SANGYO EISEIGAKU ZASSHI
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Features of occupational health nurse support for the improvement of psychosocial working environments and related factors: Focusing on required knowledge and skills, and measures to develop them
Tomoko SaitoNoriko NishikidoHideaki Matsuki
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2015 Volume 57 Issue 4 Pages 117-129

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Abstract

目的:産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援状況,保有している知識・技術,自己研鑽・学習環境等の状況ならびにそれらの関連を明らかにする.さらに,支援についての関連要因モデルを作成し,産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援を推進するための示唆を得る.方法:日本産業衛生学会会員で,企業または単一型健康保険組合に所属する産業看護職を対象に,無記名郵送式質問紙調査を実施した.356名(回収率46.4%)からの回答のうち,主要な項目に無回答がない産業看護職329名(有効回答率92.4%)を分析対象とした.心理社会的職場環境改善の支援7項目について因子分析を行い,抽出された支援因子ごとのモデルを作成し,共分散構造分析を行った.結果:因子分析より【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】と 【職場参加型の環境改善の支援】の支援因子が抽出され,平均実施割合は,それぞれ約5~8割,および4割未満であった.【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】には,「管理職へ,理解を促すための説明を行う」や「ストレス調査結果を部署毎に集計・分析する」からなる支援技術が関連し,これには「個人のストレス調査票」や「一般的な職場のストレス要因」からなる支援知識が関連していた.支援知識・支援技術には,「日頃の職場環境改善活動を振り返り,活動報告を行う」,「論文を読む」からなる自己研鑽が関連していた.【職場参加型の環境改善の支援】には,「キーパーソンを中心とした職場討議を間接的に支援する」や「職場のストレス調査結果を管理職へフィードバックする」からなる支援技術が関連し,それには「職場環境改善のツール」や,「職場のストレス調査票の活用方法」からなる支援知識が関連していた.支援知識・支援技術には,「グループワークを効果的に行うための研修会への参加」,「大学や研究機関の指導者からサポートや助言を受けられる」からなる自己研鑽・学習環境が関連していた.考察:産業看護職による心理社会的職場環境改善支援の内容およびその関連要因が明らかとなった.支援の実施割合より,特に 【職場参加型の環境改善の支援】を推進する必要性が示唆された.今後は,支援推進のために,支援との関連が明らかとなった支援知識・支援技術の獲得を促していく必要がある.

I. はじめに

職場のメンタルヘルス対策は一次・二次・三次予防からなり,また対象も,個人・集団・組織と多岐に渡る1).その中で,組織へのアプローチを通じて,職場のストレスを軽減し,心身の健康問題の発生予防を試みるとともに,活気ある職場づくりを目指す職場環境改善が注目されている.メンタルヘルス対策としての職場環境改善は,狭い意味での職場環境である職場の物理的化学的環境に加えて,労働時間,勤務形態,作業方法,人間関係や職場組織など,労働者に心理的な影響を及ぼす可能性がある職場の要因へのアプローチと定義されている2).5年に1度の厚生労働省による労働者健康状況調査3)によると,労働者の強い不安,悩み,ストレスの内容として,職場の人間関係の問題,仕事の質の問題,仕事の量の問題の順に回答が多く,労働者のストレスの内容が職場環境に起因するものが多いという調査結果である.職場環境改善は,組織アプローチにより,メンタルヘルス不調の発生を未然に防ぐ一次予防であり,活気ある健康職場をつくるための対策であると言える.職場環境改善の活動を推進するために,職場環境改善を行う際に用いるツールの開発4, 5),ツールの紹介6, 7),マニュアル8, 9)の作成が行われている.しかしその一方,メンタルヘルス対策として職場環境改善を行っている事業場は約2割にとどまっているとの調査報告3)もあり,さらなる活動の推進が求められている.

メンタルヘルス対策における職場環境改善活動に関して,産業看護職は,活動実施に困難を感じており,自身の知識・技術に不足を感じているという報告も認められる10).しかし,産業看護職によるメンタルヘルス対策における職場環境改善支援の活動や,支援に関する知識・技術を明らかにした先行研究はみられない.それ故,職場のメンタルヘルス対策における産業看護職による組織支援の一つとして,職場環境改善を行う際の支援活動,すなわち心理社会的職場環境改善の支援に着目し,その支援活動の状況および支援に関する知識・技術を明らかにする必要があると考えた.

II. 目 的

本研究では,産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援,保有している知識・技術,自己研鑽・学習環境等の内容と状況ならびにそれらの関連を明らかにする.さらに,支援についての関連要因モデルを作成して,産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援を推進するための示唆を得る.

III. 方 法

1.用語の定義

心理社会的職場環境改善:職場のメンタルヘルス対策に関連する,労働時間,仕事の質や量,仕事の裁量度,職場の支援体制, 職場の人間関係など,労働者を取り巻く心理社会的状況について,健康的な職場環境づくりを行うプロセス.以下,職場環境改善と略す場合がある.

2.調査対象者

日本産業衛生学会員であり,かつ企業または単一型健康保険組合に所属している産業看護職の中から,分析計画に必要なサンプルサイズを考慮し,等間隔抽出法(1/2抽出)を行った.その結果抽出された807名を調査対象者とした.

3.調査方法

2012年9月15日~10月22日に,対象者に無記名の自記式質問紙を郵送し,郵送返却にて回収した.

4.質問紙の作成プロセスと調査項目

1)質問紙の作成プロセス

事業場に所属し,心理社会的職場環境改善の支援を実施した経験がある産業看護職 2名に,心理社会的職場環境改善の際の支援内容について,また支援の際に必要とした知識・技術,役立った学習についてのインタビューを行った.インタビュー結果および,職場環境改善のマニュアルを始めとする参考文献,先行研究,研究者の経験より,産業看護職による心理社会的職場環境改善に関する支援,支援に関する知識と技術,およびその獲得のための学習環境と自己研鑚からなる概念モデルを作成し,それぞれについての内容を抽出して,質問項目を作成した.さらに,産業看護経験者5名により,質問項目および回答方法の網羅性や妥当性について繰り返し検討を行った.

作成した質問紙に関して産業看護の経験者6名を対象にプレテストを行い,質問項目の内容・表現および回答方法を修正した(Fig. 1).

Fig. 1.

 Conceptual diagram of OHN support for improving psychosocial work environments.

2)調査項目

(1) 基本属性と所属機関の基本情報

回答者の基本属性として,年齢,産業看護職としての経験年数,所持する資格等,所属機関の基本情報として,所属機関の種類,担当事業所の規模等について尋ねた.

(2) 心理社会的職場環境改善支援の有無

心理社会的職場環境改善(以下職場環境改善と略す)支援の有無に関する7項目として,「相談対応の際に職場環境改善のヒントになるような助言」,「職場のストレス状況・要因の把握」,「従業員が自分のストレス状況を把握するための支援」,「事業所の職場環境改善の仕組みづくりに参画」,「ストレス調査結果に基づき,管理職へ助言」,「ストレス調査結果に基づき,職場討議を支援」,「ツール等を用い,職場討議を支援」について尋ねた.各項目について,支援なしには0,支援ありには1を配した.

(3) 職場環境改善支援に関する知識を保有する程度

職場環境改善支援に関する知識として,「事業場の組織構成」,「職場環境改善のツール」等からなる14項目について,知識が「概ねある」,「ややある」,「あまりない」,「全くない」の4件法で尋ねた.「概ねある」には4,「ややある」には3,「あまりない」には2,「全くない」には1をそれぞれ配した.

(4) 職場環境改善支援に関する技術を保有する程度

職場環境改善支援に関する技術として,「管理職へ,理解を促すための説明を行う」,「キーパーソンを中心とした職場討議を,間接的に支援する」等からなる22項目について,技術が「概ねある」,「ややある」,「あまりない」,「全くない」の4件法で尋ねた.「概ねある」には4,「ややある」には3,「あまりない」には2,「全くない」には1をそれぞれ配した.

(5) 職場環境改善支援に関する自己研鑽と学習環境の有無

「学会・学術集会等で職場環境改善に関する発表を聞く」,「職場で産業保健スタッフ等から助言を受けられる」等からなる15項目について,自己研鑽の実施の有無,学習環境の該当の有無を尋ねた.実施なしまたは該当なしには0,実施ありまたは該当ありには1を配した.

5.分析枠組みと分析方法

職場環境改善支援の有無,知識・技術の保有する程度,自己研鑽と学習環境の有無の項目に無回答がない者を有効回答とし,分析対象とした.

1)職場環境改善支援の有無,知識・技術の保有程度,自己研鑽と学習環境の有無についての基礎集計および因子分析

全変数の基本統計量を算出した.職場環境改善の支援に関する7項目を整理して主たる内容を見出すため,因子分析(主因子法)を行った.また,因子分析により抽出された各職場環境改善支援の因子について,それぞれCronbachα係数を算出し,内的一貫性を確認した.職場環境改善の支援7項目について,「支援していない」を0,「支援している」を1とし,支援因子ごとの実施程度を現すために支援を行っている項目数の和を算出し,別変数として置き換えた.

同様に,関連要因に関する項目を整理して主たる内容を見出すため,知識の保有程度に関する14項目,技術の保有程度に関する22項目,自己研鑽と学習環境の有無15項目について,因子分析(主因子法)を行った.因子分析により抽出された各因子について,それぞれCronbachα係数を算出し,内的一貫性を確認した.

2)職場環境改善支援の実施程度との関連

(1) 職場環境改善支援の実施程度と,知識・技術の保有程度および自己研鑽と学習環境の有無についての関連

職場環境改善支援の実施程度と他の変数間に関連があるか探るため,職場環境改善の支援因子別に支援を行っている項目数と,回答者の基本属性・所属機関の基本情報に関する項目について,Spearmanの順位相関係数を算出した.同様にして,職場環境改善の支援因子別に支援を行っている項目数と,知識の保有程度に関する14項目,技術の保有程度に関する22項目,自己研鑽・学習環境の有無に関する15項目の関連について,Spearmanの順位相関係数を算出した.

(2) 職場環境改善の支援を目的変数とした関連要因モデルの作成

関連分析の結果をもとに,職場環境改善の支援因子ごとに関連要因モデルを作成し,共分散構造分析を行ってその適合度を確認した.モデルの適合度の指標には,適合度指標 GFI(Goodness of Fit Index),修正適合度指標 AGFI(Adjusted Goodness of Fit Index),比較適合度指標CFI(Comparative Fit Index),RMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)の4つを考慮した.GFI・AGFIは1に近いほど,説明力のあるモデルであり(GFI ≥ AGFI),CFIは1に近いほど,RMSEAは0.05以下であれば,モデルの適合が良いと判断した11)

解析統計ソフトは,SPSS(ver.20)for WindowsおよびAmos(Ver.21)を用いた.

6.倫理的配慮

本研究は,東海大学健康科学部倫理委員会の承認を得た後,日本産業衛生学会より名簿使用の許可を得て,実施した.対象者へは,調査の趣旨説明とともに,回答は自由意思に基づくものであり,また,無記名式であること,回答を拒否しても不利益は生じない旨を明記し,文書にて調査への協力を求めた.対象者からの返送をもって,調査への同意を得られたものとした.

IV. 結 果

不在返却されたものを除く最終的な対象者768名のうち,356名(回収率46.4%)から回答が得られた.有効回答数は329名(有効回答率92.4%)であった.

1.心理社会的職場環境改善の支援の内容と実施状況

1)基本属性・所属機関の基本情報

回答者の基本属性・所属機関の基本情報についての基礎集計結果をTable 1に示した.

Table 1.  Profile of the study population
Mean ± SD
Length of experience as Occupational Health Nurse (yr) 13.9 ± 8.8
Length of service in current department (yr) 10.5 ± 8.3
n=329 (%)
Qualifications
Public health nurse 246 (74.8)
Health supervisor 265 (80.5)
OHN registered with Japanese Society of Occupational Health 147 (44.7)
Age
20’s 26 (8.0)
30’s 90 (27.5)
40’s 132 (40.4)
50’s 73 (22.3)
60’s 6 (1.8)
Institution
Enterprise 298 (90.6)
Independent Health Insurance Society 31 (9.4)
Number of employees
1~49 5 (1.5)
50~299 62 (18.8)
300~999 119 (36.2)
1,000~2,999 83 (25.2)
3,000~9,999 45 (13.7)
10,000+ 15 (4.6)
Number of the office visits
Over four times a week 216 (65.7)
Two to three times a week 18 (5.5)
Once a week 19 (5.8)
Once two to three weeks 26 (7.9)
Under once a month 49 (14.9)

産業看護職としての平均経験年数は,13.9年であった.保有資格については,保健師資格を約7割が有しており,日本産業衛生学会登録の産業看護師については,約4割が資格を有していた.

2)職場環境改善の支援項目の因子分析結果と支援の有無

職場環境改善の支援7項目について,因子分析を行った結果および,支援の有無の基礎集計結果をTable 2に示した.

Table 2.  Factors and implementation rate of OHN support for improving psychosocial work environments
Items 1st factor 2nd factor Implementation rate
Factor loadings n=329(%)
1st factor: Clarifying the stress-related situation and providing advice (α=0.59)
Ascertain workplace stress levels and causes 0.55 0.18 182 (55.3)
Support employees in ascertaining their own stress levels 0.53 –0.05 166 (50.5)
Provide advice during consultations and support 0.44 –0.08 273 (83.0)
Take part in creating systems for workplace improvements 0.41 0.16 164 (49.8)
2nd factor: Facilitating workplace involvement (α=0.80)
Support workplace discussions stress study results –0.16 1.07 88 (26.7)
Provide advice to superiors based on stress study results 0.25 0.59 116 (35.3)
Support workplace discussions using tools 0.02 0.57 62 (18.8)

Factor extraction method: Principal Factor Method. Rotation method: Promax Rotation. OHN: Occupational Health Nurse.

因子分析の結果,下記の2つの因子が抽出された.第1因子【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】に分類された4項目の支援実施割合は,約5~8割だったのに対し,第2因子【職場参加型の環境改善の支援】に分類された3項目の支援実施割合は4割未満であった.

3)知識保有の程度

職場環境改善支援の知識に関する全14項目について,因子ごとに各知識の保有程度の基礎集計結果をTable 3に示した.

Table 3.  Possession rate of knowledge related to OHN support for improving psychosocial work environments
Items Possession rate of knowledge
Almost all Some Not much None
n=329 (%)
1st factor: Knowledge about checklists and tools (α=0.92)
Tools for workplace environment improvements 75 (22.8) 119 (36.2) 120 (36.5) 15 (4.6)
Methods for utilizing tools for workplace improvements 67 (20.4) 109 (33.1) 137 (41.6) 16 (4.9)
Methods for utilizing workplace stress question sheets 111 (33.7) 138 (41.9) 74 (22.5) 6 (1.8)
Workplace stress question sheets 132 (40.1) 141 (42.9) 54 (16.4) 2 (0.6)
Individual stress question sheets 140 (42.6) 142 (43.2) 45 (13.7) 2 (0.6)
2nd factor: Knowledge about offices (α=0.84)
Workplace climate and corporate culture related mental health 185 (56.2) 114 (34.7) 29 (8.8) 1 (0.3)
Guidelines and workplace regulations on mental health measures 224 (68.1) 91 (27.7) 14 (4.3) 0 (0.0)
Organizational structure of company 217 (66.0) 93 (28.3) 18 (5.5) 1 (0.3)
Company resources related to mental health measures 230 (69.9) 75 (22.8) 22 (6.7) 2 (0.6)
Company management circumstances 113 (34.3) 152 (46.2) 56 (17.0) 8 (2.4)
3rd facor: Knowledge about mental health (α=0.81)
Typical workplace stress causes 244 (74.2) 80 (24.3) 5 (1.5) 0 (0.0)
Mental health diseases 224 (68.1) 98 (29.8) 7 (2.1) 0 (0.0)
“Guidelines for Bettering Mental Health in Workplaces”, Ministry of Health, Labour and Welfare 219 (66.6) 93 (28.3) 17 (5.2) 0 (0.0)
Resources outside of companies related to mental health measures 161 (48.9) 120 (36.5) 45 (13.7) 3 (0.9)

Factor extraction method: Principal Factor Method. Rotation method: Promax Rotation. OHN: Occupational Health Nurse.

因子分析により,第1因子[チェックリストやツールに関する知識]に分類された5項目において,知識が概ねあると回答した割合は,約2~4割であった.特に,職場環境改善のツールに関する知識が概ねあると回答した割合は,約2割と低かった.第2因子[事業所に関する知識]に分類された5項目において,知識が概ねあると回答した割合は,約3~7割であった.同様に,第3因子[メンタルヘルスに関する知識]に分類された4項目については,約5~7割であった.

4)技術保有の程度

職場環境改善支援の技術に関する全22項目について,因子項目ごとに保有程度の基礎集計結果をTable 4に示した.

Table 4.  Possession rate of skills related to OHN support for improving psychosocial work environments
Items Possession rate of skills
Almost all Some Not much None
n=329(%)
1st factor: Support skills related to assessments from implementation (α=0.96)
Follow-up on the state of progress in workplaces 52 (15.8) 92 (28.0) 124 (37.7) 61 (18.5)
Playing a central role in advancing workplace discussions 37 (11.2) 79 (24.0) 139 (42.2) 74 (22.5)
Indirectly support workplace discussions centered on key personnel 52 (15.8) 94 (28.6) 124 (37.7) 59 (17.9)
Support for creating opportunities for workplaces to examine improvement plans 66 (20.1) 91 (27.7) 116 (35.3) 56 (17.0)
Coordinate departments related to workplaces 58 (17.6) 91 (27.7) 118 (35.9) 62 (18.8)
Provide advice to workplaces on converting assessments to numeric values 33 (10.0) 65 (19.8) 153 (46.5) 78 (23.7)
Motivate employees using company newsletters and other materials 75 (22.8) 112 (34.0) 100 (30.4) 42 (12.8)
Provide advice to workers so that they can feel the effects and benefits of activities 49 (14.9) 85 (25.8) 137 (41.6) 58 (17.6)
Horizontal development of good practices to other departments 70 (21.3) 101 (30.7) 101 (30.7) 57 (17.3)
Sharing information with key personnel 84 (25.5) 123 (37.4) 90 (27.4) 32 (9.7)
Present tools tailored to each workplace 38 (11.6) 100 (30.4) 159 (48.3) 32 (9.7)
2nd factor: Support skills related to preparations (α=0.96)
Build trust relationships between superiors and employees 183 (55.6) 129 (39.2) 17 (5.2) 0 (0.0)
Identify key personnel 145 (44.1) 154 (46.8) 27 (8.2) 3 (0.9)
Clarify workplace issues 81 (24.6) 159 (48.3) 85 (25.8) 4 (1.2)
Understand workplace tendencies from statistical data 130 (39.5) 135 (41.0) 58 (17.6) 6 (1.8)
Provide explanations to superiors to encourage understanding 85 (25.8) 135 (41.0) 97 (29.5) 12 (3.6)
Collect information on workplace stress levels and causes 100 (30.4) 158 (48.0) 65 (19.8) 6 (1.8)
Present statistical data related to mental health measures 96 (29.2) 133 (40.4) 92 (28.0) 8 (2.4)
3rd factor: Support skills related to stress studies (α=0.92)
Provide feedback to superiors on the results of stress studies 70 (21.3) 89 (27.1) 113 (34.3) 57 (17.3)
Tabulate and analyze stress study results for each department 85 (25.8) 84 (25.5) 113 (34.3) 47 (14.3)
Provide feedback to members on the results of stress studies 57 (17.3) 87 (26.4) 125 (38.0) 60 (18.2)
Select stress question sheets tailored to each workplace 48 (14.6) 67 (20.4) 168 (51.1) 46 (14.0)

Factor extraction method: Principal Factor Method. Rotation method: Promax Rotation. OHN: Occupational Health Nurse.

因子分析により,第1因子[職場環境改善の実施から評価に関する支援技術]に分類された11項目において,技術が概ねあると回答した割合は,約1~2割であった.同様に,第2因子[職場環境改善の準備に関する支援技術]に分類された7項目については,約2~5割,第3因子[ストレス調査に関する支援技術]に分類された4項目については,約1~2割であった.

5)自己研鑽・学習環境の有無

職場環境改善支援の自己研鑽・学習環境に関する全15項目について,因子項目ごとに該当の有無の基礎集計結果をTable 5に示した.

Table 5.  Existence or lack of self-learning or learning environments related to OHN support for improving psychosocial work environments
Items Existence rate
n=329 (%)
1st factor: Participation in training (α=0.74)
Participate in workshops to facilitate group work effectively 143 (40.5)
Participate in workshops on workplace environment improvement tools 139 (39.8)
Participate in workshops to apply stress study results 145 (41.8)
Participate in workshops to encourage groups and organizations 151 (43.9)
2nd factor: Self-learning through active information gathering (α=0.67)
Read articles 195 (55.3)
Read activity reports 285 (85.8)
Read books 221 (63.7)
Gather information on the internet 237 (69.7)
Listen to presentations at academic conferences, technical meetings, etc. 237 (70.4)
3rd factor: Support structures through suggestions and self-learning through activity reports (α=0.59)
Able to consult with occupational health nurses and occupational physicians at other corporations 184 (52.8)
Take suggestions from occupational health staff members in workplaces 241 (70.0)
Review routine workplace environment improvement activities and make activity reports 126 (34.2)
Receive support and suggestions from leaders at universities and research institutes 69 (18.5)
4th factor: Support from workplaces for training participation (α=0.61)
Company pays expenses to attend training 178 (53.3)
Understanding is easily obtained on the worth of absences from work to attend training 227 (67.2)

Factor extraction method: Principal Factor Method. Rotation method: Varimax Rotation. OHN: Occupational Health Nurse.

因子分析により,第1因子[研修への参加]に分類された4項目において,該当すると回答した割合は,約4割であった.同様に,第2因子[情報収集による自己研鑽]に分類された5項目については,約5~8割,第3因子[助言によるサポート体制と活動報告による自己研鑽]に分類された4項目については,約2~7割,第4因子[研修参加のための職場の援助]に分類された2項目については,約5~7割であった.

2.心理社会的職場環境改善の支援タイプ別の関連要因モデル

職場環境改善の支援別に支援を行っている項目数と基本属性の関連分析結果をTable 6に示す.同様にして,職場環境改善の支援因子別に支援を行っている項目数と知識の保有程度の関連分析結果をTable 7に,技術の保有程度の関連分析結果をTable 8に,自己研鑽・学習環境の有無の関連分析結果をTable 9へそれぞれ示す.以降で,Table 6, 7, 8, 9に示した結果をもとに,共分散構造分析を行った結果について述べる.

Table 6.  Correlation of profile of respondents with OHN support factors for improving psychosocial work environments (n=329)
Clarrifying the stress-related
situation and providing advice
Facilitating workplace
involvement
Length of experience as Occupational Health Nurse (yr) 0.16*** 0.17***
Length of service in current department (yr) 0.13* 0.09
Age (1: 20’s 2: 30’s 3: 40’s 4: 50’s 5: 60’s) 0.15* 0.14*
Institution (1: Enterprise 2: Independent Health Insurance Society) –0.17*** –0.13*

Spearman’s rank correlation coefficient * p<0.05, *** p<0.001. Only significant item. OHN: Occupational Health Nurse.

Table 7.  Correlation of knowledge items with OHN support factors for improving psychosocial work environments (n=329)
Clarrifying the stress-related
situation and providing advice
Facilitating workplace
involvement
Knowledge about mental health
“Guidelines for Bettering Mental Health in Workplaces”, Ministry of Health, Labour and Welfare 0.28*** 0.12*
Typical workplace stress causes 0.23*** 0.16***
Mental health diseases 0.23*** 0.18***
Resources outside of companies related to mental health measures 0.17*** 0.15*
Knowledge about offices
Organizational structure of company 0.21*** 0.18***
Company management circumstances 0.23*** 0.18***
Guidelines and workplace regulations on mental health measures 0.26*** 0.17***
Workplace climate and corporate culture related mental health 0.31*** 0.27***
Company resources related to mental health measures 0.22*** 0.16***
Knowledge about checklists and tools
Individual stress question sheets 0.37*** 0.23***
Workplace stress question sheets 0.35*** 0.29***
Methods for utilizing workplace stress question sheets 0.34*** 0.34***
Methods for utilizing tools for workplace improvements 0.28*** 0.32***
Tools for workplace environment improvements 0.29*** 0.31***

Spearman’s rank correlation coefficient * p<0.05, *** p<0.001. OHN:Occupational Health Nurse.

Table 8.  Correlation of skills items with OHN support factors for improving psychosocial work environments (n=329)
Clarrifying the stress-related
situation and providing advice
Facilitating workplace
involvement
Support skills related to preparations
Collect information on workplace stress levels and causes 0.28*** 0.26***
Understand workplace tendencies from statistical data 0.31*** 0.29***
Clarify workplace issues 0.33*** 0.36***
Build trust relationships between superiors and employees 0.24*** 0.21***
Identify key personnel 0.26*** 0.25***
Present statistical data related to mental health measures 0.34*** 0.30***
Provide explanations to superiors to encourage understanding 0.40*** 0.41***
Support skills related to stress studies
Select stress question sheets tailored to each workplace 0.33*** 0.36***
Tabulate and analyze stress study results for each department 0.45*** 0.51***
Provide feedback to superiors on the results of stress studies 0.44*** 0.58***
Provide feedback to members on the results of stress studies 0.42*** 0.52***
Support skills related to assessments from implementation
Present tools tailored to each workplace 0.30*** 0.43***
Sharing information with key personnel 0.40*** 0.43***
Support creating opportunities for workplaces to examine improvement plans 0.37*** 0.39***
Playing a central role in advancing workplace discussions 0.36*** 0.38***
Indirectly support workplace discussions centered on key personnel 0.38*** 0.44***
Motivate employees using company newsletters and other 0.34*** 0.34***
Follow-ups on the state of progress in workplaces 0.34*** 0.41***
Coordinate departments related to workplaces 0.38*** 0.39***
Provide advice to workplaces on converting assessments to numeric values 0.36*** 0.38***
Provide advice to workers so that they can feel the effects and benefits of activities 0.38*** 0.38***
Horizontal development of good practices to other departments 0.38*** 0.34***

Spearman’s rank correlation coefficient *** p<0.001. OHN: Occupational Health Nurse.

Table 9.  Correlation of self-learning or learning environments items with OHN support factors for improving psychosocial work environments (n=329)
Clarrifying the stress-related
situation and providing advice
Facilitating workplace
involvement
Self-learning through active information gathering
Listen to presentations at academic conferences, technical meetings, etc. 0.16*** 0.16***
Read articles 0.18*** 0.18***
Read activity reports 0.09 0.07
Read books 0.14* 0.16***
Gather information on the Internet 0.18*** 0.12*
Participation in training
Participate in workshops on workplace environment improvement tools 0.16*** 0.12*
Participate in workshops to apply stress study results 0.11* 0.12*
Participate in workshops to facilitate group work effectively 0.16*** 0.19***
Participate in workshops to encourage groups and organizations 0.09 0.10
Support structures through suggestions and self-learning through activity reports
Take suggestions from occupational health staff members in workplaces 0.30*** 0.23***
Able to consult with occupational health nurses and occupational physicians at other corporations 0.19*** 0.18***
Review routine workplace environment improvement activities and make activity reports 0.30*** 0.26***
Receive support and suggestions from leaders at universities and research institutes 0.23*** 0.23***
Support from workplaces for training participation
Understanding is easily obtained on the worth of absences from work to attend training 0.18*** 0.15*
Company pays expenses to attend training 0.14* 0.09

Spearman’s rank correlation coefficient * p<0.05, *** p<0.001. OHN: Occupational Health Nurse.

1)【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】の関連要因モデル

【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】の関連要因モデルをFig. 2に示した.

Fig. 2.

 Structural equation model for 【Clarrifying the stress-related situation and providing advice】.

共分散構造分析の結果では,モデルの当てはまりの良さを示す適合度指標は,GFI=0.951,AGFI=0.912,RMSEA=0.016を示し,適合性の高いモデルであることが認められた.

モデルの内容として,「相談対応の際に職場環境改善のヒントになるような助言」,「職場のストレス状況・要因の把握」,「従業員が自分のストレス状況を把握するための支援」,「事業所の職場環境改善の仕組みづくりに参画」を観測変数とする【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】は,「管理職へ,理解を促すための説明を行う」技術,「ストレス調査結果を部署毎に集計・分析する」技術を観測変数とする,潜在変数[支援技術]から正の影響を受けていた(β=0.76,p<0.001).潜在変数[支援技術]は,「個人のストレス調査票」の知識,「一般的な職場のストレス要因」の知識を観測変数とする,潜在変数[支援知識]から正の影響を(β=0.57,p<0.001),「日頃の職場環境改善活動を振り返り,活動報告を行う」,「論文を読む」を観測変数とする,潜在変数[自己研鑽] から正の影響を(β=0.52,p<0.001)それぞれ受けていた.潜在変数[支援知識]は,潜在変数[自己研鑽]から正の影響を(β=0.33,p<0.05)を受けていた(Fig. 2).

2)【職場参加型の環境改善の支援】の関連要因モデル

【職場参加型の環境改善の支援】の関連要因モデルをFig. 3に示した.

Fig. 3.

 Structural equation model for 【Facilitating workplace involvement】.

共分散構造分析の結果では,モデルの当てはまりの良さを示す適合度指標は,GFI=0.965,AGFI=0.932,RMSEA=0.013を示し,適合性の高いモデルであることが認められた.

モデルの内容として,「ストレス調査結果に基づき,管理職へ助言」,「ストレス調査結果に基づき,職場討議を支援」,「ツール等を用い,職場討議を支援」を観測変数とする【職場参加型の環境改善の支援】は,「キーパーソンを中心とした職場討議を間接的に支援する」技術,「職場のストレス調査結果を管理職へフィードバックする」技術を観測変数とする,潜在変数[支援技術]から正の影響を受けていた(β=0.68,p<0.001).潜在変数[支援技術]は,「職場環境改善のツール」の知識,「職場のストレス調査票の活用方法」の知識を観測変数とする,潜在変数[支援知識]から正の影響を(β=0.58,p<0.001),「グループワークを効果的に行うための研修会への参加」,「大学や研究機関の指導者からサポートや助言を受けられる」を観測変数とする,潜在変数[研修への参加・学習環境] から正の影響を(β=0.27, p<0.05)それぞれ受けていた.潜在変数[支援知識]は,潜在変数[研修への参加・学習環境]から正の影響を(β=0.60,p<0.001)を受けていた(Fig. 3).

V. 考 察

1.産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援に関する現状

産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援に着目し検討したことで,【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】と【職場参加型の環境改善の支援】という2つの支援タイプが明らかになり,実施状況に差があることなど,今後の課題を考える上で大きな示唆が得られた.

【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】に分類された4項目については,支援していると回答した割合が約5~8割で,今回調査対象とした産業衛生学会所属の産業看護職において,このような内容の職場環境改善の支援はほぼ標準化されている可能性が示唆された.小林12)は,職場環境の改善を通じたアプローチでは,職場環境の現状をストレス調査等により把握することが出発点となる,と述べており,ストレス状況の把握は,心理社会的職場環境改善の支援において,まず必要な活動であると考えられる.

一方,【職場参加型の環境改善の支援】に分類された3項目については,支援していると回答した割合が4割未満で,前記の支援と比較して実施率が低いのが注目された.産業保健の国際的な動向として,従来の法規遵守方式から,自主対応型への移行がみられ,自主対応型の手法として注目されるのが,従業員参加型の職場環境改善であるとされている13).吉川ら13)は,従業員参加型の職場環境改善は,従業員自らが対策を提案することにより,実際に継続的な改善につながりやすい活動であると述べている.このことからも,【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】の次のステップとして,より職場の主体的な活動を促す【職場参加型の環境改善の支援】を,今後さらに推進していく必要があると考えられる.

職場環境改善支援の知識因子[チェックリストやツールに関する知識]に分類された5項目全てにおいて,[ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援]活動,および[職場参加型の環境改善の支援]活動との間に有意な弱い正の相関がみられたことから,産業看護職は,[チェックリストやツールに関する知識]を心理社会的職場環境改善の支援の際に用いていることが示唆された.しかし,[チェックリストやツールに関する知識]に分類された項目のうち,「職場環境改善のツール」,「職場環境改善のツールの活用方法」に関する知識を保有している割合は特に低く,今後これらの知識の獲得を促す必要性が示唆された.

職場環境改善支援の技術因子[職場環境改善の実施から評価に関する支援技術]の保有率は低い傾向にあり,課題と考えられた.錦戸14)は,職場環境改善の活動を職場全体の継続的な取り組みにするためには,活動の適切な評価と職場関係者全員での共有が大切になると述べており,今後さらなる獲得が必要な支援技術であると考えられる.

職場環境改善支援の自己研鑽・学習環境因子【研修への参加】に分類された4項目も該当割合が,全体的に低く,職場のメンタルヘルス対策における産業看護職のスキルアップを目的とした研修が,中央労働災害防止協会や,独立行政法人労働者健康福祉機構の産業保健推進センター等で行われているが,職場環境改善を目的とした研修は少ない現状であり,【研修への参加】に分類された項目の実施割合が低いことの原因の一つとして考えられる.

2. 産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援タイプ別の関連要因モデル

心理社会的職場環境改善の支援の関連要因モデルを支援タイプ別に検討したことにより,各支援に関連する [支援技術], [支援知識],ならびに [自己研鑽・学習環境]が明らかとなった.今後,同支援の推進方策を検討する上で大変有用と考えられる.

1)【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】の関連要因モデル

【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】の実施には,「管理職へ,理解を促すための説明を行う」技術,「ストレス調査結果を部署毎に集計・分析する」技術からなる支援技術が関連していた.錦戸14)は,職場環境改善の支援の際には,通常,管理職の理解と協力が不可欠であり,まずは管理職との信頼関係を基盤に,職場の改善課題についての気づきの支援や,改善方策についての情報提供をしながら,改善への動機づけを図ることが必要,と述べている.このことからも,産業看護職は,心理社会的職場環境改善の必要性を管理職に理解してもらうための技術を持ち,支援活動につなげていることが示唆された.生嶋らが産業保健師を対象に実施した意識調査15)において,産業保健師を続けていく上で,必要な知識・能力の一つとして挙げられていたのが,統計学や情報処理に関する知識や実際の処理方法技術に関するものであった.このことから,統計学や情報処理に関する知識・技術は,産業看護職自身も必要性を認識している知識・技術であると言える.心理社会的職場環境改善の支援においても,職場のストレス状況の把握のためには,統計等の知識を持ち,集計を行い,数値や分布から分析し,職場の特徴をつかむ技術が必要であると考えられる.しかし,「ストレス調査結果を部署毎に集計・分析する」技術があると回答した割合は,約5割に留まっており,今後さらに習得を促すことが必要であることが示唆された.

また,その支援技術に関連していたのは,「個人のストレス調査票」の知識,および「一般的な職場のストレス要因」の知識からなる支援知識であった.例えば,NIOSHモデル16)に代表される職業性ストレスモデル等から,職場の一般的なストレス要因の知識を得ておくことにより,職場の課題等の情報を把握しやすく,また,管理職と情報を共有するための説明の際にも,理解を得やすい説明につながることが考えられる.

さらに,これらの支援知識・技術には,「論文を読む」,「日頃の職場環境改善活動を振り返り,活動報告を行う」からなる自己研鑽が関連していた.職場環境改善についての論文を読むことから,職場環境改善に関する実践例や,エビデンスに関する情報収集ができ,管理職へより具体的な説明を行うことにつながることが考えられる.加えて,論文は統計手法に基づいたものが多いため,論文を読むことで,統計手法を学ぶ良い機会ともなることが考えられる.また,保健師が実践研究をすることは,活動を見直すことからはじめ,現状分析,課題の設定,実践の工夫,評価の一連のプロセスを踏むとされ,新しい知識・技術を見出し専門能力向上に役立てることにつながる行動であると言われている17).このことからも,「日頃の職場環境改善活動を振り返り,活動報告を行う」ことは,【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】に,関連する支援知識・技術の習得に役立ち,また,支援活動のスパイラルアップにつながる自己研鑽であることが示唆された.

2)【職場参加型の環境改善の支援】の関連要因モデル

【職場参加型の環境改善の支援】の実施には,「職場のストレス調査結果を管理職へフィードバックする」技術,「キーパーソンを中心とした職場討議を間接的に支援する」技術からなる支援技術が関連していた.岡本が実施した行政保健師を対象とした調査18)において,活動の必要性を上司や関係機関,住民組織に納得してもらえる決め手として多く挙げられていたのは,エビデンスや数的根拠をもって,客観的データを図表化して説明するというものであった.このことからも,自分の職場のストレス結果を具体的に示されることで,管理職は自分たちの問題として捉えることになり,より職場の主体的な活動を始めようという意欲につながる可能性が考えられる.「キーパーソンを中心とした職場討議を間接的に支援する」ことは,対象職場が有する職場風土や人間関係を把握し,彼らなりの集団目標を構築していく過程や共通の目標に対する活動を,側面から支援することで,職場の士気を高めていくという集団力学を活用している活動19)とされている.河野20)は,自主対応型の産業保健における看護職の役割の一つとして,ファシリテーターとしての役割を挙げている.ファシリテーションは,問題を解析し,解決策を生み出すツールであり,技術であるとされており,ファシリテーターと対象者の間には信頼関係が重要であるとされている21).このことから,従業員との信頼関係を持つ産業看護職がファシリテーション技術を活用することで,職場主体で,問題を解決するための支援につながることが考えられる.キーパーソンを中心として,職場主体の活動ができるよう支援を行うことは,従業員や管理職を含めた,職場メンバーが自ら健康を管理することにつながり,職場を中心とした参加型の環境改善の支援においては,不可欠な技術であると言える.しかし,一方で「キーパーソンを中心とした職場討議を間接的に支援する」技術があると回答した割合は約4割に留まっており,さらに習得が必要な技術であることが示唆された.

これらの支援技術と関連していたのは,「職場のストレス調査票の活用方法」の知識,および「職場環境改善のツール」の知識からなる支援知識であった.「職場のストレス調査票の活用方法」の知識を持つことで,「職場のストレス調査結果を管理職へフィードバックする」技術につながることが考えられる.また,吉川ら6)は,メンタルヘルスアクションチェックリスト等の職場環境改善のためのツールは,実効性のある改善行動を選択し,従業員の参加を促進するために有用と述べている.このことからも,【職場参加型の環境改善の支援】をより推進していくために,それらのツールに関する知識の獲得をさらに促していく必要性があることが示唆された.

さらに,これらの支援知識・技術と関連していたのは,「グループワークを効果的に行うための研修会への参加」,および「大学や研究機関の指導者からサポートや助言を受けられる」からなる研修への参加・学習環境であった.「グループワークを効果的に行うための研修会への参加」は,ファシリテーション技術の習得に効果的であると考えられ,今後,さらなる研修機会の増加が期待される.また,【職場参加型の環境改善の支援】に関連する支援技術・知識には,職場内でのサポートに加え,さらに大学や研究機関の指導者といった専門家からのサポートが効果的であることが示唆された.錦戸14)は,従業員参加型の職場環境改善の活動の導入にあたっては,多くの職場関係者の理解を得ることが必要であり,社外の専門家の協力を得て,講演会などを最初に開催し,共通理解を得た上で,プロジェクトの発足,事業場全体の本格的な活動に移行していくことが効果的である,と述べている.このことからも,支援知識・技術の習得を促し,支援活動を推進するために,今後,現場と大学や研究機関との協働体制を構築していくことが望まれる.

今回,それぞれのタイプの心理社会的職場環境改善支援と関連が認められた支援知識・技術の獲得を促すことで,支援が推進される可能性があり,そのためには支援知識・技術と関連が認められた自己研鑽・学習環境を強化することが有用である可能性が示唆された.看護の理念として,健康問題解決の支援に際して,相手を全人的に捉え,その自助力に働きかけ,気持ちや生きがいを尊重することが特徴とされている22).従って,従業員との信頼関係を持ち,従業員個人,そして背景として職場環境を把握している産業看護職が職場の自助力を引き出すことにつながる心理社会的職場環境改善の支援を行うことは,看護職としての特性を生かせる活動であると言える.今後はさらに,産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援の推進が望まれる.

3.本研究の意義と限界

本研究により,産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援内容,および支援に必要な知識と技術,およびそのための学習環境等が具体的に可視化されたことは,これらの支援を推進する上で,大きな意義があると考えている.具体的には,研修機会の増加や,学習環境の整備により,支援に必要な知識・技術の習得を促す必要性が示唆された.

一方,本研究における職場環境改善に関する知識・技術の保有状況に関しては,あくまでも主観的な回答である.積極的に学習を行い,能力が高い人ほど自己評価が厳しい可能性も考えられるため,解釈には注意を要する.このような方法で回答を求めた背景には,産業看護職の知識・技術を客観的に測る指標が存在しないことや,本研究のような大規模な質問紙調査の際には,他者による測定が難しいことが挙げられる.今後の研究課題として,研修プログラムの開発や研修成果の検証などが必要であるが,その際の評価指標の一部に知識・技術に関する客観的指標の開発・導入を検討することが望ましいと考えられる.

VI.結 論

本研究により,産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援が,【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】,【職場参加型の環境改善の支援】の2つに分けられることが明らかになった.前者のタイプに分類された支援項目の実施割合は,約5~8割程度だったのに対し,後者のタイプに分類された支援項目の実施割合は4割未満であった.それぞれのタイプの心理社会的職場環境改善支援と関連が認められた支援知識・技術の獲得を促すことで,支援が推進される可能性があり,そのためには支援知識・技術と関連が認められた自己研鑽・学習環境を強化することが有用である可能性が示唆された.

本研究は,平成23~26年度 文部科学研究費補助金 基盤研究B「現代社会が求める新たな保健師像と専門能力(課題番号 22390448)」(研究代表者 錦戸典子)の一部として実施した.

Acknowledgment

謝辞:質問紙調査にご協力いただきました日本産業衛生学会員の皆様に,心より御礼申し上げます.

References
 
© 2015 by the Japan Society for Occupational Health
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