Nihon Shishubyo Gakkai Kaishi (Journal of the Japanese Society of Periodontology)
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ISSN-L : 0385-0110
Case Report
A case of aggressive periodontitis that improved with initial periodontal therapy
Miyu IwasakaHiromi KusabaTakashi Kaneko
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2025 Volume 67 Issue 2 Pages 85-94

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要旨

侵襲性歯周炎は急速な歯周組織破壊を特徴とする歯周炎であり,10~30歳代から発症すること,家族内集積があること,また特定の歯周病原細菌感染が関与することが報告されている。歯周治療においては抗菌薬の併用が考慮されるが,従来の歯周治療でも良好な治癒が得られることが報告されている。

本症例は27歳女性で,ブラッシング時の出血を主訴に来院した。初診時の歯周組織検査の結果,全顎的に深い歯周ポケットを認め,4~5 mmの歯周ポケットは30.4%,6 mm以上は14.3%,BOP陽性率は75.6%であった。またX線検査では,限局型侵襲性歯周炎に特徴的な切歯と大臼歯の骨吸収パターンを認めた。特に11は骨吸収が根尖付近まで達していた。歯周基本治療開始時,歯肉の発赤腫脹,出血が多く,PCRも高かったため週に1回の間隔で口腔衛生指導を行い,並行してスケーリング・ルートプレーニング(SRP)などの歯周基本治療を行った。その結果,歯肉の炎症は改善がみられ,4 mm以上の歯周ポケットは1か所に減少したため歯周外科治療を行わずサポーティブ・ペリオドンタル・セラピー(SPT)に移行した。SPT開始から一年半経過後も歯周組織の状態は良好に保つことができた。本症例から侵襲性歯周炎患者に対し,徹底的なプラークコントロールとSRPによる非外科的歯周治療で重度侵襲性歯周炎は改善されることが分かった。

Abstract

Aggressive periodontitis is a rapidly progressive form of periodontitis that occurs relatively early in life, between the ages of 10 and 30 years. It has been reported that familial aggregation/infection with specific periodontopathic bacteria is often observed in this type of periodontitis. Although the usage of adjunctive antibiotic therapy might be considered in periodontal treatment, conventional periodontal treatment without antibiotics has also been reported to result in successful healing of periodontal tissue.

The patient reported herein is a 27-year-old woman who visited our hospital with the chief complaint of gingival bleeding at the time of tooth brushing. Clinical examination revealed the presence of deep periodontal pockets across both the maxillary and mandibular arches. The percentages of teeth with a probing pocket depth (PPD) of 4-5 mm and ≧6 mm were 30.4% and 14.3%, respectively. Bleeding on probing (BOP) was positive in 75.6% of teeth. A dental radiograph showed a pattern of severe localized incisor and first molar bone resorption that is typically observed in localized aggressive periodontitis. Especially, vertical bone resorption reached almost the tooth apex in #11. Because of gingival redness, noticeable swelling and bleeding from gingival margin, and also the high plaque control record (PCR) percentage at the start of initial periodontal therapy, the patient was given instructions on oral hygiene once a week, and concurrently received initial periodontal treatments such as scaling and root planing (SRP). As a result of the treatment, the gingival inflammation improved and the number of sites with a PPD of ≧4 mm decreased to one. Thus, periodontal surgery was not performed and the patient was transitioned to supportive periodontal therapy (SPT). The condition of the periodontal tissue has remained satisfactory even at one and half years after the start of SPT. This clinical case demonstrates that severe aggressive periodontitis can improve with conservative treatment alone, including strict plaque control and SRP, without surgery.

緒言

侵襲性歯周炎は全身的に健康な個人におこる急速に進行するタイプの歯周炎である。慢性歯周炎と比較して侵襲性歯周炎の患者はより急速な歯肉の付着の喪失と歯槽骨吸収が10~30歳代の人生の早期に起こり,歯周炎と診断された時の年齢がしばしば診断の基準として用いられる。侵襲性歯周炎の罹患率は,最近のシステマティックレビューでは1.6%と報告されているが,世界的には地域により大きくばらつきがあるようである1)。本邦では0.05~0.1%とされている2)。病変部のプラークからはAggregatibacter actinomycetemcoitansPorphyromonas gingivalisなどの歯周病原細菌が高頻度で分離され3-5),慢性歯周炎と同じく細菌性プラークの歯周組織への感染と細菌への宿主免疫炎症反応が歯周組織破壊に関係していると考えられている。さらに侵襲性歯周炎には家族内集積が認められること,そして好中球や単球・マクロファージの機能異常などの免疫応答の変化が認められることから,細菌学的要因に加え,遺伝的な宿主性素因がより強く関与していると推測されている6)。侵襲性歯周炎は限局型もしくは広汎型に分類される。広汎型侵襲性歯周炎の臨床的炎症所見は慢性歯周炎のものと類似しているのに対して,限局型のものは薄いバイオフィルムと相対的な臨床的な炎症所見の欠如にもかかわらず,しばしば大臼歯と切歯に重篤な歯周組織破壊がおこることが知られている6)。侵襲性歯周炎患者の歯周治療のコンセプトとゴールは慢性歯周炎のものと明らかな違いはなく,細菌や細菌性沈着物の徹底的な除去とプラークコントロールしやすい歯周組織環境を整えることによりなるべく長期間にわたり多くの歯を保存できるようにすることである。年齢に対して相対的に骨吸収が大きいことから,より大きな歯槽骨再生や付着を獲得する必要があり,そして細菌感受性が高く進行リスクが高いことから積極的な治療方法が要求される。一方,侵襲性歯周炎患者はSRPなどによる非外科的歯周治療が奏功し,良好な治癒もしくは病状安定状態まで改善させ,サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)により,歯周組織の状態を長期間良好に維持できることも報告されている7,8)。今回,非外科的な歯周基本治療のみで良好な結果が得られた広汎型重度侵襲性歯周炎の症例を報告する。

症例

1  患者

患者年齢:27歳 性別:女性

初診年月:2021年3月

主訴:歯磨きのときに出血がある。

現病歴:数年前からブラッシング時の出血を自覚していたが放置していた。2週間前に多量の出血があったため福岡歯科大学口腔医療センターを受診した。

既往歴:特記事項なし。

家族歴:兄弟なし。両親が重度歯周炎で歯周外科を含む歯周治療を行っている。

2  現症

1に初診時の口腔内写真,10枚法デンタルエックス線写真,歯周組織検査結果を示す。

図1

初診時(2021年3月)の状態

(A)口腔内写真,(B)エックス線写真,(C)歯周組織検査結果

1) 口腔内所見

全顎的な歯肉の発赤腫脹,歯肉縁上と歯肉縁下歯石の多量沈着,11の挺出と12,11間の歯間離開を認めた。

全顎的にプラークが付着しており,O'Learyのプラークコントロールレコード(PCR)は44.6%であった。

2) エックス線所見

デンタルエックス線では16,11,21,24,25,26,36,31,41,46に骨吸収を認め,特に11は骨吸収が根尖付近まで達していた。

3) 歯周組織検査結果

歯周ポケットのプロービング深さ(PPD)は2 mmから8 mmの範囲で,4~5 mmの部位が30.4%,6 mm以上の部位は14.3%あった。プロービング時の出血陽性率は75.6%であった。PISAは1606.8 mm2であった。16,14,11,31,41にMillerの分類1度の動揺を認めた。根分岐部病変は触知できなかった。

3  診断

広汎型侵襲性歯周炎 ステージIII グレードC

4  治療方針

プラークが多く残存しており歯肉の発赤腫脹が全顎的にみられたためまずはプラークコントロールを徹底させる必要があった。炎症が収まるまでは週に一度来院していただきその都度口腔衛生指導と口腔清掃を行うこととした。また歯周基本治療後歯周ポケットの改善がみられなければ歯周外科を行うことも検討することとした。

5  治療計画

1)歯周基本治療

(1)口腔清掃指導

(2)スケーリング・ルートプレーニング(SRP)PPD4 mm以上の部位

(3)咬合調整(11,21)

2)再評価

3)歯周外科処置(再評価時に4 mm以上のポケットを有する部位)

4)矯正治療(11)

5)サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー(SPT)またはメインテナンス

6  治療経過

治療開始前に十分な説明を行い,治療期間や治療内容等について同意を得た後,歯周治療を開始した。

1) 歯周基本治療(2021年3月~7月)

1) 口腔衛生指導,歯肉縁上スケーリング

患者は過去に歯科医院で歯周病について説明を受けたことがなかったため,初めに歯周病の原因や進行について説明し,継続的な治療の重要性を理解してもらった。特にこの症例は侵襲性歯周炎であることから,年齢に比較して急速に歯周組織破壊が起こること,少量のプラーク残存でも過剰に宿主反応をみせるためプラークコントロールを徹底する必要があること,また定期的な通院が必要であることを説明した。次に歯周組織検査とPCRの結果を画像管理説明システム(ビジュアルマックス,メディア株式会社,東京)を用いて説明し,口腔内の状態を視覚的に伝えた。実際に患者に普段通りに磨いてもらうとストロークの大きい横磨きをしていた。また歯ブラシはヘッドの大きいものを使用しており,補助的清掃用具の使用はなかった。顎模型と歯ブラシを使って歯周ポケットの入り口付近に毛先が当たるようにスクラビング法で磨くよう指導し,その後患者の口腔内で磨いて見せ,患者自身で手鏡を使用し歯ブラシの動きを確認しながら磨いてもらった。来院時に正しくブラッシングが行えているか確認した。コンパクトヘッドで最後臼歯まで届きやすい歯ブラシ(ルシェロ歯ブラシP20M,株式会社ジーシー,東京)の使用を勧め購入していただいた。初診時,2回目のPCR値は30%を超えていたが,3回目では7.1%と一桁に下がった。またそれ以降から歯間ブラシ(DENT EX歯間ブラシ4S,ライオン歯科材株式会社,東京)を挿入可能な部位の左右の歯に沿わせて動かすこと,フロッシング(ルシェロフロスミントワックス,株式会社ジーシー)を行うことを指導した。慣れるまでは歯肉を傷つけないよう鏡で確認しながら使用するよう指導した。適切なブラッシング,補助的清掃用具の使用によりプラークコントロールが安定し次第に歯肉からの出血や全顎的な歯肉の発赤腫脹も減少した。患者はブラッシング時の出血が減少したことで口腔内の状態が改善していることを実感し歯周治療に対するモチベーションが上がった。自宅でも歯垢染色を行いたいとのことでプラーク染色液(DENTリキッドプラークテスター,ライオン歯科材株式会社,東京)を購入した。口腔衛生指導と並行して超音波スケーラーや手用スケーラーを用いた歯肉縁上歯石の除去,ロビンソンブラシと研磨ペースト(クリーニングジェル,ウェルテック株式会社,大阪)を用いた機械的歯面清掃(PMTC)を行った。

2) SRP

2にSRP開始時の歯周組織検査結果を示す。セルフケアの向上がみられるまで口腔衛生指導を行い,プラークコントロールが良好な状態が維持されるようになってから歯周組織検査を行った。PPDが4 mm以上の部位に対してSRPを6回に分けて行った。SRPは0.0025%アドレナリン含有2%リドカイン(オーラ注歯科用カートリッジ,株式会社ジーシー昭和薬品,東京)を用いた浸潤麻酔下にて超音波スケーラーとグレーシー型キュレットスケーラー(ソルフィー,株式会社モリタ,東京)のペリオチップを用いて行った。12,11のSRP後に歯肉退縮に伴い歯根面が露出し知覚過敏があったため知覚過敏抑制剤(ナノシール,日本歯科薬品株式会社,山口)を塗布した。SRP後は歯肉の腫脹は改善がみられ歯間ブラシの挿入が可能になった部位も増えた。

図2

SRP開始時(2021年4月)の状態

歯周組織検査結果

3) 咬合調整

SRP後に咬合検査を行った。11,21に前方運動時のフレミタスを認めたため咬合調整を行った。

4) 再評価(2021年7月)

SRP後の歯周組織検査結果を図3に示す。36,41,46に歯周ポケットが残存した。PCRは15.2%でプラークコントロールは良好であり,BOPは4.8%,PISAは62.4 mm2に減少していた。6 mmの歯周ポケットが残存した36,46に対して歯周外科治療を行うことを提案したが,希望されなかったため再SRPを行うことにした。

図3

SRP後(2021年7月)の状態

歯周組織検査結果

2) 再SRP

4 mm以上のPPDが残存している36,46に対して再SRPを行った。

3) SPT(2021年9月~)

4にSPT移行時の口腔内写真,歯周組織検査結果を示す。歯肉の発赤腫脹は初診時と比べほとんど消失し,歯間ブラシがほぼすべての部位に挿入できるようになった。13,21,36にPPD4 mmの歯周ポケットが残存したがその他の部位は3 mm以下に改善され,BOPは4%に減少した。PISAは57 mm2であった。動揺度は11,21,31,41が1度であった。

その後も来院時は毎回染色液を用いた口腔衛生指導を行い,歯ブラシの角度や歯間ブラシの使用法が正しいか確認しながらSPTを継続した。SPT開始後6ヶ月後の来院時に,13の口蓋側の歯肉の腫脹があり,歯周ポケットが6 mmに深化していたため,浸潤麻酔下にて再SRPを行った。3か月後のSPT時歯周ポケットは3 mmに改善された。

5に最新の口腔内写真,10枚法エックス線写真,歯周組織検査結果を示す。4 mm以上の歯周ポケットは21の1か所に改善し,BOPは12%,PCRは18%と良好な状態が維持できていた。令和5年1月までSPTで定期管理を行ってきたが,福岡歯科大学口腔医療センターの博多区から早良区への移転に伴い終診となった。

図4

SPT開始時(2021年9月)の状態

(A)口腔内写真,(B)歯周組織検査結果

図5

最終SPT時(2023年1月)の状態

(A)口腔内写真,(B)エックス線写真,(C)歯周組織検査結果

考察

本症例は27歳と若年でありながら,前歯と第一大臼歯の重度の骨吸収と全顎的に深い歯周ポケットを認めた。歯周炎と関連する全身疾患も認められず,また4 mm以上の歯周ポケットが44.6%の部位に認められたこと,#11の歯槽骨吸収がほぼ根尖付近に達していたことから侵襲性歯周炎,ステージIII,グレードCと診断した。侵襲性歯周炎は1999年に米国歯周病学会(AAP)により,3つの重要な特徴,すなわち急速な付着の喪失や歯槽骨吸収などの歯周組織破壊があること,歯周炎以外には健康であること,そして家族内集積により定義され,歯周炎の進行が緩慢な慢性歯周炎と区別されている9)。2006年の日本歯周病学会による歯周病分類システムにおいても侵襲性歯周炎はAAPで定義されたものと同一の疾患として分類されている10)。そして2017年のAAPと欧州歯周病連盟(EFP)共催の「World Workshop on Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions」において慢性歯周炎と侵襲性歯周炎は一つのカテゴリーの「歯周炎」に統合され,疾患の進行度と進行リスクによる「ステージ」と「グレード」により分類することが提案された11)。しかしながら組織破壊の進行が急速であること,限局型では切歯と臼歯に重篤な組織破壊が認められること,家族内集積,バイオフィルムの量が少ないなどの稀有な特徴を有する侵襲性歯周炎それ自体の存在は否定されていない12)。日本歯周病学会も,これまで長年蓄積されてきた臨床上および研究上の貴重な資産を途切れることなく継続的に活用できるように,2006年の歯周病分類システムに2017年のAAP/EFPの新分類を併記する暫間的な対応を継続している。本症例では,エックス線検査では前歯と第一大臼歯に限局した歯槽骨吸収が認められたが,4 mm以上の歯周ポケットが44.6%の部位に認められたことから限局型ではなく広汎型と診断した。限局型そして広汎型の侵襲性歯周炎の分類はよく議論されているが,広汎型は限局型とは別の疾患ではなく,むしろ限局された限局型のものが進行した結果なのかもしれない12)。Gunsolleyらは血清抗体が歯周病原体に対して効果的でない場合,侵襲性歯周炎は限局型から広汎型に広がることを提唱している13)。本症例も,宿主免疫応答が効果的でなかったため限局型から広汎型に進行した可能性も考えられる。

患者の主訴は歯磨きの時の出血であった。数年前からブラッシング時の出血を自覚していたが放置しており,2週間前に多量の出血があり当院を受診した。初診時の口腔内所見は全顎的に歯肉の発赤腫脹,歯肉縁上歯石の多量沈着,11の挺出と21,11間の歯間離開を認めた。全顎的にプラークが付着しており,O'Learyのプラークコントロールレコード(PCR)は44.6%であった。プラーク付着量が多く歯肉の発赤腫脹が全顎的に見られた。患者は過去に歯科医院で歯周病についての説明や口腔衛生指導も受けたことがなかったため,歯周病の原因や進行についてとプラークコントロールの重要性について説明することから始めた。また,口腔内の状態を視覚的にわかりやすく伝えるため歯周組織検査とPCRの結果を画像管理説明システム(ビジュアルマックス)を用いて説明を行った。侵襲性歯周炎においても歯周治療の基本は変わらず,患者のプラークコントロールの徹底と習慣化が重要であると考えた。また,炎症の改善を図ることが必要であると考えた。そこで,炎症が治まるまでは週に1度来院していただきその都度口腔衛生指導と口腔清掃を行った。患者はヘッドの大きい歯ブラシを使用しストロークの大きい横磨きを行っていた。コンパクトヘッドで最後臼歯まで届きやすく,毛先がポケットに入りやすいテーパー毛の歯ブラシでのスクラビング法を指導した。歯肉からの出血が減少してきてから,歯間ブラシとデンタルフロスでの歯間・隣接面の清掃法を指導し習慣づけた。徹底した口腔衛生指導の結果PCRの数値は7.1%に改善した。また平行して行った歯肉縁上のスケーリング,機械的歯面清掃により次第に歯肉からの出血も減少していった。この頃から患者は口腔内の状態が改善していることを実感するとともにモチベーションが上がりプラークコントロールの徹底と習慣が定着していった。

患者のセルフケアの向上後に歯肉縁下のデブライドメントのためSRPを開始した。慢性歯周炎同様,侵襲性歯周炎においてもSRPによる歯肉縁下のデブライドメント単独の処置よりも,アモキシシリンとメトロニダゾールの全身投与を併用したほうが,より臨床的にも細菌学的にもメリットがあることが多くの論文において示されており14-17),最近のEFPのS3ガイドラインにおいても侵襲性歯周炎において全身的な抗菌薬の投与が推奨されている17,18)。さらに非外科的治療時の抗菌薬の併用は35歳以下の若年の侵襲性歯周炎患者もしくは55歳以下の慢性歯周炎で35%以上に5 mm以上の歯周ポケットを有する患者に制限すべきであるというコンセンサスレポートも報告されている19)。しかしながら薬剤耐性菌の増加という世界的な脅威を考えると20,21),抗菌薬の使用は侵襲性歯周炎という診断のみで決定するのではなく,患者ごとに臨床的に関連する利点を個別に判断することが全身的な抗菌薬の適応に重要であろう。本症例では全身的な抗菌薬の投与を行わずにSRPを行い,SRPに対する歯周組織の反応性が悪いようであれば抗菌薬の全身投与を考慮することにした。ちなみに抗菌薬の投与時期はSRP直後に行っても,SRP後3か月において行っても効果は同等であることが示されている22)。本症例では歯周基本治療がとてもよく奏功し,SRP後の再評価において歯周組織の状態は顕著に改善し歯肉の炎症はほぼ消失したことが確認できた。SRP後のPPDは13,21,36に4 mmの歯周ポケットが残存したがその他の部位は3 mm以下に改善され,BOPは4%に減少したため,抗菌薬の全身投与は行わなかった。両側上下顎大臼歯には骨吸収が存在していたものの根分岐部病変が認められなかったことも,SRPに対する反応性がよかったことと関連しているかもしれない。

本症例においては,治療計画の段階では歯周基本治療後の5 mm以上の歯周ポケットに対して歯周外科治療を計画していた。実際,歯周基本治療後に36,46に深い歯周ポケットが残存した。感染源が完全に除去できていないと判断し,歯周外科による明視下でのデブライドメントを提案したが,患者が恐怖心のため拒んだため再SRPを行った。再SRPにより歯周ポケットが改善したためSPTに移行した。SPT移行時に深い歯周ポケットが残存している場合はSPTを中断すると歯周病が悪化しやすいこと,また侵襲性歯周炎のため再発するリスクが高いことから,これからの長い人生,歯周組織を安定した状態に保つためには定期的なSPTを行っていくことが重要であることを理解させた。SPTに移行して6か月後,安定していた13に炎症と歯周ポケットの深化が認められた。SRPは4 mm以上の歯周ポケットでは完全な歯石の除去が難しいことが示されており23,24),おそらく歯肉縁下歯石などの感染源が残存していたものと考えた。再びSRPを行って再付着を獲得することができたが,他にも歯石の取り残しがある可能性もありSPTでは注意深い検査が必要となろう。

今回の発表を通して広汎型重度侵襲性歯周炎は,プラークコントロールの徹底と炎症の除去・コントロールを行うことで抗菌薬の併用や歯周外科を行わず歯周基本治療のみで良好な結果が得られることがわかった。また歯周治療の成功とSPTの継続には患者教育とプラークコントロールの徹底が必要であり,歯科衛生士の果たす役割は重要であると実感した。本症例はSPT途中で中断となったが,患者のライフスタイルの変化などにも気を配り,再発や進行に細心の注意をはらいSPTを継続していくことが重要と思われる。

結論

侵襲性歯周炎患者に対してプラークコントロールの徹底により非外科的歯周治療を行うことで良好な結果を得ることができた。

謝辞

本稿をまとめるにあたり,多大なご指導とご助言をいただきました福岡歯科大学医科歯科総合病院口腔医療センターのスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。今回日本歯周病学会の学会誌で症例報告を行うことに関して患者の同意を得ている。今回の論文に関連して,掲示すべき利益相反はありません。

本報告は第65回秋季日本歯周病学会学術大会(2022年9月)において発表した内容に一部追加,改変して掲載した。

今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。

References
 
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