Nihon Shishubyo Gakkai Kaishi (Journal of the Japanese Society of Periodontology)
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Original Work
Relationship between staging and grading of periodontitis (AAP・EFP 2018) and The classification of periodontitis (JDA 2007) speculated through CAL
Yoshio MotegiHidenori HamashimaMasayuki HanaokaIkuto OkamotoKazuo MisawaHirokazu TaniNahoko OkadaYasushi MiyazawaChisato SakuraiTomoyuki Takagi
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2022 Volume 64 Issue 2 Pages 76-89

Details
要旨

現在日本において臨床で広く用いられている歯周炎分類(日本歯科医学会 JDA 2007)とCAL(臨床的アタッチメントレベル)の関係を調べる臨床研究を全国10名の臨床医が2016年から2021年まで5年間行い,1,375名のべ125,468歯の調査結果を得た。また歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)との関係を精査することで,歯周炎指標をより有用に使用できると考えた。元々歯周炎分類はCALの検査項目はない。その為1歯毎に歯周炎分類とCAL値がひも付いた臨床研究結果から,CAL値(一部PD値,動揺度)を介して歯周炎分類と歯周炎新分類(ステージ,グレード)の関係を調べた。歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)の重症度について「最大CAL値」から見た場合,ステージ(I,II,III,IV)各々に占める歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の被験歯数の分布は,IはP0,IIはP1,IIIとIVはP2が大多数だった。また複雑度について「最大PD値と動揺度」から見た場合,IはP1,IIとIIIはP2,IVはP3が大多数だった。その他ステージ重症度の「歯の喪失」及びグレード進行の直接証拠「最大CALの経年変化」では両者の関係は不明であった。

Abstract

A clinical study to investigate the relationship between The Japan Dental Association classification of periodontitis (JDA 2007), which is widely used in current dental practice in Japan, and the clinical attachment level (CAL) was conducted by 10 Japanese clinicians for 5 years, from 2016 to 2021. The study subjects included 1,375 patients with a total of 125,468 teeth. We thought that clarification of the relationship between the new classification of periodontitis (AAP・EFP 2018) and the results of this investigation would be clinically significant to calculate the periodontitis index. The JDA 2007 periodontitis classification does not include determination of the CAL. Therefore, the relationships between the periodontitis classification (JDA 2007) and the stage and grade of the new periodontitis classification (AAP・EFP 2018) were examined via the CAL value (including the PD value and degree of tooth mobility) based on the results of the above clinical study, in which the CAL value was determined for each tooth. When looking at the number of teeth tested for "CAL at the site of greatest loss" for versus "the Severity" classification in the new classification of periodontitis (AAP・EFP 2018), the correspondence of the JDA 2007 periodontitis classification (P0, P1, P2, P3, P4) to the stages (I, II, III, IV) was determined to be P0 for stage I, P1 for stage II and P2 for stage III and IV in the majority of cases. In terms of the "Maximum probing depth and tooth mobility" for "Complexity", the correspondence was P1 for stage I, P2 for stage II and III, and P3 for stage IV in the majority of cases. However, the relationship between the two classifications was not clear about "tooth loss" for "the Severity" of staging and for "Longitudinal data (CAL)" for "Direct evidence of progression" of grading. This is presumably attributable to the different scope of classification of the test items between the two groups and/or uneven distribution of the number of cases.

緒言

日本臨床歯周病学会の倫理審査の承認を受け,臨床研究を2016年から5年間,2021年3月31日まで行った。国内10名の臨床医が歯周炎罹患者計1,375名を対象に計125,468被験歯の臨床的アタッチメントレベルと,現在臨床で広く用いられている歯周炎分類(日本歯科医学会2007)の分類値(表11)の関係を調べた。

2018年に歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)2)が公表された。我々は,日常臨床で用いている歯周炎分類(JDA 2007)と新たに公表された歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)の関係を,当該臨床研究の結果と共に調査することにした。

方針は歯周炎分類の検査項目にCAL値がないため,当該臨床研究で調べたCAL値,PD値,歯の動揺度,欠損歯数,期間中の歯の喪失をパラメーターとし,歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)と歯周炎分類(JDA 2007)の関係を求めることにした。

表1

「歯周病の診断と治療に関する指針」歯周炎分類(日本歯科医学会2007年11月)

対象および方法

1. 対象

各検査者の医院で診療している歯周炎患者とした。特に慢性歯周炎と浸襲性歯周炎を区別せず,同じ歯周炎患者とした。初診,歯周基本治療中,歯周炎メンテナンス中等,歯周炎治療中の患者で,平成11年~23年に行われた歯科疾患実態調査の結果より,歯周炎患者数が好発と考えられる55才以上の患者とした。慢性疾患の予後を調べる研究の為,長期の5年間とし,その間患者の未来院等不確実な要素が生じることから,多数の被験者1,375名の歯周炎患者を対象とした。検査者の医院に来院した歯周炎と診断した対象年齢の患者に対して十分な説明を行い,同意を得て研究に参加いただいた。

検査期間:5年間

検査人数:1,375名

のべ検査回数:4,481回

のべ検査歯数(欠損歯数及び現在歯数):125,468歯

のべ現在歯数:99,277歯

研究期間中抜歯された歯:2,967歯

2. 検査者及び検査

国内(栃木県,千葉県,東京都,山梨県,静岡県,愛媛県)の歯科医院で診療している10名の臨床医が検査を行った。検査者のうち9名は大学の歯周治療学科に,1名は口腔外科にそれぞれ複数年在籍した経験を持つ。検査者の臨床経験年数は40年以上が1人,30年以上が8人,20年以上が1人で,そのうち日本歯周病学会歯周病専門医が5人,認定医が1人であった。歯周病治療に関する基本的な知識は備わっていることから,特にキャリブレーションは行わず,歯周炎分類の検査法については表1と表2で各々確認する以外は日常臨床で行っている方法で各検査者独自の判断で行った。

日本において臨床で広く用いられている歯周炎分類(表1)に,臨床的便宜上,健康(P0)と保存不可能(P4)の二つを加え,計5つの分類とし,歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)(表2)とした。

検査者は対象歯各々に対し,臨床的アタッチメントレベル(CAL)で6点計測中最深部1点のmm単位の値を,そしてその被験歯に対する検査者の判断による歯周炎分類値(P0~P4)の0から4までの値を,汎用パーソナルコンピュータに入力し記録した。最大プロービングデプス(PD),喪失歯数,歯の動揺度も同様の操作で記録した。

検査期間は2016年4月1日から5年後の2021年3月31日までとし,基本的には年1回の検査を行った。研究期間中に来院中断等のため,一患者あたり平均3.26回検査を行った。

表2

歯周炎分類値(歯周炎分類(日本歯科医学会2007)に健康(P0)と保存不可能(P4)を加える)

3. ステージ・グレード分類と歯周炎分類値の比較

歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)と歯周炎分類値の関係調査は前者の4ステージ及び3グレード(表3)各々と後者の5段階分類(P0~P4)をCAL値,PD値,歯の喪失本数,歯の動揺度をパラメーターとして以下の項目について被験歯数の占める分布で2者を比較した。

表3

歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)

1) ステージ

(1)重症度について「最大CAL」から見た比較

(2)重症度について「歯の喪失」から見た比較

(3)複雑度について「最大PDと歯の動揺度」から見た比較

2) グレード

(1)進行の直接証拠について「最大CALの経年変化」から見た比較

3) プローピングデプス

(1)最大PD値と6点計測値の比較

統計処理はMS Windows 10上のExcel分析ツールに依った。

結果

1. 歯周炎新分類ステージに関して

1)重症度について「最大CAL」から見た歯周炎新分類ステージ((0),I,II,III,IV)と歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の関係。

歯周炎新分類ではCAL値0 mmは分類されていないためカッコで示した。調査対象108,254歯(5年間の患者1,375人ののべ検査回数4,481回の現在歯数)

(ステージ0):最大CAL 0 mm

ステージI:最大CAL 1,2 mm

ステージII:最大CAL 3,4 mm

ステージIII:最大CAL 5 mm以上

ステージIV:最大CAL 5 mm以上

(1)歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)各々における最大CAL値の被験歯数を表4に示す。図1にその割合(%)を示す。

表4

歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)各々における最大CAL値の被験歯数,及び歯周炎分類値各々の全被験歯数に占める各CAL値の被験歯数の割合(%),並びに歯周炎新分類ステージ((0),I,II,III,IV)各々における最大CAL値の被験歯数及び割合(%)

図1

歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)各々における各最大CAL値の被験歯数の割合(%),並びにステージ分類((0),I,II,III,IV)の範囲

歯周炎分類値各々の最大CAL値はP0,P1は3 mm,P2は5 mm,P3は7 mm,P4は10 mmを中心に分布していた。

(2)表4から歯周炎新分類ステージ((0),I,II,III,IV)各々における最大CAL値の被験歯数のほとんどは歯周炎新分類ステージIIに集中していた。

(3)最大CAL値から見た歯周炎新分類ステージ((0),I,II,III,IV)各々における各歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の被験歯数の割合(%)のグラフを図2に示す。なおステージ(0)は被験歯数が極めて小さいので図2から除く。

図2

最大CAL値から見た歯周炎新分類ステージ(I,II,III,IV)と歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の関係を示す被験歯数の割合

重症度について「最大CAL値」から見た場合,歯周炎新分類ステージ各々に占める歯周炎分類値の被験歯数の分布は,IはP0,IIはP1,III,IVはP2が大多数であった。

2)重症度について「歯の喪失」から見た歯周炎新分類ステージ(I,II,III,IV)と歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の関係。

ステージI:歯の喪失 0本

ステージII:歯の喪失 0本

ステージIII:歯の喪失 1~4本

ステージIV:歯の喪失 5本以上

調査対象1,355例(過去5年間における初診患者数)初診時における歯の喪失本数各々における被験歯数及び割合(%)を表5に示す。

表5

初診時における歯の喪失本数各々の被験歯数,並びに歯周炎新分類ステージ(I,II,III,IV)各々の被験歯数及び全体に占める被験歯数の割合(%)

歯の喪失0本(ステージI,II)の患者は少数(16%)に止る。何らかのかたちで歯の喪失(ステージIII,IV)か認められる患者が多数(84%)であり,被験歯数が多いのは喪失歯0歯で次が1歯であった。

なお歯周炎分類値は現在歯に対する評価値であるため,喪失歯には適応されず,歯周炎新分類ステージとの関連は示し得ない。そのため被験歯数の提示にとどめる。

3)複雑度について「最大プロービングデプス(PD)と歯の動揺度」から見た歯周炎新分類ステージ(I,II,III,IV)と歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の関係。

ステージI:最大PD 4 mm以内

ステージII:最大PD 5 mm

ステージIII:最大PD 6 mm以上,動揺度 0,1度

ステージIV:最大PD 6 mm以上,動揺度 2,3度

1) 調査対象6,225歯(5年間における総患者数1,375人のうちPD及び動揺度の調査が同時に行われたのべ現在歯数)

歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)各々における各最大PD値の被験歯数並びに歯周炎分類値各々の全例数に占めるPD値の被験歯数の割合(%)を表6に示し,割合(%)のグラフを図3に示す。

3から,P1はPD2 mm,P2はPD3 mm,P3はPD7 mmを中心に分布していた。なお,P3はPD1 mmからPD12 mmにわたり幅広く分布していた。

表6

歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)各々における各最大PD値の被験歯数,及び歯周炎分類値各々の全被験歯数に占める最大PD値の被験歯数の割合(%),並びにステージ分類各々における各最大PD値の被験歯数及び割合(%)

図3

最大PD値に関し歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)各々の全被験歯数に占める各最大PD値の被験歯数の割合(%),並びにステージ分類((0),I,II,III,IV)の範囲

2) 調査対象4,662歯(5年間における総患者数1,375人のうちPD及び動揺度の調査が同時に行われたのべ現在歯数)

歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)各々における各動揺度(0,1,2,3)の被験歯数及び割合(%)を表7に示す。

7から歯周炎分類値のどの分類値も動揺度0が多数を占め,P3では動揺が認められる例数が半分に増えた。

表7

歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)各々における各動揺度(0,1,2,3)の被験歯数(%)並びに歯周炎分類値各々の全被験歯数に占める各動揺度の被験歯数の割合(%)

3) 調査対象5,194歯(5年間における総患者数1,375人のうちPD及び動揺度の調査が同時に行われたのべ現在歯数)

歯の動揺度(0,1,2,3)各々における最大PD値の被験歯数及び割合(%)を表8に示す。

8から動揺度0ではPDが3 mm,動揺度1はPDが3 mm,動揺度2はPDが6 mm,動揺度3はPDが10 mmを中心に分布した。

表8

歯の動揺度(0,1,2,3)各々における最大PD値の被験歯数,並びに各動揺度の全被験歯数に占める各最大PD値の被験歯数の割合(%)

4) 調査対象4,760歯(5年間における総患者数1,375人のうちPD及び動揺度の調査が同時に行われたのべ現在歯数)

「最大PDと動揺度」から見た歯周炎新分類ステージ(I,II,III,IV)各々における各歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の例数及び割合(%)を表9に示し,それら割合(%)のグラフを図4に示す。

4より複雑度について「最大PDと動揺度」から見た歯周炎分類値はステージIはP1,ステージIIはP2,ステージIIIはP2,ステージIVはP3が多数を占めた。

表9

最大PDと動揺度から見た歯周炎新分類ステージ(I,II,III,IV)各々における各歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の被験歯数,並びに歯周炎新分類ステージ各々における各歯周炎分類値の全体に占める被験歯数の割合(%)

図4

最大PDと動揺度から見た各歯周炎新分類(I,II,III,IV)各々における各歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の各歯周炎新分類ステージの全体に占める被験歯の割合(%)

2. 歯周炎新分類グレードに関して

1)進行の直接証拠について「最大CALの経年変化」から見た歯周炎新分類グレード(A,B,C)と歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の関係。

(グレード0):5年間で最大CALの経年変化が-1 mm以下

グレードA:5年間で最大CALの経年変化が0 mm

グレードB:5年間で最大CALの経年変化が1 mm

グレードC:5年間で最大CALの経年変化が2 mm以上

歯周炎新分類ではCALの経年変化がマイナス値は分類されていないため,カッコゼロで示した。調査対象5,818歯(研究期間5年間通して検査を受けた患者268人の総現在歯数)

(1)5年間の最大CALの経年変化値(研究開始初年検査時の最大CAL値と5年後研究最後検査値の最大CAL値の変化度(mm))各々における被験歯数及び割合(%)を表10に示す。

表10

最大CALの経年変化から見た5年間における最大CAL値の変化度(mm)各々における被験歯数,並びにステージ((0),A,B,C)各々における被験歯数と割合(%)

10より進行の直接証拠について「最大CALの経年変化」から歯周炎新分類グレード((0),A,B,C)を見ると,グレードA(経年変化ゼロ)がおよそ半数を占め,グレード(0)とA(5年間歯周炎の進行が抑えられているもしくは進行に改善が見られる)が全体の66%,グレードBとC(歯周炎の進行が認められる)が全体の34%であった。

(2)歯周炎新分類グレードと歯周炎分類値の関係。

グレードはこれからの歯周炎進行リスク指標であり,歯周炎分類値は現症歯周炎の重症度指標の為,同列の比較に意味はないと思われる。参考として上記2者の関係,すなわちCAL経年変化から見た歯周炎新分類グレードと歯周炎分類値の関係を表11,図5に示す。

5よりグレードAの被験歯数が一番多く全体の半分を占め,各グレード共歯周炎分類値の各分類の占める割合は同等であった。

表11

5年間での最大CALの経年変化から見た歯周炎新分類グレード((0),A,B,C)各々における各歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の被験歯数

図5

5年間の最大CALの経年変化から見た歯周炎新分類グレード((0),A,B,C)各々における各歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の被験歯数

3. プローピングデプスに関して

最大PD値(歯周炎新分類)と6点計測値(歯周炎分類値)の比較

歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)は最大CAL及び最大PDの1点の値を使う。それに対して歯周炎分類(JDA 2007)は6点計測値を基本としている。2者にどのような差があるかプローピングデプスに関し最大1点計測値と6点計測値を比較した。

調査対象4,662歯(5年間における総患者数1,375人のうちPD及び動揺度の調査が同時に行われたのべ現在歯数)

歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)各々における最大PDと6点計測平均値の被験歯数を図6に示す。

各歯周炎分類値最大PD値と6点計測平均値を1対の標本によるT-検定(paired t-test)に依り解析すると,5段階(P0~P4)すべてで有意(P<0.0001)であった。さらに図6からP0からP4(歯周炎が進行)に従い最大PDと6点計測平均値の差が大きくなった。

図6

歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)各々における最大PD値と6点計測平均値(P0:n=530,P1:n=2,528,P2:n=1,219,P3:n=370,P4:n=15)

P0~P4全ての歯周炎分類値で有意差あり(P<0.0001)

考察

この報告は日々の臨床において今まで使ってきた歯周炎分類(日本歯科医学会2007)と新しい歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)の関係を多くの臨床例を基に比較し,それらの関係を調べることを目的にした。日本で歯周炎治療に広く用いられている歯周炎分類(JDA2007)の実際の臨床評価を知るため,全国の複数の臨床医がキャリブレーションなしに,日常の臨床通りに測定を行った。そのため検査者間の個人差を考慮し,長期に渡る研究期間と多数のサンプルサイズが計画された。結果はステージの重症度について「CAL」より比較すると,歯周炎新分類ステージIは歯周炎分類値0と,IIはP1と,III,IVはP2とそれぞれ対応し,ステージの複雑度について「最大プロービングデプス(PD)と歯の動揺度」より比較すると,ステージIはP1,IIはP2,IIIはP2,IVはP3と対応していた。上記2者に対応の差があった。そしてステージの重症度について「歯の喪失」による比較,そしてグレードの「CALの経年変化」による比較が不明であった。これらの対応の差及び不明な点は何が原因するかを考察する。

1. 比較した2つの指標について

日本歯周病学会は過去3回歯周病に関する指針を著わした。「歯周病の診断と治療のガイドライン」(1996年),「歯周病の検査診断,治療計画の指針」(2008年)3)(2007年に内容は示され2009年1月1日に出版),「歯周治療の指針」(2015年)4)(表12)である。日本歯科医学会は社会保険の歯科診療として上記2つを整理し「歯周病の診断と治療に関する指針」(2007年)1)として提示した。臨床ではこの日本歯科医学会の指針(表1)を広く保険治療の中で使用している。

2015年の指針は2008年の指針と比べアタッチメントロス(歯槽骨吸収度)が付け加えられた。個人レベルの診断項目の歯周炎の進行度として,「最も重症な歯を基準として病名を記載する。全体的に中等度,部分的に重度」のように記載する場合もある。また慢性歯周炎では「1歯単位の診断で中等度と重度歯周炎の罹患歯数が全部位の30%以下であれば限局型,30%を越えれば広汎型に分類する」と記されている。患者個人レベルの口腔全体の歯周炎の重症度を診断する場合は,「口腔単位での診断となるため,1歯単位の進行度と罹患歯数の両方をもって推定する」と記されている。この2015年の指針は前2者が検査項目として採用していなかったCALそして1歯単位の診断と口腔単位の診断等,2018年の歯周炎新分類(AAP・EFP)2)に似た処が見られる。つまりAAPの新分類(1999年)5)及びEFPで用いられている歯周病分類を分析し,2006年島内らは「日本歯周病学会による歯周病分類システム」6)を著した。2015年の「歯周治療の指針」は「日本歯周病学会による歯周病分類システム(2006年)」を踏襲している。

2018年アメリカ歯周病学会とヨーロッパ歯周病連盟はAAPの新分類(1999年)を改正し,歯周炎新分類を含む歯周病新分類を公表した。歯周炎の病態を「ステージ」と「グレート」の2つで評価し,分類した。ステージは「現在の重症度」を評価分類し,グレードは「進行を予測するリスク度」を評価分類した。これによって歯周炎の病態,病因を各歯及び患者ごとに理解できるように試みられた。

表12

「歯周治療の指針」歯周炎分類(日本歯周病学会2015年)

2. 結果では,被験歯数が均衡している場合は被験歯数そのままの比較とし,被験歯数に相当な差がある場合は割合(%)による比較とし,図に表示した。

表題の歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)と歯周炎分類(JDA 2007)の2者の関係について結果を考察する。

1) 歯周炎新分類ステージに関して

(1)重症度を「CAL値」から見ると3 mmの例数が多く,ステージIIに例数が集中していた。しかし歯周炎分類値の例数がP0,P1は3 mm,P2は5 mm,P3は7 mm,P4は10 mmにはっきりと山が分れていたためか,歯周炎新分類ステージは歯周炎分類値をIはP0と,IIはP1と,III,IVはP2にほぼ対応していた。

(2)重症度を「歯の喪失」から見ると,初診時喪失歯0本つまり28本全てがそろっている患者は全体の16%と少なく,84%の患者は1本から26本までの歯の喪失が認められた。これは多分に当研究の対象者を55才以上と規定したためと思われる。

歯周炎分類値は現在歯に対する評価であるため喪失歯本数を仲立ちとして歯周炎新分類ステージとはひも付かず,被験歯数の提示に止まった。ただ重症度という場合,喪失歯の本数が多いことが即重症であると解釈するなら問題はないが,歯の欠損部に義歯(もしくはインプラント)を入れて歯肉の状態も咬合状態も良好な患者は重症なのかという疑問は残る。さらに歯の喪失が多くなるに従い重症になるというエビデンスが必要となる。

(3)複雑度として「最大プロービングデプス(PD)と歯の動揺度」から歯周炎新分類グレードと歯周炎分類値の関係を見ると,グレードIはP1とグレードIIはP2と,グレードIIIはP2と,グレードIVはP3にほぼ対応していた。複雑度に関しては当論文で最大PDと歯の動揺度の2項目で比較した。しかしその他に水平性もしくは垂直性骨吸収,根分岐部病変,歯槽堤の欠損,咀嚼機能障害,咬合崩壊・歯の移動・フレアアウト,対合歯の残存と多数の検査項目が挙がっている。あらゆる方向から検査する姿勢が見て取れる。一方検査項目が多く,検査に何を選択するかまた全て検査するかで分類値は不確定になる。

2) 歯周炎分類グレードに関して

(1)進行の直接証拠として「最大CALの経年変化」から歯周炎分類グレード(A,B,C)をみると,およそ半数の被験歯数が経年変化なし(グレードA)であった。5年間の歯周炎治療によってCAL値の経年変化で1 mmから最大7 mmまでの改善が認められた一方,1 mmから最大9 mmまでの悪化も認められた。5年間歯周炎の進行が抑えられているもしくは改善が見られる被験歯数は66%に及んだ。一方で1 mm以上のCAL値の悪化が見られる被験歯数は34%であった。グレードはこれからの歯周炎の進行リスク度であり,現在の歯周炎の重症度を示す歯周炎分類値と同列では比較出来なかった。同じ意味で経年変化5年だが,5年前の検査値と現在の値を比較するなら,これからの進行リスク度なので意味はあるが,現在の検査値を5年後の値と比較する場合,5年経過時には現在から5年後に至るまでの過去の進行リスク度となり意味をなさない。グレードの「進行の直接証拠」の「CALの経年変化」そして「進行の間接証拠」の「バイオフィルム蓄積」及び「骨吸収%/年齢」ら全ての検査項目は,グレードCにおいて「バイオフィルムの蓄積程度以上に組織破壊」そして「標準的原因除去療法に反応しない」が示すよう,従来の歯周炎の分類から言うと侵襲性歯周炎(若年性歯周炎)を対象にし,慢性辺縁性歯周炎はグレードAとBまでの分類と考える。

3) プローピングデプスの検査値に関して

最大PD値1点の値もしくは6点計測全ての値,どちらが指標として適切かという問いになる。各歯周炎分類値最大PD値と6点計測平均値を2元配置分散分析(2-way ANOVA),1対の標本によるT-検定(paired t-test)に依り解析すると,P0,P1は差がない様に見えるが5段階(P0~P4)すべてで標本数が多い故か有意(p<0.0001)であった。図6からP0とP1において最大PD値と6点平均値には大きな差はなく,歯周炎がP2,P3と進行するにつれその差が大きくなった。つまり最大PD値を使うと,歯周炎が重篤(P3.P4)においてはより的確に進行程度を診断出来,P3.P4の2段階より多段階の分類が可能となると予想される。

3. 歯周炎新分類ステージ,グレードと歯周炎分類値を比較して指標として具備すべき要件―客観性,整合性,人種,歯種について考察する。

1) 客観性が保たれる

検査してスコアを決めるのに検査者の裁量権を残す検査法は検者の専門性や経験に左右され検査結果が異なる。誰が行っても同じ検査結果が導かれる検査法が理想となる。例えば歯周炎新分類ステージの複雑度・局所の「中程度の歯槽骨欠損」の中程度,「重度の歯槽骨欠損」の重度これらは検者の裁量権で結果が分かれる。

2) 複数の検査結果の整合性

例えば最大CAL値が5 mmであったとする。この結果からステージIIIの分類になる。ところが一般論として増殖性歯肉炎でなく慢性辺縁性歯周炎の場合,最大CAL値≧最大PD値であるから,先程の症状は複雑度・局所の最大PD値が5 mm以下となり,分類はステージIIとなる。検者はどちらの分類を選ぶかで悩む。検査で項目が多ければそれだけ症状の変化を広く拾えるという長所はあるが,逆に分類で悩む機会が増えるという欠点になる。そして臨床する者にとって大切なことだが,検査項目が多ければそれだけ要す時間が増え,臨床に取り入れづらくなる。その対策としてスクリーニング検査と,必要な所は重点検査と2段階の検査法が考えられる。

3) 人種及び歯種への考慮が必要

歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)が適応されるのは主にコーカシアン族で,歯周炎分類(JDA 2007)は日本人である。例えばコーカシアン族の下顎3番の歯根長は16 mm(Short M.J.7))で日本人の同顎同名歯のそれは男性14.31 mm,女性13.69 mm(上條雍彦8))である。例にCAL値5 mmと設定すると,歯周支持組織の欠損はコーカシアン族は5/16で約31.3%の歯根長に相当し,日本人男性では5/14.31で約34.9%,女性に至っては5/13.69で歯根長の約36.5%の位置に及ぶ。歯頚部の方が根尖部より歯根の直径が大きいことを加味すると,同じCAL値5 mmでもコーカシアン族に比べ日本人の方が重症となる。指標には人種への考慮が必要となる。さらに同様の操作を同種族で同下顎前歯の1番で試みると,日本人の歯根長は男性11.29 mm,女性11.1 mmで男性が44%,女性が45%となる。下顎1番は下顎3番よりさらに重症となる。つまり同じCAL値5 mmで同じ下顎前歯でも,コーカシアン族の下顎3番と日本人女性下顎1番では,歯根長でそれぞれ31.5%,45%と大きな差が存在する。重症度「X線画像上の骨吸収」から見ると,前者はステージII,後者はステージIIIないしIVとなる。

本研究結果に示された歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)と歯周炎分類(JDA 2007)の関係について考察して来たが,十分示されたとは思えない。的確で客観的な歯周炎分類作りの為に多くの意見と,臨床に則した研究結果が必要と考える。

結論

歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)と歯周炎分類(日本歯科医学会2007)の関係を5年間の臨床研究(検査人数1,375名,のべ検査歯数125,468歯)についてCALから調べた。その結果ステージ重症度「最大CAL値」で,被験歯数はIはP0,IIはP1,III,IVはP2が大多数で,ステージ複雑度「最大プロービングデプスと歯の動揺度」はIはP1,IIとIIIはP2,IVはP3が大多数だった。なおステージ重症度「歯の喪失」及びグレード「最大CAL値の経年変化」では関係が不明だった。差がある及び不明の理由として検査項目と範囲が相方で異り,例数の分布に片寄りがある為と考えられた。また重篤な歯周炎に関し6点計測平均値に対し最大値1点の値を用いることで,より的確に進行程度を評価出来る可能性が示唆された。

謝辞

当臨床研究結果の統計計算に懇切丁寧なご指導をいただきました元明倫短期大学教授 小黒章博士に心より御礼申し上げます。

倫理審査

当研究は日本臨床歯周病学会より倫理審査承認を受け(2016年3月6日,受付番号15-2),患者様の同意書をいただき行った。

今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。

References
 
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