Nihon Shishubyo Gakkai Kaishi (Journal of the Japanese Society of Periodontology)
Online ISSN : 1880-408X
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Mini Review
Periodontal-therapeutic reconsideration of contact areas
Tsunehiro EzawaRena YamotoSanae Ezawa
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2022 Volume 64 Issue 3 Pages 98-102

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はじめに

歯周炎とコンタクトエリア(接触点)の喪失については古くから成書でその関連性が指摘されてきた1-3)。すなわち隣接歯同士のコンタクトが失われたり,辺縁隆線が,不揃いであったりすることによる食片圧入がプラークリテンションファクターとなり,歯周ポケットの深化や骨吸収などが惹起され,歯周病の局所修飾因子となりうるという因果関係である。コンタクトエリアは,接触点,コンタクトポイントなどの別名があり,その位置,形態,歯間乳頭との関係などについても議論されてきた。そこで本ミニレビューでは,コンタクトエリアと歯周治療について関連用語を含めて再考したい。

用語の再確認

「コンタクトエリア」と「接触点」については当学会の歯周病学用語集第3版にも収載されている用語4)である。しかし,「接触点」については日本補綴歯科学会編の歯科補綴学専門用語集第5版5)によると「隣接する歯が互いに点状あるいは小面状に接触している部位」と「咬合時に対合する歯が互いに点状あるいは小面状に接触する部位」という咬合を加えた二つの意味があるとしている。そこで本稿では誤解を招かぬように表題にはコンタクトエリアという用語を用いた。歯周病学用語集によるとコンタクトエリアとは「隣接する2歯が近心面もしくは遠心面で接触している領域。コンタクトエリアの条件としては,緊密,点状,滑沢な接触となるようにすることが望ましい…」となっており,この定義からは文字通り点状なのかエリアなのか,さらには,緊密度の度合いなどの詳細は不明である。

コンタクトエリアの形態

隣在歯のコンタクトエリアについては本邦においても古くから抜去歯による観察結果から前歯から大臼歯まで面状であり,その形態は円形,楕円形,繭型などに分類できるような種類がある事が分かっている6-8)(図1)。沖永6)はこの接触する部位が面状であることから「接触摩面」としている。また,熊切は7,8)接触面が陥凹状態であることが多いことから「接触局面」とする事を提唱している。沖永の資料である抜去歯の年齢は特定されていないが,熊切8)や村上9)の資料は年齢(20-65歳)と性別の明らかな個体歯のコンタクトエリアを調査し,20歳以後では「接触点」ではなく「接触面」であり,その面は陥凹しているため「接触局面」であると報告している。そこで本論文中でも「接触局面」という表現も使用する事とする。

図1

コンタクトエリアの形態

文献678より引用改変

接触局面(コンタクトエリア)の位置,性状,面積

個体歯による研究から前歯部接触局面は80-100%に認められ,ほぼ頬舌的中央に位置しており9)(図2),その形態は歯軸方向の楕円形が多く,楕円形同士の同型接触が多い。くぼみの程度は12-30 μm9)で面積は1.0-2.6 mm29,10)ある。また,年齢が増すとともにその面積は大きくなる傾向がある9)

臼歯部においては頬舌的に長い楕円形が多く(約72%)(図3),類楕円形同士の同形接触が過半数(約60%)を占めており円形対楕円形などの異形接触は少ない(約12%)。なぜ陥凹面同士が接触しているかの解明はなされていない。接触局面の存在区域は全ての臼歯において咬合面区域(図3:1,2)が過半数(約57%)であった。また同区域間の隣接面接触が多かった。くぼみの程度は30-320 μmで,その面積は小臼歯で約3-4 mm2で,大臼歯では約6-6.5 mm2あり,近心面より遠心面の方が大きくなる傾向がある。また,前歯と同様に,年齢が増すとともにその面積は大きくなる傾向がある8)。さらに接触面積と頬舌径との間にはきわめて高い相関がある10)。すなわち前歯,小臼歯,大臼歯と後方にいくにしたがい接触面積は増加する傾向にある。

咬合面から見た位置は上顎においては近心面では頬側1/3-2/5にあり,遠心面では頬舌的中央にある11)(図4)。下顎においては小臼歯と,大臼歯の遠心では頬舌的中央にあり,それ以外は唇頬側半に存在する12)(図5)。

コンタクトエリアの接触強さについては草刈の原著論文13)から始まる一連の研究と発表14-19)において明らかにされてきた。

草刈13)は30-300 μm間の10種類の厚さの異なる金属板を隣接面に指圧によって挿入することにより平均的な歯間離開度(上顎:92.5±51.6 μm,下顎:70.3±37.56 μm)と食片圧入の起こりうる離開度(150-200 μm)を明確にした。この研究によってコンタクトゲージ4)が商品化されている(図6)。離開度300 μm以上は「圧入されても嵌入停滞することはなく,再び出てきやすいので歯間部に対する為害作用は比較的少ない」14)としている。歯間離開度と食片圧入の関係は図7に示すとおりである16)

コンタクトゲージの診査基準は以下に示す通りである。

すなわち

50 μmが入らない場合:不可

50 μmが入り110 μmが入らない:適正

110 μmが入り150 μmが入らない:注意

150 μmが入る:不可

である17,18)。草刈は咬合面からの圧入を「垂直性の食片圧入」,横からは「水平性の食片圧入」と表現している15)。筆者らの学生時代は水平性の圧入を「迷入」と表現していたが,現在の歯周病学用語集の中にこの用語は見当たらない。さらに食片圧入の原因となりうるというプランジャーカスプは「対合歯の歯間部にくさび状に入りこみ,食片圧入や歯間離開を引き起こす咬頭。長い咬頭斜面や鋭い咬頭頂がこれにあたり,上顎臼歯部に多い」と定義されている4)が,客観的な指標はなく,その判定は主観的とならざるを得ない。

図2

前歯のコンタクトエリア

文献9より引用改変

図3

臼歯のコンタクトエリア

文献8より引用改変

文献の位置は赤字通り

図4

上顎:咬合面から見た位置

文献11より引用改変

図5

下顎:咬合面から見た位置

文献12より引用改変

図6

コンタクトゲージ

商品化されたコンタクトゲージ(上:GC_緑:50 μm,黄色:110 μm,赤:150 μm,下:YDM_緑:30 μm,青色:50 μm,黄色:110 μm)

図7

歯間離開度と食片圧入の頻度

金属板による歯間離開度の分布(青線)と食片圧入の頻度(赤線)

文献16より引用改変

コンタクトエリアの喪失と病因因子

コンタクトエリア喪失に伴う病因因子は,古くは「繊維性食物の停滞を来し,う蝕発生の好条件を与える」20)としてう蝕の原因とされていた。食片圧入と歯周疾患について,頭蓋骨の観察においてはその関連性は低い21)との見解があるが,臨床的研究22-25)では食片圧入とプロービングポケットデプス,および歯槽骨吸収とは関連性が高いとの見解が大勢を占めている。それゆえコンタクトエリアのあるべき姿を明確に理解して,適切な状態への回復に努める必要がある。

おわりに

本来,個体の違う抜去歯よりも年齢と性別が明確な個体歯からのデータの方が,信頼性が高いのは明らかである。そのため,本レビューでは,抜去歯よりも個体歯による文献7-9)を重視してデータ提示を行った。本邦の歯科大学には,日本人の個体歯(一人の個体による歯)がほとんど所有されていないのが実情である。筆者らの研究経験26)からも,年齢性別の明らかな日本人個体歯や頭蓋骨を数多く所有しているのは,東京大学総合研究資料館と慈恵会医科大学解剖学教室などの少数の研究機関に限られている。今後も両施設以上の日本人個体歯や頭蓋骨を保有するのは困難な状況であろうと思われるので,その研究範囲には限界がある。また,諸外国のデータとの差については十分考慮されなければならないが,歯周組織の解剖学的所見で,組織学的ポケット底から歯槽骨頂までの距離として生物学的幅径の基本となったGargiuloらの文献27)については,下顎骨のみながら李,浦郷ら28,29)の日本人の解剖学的所見とほぼ一致している。しかし,審美的な観点からコンタクトポイントと歯槽骨骨頂までの距離について,1992年Tarnowら30)の発表がなされ,「コンタクトポイントと歯槽骨骨頂までの距離が5 mm以内なら歯間乳頭は歯間部に存在している」との見解として引用数が多いが,わずか2ページの論文中のデータは統計処理もなされていない平均値のみの数値である。我々の知る限り,30年経った現在でもこの文献に対する日本人の検証的論文は見当らない。コンタクトエリアと歯周組織の関連は臨床に直結する重要な情報であることから,本邦のデータ収集による信頼できる研究結果が望まれる。

今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。

References
 
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