Nihon Shishubyo Gakkai Kaishi (Journal of the Japanese Society of Periodontology)
Online ISSN : 1880-408X
Print ISSN : 0385-0110
ISSN-L : 0385-0110
Case Report
A case of generalized chronic periodontitis that improved with initial periodontal therapy alone
Kana TakahashiAzusa FujimotoAtsushi Fujimoto
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2018 Volume 60 Issue 4 Pages 192-200

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要旨

広汎型重度慢性歯周炎患者を歯周基本治療にて治療した一症例について報告する。

患者は42歳女性。3ヶ月前から歯肉の発赤,腫脹が著しく出血が多くなったため前医を受診,当院を紹介され来院した。臨床所見は全顎的に歯肉の発赤,腫脹を認めた。特に上顎左側部には炎症性歯肉増殖がみられた。プロービング時の出血(BOP):31.9%,プロービングポケットデプス(PPD):4 mm以上52.1%,O'Leryのプラークコントロールレコード(PCR)50%。エックス線所見では下顎前歯部および臼歯部の一部に垂直性骨吸収を認めた。

検査結果の説明と口腔清掃指導を繰り返し行い,スケーリング・ルートプレーニングを行った。患者のモチベーション向上の一環として,長期経過や生活背景を患者とともに確認し,口腔内の状態について患者自身の理解の向上を図った。歯周基本治療が進行するとともに口腔清掃状態が向上し,歯肉の腫脹が消退した。再評価時にデンタルエックス線写真上で歯槽骨の改善を観察したため,歯周外科治療は行わず,口腔機能回復治療を行った。2015年9月サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)へ移行した。

緒言

重度慢性歯周炎患者の治療では,来院に至るまでの経緯が長期であることが多く,既往歴や現病歴の把握が難しいことが多い。また治療期間が長期に渡るため,治療経過に伴い歯周組織の状況も変化し,セルフケアの向上やモチベーションの維持も継続的に行う必要があるが容易ではない。

正確な診断のために医療面接を行うが,その経緯の長さから1回の医療面接では患者も記憶の整理ができない場合や,術者と患者の意思疎通が円滑でない場合も考えられる。そのために多くの情報を得るためにはラポールを形成しつつ,会話を繰り返して相互理解を深める中から患者の生活背景やその歴史を知り,また治療に対する信頼関係の構築も欠かせない1)

本症例では信頼関係の構築により,来院までの30年近い経過について繰り返し医療面接が行われ,また患者も協力的に医療面接に臨み現病歴,既往歴,生活背景などについての詳細を把握することができた。そして診断は広汎型重度慢性歯周炎であるが女性ホルモンの影響を受けている可能性を把握できた。また患者の生活背景を詳しく知ることで,生活習慣指導や口腔衛生指導の一助となった。このことからモチベーションに大切な「誘因」つまり歯周治療に対する理解を与えられたことにより,行動しようとする「動因」が働き2),患者のモチベーションも高く維持できた。その結果,歯周基本治療のみで良好な結果を得ることができた症例を経験したので報告する。

なお本症例は論文掲載にあたり患者の承諾を得ている。

症例

1. 主訴および現病歴

患者は42歳女性。初診は2013年12月。3ヶ月前から上顎左側歯肉が腫れ,歯みがきをすると出血することより,転居前に通院していた前医に相談したところ,当院を紹介され受診した。

初めて歯肉からの出血を感じたのは中学生から高校生の頃であったが,疼痛等の自覚症状は無かったため問題とは感じず歯科受診はしなかった。20歳代では時折ブラッシング時の出血が気になった時のみ歯科医院を受診した。その際は歯周病と診断はされず,スケーリングのみ行い,出血が改善すると通院を終了していた。また前歯の歯ならびが気になり美容外科を受診,22,31,41抜歯,13,12,11,21,23の抜髄,クラウン装着,33,32,42の抜髄および同部を支台歯とした33,32,31,41,42ブリッジ装着が行われた。

30歳時,20代で治療した前歯の状態が気になり歯科受診した際,初めて歯周病と診断されスケーリングのみを行った。以降約6ヶ月毎にスケーリングを受けていた。

32歳時,第一子妊娠中にブラッシングをすると全体的に出血とともに繊維状のものが取れてきたため心配になり歯科受診したが,妊娠中ということもあり積極的には治療をせず,6ヶ月メインテナンスを継続した。出産するとともに歯肉の状態は軽度改善した。その後引っ越し,子育てのため約2年間歯科受診をしなかった。

36歳時,第二子妊娠中に上顎左側の歯肉からの出血が認められた。ブラッシング指導を受け,スケーリングを行ったところ,歯肉からの出血は軽度改善した。引っ越し先が実家近くという環境であり継続した通院が可能となった。

37歳時,第三子妊娠中に第一子妊娠時と同様に歯肉からの出血,繊維状のものが取れてきたため歯科医院を受診。妊娠中のため積極的には歯科治療は行わず,スケーリングとペリオフィール歯科用軟膏(昭和薬品化工株式会社)の塗布が行われたが,第三子妊娠中に引っ越しのため治療中断した。出産後,歯肉の状態は落ち着いてきたが前医に相談,当院を紹介され来院。現在は3人の子供を育てる専業主婦である。

2. 歯科的既往歴

幼児期から自由に甘い物を摂取できる環境であり,2歳頃からカリエスがあった。小児期にかけ多数歯のカリエスが認められ,疼痛時のみ受診。サホライド塗布,コンポジットレジン充填などの対症療法のみを行った。小児期は歯科治療に対し恐怖感が強く,中高生になるまで極力歯科医院に行かなかった。

16,15,24,25,26,27,37,36,35,47の補綴修復物に関しては患者自身も記憶が定かではない。中高生の頃に行ったものと思われる。

3. 全身既往歴

出産経験あり(3人)。喫煙歴なし。

4. 家族歴

父(71歳)の仕事は船乗りであり帰港時のみ治療を受けていたため,継続的な治療や定期管理は難しかった。非喫煙者であり現在総義歯。抜歯理由は不明である。母(64歳)は非喫煙者で歯周病の既往がある。現在無歯顎,総義歯であるが抜歯理由は不明である。

弟2人。長男(39歳)は重度歯周炎のため岩手医科大学歯科医療センターにて全顎的に歯周治療を行った。非喫煙者である。次男(34歳)の歯科既往歴は不明。非喫煙者である。

5. 現症

1) 口腔内所見

O'Learyのプラークコントロールレコード(PCR)は50.0%でプラークの付着量が多く,全顎的に歯肉退縮している。上顎左側前歯部から臼歯部および下顎左側臼歯部舌側に歯肉の発赤・腫脹が認められ,歯石の沈着も認められる(図1-A)。

図1

初診時の口腔内写真(A)およびデンタルエックス線写真(B)

2) エックス線所見

全顎的に軽度~中等度の垂直性骨吸収がみられ,部分的に歯根長の1/2を超える骨吸収が認められる。下顎前歯部と上下顎左側に歯根膜腔の拡大が認められる。臼歯部の一部に歯石沈着が認められる(図1-B)。

3) 歯周組織検査

全顎的に歯間部隣接面に深い歯周ポケットが認められた。PPD 1~3 mmの割合は47.9%,PPD 4~6 mmの割合は42.4%,PPD 6 mm以上の割合は9.7%であった。プロービング時の出血(BOP)部位の割合は31.9%であった。歯の動揺は26,37,36,35,33,32,42,47がMillerの分類で1度。その他の部位は生理的動揺の範囲内であった(図2)。

図2

初診時(2013年12月)および歯周基本治療終了時(2014年9月)の歯周組織検査結果

6. 診断

思春期から発症し,さらに妊娠時に腫脹が著しくなったことから性ホルモンの影響も考えられる。口腔清掃不良と宿主因子の影響により歯肉炎が慢性歯周炎に移行したものと考えられる。また,歯周ポケット深さが6 mm以上の歯が全部位の30%以上を超えることから,臨床診断は日本歯周病学会による歯周病分類システムに準じ,広汎型重度慢性歯周炎とした3)

7. 治療方針および治療計画

1) 歯周基本治療

・ 患者教育

ラポールの形成を図りつつ,歯周病の原因や治療について説明する。また歯周炎進行の背景を探るため医療面接を重ねる。宿主因子の影響も考えられるが,まず我々ができる細菌因子のコントロールを行うことを説明する。

・TBI テーパード毛歯ブラシ,歯間ブラシを徹底

・全顎にわたるスケーリング・ルートプレーニング(SRP)

・16,26,27,37修復治療,46欠損に対する45,47を支台とした暫間補綴治療,咬合診査・調整

2) 再評価

3) 歯周外科治療として17,16,15,14,24,25,26,27,37,36,35にWidman改良フラップ手術,13,12,11,21,23,32,42にアクセスフラップキュレッタージを予定

4) 再評価

5) 口腔機能回復治療

・46欠損に対する45,47を支台歯とするブリッジ

6) メインテナンス

※健康保険の範囲内の治療希望

8. 治療経過

1) 歯周基本治療

1) 初診,医療面接,患者教育

主訴は上顎左側歯肉が腫れ,歯みがきをすると出血する,であった。前医で12年前に歯周病と診断されたものの,妊娠,出産,育児で多忙だったため,積極的な歯周治療は行っていなかった。第三子が幼稚園に入園し日中の通院が可能となった。そのような経緯であったが本来は歯周病を治療したい気持ちが強かったため,治療説明時も熱心に耳を傾けていた。

患者と顔を合わせ,視点を揃え,話しやすい雰囲気作りを心がけた。相づち,うなずきを行いながら傾聴した。検査等を行う前にその必要性を説明してから実施する等,安心感を与えるよう努めた。現状を口腔内写真,検査結果をもとに説明。健康な歯肉と現状の歯肉とを比較し,視覚的に訴えた。

患者は過去の歯肉の状態や現在に至る経緯を振り返り,口腔内状況を理解した。現病歴や既往歴に加え,医療面接を通じて生活背景を知り,より患者に寄り添った対応を心がけた。

2) TBI

初診時において,患者自身は使用する歯ブラシのこだわりはなく,歯間ブラシ等の補助的清掃用具を使用していなかった。患者の強いブラッシング圧に対し,歯肉の負担軽減のためテーパード毛歯ブラシ(LION systema 44M)を選択。圧を優しく,小刻みに磨くよう指導した。また,歯間ブラシは歯肉を圧迫し白く変化しないよう適正なサイズ(LION歯間ブラシ S)を勧め,1カ所ずつ丁寧に磨くよう指導した。さらに来院毎に染め出しを行い,特に隣接面のセルフケア向上の必要性を伝えた。

3) スケーリング

PCRが下がるまでは,縁上スケーリングとした。

4) 再評価

口腔内状態の把握とセルフケアの重要性を理解したものの,歯間ブラシはたまにしか使用していないとのこと。ブラッシングの技術が伴わずPCRは高い数値を示した。

歯周治療に際しプラークコントロールの重要性を再度説明し,SRP前に繰り返しTBIを行いPCRの改善を図った。

5) SRP

PCRが改善し,SRPを行っている間もPCR 20%未満を継続した。

SRPを行いながら患者教育も継続した。SRPの際には,検査結果とデンタルエックス線写真を合わせて見ること,またプローブで歯石の沈着部位と歯根面形態を探知してイメージしながら浸潤麻酔下で行った。

6) 修復処置,感染根管処置,暫間ブリッジ

16,37インレー,15感染根管処置,46先天性欠損部位に対し45,47を支台歯とする暫間ブリッジを装着した。

7) 再評価,再SRP

再評価時歯石の残存を認めたが,セルフケアの向上により歯周ポケット底部の炎症活動性は低く,また患者が歯周外科治療に対して積極的ではなかったため,患者と相談し再SRPを行うこととした。歯肉状態の改善に伴い歯間部鼓形空隙に合わせた歯間ブラシ(LION歯間ブラシM)を処方した。

再SRP時には,歯周ポケットプローブでの触診を慎重に行い,歯石が除去されたことを確認するとともに,ルートプレーニングを行った。

2) 再評価,口腔機能回復治療

再評価の結果,デンタルエックス線写真上歯石様不透過像を認めず,BOPは8.3%と改善し,歯肉の腫脹も改善した。

26,27の縁下カリエスが縁上カリエスとなり,歯肉切除は行わずにレジン充填を行うことができた。また15クラウン装着および,46先天性欠損部位に対し45,47を支台歯とするブリッジを装着した。

3) 再評価,SPT

修復および補綴治療後も歯肉の腫脹や炎症所見は認められなかった(図3-A)。エックス線所見では歯槽硬線の明瞭化を確認した(図3-B)。歯周ポケットが改善し,PPD 1~3 mmの割合は99.3%,PPD 4~6 mmの割合は0.7%であった。BOP部位の割合は1.4%であった。歯の動揺は全て生理的動揺の範囲内であった(図4)。しかし14近心部にPPD 4 mmが認められ,また15,26にBOPが認められたことから,その部分は今後とも要注意部位としてSPTに移行した。臼歯部は歯間ブラシ(LION歯間ブラシL)を継続し,歯肉への負担が軽く,プラーク除去効率の良い歯ブラシ(LION SP-T歯ブラシ)を処方した。患者の歯間ブラシ使用は習慣化傾向であったが,最新のSPT時ではPPD 4 mmが5部位に,BOPが14部位へと増加した。

図3

SPT移行時の口腔内写真(A)およびデンタルエックス線写真(B)

図4

SPT移行時(2015年9月)およびSPT時(2016年3月)の歯周組織検査結果

考察

本症例において来院までの口腔内の変化,歯科既往,生活習慣,家族歴などを,医療面接により詳細に把握することができた。

本症例では歯槽骨の吸収は少ないが,歯肉の炎症や腫脹が強く認められた。診断としては広汎型重度慢性歯周炎としているが,宿主因子である女性ホルモンの影響4,5)を受ける思春期性歯肉炎が発端となったこと,妊娠中に炎症性反応が増強したことから考えられる。また家族歴から歯周炎感受性遺伝子の関与も考えられる。それらと複合的にプラークコントロール不良による細菌因子の影響で慢性歯周炎へ移行したものと考えられる。

リスク因子の改善として,まず口腔衛生指導による細菌因子の除去が歯周基本治療において最も重要であると考えた6)。思春期から当院初診まで歯周病の症状経過は20年以上と長い。しかし口腔衛生指導は積極的に取り組まれてなかったことが伺える。松永ら7)は歯周炎患者に対してPCR 20%以上と20%未満の集団における歯周基本治療に対する反応を調査した。その結果20%未満群の方が良好な治癒反応を示したと報告しており,本症例でも良好な口腔衛生状態を目指した。

患者の歯周病の病態を理解することとラポールの形成のために患者とのコミュニケーションを意識した。患者モチベーション向上のためには,1)患者に口腔内の状況を知らせること。2)歯周病の原因や問題点に対する理解を得ること。3)口腔状態改善への解決方法(治療法やプラークコントロールなど)を提示し,個別に患者の心を動かし治療に積極的に参加してもらうこと。4)プラークコントロールを励行させること。5)患者ごとに適したプラークコントロールの指導と,患者自身に口腔内の変化に気づいてもらうこと。6)患者にプラークコントロールの有効性や必要性を理解し継続してもらうため,その方法と習慣化の指導を行うことが必要であることを高柳1)は述べている。結果としてモチベーションに大切な「誘因」つまり歯周治療に対する理解を与えられたことにより,行動しようとする「動因」が働き2),治療や口腔衛生指導に対する患者のモチベーションも高く維持できた。

歯周基本治療を進める中で,歯肉の炎症や腫脹が著しい部位があり,口腔清掃指導では今まで強いブラッシング圧であったのに対し,歯肉の負担軽減と歯肉縁下プラークに対し少しでも清掃効果がみられるようにテーパード毛歯ブラシ(LION Systema 44M)および歯間ブラシSサイズ(LION DENT.EX歯間ブラシ)を用いた。

SRP前にはPCRを20%未満になることを目標とし口腔衛生指導のために通院してもらいプラークコントロールの向上を図った。またSRPでは歯周ポケットプローブで根面形態や歯石の沈着部位を慎重に探知し,根面形態に適合するキュレット型スケーラーを選択して歯肉に必要以上負荷を掛けないように留意しつつ行った。

口腔衛生指導では,治療が進行するとともに患者は歯肉状態の改善を実感し,歯間ブラシの使用が定着した。また医療面接を繰り返し行うことで過去の経過,生活習慣を患者自身が知ることで,生活習慣や全身状態と口腔内の健康が関係することを理解し,モチベーションが維持されセルフケアの向上に寄与したものと考えられる。

細菌因子の除去が炎症改善をさらに促したと考えられる。SRP後の再評価を行ったところ,PPD 3 mm以下が84.1%と改善がみられた。しかし炎症性反応の指標であるBOPは40.9%と高く,治療計画では歯周外科治療を予定していたが,患者の歯周外科治療に対する同意が得られなかったことから,炎症性反応の改善のため口腔清掃指導の継続とともに再SRPを行うこととした。

再SRPの結果,PPD 3 mm以下96.5%,BOP 8.3%と改善した。またデンタルエックス線写真では歯槽硬線の明瞭化が認められ,咬合においても安定した状態を得た(図5)。

初診時に垂直性骨吸収を認めた部位に歯槽硬線が出現し平坦化したのは炎症性反応の消失により歯槽骨が新生したものと考えられる8)。また出産後4年が経過しているため性ホルモンの宿主因子は減少しており,治療の反応に良い影響を与えたものと考えられる。今後この骨欠損の状態を維持するためには治療後の炎症コントロールが重要であり9),定期的なSPTの必要性を伝えた。

SRPにより感染をコントロールした後,歯肉縁上のプラークコントロールを徹底することで,非外科的治療でも炎症をコントロールすることができ,歯周病進行を抑制することが可能であることがPihlstromら10)により示唆されている。またLindheら11)は歯周治療においては外科処置または非外科処置を行うことではなく,口腔清掃が歯周治療の長期経過に重要な効果を示していると報告している。

今後は,SPTにあたり現在までの経過を踏まえ,口腔衛生指導により細菌因子の除去を徹底するためセルフケアの維持,向上をともに目指し,繰り返しモチベーションの強化を行うことを主に考え,プロフェッショナルケアによる歯肉縁下プラークのコントロールも継続して行っていく12)

SPT移行時より最新SPT時においてPPD 4 mm部位およびBOP部位の増加がみられた。これは再評価の時期が3月ということもあり,お子さんたちの学校行事や役員会が重なり多忙であったためと考えられる。しかしその後も継続的に定期来院されており,経過は良好である。

本症例は炎症の除去,特に口腔清掃の徹底に主眼をおいて治療を進めた。患者とともに治療を進めるために,患者の生活習慣の改善,歯ブラシ習慣の改善にあたり,まず患者の生活背景を把握するため医療面接を行った。相手を知ろうとする姿勢で話す機会を重ねた。そのたびに患者も我々と共に考えるようになり,多くのことを把握することができた。また私は育児経験がないため,子どもがいる生活について興味深く傾聴したことで,相互の情報交換のように会話を進めることができラポールを深く形成する結果となった。その結果として得られた情報から過去の歯周組織の状態や歯ブラシ習慣について参考になる情報が多く得られた。

今回の発表を通じ,複合的な原因因子を考慮した上で,非外科的治療でも細菌因子の除去を確実に行い,その後の口腔清掃指導が適切に実践されることで良好な結果が得られることがわかった。また改めて歯科衛生士として歯周治療の成功とSPT継続のために患者に寄り添う姿勢や医療面接することの大切さを実感した。

図5

臨床的パラメーターの推移

本報告は第59回秋季日本歯周病学会学術大会(2016年10月8日,新潟)において発表した内容に,一部追加,改変して掲載した。

謝辞

本稿を終えるにあたり,親切丁寧なご指導を頂きました岩手医科大学歯学部歯周病学講座佐々木大輔講師に感謝致します。本症例に取り組む上でご協力を頂きました当院院長の藤本淳先生および当院スタッフの皆様,そして関係者の皆様に心から感謝致します。

今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。

References
 
© 2018 by The Japanese Society of Periodontology
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