これによりオッセオインテグレーションを早期に獲得し,即時荷重が可能となった。
チタンは表面自由エネルギーが高いことから細菌付着が多い金属であり9),サンドブラスト酸処理(SLA)が施された粗面では,さらに細菌が付着しやすくなった10,11)。
歯周炎治療では,ルートプレーニングを行うことで汚染したセメント質を除去することができる。その結果,付着の獲得または再生が可能となる。しかし汚染したインプラント体表面をはぎとることは困難で,たとえそれができたとしても再オッセオインテグレーションを獲得するのは難しい。現在のところ,汚染したインプラント表面のデブライドメントは,超音波スケーラーやAir-abrasive device,チタン製回転ブラシ,Er:YAGレーザー等が,単独,またはコンビネーションで用いられており,インプラント体表面の除染を目的とした術式や方法は確立されていない。
そこで本稿では,現在インプラント表面の清掃に使用されている器具の特徴を示すとともに,バイオフィルム除去を目的として当講座で行ってきた医療機器開発を紹介する。
インプラント周囲炎患者から脱落したインプラント体表面をSEMで観察すると細菌塊の付着が観察される(図1)。歯科補綴で使用している金属は材料によって細菌の付着しやすさが異なる。表面粗さを同程度に研磨した純チタン,コバルトクロム,金銀パラジウム合金,白金加金を対象に,ヒト口腔内でバイオフィルムの付着を比較すると,純チタンはコバルトクロム,金銀パラジウム合金よりバイフィルムが付着しやすい材料であった12)。また,埋入手術を行ったチタンインプラントでは術後30分で細菌の付着が確認され,術後1週間で細菌はさらに増加した13)。チタン表面に対する細菌の付着には,チタン表面の自由エネルギーと表面加工(表面粗さ)が関係している。表面自由エネルギーが高いと細菌の付着数は増加し,シリコンコートにより表面自由エネルギーを低下させるとプラーク形成量は低下する14,15)。チタン表面においても表面自由エネルギーが高いアバットメントと低いアバットメント(テフロン加工)では,後者において歯肉縁下および縁上プラークの付着が少ないことが確認されている16)。
粗面加工されたインプラントでは,機械研磨インプラントに比べオッセオインテグレーションが強固となるため,近年のインプラントフィクスチャーは粗面加工が施されている17)。表面粗さの異なる2種類のアバットメント(Smooth:Ra0.35 μmとRough:Ra0.81 μm)においてプラーク形成量を比較した結果,Rough表面において成熟したプラークが25倍多く観察された18)。表面粗さが大きくなると,表面自由エネルギーは大きくなるため骨芽細胞の増殖に有利に働き,早期のオッセオインテグレーションの獲得が可能となる。しかし,インプラント粗面が口腔内に露出すると,一転して細菌付着の足場と化してしまうため,常に表裏一体の材料であることを意識していなければならない。
脱落したインプラント体
(a)54歳の女性。エックス線写真から下顎左側第二第臼歯部インプラント周囲で骨吸収が観察された。
(b)インプラントフィクスチャーの一部が口腔内に露出しているのが観察された。
(c)撤去したインプラントフィクスチャー。
(d)脱落したインプラントのアバットメント部とフィクスチャー部をSEMで観察すると,チタン表面上に細菌塊が観察された。
インプラント表面のデブライドメントには,金属やプラスチックスケーラー,超音波スケーラー,ラバーカップ研磨,エアアブレーシブおよびチタン製回転ブラシなどを用いる。
1) 超音波スケーラーの効果超音波スケーラーは,主にスケーラーチップの振動による機械的なチッピング作用によって歯垢,歯石を除去する。摩擦熱の防止と治療部位の洗浄のためにチップ上を水が流れ,スケーラーチップの振動により周りにキャビテーション気泡が生成される。超音波スケーラーによるキャビテーションの発生は,スケーラーチップの振動・振幅に左右される19)。スケーラーチップの振動変位は,細い形状の方が大きく,幅の広い形状は小さいため,先端の細いチップはキャビテーション作用によるバイオフィルムの除去効果も期待できる20)。超音波スケーラーのキャビテーション作用を期待するには,設定パワー,振幅方向,先端形状(幅),角度を考慮することが重要である。また,超音波スケーラーの振動子は,ピエゾ様式とマグネット様式の2種類があり,ピエゾ様式の振動運動は直線的な振幅運動であるのに対して,マグネット様式は楕円運動であり,各々スケーラーチップの作業面が異なる。そのため,術者側は使用している超音波スケーラーがどちらの様式かを理解している必要がある。
スケーラーチップの材質はステンレス製が一般的であるが,近年,インプラント表面へのダメージを少なくする目的でプラスチック製,炭素繊維製やチタン製の物が開発されている(図2)。
14名のインプラント患者でアバットメントに付着した歯石と歯垢をピエゾ式超音波スケーラーで除去する際に,炭素繊維スケーラーチップ,PEEK製スケーラーチップ,ステンレス製スケーラーチップでの除去効果を比較した。その結果,3種類のスケーラーチップともに歯石,歯垢の除去効果が示された(有意差なし)。しかし,術後のアバットメント表面ではステンレス製スケーラーチップによる表面の損傷が観察された21)。またサンドブラスト酸処理したチタンディスクにおけるバイオフィルムに対しては,PEEK製スケーラーチップや炭素繊維スケーラーチップよりステンレス製スケーラーチップの方が有利であるという報告もある22)。
超音波スケーラーチップの振幅は,設定パワーを上げることで,振幅が大きくなり,強固に付着している歯石を除去できるが,その反面,表面をキズつけやすくすることにもなる。超音波スケーラーのステンレス製チップとプラスチック製チップのチタン表面への影響を観察した結果,ステンレス製チップは,表面粗さを2倍増加させた23)。ステンレス製スケーラーチップとプラスチック製スケーラーチップは,チタン表面への接触圧と設定パワーの増加とともにチタン表面に凹みを形成させ,プラスチック製スケーラーチップでは,溶けたプラスチック片が凹み内に残留したことも観察されている24)。
89名のインプラント周囲粘膜炎患者を対象に,プラスチック製超音波スケーラーチップ,チタン製キュレット,エアアブレーシブ(グリシンパウダー)またはラバーカップで治療した結果,すべての方法で術前と比較して炎症状態は改善した。その中で特に,プラスチック製超音波スケーラーチップとラバーカップは有効であった25)。
非金属性のスケーラーチップは金属製スケーラーチップと同等のバイオフィルム除去効果があると考えられるが,チタン表面への損傷を考慮すると,チタン表面に対しては非金属性スケーラーチップを用いる方が良いといえるかもしれない。
インプラント周囲炎患者へのデブライドメントと各種超音波スケーラーチップ
(a)74歳の女性。10年前に下顎右側臼歯部にインプラント治療を行ったが,インプラント周囲炎に罹患した。
(b)PEEK製超音波スケーラーチップを用いてインプラント表面を清掃した。
(c)エックス線写真からはインプラント周囲炎による骨吸収像が観察される。
(d)各種超音波スケーラーチップ 左から,チタン製チップ(サテレック社),ステンレス製チップ(EMS社),PEEK製チップ(EMS社),炭素繊維チップ(サテレック社)
インプラント周囲炎により骨欠損が生じた場合,インプラント体表面から壊死組織を除去するためにチタン製の回転ブラシが用いられる。チタン製回転ブラシとインプラントフィクスチャーをデジタルマイクロスコープで観察すると,チタン製回転ブラシの先端径はφ50 μmでインプラントフィクスチャーのねじ山間の距離は600 μmである(図3),このため,チタン製回転ブラシは,フィクスチャーのねじ山間の底部までは届くことが想像されるが,中等度粗面加工(Ra:0.3 μm)が施された粗面底部までは届かないと考えられる。
チタンディスク上のバイオフィルムに対してステンレスキュレット,プラスチックキュレット,Er:YAGレーザー,およびチタン製回転ブラシの効果を比較した結果,チタン製回転ブラシが最も有効であったが,4種類の器具ともバイオフィルムを完全に除去することはできなかった。またチタンディスク表面の形態の変化がチタン製回転ブラシで確認された26)。一方で,チタン製回転ブラシは機械研磨およびSLA処理したチタン表面の粗さを変化させることはなかったという報告もある27)。6名のボランティアの口腔内でチタンディスク上に作成したバイオフィルムに対し,チタン製回転ブラシとステンレスキュレットの効果を比較した結果,バイオフィルムの残存率はチタン製回転ブラシで有意に低く,平均治療時間もチタン製回転ブラシで有意に短かった。またチタン製回転ブラシはチタン表面に変化をおよぼさなかった28)。
チタン製回転ブラシはインプラントチタン表面からのバイオフィルム除去に効果的な手段で,またインプラント表面に対しても損傷を与えにくい器具であると考えられる。
チタン製回転ブラシとインプラントフィクスチャーの関係
(a)チタン製回転ブラシ
(b)チタン製回転ブラシ先端の拡大写真。先端はφ50 μmである。
(c)インプラントフィクスチャー(ジェネシオPlus:ジーシー社製)のねじ山とねじ山の距離は600 μmである。
重炭酸ナトリウムを用いたエアアブレーシブは,歯周治療におけるプロフェッショナルケアの一つとして以前から利用されており,インプラント周囲炎患者のインプラント体に対しても用いられている。重炭酸ナトリウムは,アバットメントまたはチタンディスク上のバイオフィルム除去に有効であることを示す報告は多く存在する29-31)。しかし,重炭酸ナトリウムはチタン表面を損傷することも知られており,この結果,細菌の再付着や,細胞の付着に不利になることがある32)。これに対して,ハイドロキシアパタイト(HA)やβ-リン酸三カルシウム(βTCP),グリシンパウダーを用いたエアアブレーシブが近年登場した。HA単独群,HA+βTCP群またはグリシンパウダー群は,チタンディスク上のバイオフィルムを減少させたが,各群間に有意差は認められなかった33)。チタンディスク上のバイオフィルムを対象に重炭酸ナトリウム,グリシンパウダーまたはグリシンパウダー+βTCPのバイオフィルム除去効果を比較した結果,グリシンパウダーおよびグリシンパウダー+βTCPは重炭酸ナトリウムより有意に残存バイオフィルムを減少させた31)。
インプラントチタン表面へエアアブレーシブを用いる場合は,チタン表面に傷をつけにくく,術後のパウダーが残留しにくいグリシンパウダーやβTCPパウダーを用いるほうが好ましい。
インプラントチタン表面の清掃能力に関するレビューがある。これによると機械研磨加工,SLA加工およびTPS加工のチタン表面のバイオフィルムに対してエアアブレーシブが最も効果的な方法で,チタンブラシと非金属性の超音波スケーラーもその効果が証明された。しかし,非金属性のキュレットスケーラーとラバーカップはその効果が否定的であった34)。
インプラント表面の清掃が困難な理由は,チタンの特性である材質の硬さと微細な表面構造にある。汚染したチタン表面は天然歯のスケーリング・ルートプレーニングのように汚染部を容易に除去することができない。上述した方法においても,インプラント表面に付着したバイオフィルムを減少させることは可能であるが,完全には除去することは難しく,インプラントの粗面小窩内にバイオフィルムが残存する。このため,インプラント周囲炎の予防や治療には,インプラント表面に傷を与えず,バイオフィルムを除去する方法が求められている。
超音波洗浄は,水または溶媒中で高周波振動を加えることで,物体表面から不要な粒子を効率的に除去する。洗浄機構は,洗浄液内のキャビテーションおよび振動加速度に基づいている。100 kHz以下の周波数で動作する超音波洗浄は,主にキャビテーション機構に依存し,数ミクロン程度の大きさの粒子を除去するのに適している35)。300 kHz以上の非常に高い周波数による洗浄は,振動加速度に依存している36)。これらの周波数帯は,直径0.5 μm以下の粒子を除去することができる37)。
超音波は周波数が高くなると集束しやすい特徴があり,医療では集束超音波治療法(HIFU:High Intensity Focused Ultrasound)として体にメスを入れることなくガン細胞を破壊し高い治療効果を得ている。
超音波洗浄分野においても,集束型超音波洗浄方法として洗浄槽を必要とせず,水流に超音波エネルギーを載せる洗浄技術が確立されており,半導体洗浄などに利用されている。そこで,我々は,この非接触型の流水式超音波洗浄技術を医療に転用する目的で研究および開発を行ってきた。
洗浄装置はノズル先端から放射された流水に高周波数帯の超音波を重畳させて被検体表面を洗浄する方式で,放射された流水は超音波の伝搬と同時に剥離した細菌の輸送媒体として機能する。超音波の音場分布シミュレーションを行うと,振動子から30 mm以上離れたところに音圧の高い領域が予測された。これをもとに洗浄試作機(周波数345 kHz)を作成し,実際の音圧をハイドロフォンで測定すると,シミュレーションと同様な結果となった。そこで,ヒト口腔内でチタンディスク上に作成したバイオフィルムに対する効果を残存バイオフィルムの割合で評価すると,印加電力依存的に残存バイオフィルムが低下することが確認され,印加電力と残存バイオフィルムの割合の間に負の相関を示した。またバイオフィルムで表面を覆ったチタンディスクを超音波振動している流水で洗浄した後に試験表面をSEM観察および元素解析をした結果,術前ではTiの検出頻度が低かったが術後の表面では粗面加工されたチタン表面が露出し,表面の損傷も観察されず,Tiの検出頻度も増加した。一方で,口腔内組織に対する安全性を証明するため,ミニブタの歯肉と歯・歯髄を対象に180秒間の連続照射を行った。術直後の歯肉は発赤の増悪や出血もなく,24時間後の同部位においても異常所見は観察されず,エナメル質表面に対しても,術後に凹みや亀裂が観察されることはなかった。また,術後24時間後の歯髄と辺縁歯肉を組織学的に観察すると,好中球の浸潤や上皮の亀裂,壊死等の炎症反応は観察されず,歯髄組織においても,歯髄充血や好中球浸潤などの炎症所見は観察されなかった(図4)。このことから,非接触型の流水式超音波洗浄技術は,チタン表面に損傷を与えることなく,バイオフィルム除去が可能で口腔組織に対しても安全性を有していることを示した。
本洗浄技術は,歯石などの石灰化物の除去は難しく,これに関しては従来の機械的清掃の方が優れていると考えられる,しかし,流水の届く範囲であれば,超音波エネルギーの伝搬が可能なため,露出したインプラントフィクスチャーの清掃以外に,矯正用ブラケットを装着している歯面清掃などにも応用が可能と思われる。
非接触型の流水式超音波洗浄技術によるバイオフィルム除去効果
(a)流水式超音波洗浄装置図
(b)超音波分布シミュレーション(周波数345kHz)。振動子から30 mm離れたところに高い音圧領域が想定された。
(c)残存バイオフィルムは印加電力依存的に減少した。(相関係数p=-0699)
(d)術前のチタンディスク表面はバイオフィルムに覆われており,Tiの検出頻度は低かった。術後の表面は粗面加工されたチタン表面が露出し,Tiの検出頻度は増加した。
(e)エナメル質と辺縁歯肉を対象にそれぞれ10W 180秒間作用させ,24時間後の歯髄と辺縁歯肉をHE染色像で評価した。
キャビテーションとは,液体の速度が増大することにより,圧力が減少し気体になる現象である。また,キャビテーション噴流とは,水中に高速水噴流を噴射したときに生じるキャビテーションを伴う噴流のことをいう。ノズル内を高速水噴流が通過し,周囲液体との流速差により渦が発生し,その渦中心部の圧力が低下することで渦キャビテーションが生じ,下流に流れるのに伴い合体して大きなキャビテーション気泡雲を形成,その崩壊に伴い衝撃力を発生させる。このキャビテーション噴流は,材料の表面性状の改質や洗浄に応用されている。そこで我々は,このキャビテーション噴流をインプラントの除染に応用すべく,研究を行ってきた。
先行研究により形状を決定したキャビテーションノズルを用いて,ヒト口腔内で作製したフィクスチャー上のバイオフィルムに対する除去効果を評価すると,180秒間の噴射において約87%のバイオフィルムの除去が確認された。また,フィクスチャーの凹部と凸部に区分して解析した結果,凹部において,約95%のバイオフィルムの除去が確認された38,39)(図5)。これはベルヌーイの定理にも基づき,キャビテーション気泡は流速が減速する際に崩壊しやすく,インプラントのようなねじ形状では凹部では流速が減速しやすいため,凸部と比較して頻度よく気泡の崩壊が起こるためであると考えられる。
安全性についての評価は,キャビテーション噴流噴射後のフィクスチャーを走査型電子顕微鏡,光学顕微鏡で観察したが,表面の損傷は確認されなかった。また,ミニブタ歯肉に対する噴射試験を行い,病理組織学的評価を行ったが,炎症所見が認められないことを確認している。
これらのことから,キャビテーション噴流は安全でかつ,従来の機械的清掃器具では届きにくいと思われるフィクスチャー凹部の除染にも効果的なバイオフィルム除去手段になりうると考えられる。また,インプラント用のホームケア製品として,新たな選択肢になりうることも期待できる。
キャビテーション噴流によるバイオフィルム除去効果
(a)ノズル狭窄部で水流の流速が速くなることでキャビテーション気泡が発生し,ノズル径が拡大する際にキャビテーション気泡が崩壊し,衝撃力が発生する。
(b)実際に噴射中のキャビテーション噴流を示す
(c)本研究で用いたフィクスチャー形状を示す。図のように凹部と凸部を定義し,(e)に結果を示すように凹部と凸部で除去効果の比較検討を行った。
(d)ノズル直径の範囲で光学画像解析を行い,バイオフィルム除去効果を検討した結果,180秒間の噴射にてバイオフィルム残存率は術前を100%としたとき,約85%も減少した。
(e)180秒間の噴射において,凹部と凸部のバイオフィルム除去効果を比較したところ,凹部において有意にバイオフィルムの除去が確認された。
歯科用インプラントは普及してから40年程度が経過し,欠損補綴の治療方法の一つとしてその地位を確立してきた。しかし同時にインプラント周囲炎という新たな疾患を抱えるようになった。インプラント周囲炎の予防や治療方法は,前半で述べたように,既存の歯科治療法の中から探っているのが現状である。しかし既存の技術では解決しない場合には,他分野の技術を転用する発想も必要である。その一つが医学分野と工学分野が連携する,いわゆる「医工連携」による学術的研究とそれに基づく医療機器開発である。医療現場が有する課題・ニーズが,工学分野にあるシーズを使うことで,解決できることがある。今回の歯科医療現場のニーズは「チタン表面を傷つけず非接触でバイオフィルムを除去する」ことであり,それに対して工業分野のシーズ「流水式超音波洗浄技術」や「キャビテーション噴流技術」がマッチングした形となった。現在,流水式超音波洗浄技術は歯科用多目的超音波治療器として医療機器の承認申請を進めている。
今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。