Nihon Shishubyo Gakkai Kaishi (Journal of the Japanese Society of Periodontology)
Online ISSN : 1880-408X
Print ISSN : 0385-0110
ISSN-L : 0385-0110
Dental Hygienist Corner
[title in Japanese]
[in Japanese][in Japanese][in Japanese][in Japanese]
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2024 Volume 66 Issue 1 Pages 43-47

Details

はじめに

2023年9月に日本歯科衛生学会第18回学術大会が開催されました。

3つのワークショップが同時進行で行われましたが,その中の一つが診療所委員会による「診療所歯科衛生士の魅力を語ろう!」という内容で,多くの学会の認定歯科衛生士が壇上で語りました。日本歯周病学会認定歯科衛生士のみならず,日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士,日本口腔インプラント学会専門歯科衛生士,日本小児歯科学会認定歯科衛生士等,さまざまな学会の認定歯科衛生士が一堂に会する機会は,歯科衛生士の学会だからこそだと感じました。その際,参加した一人の日本歯周病学会認定歯科衛生士から,他の認定歯科衛生士制度についても知ることができて良かったと感想をいただきました。

そこで同年10月の第66回秋季日本歯周病学会学術大会(長崎)会場にて,何名かの日本歯周病学会認定歯科衛生士に,知りたい他の認定歯科衛生士制度について聞いたところ,日本口腔インプラント学会専門歯科衛生士(日本口腔インプラント学会),う蝕予防管理認定歯科衛生士(日本歯科保存学会・日本歯科衛生士会認定分野B),糖尿病予防指導歯科衛生士(日本歯科衛生士会認定分野A)の3つが上位に挙がりました。

そこで今回の歯科衛生士コーナーでは,それぞれのエキスパートの皆様に各認定歯科衛生士制度の概略を説明していただきます。

1. (公社)日本口腔インプラント学会専門歯科衛生士について

現在では多くの学術団体がその専門家に向けて認定制度を設けており,公益社団法人日本口腔インプラント学会(Japanese Society of Oral Implantology以下JSOI)においても歯科衛生士に対して『インプラント専門歯科衛生士制度』を実施しています。この制度は旧社団法人において2007年に制定後,2008年に第1期生が誕生して以来,2023年10月現在の歯科衛生士会員数2,100名中で認定取得者は974人です。認定取得時における申請資格は以下の(1)~(6)のようになっており,認定試験合格後には認定証が交付され,5年ごとの更新のためには,学術大会20単位以上,専門歯科衛生士教育講座20単位以上を含む50単位以上の単位取得のために継続的研鑽が必要です。

(1)日本国歯科衛生士の免許証を有すること。

(2)2年以上継続して正会員であること。

(3)3年以上インプラント治療の介助又はメインテナンスに携わっていること。

(4)本会学術大会または支部学術大会に2回以上参加していること。

(5)インプラント専門歯科衛生士教育講座を2回以上受講していること。

(6)口腔インプラント専門医又は指導医1名の推薦があること。

JSOIでは認定を取得した歯科衛生士に対し『口腔インプラント治療における歯科衛生士業務指針』を掲げており,インプラント埋入手術前・インプラント埋入手術・インプラント補綴の各処置およびメインテナンスに係る診療補助業務の具体例が示されています。一例としてメインテナンスにおいては,「インプラント周囲溝(ポケット)のプロービングを行う」や「インプラント表面のプラークもしくは歯石を除去する」等があります。

インプラント治療に携わる歯科衛生士は,歯科医師・歯科技工士・受付等の関係者によるチームアプローチの一翼を担い,患者さんとの信頼関係を維持し長期にわたるメインテナンスを実践します。そのために認定制度は非常に有益なモチベーションであり,長期的安定に向けて学会や研修会参加時に収集した情報を患者さんに還元するための原動力になっています。インプラント治療を希望する患者さんは増加傾向にあり,より多くのインプラント専門歯科衛生士が笑顔で活躍できることを期待いたします。

2. 認定歯科衛生士(う蝕予防管理)について

1) 認定歯科衛生士(う蝕予防管理)とは

認定歯科衛生士(う蝕予防管理)は公益社団法人日本歯科衛生士会と特定非営利活動法人日本歯科保存学会との連携にて2020年に発足しました。日本歯科保存学会で審査を行い,その結果に基づき日本歯科衛生士会から認定されます。2022年までに約200人の認定歯科衛生士(う蝕予防管理)が輩出されました。

う蝕の発生には脱灰と再石灰化のバランスが関与していることはすでにご承知のことと思います。2000年,FDI(国際歯科連盟)は,う蝕の治療概念としてMinimal Intervention(MI)を提唱し,2002年の総会でMIの原則を採択しました。その基本方針は①口腔細菌叢の改善,②患者教育,③再石灰化療法,④最小の侵襲,⑤欠陥のある修復物の補修修復の5項目です。①~③は歯科衛生士の業務であり,認定歯科衛生士(う蝕予防管理)は,う蝕をプロセスとして把握し,常に初発および再発の予防管理を実施するプロフェッショナルとしての役割を担うといえましょう。

2) 認定歯科衛生士(う蝕予防管理)の取得方法

2020年から始まった認定歯科衛生士(う蝕予防管理)制度ですが,4年間の暫定期間を終え,2024年から本制度となります。

1) 申請資格

①日本歯科保存学会会員歴3年以上

②日本歯科衛生士会会員

③研修単位 23単位以上

2) 申請書類

① 専門審査申請書 ② 履歴書 ③ 日本歯科保存学会および日本歯科衛生士会会員歴証明書 ④ 研修単位証明書および実務経験証明書 ⑤う蝕予防管理に関する症例報告書 ⑥ 本会学術大会または研修会・プログラム等の出席・参加記録 ⑦ 日本国歯科衛生士免許証(写し)

「⑤う蝕予防管理に関する症例報告書」:経過観察期間1年以上の3症例,ただし対象者は18歳以上。症例報告書様式は日本歯科保存学会ホームページに掲載。

認定歯科衛生士(う蝕予防管理)|日本歯科保存学会(hozon.or.jp)

3) 審査方法

① 症例報告 書面審議

② う蝕予防管理に関する歯科医療・保健指導に関する筆記試験

2024年度試験に関しましては,本制度移行後初めての試験となりますので,申請資格,症例報告書数において特例措置を設けています。詳細は日本歯科保存学会ホームページをご確認ください。

患者自身がプラークコントロールしやすい環境を作り,口腔の健康を維持することが歯周病認定歯科衛生士の役割と考えます。そして,これはそのままう蝕予防管理にも当てはまるのではないでしょうか。国民の口腔健康管理をサポートするために,皆様にもぜひ認定歯科衛生士(う蝕予防管理)を取得していただきたいと思います。ご検討のほどよろしくお願いいたします。

3. (公社)日本歯科衛生士会認定歯科衛生士について

日本歯科衛生士会の認定歯科衛生士をご存知ですか?

日本歯周病学会認定歯科衛生士をすでに取得されている方,これから認定取得を目指して準備中の方に朗報です。自分の未来は自分で作る!キャリアアップしませんか?

無駄になる知識などありません。新しい知識を積み重ねて自分の強みを増やしていきましょう。日本歯周病学会認定歯科衛生士+日本歯科衛生士会認定歯科衛生士=∞(無限大)歯科衛生士です。

日本歯科衛生士会には認定分野A,B,Cの3分野,計12の認定歯科衛生士コースがあります。

1. 認定分野A:6コース

認定分野Aコース一覧を図1に示します。認定取得のためには,それぞれの研修コースを受講していただきます。

図1

認定分野A コース一覧

1) 生活習慣病予防(特定保健指導―食生活改善指導担当者研修)

歯科衛生士として,口腔環境に配慮した食生活改善指導および運動支援を行うための専門的知識および技術を身に付けられる認定コースです。歯科関係以外の講師が主となり,幅広く専門的な知識が得られます。

2) 摂食嚥下リハビリテーション

摂食嚥下障害を有する対象者に,歯科衛生士として適切で水準の高い摂食嚥下リハビリテーションを計画的,科学的に実践することを目標とし,リスク管理を含む全人的な観点から問題解決能力と臨床的態度を備えているかを確認していく認定コースです。オーラルフレイルがみられるようになった患者さんにも的確にアドバイスができるように学びます。

3) 在宅療養指導・口腔機能管理

在宅療養者の状態に応じた適切かつ効率的な口腔機能管理を提供するための知識・技術・態度,さらには患者家族や多職種連携を図るためのコミュニケーション力を身につける認定コースです。診療所に通院していた患者さんが在宅療養になっても継続的に診ることができるよう学びます。

4) 糖尿病予防指導

糖尿病予防の歯科保健指導および管理にかかる専門的な知識・技術,また地域社会に貢献できる医学的,歯科的な知識,歯科保健学的技能を修得できる認定コースです。歯周病と糖尿病の関係はご存知のことと思いますが,さらに深めることができます。

5) 医科歯科連携・口腔機能管理

医科歯科連携のもと医科疾患患者の口腔健康管理を実践するために必要な知識,技術を修得できる認定コースです。急性期・回復期などの口腔機能管理にかかわる専門的な知識・技術,総合病院における多職種連携に必要な医学的知識を修得します。

6) 歯科医療安全管理

組織的な医療安全体制を確立,定着させるために歯科衛生士として必要な基本的知識・技術・態度を修得する認定コースです。日々の臨床において,医療連携,多職種連携に対応し,歯科医療機関における組織的な医療安全管理体制を実施するため,高度で総合的な医療安全,感染対策の実践および指導技術を学びます。

認定分野A取得までの流れは図2をご参照ください。

受講基準となる日本歯科衛生士会生涯研修制度の研修コースは表1をご参照ください。

認定分野A各コース共通の受講者基準は以下の通りです。

・生涯研修制度専門研修において2コース・30単位以上を修得していること(各コース基準を参照)

・歯科衛生士業務経験が3年以上(うち,各認定分野の実務経験1年以上)であること

認定分野A各コースは,それぞれ受講者基準が異なりますので,日本歯科衛生士会ホームページ「認定歯科衛生士について」をご確認ください。ページ一番最後の「認定歯科衛生士制度施行細則別表」をご覧いただくと,詳細な受講基準が掲載されております。

図2

認定分野A取得までの流れ

表1

受講者基準の生涯研修制度の研修コース

2. 認定分野B:5コース

歯科医療の特定の専門分野において高度な知識・技術を必要とする分野であり,関連する専門学会等との連携により特定する分野です。現在,審査機関が審査・推薦した歯科衛生士を,日本歯科衛生士会(認定機関)が次の分野で認定します。

認定分野B一覧と認定取得までの流れは図3, 4をご参照ください。前述されている認定歯科衛生士(う蝕予防管理)は,認定分野Bとなります。

図3

認定分野Bコース一覧

図4

認定分野B取得までの流れ

3. 認定分野C

研修指導者・臨床実地指導者等講習会を修了し,日本歯科衛生士会の認定歯科衛生士制度における認定分野Aまたは認定分野Bのうち1分野以上の認定証を有する方が対象になります。

認定分野Cにおける指導者等講習会の受講者基準は以下の通りです。

・下記(1)~(4)のいずれかに該当し,原則として,都道府県歯科衛生士会長または所属長等の推薦のある方

(1)都道府県歯科衛生士会等において研修事業の企画運営を担当している。

(2)歯科衛生士学校養成所の専任教員,実習指導員

(3)臨床実習施設の指導教員(歯科診療所,病院等)

(4)上記のほか,臨地実習施設等において実習生の指導を行っている。

日本歯科衛生士会会員の方は,日本歯科衛生士会ホームページの会員ページで,ご自身の研修履歴が確認できます。あとどの研修を受講すれば認定研修受講基準に達するか簡単に確認できるシステムです。

おわりに

超高齢化に伴う誤嚥性肺炎の増加により,現在介護における『口腔ケア』は多職種が担っており,毎日就寝前の歯肉縁上のプラーク・コントロールに関しては,御家族のみならず介護職の方々の努力により日々成り立っているのが現状です。一方,『口腔機能管理』と『口腔衛生管理』は,いかなる対象者にかかわらず,歯科医療職のみが行う行為です。とりわけ『口腔衛生管理』は歯周治療と重なる部分が多く,歯科衛生士がプロとして力を発揮できる行為です。『口腔衛生管理』は歯肉縁上だけの概念ではありません。

日本歯科衛生士会の生涯研修制度の研修コース(表1)を参照すると,基本研修の臨床研修のトップが「歯周治療の基本技術」であるように,「歯周治療の基本技術」がプロの歯科衛生士として最低限押さえておかなくてはならない技術であることは間違いありません。歯科衛生士として歯周治療・歯周病再発予防・歯周病重症化予防ができてこそ,他の認定歯科衛生士を取得しても活かせると考えます。今後,歯科衛生士も他の医療・介護職と連携する機会は必ず増えていきます。他職種(例えば,看護師,保健師,管理栄養士,言語聴覚士,理学療法士,作業療法士,薬剤師,介護福祉士等)と連携する場合は,プロ同士の連携なので,歯科衛生士としてどれだけプロであるかが要点となります。歯周治療を全うできることが歯科衛生士のプロとしての基盤であることも間違いありません。なぜならば,他の職種は,歯肉縁下のプラーク・コントロールができないからです。

現在,日本歯周病学会歯科衛生士関連委員会では,日本歯科衛生士会と協力して,歯科衛生士教育講演Bを各都道府県歯科衛生士会にて年2回開催しています。内容は「歯周治療の技術基本」の項目内容から,各都道府県歯科衛生士会の要望に応じて行っています。これから日本歯周病学会認定歯科衛生士を取得される方向けの内容ですが,認定を更新される方に向けても最新の情報等をお届けしようと考えています。日本歯周病学会のホームページと各都道府県歯科衛生士会のホームページで周知しておりますので,お近くの都道府県で開催される際には,是非ご参加ください。

今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。

 
© 2024 by The Japanese Society of Periodontology
feedback
Top