Journal of Innovation Management
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Transition from Animal-based to Plant-based Protein: Impact of Development of Sustainable Food Production System on Mother Earth (Interview with Dr. Harry Aiking at VU University, Amsterdam, the Netherlands)
Kosuke OgawaKyoko Aoki
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2020 Volume 17 Pages 171-191

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1  はじめに:インタビューの目的と背景

2019年5月21日(午前10時~12時)、環境科学者として著名なアムステルダム自由大学のハリー・エイキング博士の研究室を訪問した。インタビューの目的は、エイキング博士が主導して組織した“PROFETAS:PROtein Foods, Environment, Technology and Society”のプロジェクトの実際と、学際的な研究プロジェクトがはじまった社会的な背景を理解するためである。PROFETASは、オランダ政府などの資金援助により2000年から2006年まで継続した学際的な研究プロジェクトであった。

筆者らは、2018年度から3年間の計画で、文部科学省助成研究で「農と食のイノベーション」をテーマに、農業と食品産業で起こっているイノベーションの実態をリサーチしている1。その文献レビューの準備プロセスで、ハリー・エイキング博士(Dr. Harry Aiking)の複数の研究業績を知ることになった(たとえば、Aiking & de Boer, 2018Aiking, de Boer & Verejken, 2006)。エイキング博士は100を超える研究論文の共同著者であるが、主たる研究領域は、「食品タンパク質の生産と消費が地球環境に及ぼす影響を多面的に研究すること」であると筆者らは理解している。

博士らの研究成果は、近年になって食品業界のベンチャー企業(Beyond Meats、Impossible Burgerなど)が手掛けている「植物由来の肉(植物肉)」(plant-based meat)の商品開発をドライブしている2。また開発に多大な影響を与えたと思われるエイキング博士が中心になってまとめたPROFETASの研究成果は、ドイツの出版社Springerから14年前に書籍として刊行されている。そして、Harry Aiking et al. (2006), Sustainable Protein Production and Consumption: Pigs? or Peas?3は現在も版を重ねて、多くの研究者や実務家に読み継がれている。

書籍の刊行から14年が経過しているが、この書籍の内容は、いま読み返しても決して古びてはいない。本インタビュー資料においても、同書を何か所かで引用することにする。なお、オランダアムステルダムでのインタビューに先立ち、エイキング博士からは電子メールにて、二つの論文を事前に送付していただいていた。この2つの資料も、インタビューの補足説明で引用することする(Aiking & de Boer, 2018Oxford Martin School, Oxford University, 20194

以下は、エイキング博士へのインタビューを編集したうえで、筆者ら(小川と青木)が解説を加えた記録である。部分的に、内容に手を加えて読者に読みやすく配慮してはいるが、2節以降の内容(9節を除く)は、エイキング博士の発言をなるべく忠実に再現したつもりである。また、内容を補足するために、「脚注」を付して説明を付け加えた部分もある。

以下、アムステルダム自由大学キャンパスの研究室を訪問した際の挨拶を含めて、エイキング博士の経歴から当日(2019年5月21日)のインタビューは始まっている。なお、わたしたちが事前に博士にお願いしていた質問項目は、以下の3点である(順不同)。

① PROFETASのプロジェクトの内容

② 環境科学者として基本的な立場

③ 持続可能な社会をつくるために博士が考えていること

I  タンパク質研究の目的と背景

2  エイキング博士の略歴と人物像5

〈研究者としての経歴〉

「エイキング」(Aiking)は珍しい名前で、北欧のバイキングが祖先らしい。私(Harry Aiking)は、元々は生化学の専攻で自然科学者だった。1980年から、アムステルダムにある自由大学へ移った。

最初のころは、癌の研究機関に在籍していた。毒物学の有資格者でもある。2014年にいったんリタイアしたが、各方面からの要請が高く、再任用で大学に所属している。大学のキャンパスから20分くらいのところに住んでいて、自転車で通勤している。長年、趣味でテニスを楽しんでいる。

わたしは癌研究所の後、大学に来たときは科学者(生化学)の「Nerd」(オタク)だった。今の環境学部は、自然科学者と社会心理学者らが同居している。最初はコミュニケーションをとることが難しかった。1980年には組織の規模がまだ小さくて、自然科学と社会心理学専攻の研究スタッフは6人ずつだったが、いまはそれぞれ45人の大きな所帯になっている。

研究資金は、大学からは得られなかった。わたし自身は、最初はあまり交渉が得意な人間ではなかったが、だんだんと自分で省庁に出かけて行ってプロジェクトを受託し、資金調達するようになった。40年前は農薬、PCBなどに関する調査が多かった。次第に他の分野の調査も手掛けるようになり、空間管理、たとえば高速鉄道の延長プロジェクトや、スキポール空港の北西滑走路延伸などにも関わった。これは、25年くらい前の話になる。

いつも、時代に先んじたプロジェクトに取り組んできて、社会科学からも大きく学んだ。食物は、生産者所得、食品法、バイオ化学、経済などさまざまな領域にまたがるテーマである。

〈研究者としての生き方〉

ジョン・レノンの曲に、“Life is what happens to you while you’re busy making other plans,”という言葉がある。1980年に息子のジュリアン・レノンのために書かれた曲で、いつも私はこれを引用する。計画を立てるが、いつのまにか別のことが起こってしまう6

レノンの曲の歌詞になるのと同じように、自分もいろいろな分野を渡り歩き、今は、かつて想像もしなかったところにたどり着いた。非常におもしろいが、環境科学者になるとは、以前は夢にも思わなかった。癌の研究から始まり、ここにたどり着いている。

いつも順調だったとは限らないが、新しい物事を学ぶのは常にいい経験だった。私は異なる複数の分野で研究を結び付ける仕事をしてきた。それは、現代の科学者のあり方とは違っている。200年前の科学者は、こんなふうにさまざまな分野を横断して活動していた。そういう意味では、私は「時代遅れ」の「恐竜」(dinosaurs)だ。だが、楽しい。

3  PROFETASの活動(1999年ごろ~2006年)

3.1  プロジェクトの始まり

20年前に、PROFETASのプロジェクトが始まった。「イニシアルサイエンス基金」を受けて、リサーチプログラムを組んだ。政府からは300万ユーロの資金供給を得た。助成金を得て、公式的にプロジェクトがスタートしたのは、2000年のことである。

〈解説#1〉

Aiking et al.(2006)によると、PROFETASの前身は、オランダのNWO(Netherlands Organization for Scientific Research)が組織した学際的な研究プロジェクトだったといわれている。1995年に始まった研究プログラムには、社会科学分野の研究者(社会学や経済学、環境科学者)と自然科学分野のリサーチャー(栄養学、食品技術、分子生物学、健康科学など)が共同で参加した。この運動が、1997年には共同ワークショップに発展し、1999年に食品生産の持続可能性を取り扱う国家的な環境研究プログラムとして承認された7

3.2  研究テーマの選択

初期のリサーチプログラムでは、元々は、「世界の食料供給を持続可能なもの(サステナブル)にする」という一般的な主題が掲げられていた。そこで、1年をかけて共同研究の参加者たちが皆で考えて、「プロテイン」(タンパク質)に焦点を当てることを決めた。そこでは、18のテーマが掲げられていた(経済学、食品技術、文化、味、消費者、政策など)。

そして、9人のポスドク、9人の博士、複数のスーパーバイザーを含めて研究体制を作り、委員会(ボード)を立ち上げた。3つの大学(アムステルダム自由大学、ワーヘニンゲン大学、トゥウェンテ大学)から50人を雇った。とても大きな研究組織だった。

北西部のトゥウェンテ大学(ワーヘニンゲンの北西で、ドイツ国境に近い)からは、著名な水の研究者Arjen Hoekstra(アリエン・Y・フックストラ)を含め、数人が参加した。Hoekstra教授は、元々はVU(自由大学)で働いていた。彼は、ウォーターフットプリント(バーチャル・ウォーター)の概念の考案者である8

3.3  研究成果を書籍に

面白いプロジェクトだったが、2006年に研究プロジェクトは終わりを迎えた。その成果を編集して、Springerから本にして出版した。私が最終的な編集を担当することになった。

しかし、私はほとんどギブアップ状態で、これで終わりにすることにした。50人の違う研究分野、50の違う視点で、科学的な専門領域も異なる。章ごとに異なる特定のテーマを扱っている。

2005年の夏に編集を終えた。それほど売れるとは思えなかったが、1冊200ユーロ(約3万円)で、今でも売れ続けている。これには自分でも驚いた。普通の研究書だと、10年経ったら内容は時代遅れになっていくものだが、この本はテーマを包括的に扱っていて、今も読まれ続けている。

出版社から新版の話もあったが、断った。科学的論文の方がいい。本は編集に1年かかり、読者の数も限られる。論文ならリプリントもできる。生徒も来るし、講演依頼も来る。

3.4  研究の波及効果

2019年前後には、タンパク質の研究に関して多くの重要なレポート類が出てきた。欧州委員会(2018)は、タンパク質に関する戦略を取りまとめた『Protein Vision』を出版した9。Eat-Lancet commission(2019)10や、世界経済フォーラム(2019)11も、関連するレポートを出している。

〈解説#2〉

研究室でのインタビューがここまで来たとき、エイキング博士から申し出があった。ご本人のこれまでの研究のコアな部分を、筆者らに簡単にレクチャーしてくれることになった。以下の解説は、博士がなぜタンパク質の研究に着手するようになったのか、また、ご自身の研究史を含めて、人類と地球環境に対する食品タンパク質の重要性を説明してくれたものである。PROFETASプロジェクトで、タンパク質が中心的な役割を果たすことになった学術的な背景が語られている。

II  タンパク質研究の重要性

4  タンパク質がなぜ重要か?:窒素循環と環境負荷の関係から

生化学者としての観点から、タンパク質の環境への影響について説明してみたい。

タンパク質は、人間の健康、地球環境の両方で重要なテーマだ。法律、健康、医薬、文化、農業、すべての領域をつなぐ統一的なテーマである。結論を言ってしまうと、われわれは、あまりにも多くの動物性タンパク質を消費しすぎている。過剰消費が最大の問題になる。

4.1  窒素循環とタンパク質の生成

炭水化物はエネルギーの生成源として人間に欠かせない。水素、酸素、そして窒素も必要だ。窒素は、どこにでもある。水を除けば、有機体の10%は窒素でできている。窒素は、有機体を構成する第3の化学物質である。ウィルスにも、樹木にも、人間の体にも共通して含まれている。すべての有機体はDNAを持っており、つまり、窒素を含んでいることになる。

大気の80%は窒素だが、我々はそれを直接には使えない。原子が非常に固く結合しているからである。プロテイン(タンパク質)は、我々が窒素を体内に取り込める唯一の方法である。酵素でアミノ酸を分解して、我々の体の中で生合成される。我々の体の10%は窒素で、人が体を維持するには多くの窒素が要る。

一般に、気候変動(地球温暖化など)はCO2(二酸化炭素)の話だと考えられている。化石燃料を燃やすことで、毎年1~2%のCO2を増やしている。一方で、自然の窒素サイクルでは、大気中の窒素をスプリットして有機体に取り込むのには、2つの方法しかない。それは植物の共生細菌と、雷である。雷を考えると、窒素を得るには非常に多くのエネルギーがいることがわかる。

約100年前、2人のドイツ人エンジニア(ハーバー氏とボッシュ氏)により、「ハーバー・ボッシュ法」が考案され、自然の窒素サイクルの倍以上の窒素を、いまでは人工的に得られるようになった12。彼らはこの発明によりノーベル賞を得たが、これは爆薬(ニトログリセリン)の副産物である。第一次世界大戦直後のことだったので、論争を呼ぶものではあったが、化学肥料の投入を通して農業の生産性を飛躍的に向上させた。

ハーバー・ボッシュ法により、今では毎年1億トンの窒素肥料が製造されている。これは、自然の窒素サイクルが生成する窒素の倍の量である。

4.2  窒素の増大による生物多様性の喪失

CO2が毎年1~2%増え、窒素はかつての2倍に増えている。両方を併せると、実際には過去と比べて、自然の窒素サイクルの3倍の窒素が環境に放出されていることになる。

窒素サイクルとカーボンサイクルの加速は、生物多様性(Biodiversity)の喪失につながっている。動物糞尿、アンモニアの風による揮発、集約畜産などを通じて、我々は意図せざるうちに、農地だけでなく、環境に窒素を拡散していることになる。

余分な窒素の環境放出は、酸性雨を招く。穀物が吸収できる窒素は施肥量の半分で、残りは下流に流れていき、湾岸はデッドゾーン化して、生物が死んでいく。環境に放出される窒素の増大は、生物多様性の喪失を招く三大要因の一つになっている13

少し前に、IPBESの生物多様性喪失に関する1200頁のレポート(今後、数十年で100万種の動植物種の絶滅の危険を指摘)が出た14。人々は徐々に、気候変動以上に、生物多様性の喪失の重要性を理解し始めている。私もそれに同意する。窒素サイクルと生物多様性の喪失に対して、気候変動より先に取り組むべき課題であると考えている。

4.3  処方箋は窒素の量を減らすこと:消費(食生活)を変えることの重要性

西欧では、肉摂取は1日1人当たり50~60gの肉で充分であるにもかかわらず、消費量量はその倍(100g超)である。

私が好んで挙げるもう一つの例は、コーヒーである。コーヒーは豆でできており、窒素の塊である。コーヒー豆の部分は土に残る。だから、コーヒーの消費によって、窒素の放出を増やすことになってしまう。ピザとビール1杯とコーヒー1杯という典型的な学生の食事をとれば、1週間分のタンパク質を使ってしまう計算になる。学生はこれを聞くと困惑する。

こういう理由で、健康上も環境上も、窒素つまりタンパク質の摂取削減が大切である。考えてみるとよいだろう。植物性タンパク質を直接食べると、動物経由(肉の形態)で摂取するより効率がよい。動物経由だと投入量の15%しか摂取されず、残りは環境に放出される。結果として、生物多様性の喪失と気候変動を招くことになる。

私自身は、週1~2回は肉を食べる。それで充分である。

消費はとても重要な側面だ。人々は窒素の問題に早く気付くべきである。しかし、オランダでも、政府は農業関係者などの票の喪失を恐れていて、はっきりそうは言えない。アメリカでも同じである。アメリカの最近の食事ガイドラインでは、案の段階では、肉を減らす意見が出たが、業界の反対で最終版からは削られてしまった。

〈解説#3〉

インタビューに先立って、筆者らはエイキング博士にあいさつ代わりに、「博士はベジタリアンだと思って面会にやってきました」と推測を述べた。実際には、エイキング博士の食生活は、「(乳製品が好きな)フレキシテリアン」であることがわかった。フレキシテリアン(Flexitarian)とは、博士のような「緩やかな菜食主義(Vegetarian)」のことを指す言葉である。ふだんは肉を食さないが、たまに週のうち1~2回程度は肉類を食べることもある人たちを呼ぶ。Flexible(自在な)とVegetarian(ベジタリアン)を合成した言葉である。

ご本人の研究者としての主張は、食生活とも一貫している。というのは、完全に肉消費をなくすことが地球温暖化や酸性雨や海洋の富栄養化を抑制する現実的な解決にはならない。それより、肉の消費量を抑えること(食べる量を減らすこと)が、人類にとって環境負荷を低減する現実的な解決法に近いということを、インタビューでも著書や論文の中でも、繰り返し述べられていた。

なお、動物性から植物性のタンパク質に転換すべきという考え方は、オランダの農業と産業構造と密接に関連している。インタビューはオランダの地理的な特質についての博士の解説に移っていった。

5  オランダの地理的な特殊性

5.1  オランダの農業と食品産業の環境特性

上流で放出された肥料等は、オランダ経由で海へ流れていくことになる。オランダで生産される食物は、動物性タンパク質が多い。特にチーズ、酪農品が多い。私自身も、肉はなしで済ませられるが、乳製品なしの食事は難しい。

オランダにおいて、農業が経済全体に占める割合は2%くらいである。そのうち50%は花で、食物よりも生産が多い15

オランダは、その他の世界の国とは異なり、川のデルタに作られた土地であるという地理的特徴を持つ。VU大学(自由大学)はスキポール空港から5kmのところにあるが、あの辺り(空港)は、もともとは沼地だった。150年前(1850~52年)、3つの蒸気機関ステーションで水を汲み上げ、3年で干拓地に仕立てた。汲み上げ機関(ポンプ)の一つはまだ操業している。大学の近くにあるCruquius Museum(クルヴィス・ポンプ博物館)という博物館がそれである。“Cruquius”というのは、エンジニアの名前で、オランダ語では「ジャー」(カップ)の意味の名だが、それをラテン風に変えてしまって、変な響きだ。次にオランダを訪問される機会があったら、あなたたちを連れて行ってあげたい。

水はオランダの土地を変えた。オランダは、水の上にできた埋立地である。我々は汚染物を埋立地の上に置いたままにはできないので、焼却している。オランダは環境の影響に敏感で、リスクに対して前もって行動するという性質がある。地理および地質上の特長のため、オランダ人は環境問題への対応で、世界に先んじている。

5.2  畜産業と窒素循環の関係

オランダは、歴史的には農業国だった。かつては酪農や花の生産が盛んだったが、今ではそうとは言えなくなった。北海で天然ガスを産出して、国内外に供給してはいるが、現在では主に、金融など付加価値の高いサービス産業が中心になっている。付加価値がわれわれに利益をもたらしている。

「ユニリーバ」(Unilever)は、オランダで生まれた会社だ16。これは偶然ではない。彼らは原材料を仕入れて加工し、付加価値を生んでいる。オランダの農業で唯一残っているのは、トウモロコシなどの穀物飼料ではなく、牧草で育った牛畜産業だけだ。それ以外では、我々の消費する食物は、多くが欧州から輸入されている。大豆も輸入しているが、そのうちの3%は豚の飼料にして豚肉にして輸出する。これがわずかに地元で生産されている農産品の一部だ。

家畜が肉になるまでは、少し複雑な過程をたどる。子ブタは生後3か月のみオランダで育ち、その後ドイツで肥育される。そのあとイタリアに送られ、製品にしてパルマハムなどになる。パルマハムにすれば、より高い価格で売れるからだ。

このように、畜産物は、付加価値の高くなっていくバリューチェーンの中を流れていくが、これに沿って動物の病気も広がる。地球には人間より動物の方が多い。これは生物多様性に関わる問題だ。

生物多様性は抽象的なものだととらえられているが、2年ほど前、Scientific Americanの中で面白い記事を見つけた。1世紀前には、脊椎類の陸上動物(野生の動物)のシェアは90%だったが、現在では動物全体に占める割合は5%になっている。30%は人類で、後のほとんど(65%)は人間の食用の牛、豚、家禽類だ。これらを引いた残りは、ほんの5%にすぎない。これが現在の「生物多様性」の現実である17

我々人間は、食物連鎖のピラミッドの最上位にある捕食者で、下にある生物を圧迫している。この記事を読んだ後、私は2050年の食料需要についての自分の推計と合わせて推定してみた。人間は現在75億人で、2050年までにさらに20億人増えると見込まれている。にもかかわらず、人間のシェアは30%から27%に落ちる。一方、家畜は70%以上まで増える。予測値では、最悪の場合、人間と家畜を除く野生動物は1%しか残らない。

5.3  オランダ国としての解決策:Green Protein Alliance(GPA)

戦後、半世紀にわたって生活水準が改善された。その過程で、タンパク源も変わった。戦前は植物性タンパク質の方が多かった。以前は植物性60%、動物性40%の比率だったが、今は逆転して、植物性40%、動物性60%になっている。

GPA(政府と民間による組織)は、植物性と動物性のタンパク質の消費割合を、2025年に50対50、2030年までに60対40の水準に戻そうという目標を立てている。

驚いたことに、この動きには政府が公式書類で関わっている。だが、それは彼らのリップサービスのみで、彼らに任せたのでは何も起こらないだろうとわたしは考えている。気候変動条約にオランダも署名しており、政府は法的に対策を講じる義務があるのに、食品消費について何かしようという姿勢は見せるが、実際には何もしていない。消費者や農業関係者の票を失うことを恐れているからだ。

夏はラジオを聞くと、バーベキューの宣伝ばかりしている。スーパーマーケット・チェーンは、安い肉で消費者を支配している。しかし、これはいい考えではない。それはもう許されない。肉を食べることは、喫煙と同じようなもので、何らかの方法で減らしていくべきである。

〈解説#4〉

オランダは、花き(フローラホランド市場やオランダ花き園芸協会)や加工食品(ユニリーバ)などの分野で、革新的な産業を興してきた実績がある。また、エイキング博士のような環境科学者や農学研究者、明治維新の日本の河川灌漑設備など土木工学の実務家など、オランダ人は、世界の科学的な発見や仕組み構築に大きく貢献してきた。また、オランダ政府も、産業革新や科学的な研究に資金を援助していた。

ところが、一方で、輸出貿易を基礎とする政府の立場もあり、農業分野や食品産業と運命共同体的な政策を優先させる傾向がある。マクロのグローバルな視点から、全体的・科学的に物事を推進したいエイキング博士は、オランダ政府の産業界におもねる利害調整型の政策にはとても不満のように見えた。

PROFETASのプロジェクトが7年で途絶えたのは、ご自身の体力と調整力の限界もあったようだが、他方で、オランダ政府との政策的な主張で齟齬が生じてしまったのも理由のひとつではないかと感じた。

インタビューは、オランダの国内事情に続いて、グローバルな環境の変化を含んだ世界の食料情勢に移っていった。博士の危機感を抱いた語り口は、しだいに厳しくなっていった。

III  窒素負荷低減のための政策提言にむけて

6  持続可能な消費から、食料安全保障の問題への移行

6.1  人口急増による環境破壊、食糧難、戦争、難民

サブサハラでは次の数十年の間で人口が急増し、都市が急拡大して、熱帯雨林が破壊されている。2050年までには、サハラ以南のアフリカ地域では、人口は2倍になるだろう18。今後、アマゾンを含む熱帯雨林は伐採されていくだろう。土壌はしだいに劣化するだろう。熱帯雨林と農地が競合し、森の消失を招き、食べ物も水もなくなっていく恐れがある。こうした環境変化の結果として、将来は数十億の人間がアフリカを中心に飢えることになるかもしれない。

私が今まで多くの政府や省の役人と話してきたことだが、アフリカから地中海を渡って生命を賭して移民が欧州にやって来る背景には、根本的な理由として、現地では職もなく食料が生産できなくなりつつあるという事情がある。中国やインドも、アフリカで土地を買っている。自国の国民を養えなくなる恐れからだ。

食料安全保障の対策を急がなければ、アフリカでは、数十年のうちに、大規模な殺戮につながる事態が生じうる。

6.2  食料価格の上昇

食品価格は、今後10年以内に激しく上昇するだろう。KPMG(国際的な監査法人)の試算によれば、2030年までに食品価格は倍増することが予想されている19。この上昇には、アフリカの多くの国民は耐えられないだろう。

生物多様性の喪失は、現在すでに起こっている。しかし、気候変動による諸問題が顕在化するのはもう少し後で、2050年以降だろう。一方、食品安全保障の問題は、10年以内に深刻になる。肥満など健康上の問題も課題になる20

炭水化物とタンパク質の摂取を減らせば、食料安全保障と肥満の問題に、同時にウィンウィンで対処できるのに、そうした取り組みはまだ行われていない。

6.3  家畜

家畜の疫病の問題もある。動物由来の病気が、家畜から人間に移る。毎年、新しい問題が生れている。

培養肉(cultured meat)は、問題の解決にはならないだろう。私は、以前、がんセンターにいた頃、細胞の研究をしていた。細胞の多層性を構築するのは、非常に難しい。細胞の1層だけ作るなら簡単だ。だが、多層になると、酸素、栄養素を運ぶ組織の他に、廃棄物を吐き出すインフラが必要である。肉のような筋肉組織は、電気信号で動く。それには多くのエネルギーが要る。

以上から、あらゆる面で、食糧安全保障の問題は困難さが付きまとう。微生物学、抗生物質投入は解決にならない。

唯一の有効な対策は、直接、植物性タンパク質を摂取することである。動物性タンパク質は、エネルギーの転換効率を下げる。動物の新陳代謝(植物性の飼料を動物に食べさせる変換を意味する)では、エネルギーの転換効率上、85%が失われる。過去においてはサステナブルだったことも、これは100億人が暮らす世界では、その維持が不可能である。サステナビリティは静的な概念ではない。

気候変動の問題が顕在化するには、まだ少し時間がかかる。サステナビリティが包含するのは、エコロジー、エコノミー、社会とともに、社会の公衆衛生上の課題、食料安全保障のような問題である。

7  危機を克服するための処方箋

7.1  目の前の危機に対処して

私のような科学者にとっては、複雑で興味深い事象がいま目の前にあるのだが、これは決していい時代だとは思わない。私は、しばしばメディアに登場する機会を得ている。すると、「(こんなに心配事がある中で)どうやって夜寝られるのですか?」と聞かれる。

私は、問題の軟着陸を目指している。問題をソフトに解決するための処方箋を考えている。量販店や、EU委員会、政府、学生、さまざまな会議で話し続けているが、いまこそ政治家の決断が必要なタイミングだと思う。

彼らに目覚めてもらうには、小さな災害が必要なくらいだ。皆が危機に気づいて、介入するためには、何かが起こらなければいけないのかもしれない。今夜はぐっすり眠れるといいが…(笑)。

〈解説#5〉

ここで、事前に送っていただいていた2019年の論文(印刷中)の内容について、エイキング博士に筆者らから質問を投げかけてみた。環境問題への処方箋と優先順位に関する問いかけである。質問は、次のようなものだった。

「世界が直面している環境破壊の危機に対する対処策として、論文の中では、4つの処方箋に優先順位をつけています。なぜこの順番なのかを教えてください」21

ちなみに、論文中の優先順位を、以下の表1に示しておくことにする。この表を見ながらエイキング博士は筆者らに説明を始めてくれた。

表1 西側諸国で食事の摂り方で環境負荷を改善するための方策(優先順位の高い順)
優先順位1:タンパク質の過剰消費を削減すること
優先順位2:カロリーの過剰消費を削減すること
優先順位3:家庭での食品ロスを減らすこと
優先順位4:動物性から植物性タンパク質へ転換すること

(出所)Aiking and de Boer (2018), “The Next Protein Transition,” Trends in Food Science and Technology, In press. p.4.

7.2  処方箋と優先順位

この議論は、(表1の)真ん中から始めてみることする。西欧では、食料生産は十分なのに、2つの方法で食料が無駄になっている。一つには、多くの食品廃棄(3番目)があることだ。一方、肥満を招く過剰消費(2番目)は、食品廃棄の量(3番目)を上回っている。食料生産は充分でいまは足りているとしても、消費の量は減らすべきである。

カロリーを減らすのは問題ない。炭水化物とタンパク質と脂質の消費を減らすことだから。西欧では、われわれに必要なのはわずか一日数十グラムだが、消費量は平均して200%、つまり倍になっている。摂取するカロリーは、環境負荷、生物多様性や気候変動に影響する。

第一に重要なのは、タンパク質の消費を減らすことだ(1番目)。現状の30%を減らせばよいので、これは難しくないだろう。すぐにできることだから、優先順位を上にもっていっている。

第二に、残りのタンパク質の中身を、動物性から植物性タンパク質で代替していくことである(4番目)。以上については、2006年に出版した本の中に、既に書いてある。

第三の処方箋は、動物性タンパク質をとる場合には、少なくとも牧草で育った家畜からのタンパク質に置き換えていくことである。牧草飼料は、穀物と異なり、人間が直接に消費できない。山地などの牧草で育ち、他の人間の作物と飼料が競合しない場所での畜産は、問題ない。しかし現在、農地の3分の1は飼料生産に使われている。こちらのほうが深刻な問題である。

我々の試算では、(地球上の耕作可能地15億haのうち)4億haが飼料用作物の生産に使われ、地球上の飼料生産のための地表面積は、EUの面積(4.5億ha)と同じくらいである(Aiking et al., 2006)。我々が集約的な畜産を止めて、土地を人間が消費するためのタンパク質生産に向ければ、我々に必要なのは、英国の面積に相当する広さだけである。残りの土地は自由になる。

人間の食料用には、2億5000万haがあれば間に合うだろう。飼料用の穀物栽培を止めれば十分で、週に1回くらいは草地栽培の肉が食べられる。なので、皆が菜食主義になる必要はない。

私が若かったころの食生活では、肉を食べるのはせいぜい週1回程度だった。今、人々は深く考えず、毎日肉を食べている。これは不必要なことだ。そして、このような飽食はいつまでも実現可能なわけではない。肉の消費を減らすことは不可避である。好むと好まざるとに関わらず、この先の道は厳しい。決断しなければならなければ、惨事につながるだろう。

7.3  足元にある飢餓

飢餓は、途上国だけの問題ではない。先進国でも、例えば英国では人口の6%、つまり400万人が毎日飢えている。これは社会の不安定性につながる。「アラブの春」の反乱が起こったのも、食事が足りていない国々からだった。

こうしたリスクに、みな気が付いていない。西欧でも、我々が思っているほど社会が安定しているわけではない。国民の10%が飢えていたら、彼らは街頭で抗議するだろう。飢えた人は何でもする。2008年にバーミンガムで、貧困層の少年たちの暴動が起こった。飢餓と社会の不安定化のリスクは、足元にある。

オランダでも、人口の4%、50万人近くの人々が飢えている。オランダにはフードバンクがあり、スーパーマーケットから余剰の食品がNGOに寄付され、飢餓にある人に対して、何らかの方法で配られる。

さまざまな理由で、収入が不足している人々はどこにでもいる。豊かな国であっても、数十万人も飢えた人々がいる。これは国の安全性の問題であり、常に意識しておくべきである。

〈解説#6〉

飢餓の問題に関連して、筆者のひとり(小川)がいま調査取材しているローソン(コンビニエンスストア)の話をエイキング博士に紹介してみた。

「日本でも、欧州と状況は似たようなものだ。少なくとも1~2%の子どもは飢えに苦しんでいる。先週、ローソンは、飢餓にある子どもに対する寄付のスキームを立ち上げた。消費期限の数時間前の食品を5%値引きして売り、カードに5%値引きポイントを付ける。差額分は、子供に寄付される仕組みである」。

厚生労働省の『国民生活基礎調査(平成28年)』によると、子供の貧困率(17歳以下)は13.9%で、およそ7人に一人が十分にご飯を食べられない状態にある。シングルマザー比率が30%を超える沖縄はとくに事態が深刻である。ローソンが消費期限の迫ったおにぎりと弁当を購入してくれたカード保有客にポイント還元し、夏休み中は学校給食が休みになる子どもたちのために「子供食堂」を開いている。これも、貧困による飢餓対策の試みのひとつである。

続いて、博士の持続可能性に関する一連の科学的研究が、どのように現実社会の変化に結び付いていると思うか尋ねてみた。

8  具体的な行動プランに向けて

8.1  実践的な講義「持続可能な食品生産」が世の中を変える

私にははっきりとは言えないが、研究が何かの役割を果たしていることを願っている。お二人がここに来られていることを考えても、ある意味では役に立っているのだと思う。

また、意図せざるところで効果を生んでいることもある。高校を出れば高校の卒業証書が出て、大学で学べる。オランダでは、50歳以上なら高校の卒業証書など何も条件もなく、大学で授業を受けることができる。これは「アドバンスト・ラーニング」あるいは「シニアのための教育」というような呼称で、オランダや米国、英国にはそういう仕組みがある。

2年前、私のところにも「あなたは50歳以上なので、このスキームに参加する資格があります。応募してみてはどうですか」という書類が届いた。案内書を見てみると、80コースがあり、うち科学系は4つだけで、ほとんどは宗教、歴史、アートが中心だった。

そこで私は、「サステナブルな食品生産」(Sustainable Food Production)について、一般市民が講義に参加できるプログラムを提案した。担当者が来て、私の講義を聞いて考えを変えた。そこで、2年前に私はこのVU大学で新しいコースを作った。

誰も成功すると思った人はいなかった。20人もくればいいと思っていたが、開講してみると、70人の中高年の生徒が来てすぐに教室は満員になった。実は、この9月から、また繰り返す予定だ。私はここで、とっておきの話を紹介している。70人の生徒がいたとして、家族も含めれば、私のメッセージは500人近くに届くはずだ。さっき話したようなコーヒーの話もする。

この講義は、本を使わずに行っている。私は導入部の講師、それから生物多様性、経済学、消費行動など各分野の講師が順々に話をする。こうした学際的なコースで、自分のメッセージを伝えていて、大成功を収めている。だからある意味、私は宣教師(ミッショナリー)である。とにかく、とても面白い経験だ。

8.2  行動に優先順位を付ける

サステナビリティ(持続可能な成果を作る)がすべてだが、すべての問題に一気に取り組めるわけではない。だから、対処すべき課題を整理し、優先順位を付けなければならない。

我々は問題が何かを知っている。今は、政治家のアクションが必要な時代である。私は科学の観点からは気候変動も重要だが、むしろそれより緊急の課題は、食料安全保障であると主張している。このままでは、将来世代に十分な食料が行き渡らなくなることが問題なのだ。

優先的に取り組むべき課題は、生産と消費の間に正しいバランスをみつけることである。これは、より多く生産することよりも重要である。すでに生産過剰と食品廃棄により、汚染や天然資源の枯渇が生じている。我々は「廃棄の文化」の中で生きている。

バイオベースの(植物を基盤にした)経済、循環経済を築くことが、現在の重要課題である。部分的な解決法としては、サステナビリティを違う方法で考えるべきだろう。

忘れられがちなことだが、時間の概念は、サステナビリティを考えるときの鍵である。サステナビリティは、レベルの問題ではない。“Rates of Change”(変化率)、つまり変化の速度(あるいは複数の速度で起こる変化)の問題だ。この考え方は、私の微生物学のバックグラウンドに由来している。人口水準は、出生率と死亡率のバランスに基づいて決まる。現在は出生率の方が死亡率より高く、不安定だ。自然界ではよく見られる現象だが、この水準をならすべきである。そうでなければ、いずれ子孫の急減につながり、社会は安定しない。

8.3  サステナビリティの「時間軸」

サステナビリティを、「時間」という側面から考えなおさなければならない。海洋や土壌などの汚染は、微生物にとっての環境を悪化させているが、先はまだ時間がかかる。我々はすでに数世紀にわたって、空気や水の汚染と戦っている。

我々の時代になってからは、すべてを加速させている。カーボンサイクル(二酸化炭素の循環)、窒素サイクル、化石燃料サイクル、人口の増加、すべてにおいて循環のスピードが加速している。それにもかかわらず、ただ一つ変わっていないのは「政策のサイクル」だけである。

WTO(世界貿易機関)のドーハラウンドだけで、妥結に至るまで交渉に20年かかった22。我々には、あまり時間が残されていない。技術革新をただ待つのではなく、残った時間があれば、早く解決法を探すべきである。すべてのサイクルが加速する中、我々には、以前よりもより少ない時間しか残っていない。

もし、どこかで何かが間違っていたら、その悪影響は、すぐに顕在化する。「ジャスト・イン・タイムの物流」を例に挙げてみよう。以前、我々は石油にせよ穀物にせよ、戦略的な備蓄を持っていた。いまは、もう持っていない。今はジャスト・イン・タイムの時代で、スーパーには、一般的に1日5回、新しい食品が運ばれる。そうしなければ、大都市には食べ物が行きわたらないからだ。このシステムが数日麻痺すれば、大都市は飢餓に陥る。こういうシステムが、どれくらい持つだろうか。

英国では、トラックドライバーのストライキで物流網が止まった結果、5日間食料の配送が止まり、主要都市で食料が底をついた。現在の社会には、補助的なリソースがなくなっている。

政治家の時間的地平は4年で、彼らは選挙サイクル(改選のインターバル)で動いている。しかし、我々が直面している課題を解決するには、もっと長期の視点が必要だ。私の若かった頃は、世界の人口は20億人だった。問題が顕在化した場合、75億人の世界では、影響の程度は、以前とは比較にならないほど大きい。

9  新しいサステナビリティ(持続可能性)の概念

9.1  非線形という考え方:昆虫のモデルのアナロジー

エコロジーの観点から考えてみよう。SF(Science Fiction)では、3mの高さの昆虫が出てくるが、生物の骨格の機構を考えると、これは不可能である。

動物の体は、表面積は2次元で成長する一方、重量は3次元で増える。つまり、動物が巨大化し、足の大きさが10倍になったとしたら、重量は1,000倍に重たくなってしまう。その動物の足にかかる圧力は強大になり、重さで立てなくなり、立っても骨折するだろう。

組織のエンジニアリングにおいても、生物と同じことが言えるだろう。もし何かの事象が関わる次元が3~4倍に増したら、その事態に対処するには、根本的にシステムの再設計が必要になる。

昆虫の場合は、酸素を取り組む量が少なくてよい。肺が不要なので、面積が増える場合の対応も単純である。しかし、人間には多くの酸素が必要である。表層面積を増やすために、肺に折りたたまれた余分な表層が要る。つまり、組織の次元が2倍、10倍に増えれば、それに応じた新しい層、組織原則、組織構造が要る。社会組織においては、マネジメントやコミュニケーションなど、新たな層が生れることが不可欠だ。

人類の数は、私が生れてから3倍になった。すでに各地で、民主主義には亀裂が生じている。新しいスタイルの組織を再考し、創造しなければいけない時代に入っている。

サステナビリティは、静的な概念ではない。このことを我々は忘れがちだ。サステナビリティにおいて重要なのは、水準ではなく、速度や変化の比率である。CO2の大気放出も、吸入と排出の総量が増えるにつれて、水準は上がる。同じことが出生率や死亡率などの社会事象や、自然現象にも広くあてはまる。

我々は線形的(リニア)思考に縛られている。水準(レベル)の考え方を基に事象の影響を推定しがちだが、これは適切ではない。変化の比率は、もっと複雑な概念である。指数的に増加する比率は、閾値を超えて物事の性質を変える。サステナビリティを比率の観点から見て、我々のしていることを再考しなければならない。

9.2  基層的な食文化の重要性

この間、Sociology on the Menu(『食の社会学』)というおもしろい本を読んだ。社会学の本で、なおかつ食物に関する本でもあり、二重の意味がある23。私自身の出自に関連して興味深かった章は、狩猟採集時代のDNAがまだ我々の中に生きているということだった。

PROFETASプロジェクトでは、すべてが上手に組織されていたわけではなかった。自然科学者と社会科学が協働することになっていたが、彼らはお互いにハッピーでないこともあった。お互いの視点をプレゼンしなければならないときはなおさらだった。

科学は、仮説で始まる。我々は、現在、世界の食品は似通ってきて、文化による違いが薄れ、国境がなくなっていると考えている。皆がイタリアのピザやマクドナルドのハンバーガーを食べる時代に、文化的な違いは消えていっていると考えたが、それは違っているようだ。

この本の中には、EUの国々のタンパク源の比較が載っている。すると、2000年前にあった違いは、今も厳然と存在している。イタリアやギリシャなど、南欧で農業の文化的基盤がある地域では、オリーブ、ブドウ、オレンジ、小麦、それから時折、魚類を摂取している。一方、我々北部ヨーロッパの狩猟採集民族では、ナッツや狩猟に基づく食物の多くを占めている。こうした特徴は、今も続いており、基本的に変わっていない。

欧州では、北から南まで、植物性タンパク質が今も増えている。もっともおもしろい比較の対象は魚である。魚の消費量がいちばん低いのは、内陸国であるオーストリアである。しかし、二番目に少ない国は、海に囲まれたアイルランドだ。なぜか?

アイルランド人は漁業をするが、収穫した魚類は輸出される。英国の僧侶が752年に書いていることだが、アイルランド人の祖先は1500年近く前に東欧からアイルランドに大移住して、カトリックに改宗した。その際、金曜に魚を食べる習慣が生れたようだ。しかし、消費量は今も少ない。それは、民族が欧州に渡ってくる以前には、魚食の習慣がなかったからだと考えられている。

ここから示唆されるように、消費者に対して直截に「食習慣を変えよう」と促しても、強迫でもされない限り、そのままでは通じない。文化的な食の嗜好は、我々が考えるよりももっと保守的である。

9.3  肉食のDNAと肉の価格

我々は、「肉の本当の価格(二重の価格)」について試算してみた。そこでの結論は、環境や健康への影響を考えれば、肉の価格は、現在の小売店頭価格の倍にすべきであるということである。

我々は価格を5%程度上げたら、それは環境へのインパクトの補償に役立つかどうか、実験をしてみた。消費者の肉の消費を減らすには、価格を2倍にしなければならない。これには、少なくとも2つの理由がある。一つは、環境へのインパクトを緩和するためで、もう一つは2倍にしないと消費は減らないからだ。

オランダでは、経済学的インセンティブとともに、文化的インパクトも考慮しなければならない。代替タンパク質について考えるなら、肉を何かで代替するという発想になるが、単に肉を止めればいいだけの話である。しかし、文化的に見れば、肉は我々の狩猟採集民族としてのDNAに根付いている。宗教的意味や身体の強靭さのイメージと結びついているうえ、ステータスの象徴としても機能している。一方、乳製品については、そういう象徴的意味付けは薄い。

こういうわけで、タンパク質はおもしろいテーマである。

10  おわりに:日本人の米と肉の消費

インタビューの最後に、エイキング博士から筆者らに対して、「日本では、米を食べるか?」との質問があった。当然のことを聞かれたので、筆者らはやや当惑したものだった。

「日本では米を食べる。ただ、食生活の内容は変貌した。50年前まで、普通の日本人は肉食をほとんどしていなかった。しかし、10年以上前に、魚食と肉食の比率が日本では逆転した。肉の価格は、米国や豪州との自由貿易交渉で下がり、消費はどんどん上昇している。一方で、漁業資源は枯渇していて、魚の価格は上がっている。エビは東南アジアから輸入されているが、現地の環境破壊につながっているうえ、奴隷労働もある」(小川、青木)。

エイキング博士の質問意図は、おそらくは、食事の中心が米であることの意味を確かめたかったのだろう。実際に、50年間でひとりの日本人が食べるコメの量は、年間120kgから60kg弱に減少している。そのむかし(江戸時代から明治時代にかけて)は、80%のエネルギーを米から摂取していた歴史がある。

そんなことを考えている間に、エビを運ぶ話でインタビューは終わることになった。

「エビの話と言えば、オランダではエビを獲る。そして3000キロ以上向こうの北アフリカのモロッコに送り、加工して、そこから再びオランダに戻す。エビは、数千キロも旅していることになる。食品は、不必要なほどに長い距離を移動している」(エイキング博士)。

最後に、近刊(7月刊行済み)で、Environmental Nutritionの中の一章として、ご本人が、“Environmental Degradation”について執筆していることを教えてくれた24

〈解説#7〉

タンパク質は生物を形作る根源的物質であり、タンパク質の課題と消費者の需要は直結している。インタビューの議論の背景となる畜産や、日本の課題について補足しておきたい。なお、以下の解説は、筆者のひとり(青木)が、研究ノートとしてまとめた資料の要約版である。

10.1  畜産の課題

動物性タンパク質の消費が特に問題になる背景としては、まず、畜産の温室効果ガス(GHG)排出量が年間7.1ギガトン(CO2換算)と膨大で、世界の人為的GHG総排出量49ギガトンのうち、14.5%を占めるという事情がある(FAO、2013)25。畜産の排出は主として、飼料生産処理(45%)と反芻動物の腸内発酵(39%)に起因する。

動物性タンパク質のうち、最も課題を抱えるのが牛である。畜産のGHG排出量のうち、牛肉は41%、牛乳は20%を占める。また、1kgのタンパク質産出に伴うCO2排出量(CO2e kg/kg)は、大豆48.8に対し、牛乳83.6、牛肉では292.1と高い(FAO)。可食部単位当りの生産に必要な水の量(水消費原単位、l/kg)は、小麦2,000、大豆2,500に対し、牛肉は20,700にのぼり、牛肉生産には小麦の10倍の水がいる(2003年推計、沖, 201626

10.2  日本の課題:輸入を通じ、窒素や水資源負荷の外部コストは他国の負担に

日本は食料の輸入依存度が高いため、海外での生産や輸送分を含めれば、窒素や水の実質的使用量は高位の水準にある。食料生産から消費までのフードチェーン・システムを通じて環境中に排出される総窒素量「食の窒素フットプリント」において、日本は世界第5位(3%)だが、輸入含有分を算入した純収支ベースでみれば、他国への負荷依存度(1人当たり)は世界1位である(Oita et al., 201627。日本のバーチャル・ウォーターの多くは飼料や畜産品由来という(東京大学生産技術研究所沖大幹研究室)。多地域間産業連関表に基づく試算によると、日本の水の国外依存度(消費ベース÷生産ベース利用量)は1018%と世界でも突出して高く、2位のイギリスの倍近い(佐藤・仲山, 201428。要するに、日本が消費する食料の生産に伴う環境負荷とその外部コストの多くは、他国が負う構造になっている。

10.3  伝統的食生活の見直し

1970年代から2015年までの時系列分析によると、1970年の食生活では豆類や魚介類のタンパク質が主体だったため、食の窒素フットプリントは現在より19%小さかった(江口、平野, 201929。この半世紀の間に食の窒素フットプリントが上がったのは、畜産品由来分が約5倍に増加し、植物性タンパク質分が30%減少したためである30。医学誌LancetとEATは、健康と地球の持続性を両立させる食事水準として、全粒穀物と野菜果物を増やす一方、1日当たり肉摂取量(牛、豚、羊)は14g、家禽類の肉は28gにすべきと提言している。これは、1週間に1~2度、少量を食べていたかつての日本人や、エイキング博士ご自身の食生活の基準と一致する。ただ、悩ましいのは、伝統に戻るにも、多くの漁業資源は枯渇のリスクに晒されていることである。鶏肉や鶏卵は、動物福祉等の問題を抱える。

10.4  需要サイドの転換

現在、多くの国が2050年までのCO2排出量実質ゼロ(吸収量で相殺)目標を掲げている。これらは国レベルのサプライサイドの目標である。だが本当にターゲットにすべきなのは、需要サイドの国境を超えた負荷実態、つまり、需要者から遡って、生産物、生産方法、輸送方法と距離を考慮し、世界全体でその財の消費までに費やされた負荷である。そうでなければ、先進国の消費スタイルに内包される環境負荷は隠されたままで、排出量実質ゼロ目標もグリーン・ウォッシュになりかねない。

先述の窒素フットプリントやバーチャル・ウォーターなどの指標が明示するように、日本をはじめ輸入依存度の高い先進国は、より大きな転換が必要である。タンパク質の転換は政策に盛り込まれ始め、研究開発や起業が加速している。また、国際的には、炭素取引調整関税(国境炭素税)の導入が議論されている。これは、環境基準を満たさない国からの産品輸入を制限したり、生産物の環境負荷の多寡の算出ルールを定め、税に換算して国境で調整賦課する制度である。負の外部性を小さくすることが経済的に合理性を持つ、そういう循環経済に向かってプラットフォームの転換が起こっている。

エイキング博士は、サステナビリティは複数の速度で起こる変化と比率の問題であり、閾値を超えれば物事の性質が変わると述べている。年2~3%以上の変化が続けば、変化の集積は1世代で倍になる。代替タンパク質市場は、米国では年率8%で成長し始めた。社会変革の成否の閾値は3.5%で、人口の3.5%以上がアクティブに参加した平和的なキャンペーンは、まず確実に本格的な政治・社会変化をもたらすという(Chenoweth & Stephan, 2011)。「世界気候ストライキ」の主役は子供と若者で、地域と年齢層によっては3.5%を超えそうである。フレキシタリアン的食スタイルが理解され始めているのも少しの希望である。

エイキング博士は、世界のタンパク質移行研究のまさにパイオニアで、今も最前線で活躍されている。博士は、欧州自然大豆食品協会(ENSA)の科学諮問委員会の委員も務め、オランダや欧州の植物性食品関係者のネットワークも広い。筆者(青木)の突然の取材依頼にもかかわらず、暖かいご対応ときめ細かな配慮をいただいた。深く感謝したい。

1  文部科学省学術助成研究(基盤研究B)の公式タイトルは、「農業と食の持続可能なビジネスモデルとイノベーションの実証的研究」(研究課題/領域番号18H00907、研究年度2018–2021年度、研究代表者 法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授小川孔輔)。

2  『日本経済新聞 朝刊』(2019年9月7日号、11面)に、「米「植物肉」市場 成長際立つ」という記事が掲載されている。昨年あたりから植物由来の肉がにわかに脚光を浴びるようになっている。背景には、植物肉(パテ)の開発製造販売で、米国新規公開企業(2008年)として時価総額1兆円超を記録した「インポッシブル・バーガー」や「ビヨンド・ミート」の影響があると思われる。

3  Aiking, H., de Boer, J., & Vereijken, J. (Eds.) (2006). Sustainable Protein Production and Consumption: Pigs or Peas? (Vol.45). Springer Science & Business Media.

4  Aiking, H., & de Boer, J. (2018). The next protein transition. Trends in Food Science & Technology. In press. Available online 27 July 2018. https://doi.org/10.1016/j.tifs.2018.07.008

Oxford Martin School, Oxford University (2019). White Paper Meat: The Future Series Alternative Proteins. January 2019. World Economic Forum.

5  Harry Aiking PhD ERT

Institute for Environmental Studies, VU University (IVM-VU)

6  ジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」の一節。当時5歳の息子(ジュリアン)に捧げられた楽曲の歌詞。人により、受け取り方でいろいろな解釈がなされている。

7  Aiking et al. (2006). Chapter 7: History of the Future: Epilogue. In Aiking, H., de Boer, J., & Vereijken, J. (Eds.) Sustainable Protein Production and Consumption: Pigs or Peas? (Vol.45). Springer Science & Business Media, pp.217–219.

8  「ウォーターフットプリント」(Water Footprint)とは、モノやサービスを消費する過程で使用された水の総量を図る概念。環境への影響削減や貴重な水資源の利用へと繋げることが期待されている。ウォーターフットプリントの概念は、2003年にUNESCO-IHEのHoekstra博士等水文学研究者がそれに相当するものを提唱。Hoekstra博士らは、Water Footprint Network(WFT)を設立し、算定手法の開発に向け研究を開始。2009年にはISOでウォーターフットプリントに関する規格が承認された(https://sustainablejapan.jp/2017/12/30/water-footprint/29959)。

9  European Commission (2018). Report from the Commission to the Council and the European Parliament on the Development of Plant Proteins in the European Union, November 22, Brussels. https://ec.europa.eu/info/sites/info/files/food-farming-fisheries/plants_and_plant_products/documents/report-plant-proteins-com2018-757-final_en.pdf

10  EAT (2019). Summary Report of the EAT-Lancet Commission on Healthy Diets from Sustainable Food System. Willett, W., Rockström, J., Loken B., et al. (2019), Food in the Anthropocene: the EAT–Lancet Commission on Healthy Diets from Sustainable Food Systems, The Lancet, January 16. https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)31788-4/fulltext?utm_campaign=tleat19&utm_source=hub_page EAT-Lancet国連SDGsとパリ協定の温暖化防止目標を達成することを目標としている。持続可能な食システムと人間の健康の両立に関する科学的レポート。「地球の健康」に配慮した「planetary health diets」の概念を打ち出している。推奨される食事は全粒穀物、芋、野菜、果実が中心で、乳製品やその同等品は1日250g、牛肉など肉類は1日14g、家禽類は同28gが適切とされている。

11  World Economic Forum (2019). White Paper Meat: the Future series A Roadmap for Delivering 21st-Century Protein. このレポートでは、世界の将来のタンパク質需要を持続可能な方向に導く経路として、代替タンパク質、現在の生産システムの見直し、消費者行動の変容が掲げられている。「移行期」におけるコミュニケーション戦略として、建設的なナラティブを生み出していくべきという方向性が示されている。

12  「ハーバー・ボッシュ法」(Haber–Bosch process)とは、鉄を主体とした触媒上で水素と窒素を直接反応させ、アンモニアを生産する方法。窒素化合物をつくる常套手段であり、現代化学工業の一基幹である。フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュが1906年にドイツで開発した。

13  生物多様性を喪失させる要因として、一般的には、①土地開発や乱獲(生息地を奪うこと)、②外来種の持ち込み、③地球温暖化などが指摘されている。インタビュー内でエイキング博士が主張したかったのは、これらに関連した複数の要因(たとえば、穀物生産や畜産によって酸性雨、海洋汚染など、環境への窒素循環が加速していること)だったのではないかと思われる。

14  IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム:Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services)(2019)The IPBES Global Assessment Report on Biodiversity and Ecosystem Services. https://www.ipbes.net/news/Media-Release-Global-Assessment IPBESは日本を含む94か国が加盟する。国連環境計画(UNEP)が事務局。報告書では、人間活動により、今後数十年間で、約100万種の動植物種が絶滅の危機に瀕すると警鐘を鳴らしている。生物多様性の破壊のスピードは、過去1000万年の平均に比べ、数十~数百倍に達するとされる。IPBESは、危機の背景にはCO2排出による気候変動があると指摘している。

15  オランダは世界最大の切り花の輸出国である。かつて盛んだった花の国内生産は、2000年代になるころから、アフリカのケニアとエチオピアに移っている。オランダ最大の花市場であるフローラホランド市場では、年間約5000億円の花が取引されているが、いまやその約80%は、アフリカや中南米(コロンビア、エクアドル)から輸入されたバラやカーネーションを再輸出している。オランダは花の国ではあるが、実際には、フラワー・ロジスティックのハブの役割を果たしているに過ぎない。詳しくは、小川孔輔(2014)『フラワーマーケティング入門』(誠文堂新光社)などを参考に。

16  「ユニリーバ」(Unilever N.V./Unilever plc 蘭/英)は、オランダとイギリスに本拠を置く世界有数の一般消費財メーカー。食品・洗剤・ヘアケア・トイレタリーなどの家庭用品を製造・販売する多国籍企業(https://ja.wikipedia.org/wiki/ユニリーバ・ジャパン)。

17  体重で割合を計算すると、野生動物(wild animal:5%)、人間(humans:30%)、家畜(farm animal:65%)というデータは、前述の博士の論文にも掲載されている。Aiking and de Boer(2019)、p.2.

18  「サブサハラ(アフリカ)」(Sub-Saharan Africa)は、アフリカのうち、サハラ砂漠より南の地域。言い換えると、アフリカのうち北アフリカ以外。

19  KPMGは、Deloitte(日本では、「デロイト・トーマツ」)、Ernst & Young(EY)、PricewaterhouseCoopers(PwC:プライス・ウォーター・ハウス)とともに、国際的なネットワークを持つ4大監査法人、コンサル機関のひとつ。日本では、「あずさ監査法人」がKPMGのメンバー企業になっている。

20  次の文献で、食品価格、穀物価格、原油価格の上昇がもたらす食料不足の危機がデータ(10年後に2倍)でシミュレーションされている。Porter, J. R., et al. (2014). Food Security and Food Production Systems. In C. B. Field,, et al. (Eds.), Climate Change 2014: Impacts, Adaptation, and Vulnerability. Part A: Global and Sectoral Aspects, Contribution of Working Group II to The Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel of Climate Change(IPCC(気候変動に関する政府間パネル)).pp.485–533. Cambridge, UK & New York (NY), USA: Cambridge University Press.

21  Aiking and de Boer (2019). p.4のTable 1.

22  ドーハラウンド(ドーハラウンド、Doha Round)は、貿易障壁をとり除くことを目的としてWTOが主催する多角的貿易交渉。2001年のカタールのドーハにおけるWTOの第4回閣僚会議において開始、2014年11月27日の一般理事会で貿易円滑化協定が採択された。WTO加盟国の3分の2が改正を受諾した日に発効することになっており、2017年2月22日にこの要件を満たし協定が発効した。

23  Beardsworth, A. (1997). Sociology on the Menu 1st Edition, Routledge.

出版社の紹介文によれば、Sociology on the Menu is an accessible introduction to the sociology of food. Highlighting the social and cultural dimensions of the human food system, from production to consumption, it encourages us to consider new ways of thinking about the apparently mundane, everyday act of eating. The main areas covered include:

* The origins of human subsistence and the development of the modern food system

* Food, the family and eating out

* Diet, health and the body image

* The meanings of meat and vegetarianism.

24  Sabate, J. ed. (2019). Environmental Nutrition: Connecting Health and Nutrition with Environmentally Sustainable Diets, Academic Press. ご本人は、Chapter 8. Environmental Degradation—An Undesirable Output of the Food System、を執筆している。

25  Gerber, P. J., Steinfeld, H., Henderson, B., Mottet, A., Opio, C., Dijkman, J., Falcucci, A. & Tempio, G. (2013). Tackling Climate Change through Livestock: A Global Assessment of Emissions and Mitigation Opportunities. FAO(国連食糧農業機関)IPCC(2014)Climate Change 2014: Synthesis Report in Fifth Assessment Report.

26  沖大幹(2016)『水の未来』岩波新書、p.90。

27  Oita A, Malik A, Kanemoto K, Geschke A, Nishijima S, Lenzen M (2016). Substantial nitrogen pollution embedded in international trade. Nature Geoscience, 9: 111–115.

28  佐藤正弘、仲山紘史(2014)「多地域間産業連関(MRIO)モデルを用いたバーチャル・ウォーターとバーチャル・ランドの推計」、KIER Discussion Paper 1405(京都大学経済研究所)。

29  江口定夫、平野七恵(2019)「日本の消費者の食生活改善による反応性窒素排出削減ポテンシャルと国連SDGsシナリオに沿った将来予測」『日本土壌肥料学雑誌』90巻1号、p.32–46。

30  農研機構(2019)「食料生産~消費がもたらす窒素負荷の長期変遷:窒素フットプリントから考える食の選択」2019年9月18日。

参考文献
  •  江口 定夫・ 平野 七恵(2019)「日本の消費者の食生活改善による反応性窒素排出削減ポテンシャルと国連SDGsシナリオに沿った将来予測」『日本土壌肥料学雑誌』90巻、1号、pp.32–46.
  • 小川孔輔(2014)『フラワーマーケティング入門』誠文堂新光社。
  • 沖大幹(2016)『水の未来』岩波新書。
  • 佐藤正弘・仲山紘史(2014)「多地域間産業連関(MRIO)モデルを用いたバーチャル・ウォーターとバーチャル・ランドの推計」KIER Discussion Paper 1405(京都大学経済研究所)。
  • 農研機構(2019)「食料生産~消費がもたらす窒素負荷の長期変遷:窒素フットプリントから考える食の選択」2019年9月18日。
  • Aiking, H., de Boer, J., & Vereijken, J. (Eds.). 2006. Sustainable Protein Production and Consumption: Pigs or Peas? (Vol.45). Springer Science & Business Media.
  • Aiking, H., & de Boer, J. 2018. The Next Protein Transition. Trends in Food Science & Technology. In press.
  • Beardsworth, A. 1997. Sociology on the Menu. Routledge.
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