2025 Volume 37 Issue 1 Pages 1-2
植物細胞内では、オルガネラ同士が活発に相互作用している。色素体やミトコンドリアなどのオルガネラは、もともと別の生物が共生して進化したものであり、その動態は生物間相互作用の象徴と言える。今なお植物は、日々微生物の攻撃に晒されながらも、同時に共生関係を築くなど、植物 – 微生物間では様々な相互作用が生じている。最新のイメージング技術は、そのような相互作用の現場を捉えることを可能にした。日本植物学会第88回大会にて開催された本シンポジウムでは、光学顕微鏡や電子顕微鏡の最新のイメージング技術を駆使し、オルガネラや微生物と植物との相互作用の実態に迫る研究を行なっている演者の方々が講演し、様々な解析法の紹介を通して、「相互作用をイメージングする」という新しい視点で議論がなされた。
In plant cells, organelles actively interact with each other. Organelles such as plastids and mitochondria originally evolved through the symbiosis of different organisms, and their dynamics are symbolic of the interactions between organisms. Plants still face daily attacks from microorganisms, but at the same time, various plant-microbe interactions, such as symbiotic relationships, are taking place. Recent imaging techniques have made it possible to capture such interactions in situ. At this symposium, held at the 88th Annual Meeting of the Botanical Society of Japan, speakers conducting research on organelle-organelle and microbe-plant interactions using the latest imaging techniques of optical and electron microscopy gave lectures. By introducing examples of their analyses, discussions were held from a new perspective of imaging "interactions."
植物は、微生物や細胞内オルガネラ間との複雑な相互作用を通じて、環境に適応し、生存している。これらの相互作用は、植物の成長、発達、病害抵抗性など、多岐にわたる生命現象を制御している。従来の研究では、遺伝学や生化学的手法が主に用いられてきたが、動的な細胞内プロセスや空間的な情報を得るには限界があった。近年、蛍光顕微鏡や電子顕微鏡などのイメージング技術が飛躍的に進歩し、生きた細胞内の分子やオルガネラの動きをリアルタイムで、また、大容量かつ高分解能で観察できるようになった。本シンポジウムでは、これらの最先端のイメージング技術を用いて、植物/微生物/オルガネラの相互作用を多角的に解析している研究者の方々に講演をお願いし、最新の研究成果を紹介して頂いた。特に、 従来の研究では解明が困難であった、 細胞内オルガネラの動態や形態、 細胞内における物質輸送やシグナル伝達経路の動態、 植物と微生物の共生関係の成立メカニズムなど、 様々なイメージング技術とその解析例を紹介して頂いた。
◯永田 典子(日本女子大・理)
広域電子顕微鏡法と 3D 解析で捉えた種々のオルガネラコンタクト
◯真野 昌二1,3,及川 和聡2,3(1基生研・オルガネラ制御,2基生研・共生システム,3総研大・先端学術院)
植物機能を支えるペルオキシソーム相互作用の分子機構
◯田村 康(山形大・理)
動的なオルガネラコンタクトサイト形成によって調節される脂質代謝機構
◯西田 帆那,下田 宜司,今泉(安楽)温子(農研機構・生物機能利用研究部門)
土壌中の根粒共生ライブイメージングを可能にする Rhizosphere Frame の開発
◯別役 重之(龍谷大・農)
植物-病原細菌相互作用の時空間ダイナミクス
◯宮島 俊介1,杉田 亮平2(1石川県立大・生物資源工学研究所,2名古屋大・アイソトープ
総合センター)
蛍光および RI イメージングの統合による土壌環境での植物-微生物相互作用の可視化
◯豊岡 公徳(理研・CSRS)
根圏電顕イメージング: TEM アトラスのように根圏を観る断面研磨 SEM 法の開発
前半ではオルガネラ相互作用、後半では植物-微生物相互作用の講演が行われた。オーガナイザーの永田(日本女子大)は、TEMの広域撮像技術および切片SEM法を用いて見出した、色素体やミトコンドリアにおけるコンタクトサイトの大規模解析について報告した。3次元再構築し立体視することで、種々のオルガネラがユニークな形態で存在し、他のオルガネラと相互作用していることを示した。続いて、基生研の真野先生から、蛍光イメージングによりペルオキシソームを中心としたオルガネラ相互作用の話があった。ペルオキシソームは光合成や種子発芽の際に、他のオルガネラと物理的に結合したり、物質をやり取りしたりすることで、機能を調整していることが紹介された。また、本シンポジウムを共催して頂いた科研費 学術変革(学術研究支援基盤形成)「先端バイオイメージング支援プラットフォーム ABiS」の活動についてお話し頂いた。山形大の田村先生からは、酵母を用いて、オルガネラ膜コンタクトサイト (MCS) を可視化するための新しい手法を開発し、MCSが脂質輸送を仲介するメカニズムを明らかにした研究が紹介された。さらに、MCSに存在するタンパク質を網羅的に同定する手法の開発による、新たなMCSの機能解明と最新知見の報告がなされた。
後半は、植物-微生物の相互作用の研究を行っている先生に講演をお願いした。農研機構の西田先生からは、土壌中の植物の根をそのまま観察できるRhizosphere Frameという装置の開発が紹介された。この装置と蛍光タンパク質で標識した根粒菌を用いることで、根粒菌が植物の根にどのように感染し、根粒を形成していくのかを、土壌の中でリアルタイムに観察できることが報告された。龍谷大の別役先生からは、ライブイメージング技術を用いて、植物と病原菌の戦いの時間的・空間的な変化を詳細に解析し、その複雑な相互作用を明らかにした研究が報告された。石川県立大の宮島先生は、シロイヌナズナと糸状菌をモデルに、蛍光イメージングとRIイメージングを組み合わせることで、土壌環境における根と微生物の相互作用を可視化する技術を開発し、得られた成果について報告された。最後に、オーガナイザーの豊岡(理研)から、材料科学分野で用いられる切断機と研磨機を用いることで、根圏をそのままの状態で電顕観察できる断面研磨SEM法を開発し、従来観察が難しかった植物と土壌微生物の超微形態を詳細に観察した解析例を紹介した。これらの講演内容の一部は、この特集にミニレビューとして掲載され、宮島先生からは、ムシラージの新しい可視化技術開発を報告するオリジナルアーティクルを掲載しているので、是非お読み頂きたい。
講演者の皆様には可視化技術の開発とともに、とても綺麗な顕微鏡写真と動画に富んだ研究発表を頂き、各講演では時間を超過するほど質疑応答が活発で、参加者の皆様との間で大変有意義なディスカッションができた。本シンポジウムの講演を快くお引き受けくださった演者の皆様に深く感謝する。また、共催して頂いた日本植物形態学会、先端バイオイメージング支援プラットフォームABiSに感謝する。

写真:講演者の先生とオーガナイザー
左より、豊岡公徳(オーガナイザー)、別役重之先生、田村康先生、真野昌二先生、宮島俊介先生、西田帆那先生、永田典子(オーガナイザー)