2025 Volume 67 Issue 2 Pages 35-46
目的:業種等の企業特性に応じて従業員の健康障害のリスクを評価することは,健康障害が生じている労働者集団の特定や,企業による健康施策の立案に利用できる.業種間における疾患の有病率や受療率の違いは先行研究で検討されているが,生産性を低下させる,休職を指標とした研究は乏しい.本研究の目的は,疾患別の休職率と業種などの企業特性との関連を明らかにすることである.対象と方法:労働政策研究・研修機構に申請し,アーカイブデータの二次利用許可を得て,全国の50人以上の常用雇用者を有する民間企業を対象とした調査データを取得した.メンタルヘルス,がん,糖尿病・高血圧等の生活習慣病,心疾患,脳血管疾患及び難病による休職者数を目的変数とし,負の二項回帰分析を行い,順序ロジスティック回帰で結果を確認した.業種以外の企業特性として,企業規模,年齢構成,健康診断の実施状況及び労働組合や柔軟な勤務制度の有無を調整した.結果:疾患別の休職率は,メンタルヘルスでは情報通信業,医療・福祉及び教育・学習支援業で高く,生活習慣病と心疾患では運輸・郵便業,がんでは医療・福祉においてそれぞれ高かった.労働者の年齢層が高いとメンタルヘルス関連の休職率が低い一方で,難病を除く身体疾患の休職率は高かった.労働組合の存在はメンタルヘルス,がん及び脳血管疾患の休職,柔軟な勤務制度が利用できることはメンタルヘルスと心疾患の休職と関連していた.考察と結論:メンタルヘルスによる休職率が高い3業種はいずれも専門・技術職の割合が高く,共通した背景として業務負荷の大きさが考えられる.加えて,特に教育や医療では役割の不明瞭さがストレスに繋がっている可能性がある.運輸・郵便業において,生活習慣病や心疾患による休職率が高かったのは,勤務形態や生活習慣の影響が考えられた.また,医療・福祉業でがんによる休職率が高いのは女性比率の高さが影響している可能性がある.本研究は性別などの他の研究で検討された変数を調整できなかったので,特にがんによる休職者数の結果の解釈には注意する必要がある.
Objectives: Assessing the risk of employee health problems according to firm characteristics (e.g., industry) can be used by companies to identify groups of workers with health problems and develop health-related policies. Previous studies have examined differences in the prevalence of diseases across industries; however, studies using sickness absences, which reduce productivity, are scarce. The purpose of this study was to identify differences in sickness absence rates across industries. Methods: With permission for secondary use of archived data from the Japan Institute for Labor Policy and Training (JILPT), we obtained data from private companies with 50 or more regular employees nationwide. Negative binomial regression was conducted using the number of sickness absences attributed to mental health, cancer, lifestyle-related diseases (e.g., diabetes, hypertension, heart disease, cerebrovascular disease), and intractable diseases as the objective variables. The results were confirmed by an ordinal logistic regression. Firm characteristics other than industry were adjusted for firm size, age structure, medical examinations, labor unions, and flexible work systems. Results: The incidence of sickness absences due to mental health was high in the information and communications, medical care/welfare, and education/learning support industries because of lifestyle-related diseases, and heart disease was high in the transportation/postal industry. Cancer was high in the medical care/welfare industry. While older worker age groups had a lower incidence of mental health issues, a higher incidence of physical illnesses, excluding intractable diseases, was observed. The presence of a labor union was associated with sickness absences due to mental health, cancer, and cerebrovascular disease, and the availability of a flexible work system was associated with sickness absences due to mental health and heart disease. Conclusions: The three industries with a high incidence of mental health leave had a high percentage of professional/technical workers and a common background of heavy workloads. In addition, role ambiguity, particularly in the education and medical industries, could lead to stress. The association between the transportation/postal industry and sickness absences due to lifestyle-related diseases and heart disease was probably influenced by work style and lifestyle, whereas the association between the medical care/welfare industry and sickness absences due to cancer was probably influenced by the high percentage of women in this industry. This study could not be adjusted for several variables examined in other studies, such as sex, and caution should be exercised when interpreting the results, especially regarding absences due to cancer.
企業は,労働者の健康増進のため,役割を果たすことが期待されている.産業保健の課題は多様化しており1),作業態様を類推できる業種,事業所規模,雇用形態,年齢構成といった企業特性に基づき各企業が対応すべき健康課題を明確化し,健康施策を立案することにより,効率的な産業保健活動が実践できる.こうした企業特性に応じて従業員の健康障害のリスクを評価することは,健康障害が生じるリスクが高い労働者集団の推定や,企業による健康施策の立案に利用できる.
いくつかの研究では,症状の有訴率や疾患の有病率・受療率などの健康指標と企業特性との関連が分析されている.精神疾患については,個人属性及び企業規模等の企業特性を調整した上でもホワイトカラー職種が中心の業種で受療率が高いことが示されており2),情報通信業,運輸業,専門・技術サービス業などで過労関連の精神障害の発生率が高いとする研究3)もある.身体疾患については,運輸業の勤務はメタボリックシンドローム4)やそれに関連する生活習慣5),高血圧や糖尿病といった冠動脈性心疾患のリスク因子6)と関連していたことが報告されている.また,過労関連の脳・心臓疾患の最もリスクの高い業種も運輸・郵便業であった3).疾患そのものを指標として用いた研究ではないが,心身症状指標7)やストレス傾向8)について業種との関連や業種間の違いを検討した研究も存在する.こうした先行研究から,精神疾患の受療率はホワイトカラー職の多い業種で高く,身体疾患のうちメタボリックシンドロームや生活習慣病の有病率,脳・心臓疾患の発生率は運輸業で高いとまとめることができる.筆者らが実施した滋賀県における治療と仕事の両立支援に関する実態調査9)においても,これらの先行研究と矛盾しない結果であった.
しかし,先行研究では,病気休職を含む生産性を低下させるような状況について,複数の業種間で比較検討したものは乏しい.特に長期にわたる病気休職は大きな経済損失をもたらす10)ため,そうしたアブセンティーズムのリスクを持つ集団を同定することは重要である.様々な疾患による休職を業種別に集計した調査研究として,労働政策研究・研修機構(JILPT)の「メンタルヘルス,私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」11)(以下,JILPT調査)が存在するが,企業規模等の特性が調整されていないため,病気休職者数の差が業種によるものとは言い切れない.企業規模は労働者の健康に影響することが知られており12,13,14),企業規模を調整した研究が望まれる.なお,疾患に罹患した従業員が休職を経ずに退職を余儀なくされる可能性もあるが,JILPT調査11)における病気休職制度の申請状況や,継続就業の状況のパターンの結果を参照すると,休職を経ずに退職するケースは少なく,退職する場合も休職制度を利用することが一般的と考えられる.また,大半の従業員は慢性疾患に罹患したことを雇用主に伝える15)ため,企業は疾患の罹患状況を概ね把握していると考えられ,一定期間欠勤が続く場合,多くの企業において診断書の提出を求めており,病気休職は健康指標としてある程度信頼できる16).そこで,アブセンティーズムの指標である疾患別の休職率を目的変数として業種等の企業特性との関連を明らかにするために本研究を実施した.
本研究では,JILPT調査11)のアーカイブデータNo.63(調査シリーズNo.112)を二次利用するにあたり,2023年2月にJILPTへ利用を申請し,許可を得て,完全に匿名化されたデータをSPSSファイル形式にて入手した.JILPT調査11)の対象は常用労働者50人以上を雇用している全国の民間企業20,000社(農林漁業・公務除く)であり,有効回答数は5,904件(有効回答率:29.5%)であった.当該調査の調査項目は,企業特性(業種,正社員・非正社員別社員数,正社員の年齢構成比率,労働組合の有無など),安全衛生管理体制,健康診断実施状況,勤務時間制度,通常の年次有給休暇以外で連続して1か月以上従業員が私傷病時に利用できる休暇・休職・休業する制度(以下,病気休職制度)の有無及びその利用実績(過去3年間で同制度の新規利用人数合計と疾病別内訳など)等である.
2) 分析方法 (1) 分析対象と統計手法本研究では,JILPT調査11)の有効回答から,病気休職制度の有無を問う項目に対し「ある」と回答した企業を抽出し,病気休職者数を「過去3年間で同制度を新規利用した人数」と定義した上で,疾病別の病気休職者率と業種との関連を分析した.
病気休職者数は過分散のカウントデータであり11),主な分析方法として,過分散のカウントデータを扱う負の二項回帰モデルを採用することが適切と考えた.ただし,病気休職者数はアーカイブデータに格納される際,部分的にカテゴリ化されているため,後述するようにカテゴリ化されている変数は連続変数に変換してカウントデータに変換し,負の二項回帰分析を行った.病気休職の調査対象期間である過去3年間において企業規模がほぼ一定で,企業規模を説明変数に含めることでその影響が十分調整されている場合,同分析にて得られた説明変数の係数は,企業規模に占める病気休職者数の比率(病気休職率)との関連を表すものと解釈できる.よって,本研究では,負の二項回帰分析の結果として得られる説明変数の係数を指数変換した値を,参照カテゴリに対する休職率の比として表した.アーカイブデータにおいて,目的変数である休職者数が部分的にカテゴリ化されて提供されているため,カウントデータを目的変数にとる負の二項回帰モデルはデータ構造に完全に合致しているとはいえない.こうしたデータ構造の不適合に対し,負の二項回帰モデルで扱えるようカウントデータに変換しているが,この過程で,結果に大きな影響が出ていないかどうかを確かめるため,連続変数への変換を行わずに順序カテゴリのまま目的変数を回帰する順序ロジスティック回帰によっても分析した.
(2) 目的変数メンタルヘルス,がん,糖尿病・高血圧等の生活習慣病,心疾患,脳血管疾患,及び難病による休職者数を目的変数とした.B型肝炎もしくはC型肝炎による休業者数は,過去3年間で平均0.01人11)と他の疾患と比べて非常に少なかったことから,分析には含めなかった.JILPTから提供されたアーカイブデータは,秘匿化のため,病気休職者数が部分的にカテゴリ化されていたので,負の二項回帰分析において,病気休職者数は各カテゴリの最小値をとって連続変数に直した.具体的には,カテゴリ化されず提供された休職者数のデータはそのまま利用し,「3~4人」,「5~9人」,「10人以上」とカテゴリ化された休職者数のデータはそれぞれ最小値を取って3,5,10と変換した.順序ロジスティック回帰分析では病気休職者数を順序カテゴリとして投入した.
(3) 説明変数モデルの過適合を防ぐ目的で,一定のサンプルサイズを確保するため,サンプルサイズが100以上の「建設業」,「製造業」,「情報通信業」,「運輸業・郵便業」(以下,運輸・郵便業),「卸売業・小売業」(以下,卸売・小売業),「学術研究・専門・技術サービス業」(以下,学術研究),「宿泊業・飲食サービス業」(以下,宿泊・飲食業),「生活関連サービス業,娯楽業」(以下,生活関連サービス等),「教育・学習支援業」,「医療・福祉」,「その他サービス業」,「その他」の12業種を説明変数とした.自企業の業種を「その他」と回答した企業のほか,n = 100未満の5つの業種(「鉱業,採石業,砂利採取業」(n = 6),「電気・ガス・熱供給・水道業」(n = 43),「金融業,保険業」(n = 55),「不動産業,物品賃貸業」(n = 77),「複合サービス事業」(n = 7))を「その他」に含めた.なお,n = 100以上の12業種に加え,n = 50以上の2業種(「金融業,保険業」,「不動産業,物品賃貸業」)も含めた14業種で負の二項回帰分析を行ったところ,サンプルサイズの不足から一部の疾患(心疾患,脳血管疾患)で結果の収束に問題が生じたため,当該のモデルは採用しなかった.回帰分析における参照カテゴリは「製造業」とした.
JLIPT調査11)の報告書によると,病気休職制度ありの企業(5,428社)のうち非正社員の休職者が1人以上あったと回答した割合は10.8%,過去3年間の非正社員の休職者の平均人数は0.38人と全社員の休職者数の平均(2.88人)よりも低い水準にあることから,病気休職制度が適応されるのは主に正社員であると考えられる.よって,企業規模として正社員数(1;49人以下,2;50~99人,3;100~299人,4;300~999人,5;1,000人以上)を説明変数として投入した(モデル1).なお,産業医の有無など衛生管理体制については企業規模に大きく依存することから,多重共線性を避けるため変数に含めなかった.
年齢は疾患の発生に大きくかかわる.ほぼ全ての回答企業で一般健診は行われていたが,がん検診や人間ドックは企業ごとに実施状況に差があり,サーベイランスバイアスが生じている可能性がある.また,休職の決定は労使関係によって左右されるかもしれず,柔軟な勤務時間制度を含む企業福利に影響される可能性もある.そこで,正社員の年齢構成(以下50代以上比率,1;0~1割以下,2;1割超~2割以下,3;2割超~3割以下,4;3割超~4割以下,5;4割超~5割以下,6;5割超~6割以下,7;6割超~7割以下,8;7割超~8割以下,9;8割超~9割以下,10;9割超~10割),がん検診及び人間ドック実施の有無を表すダミー変数(以下がん検診ダミー及び人間ドックダミー,1;ある場合,0;それ以外),柔軟な勤務制度の利用可能性の有無を表すダミー変数(以下柔軟な勤務制度ダミー,1;フレックスタイム等の勤務時間帯への配慮もしくは短時間勤務制度が利用できる場合,0;それ以外)や,労働組合の有無を表すダミー変数(以下労組ダミー,1;労働組合がある場合,0;それ以外)によっても調整した(モデル2).なお,アーカイブデータに女性比率の情報がなく,性別の影響を調整することはできなかった.
(4) 補足の分析非正社員の病気休職が多い業種では,正社員規模に対して休職者数が多く見えてしまう可能性もある.そこで,非正社員数に加え,企業規模も考慮するため,従業員数に対して一定以上の割合で非正社員の休職者があったサンプルを除外しての分析も行った.具体的には,カテゴリ化されている非正社員休職者数の最小値をとって連続変数に変換し,同様に全社員数の最小値をとって連続変数に変換した.次に,これらの変数から従業員数に対する非正社員休業者の比率を計算し,100人の従業員に対し1人以上の非正社員休業者がいる企業をサンプルから除外し,負の二項回帰モデルによって分析した.
統計解析ソフトは,IBM社SPSS statistics Ver.29.0を使用し,有意水準は0.05とした.
病気休職制度が「ある」と回答した企業は5,428社(有効回答数の91.9%),「なし」と回答した企業は464社(有効回答数の7.9%)であった.病気休職制度の有無別に,分析で扱う項目の基本統計量を表1に示した.
病気休職制度あり (n=5,428) | 病気休職制度なし (n=464) | |||
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回答数 | % | 回答数 | % | |
鉱業,採石業,砂利採取業 | 5 | 0.1 | 1 | 0 |
建設業 | 367 | 6.8 | 38 | 8.2 |
製造業 | 1,592 | 29.3 | 135 | 29.1 |
電気・ガス・水道・熱供給業 | 39 | 0.7 | 4 | 0.9 |
情報通信業 | 218 | 4.0 | 9 | 1.9 |
運輸・郵便業 | 515 | 9.5 | 47 | 10.1 |
卸売・小売業 | 906 | 16.7 | 72 | 15.5 |
金融業,保険業 | 54 | 1.0 | 1 | 0.2 |
不動産業,物品賃貸業 | 72 | 1.3 | 5 | 1.1 |
学術研究 | 122 | 2.2 | 3 | 0.6 |
宿泊・飲食業 | 239 | 4.4 | 35 | 7.5 |
生活関連サービス等 | 149 | 2.7 | 25 | 5.4 |
教育・学習支援業 | 119 | 2.2 | 2 | 0.4 |
医療・福祉 | 247 | 4.6 | 18 | 3.9 |
複合サービス事業(郵便局,農業組合など) | 7 | 0.1 | 0 | 0.0 |
その他サービス業 | 725 | 13.4 | 64 | 13.8 |
その他 | 51 | 0.9 | 5 | 1.1 |
正規社員規模 | ||||
49人以下 | 1,122 | 20.7 | 137 | 29.5 |
50~99人 | 1,980 | 36.5 | 202 | 43.5 |
100~299人 | 1,469 | 27.1 | 93 | 20.0 |
300~999人 | 420 | 7.7 | 5 | 1.1 |
1,000人以上 | 128 | 2.4 | 1 | 0.2 |
非正社員規模 | ||||
0人 | 572 | 10.5 | 53 | 11.4 |
1~29人 | 2,372 | 43.7 | 222 | 47.8 |
30~49人 | 630 | 11.6 | 58 | 12.5 |
50~99人 | 637 | 11.7 | 51 | 11.0 |
100~299人 | 552 | 10.2 | 34 | 7.3 |
300人以上 | 358 | 6.6 | 20 | 4.3 |
50代以上比率 | ||||
1割以下 | 1,118 | 20.6 | 101 | 21.8 |
1割超~2割以下 | 1,235 | 22.8 | 92 | 19.8 |
2割超~3割以下 | 1,155 | 21.3 | 83 | 17.9 |
3割超~5割以下 | 951 | 17.5 | 91 | 19.6 |
5割超 | 424 | 7.8 | 44 | 9.5 |
労働組合あり | 1,316 | 24.2 | 56 | 12.1 |
がん検診実施あり | 1,355 | 25.0 | 68 | 14.7 |
人間ドック実施あり | 1,855 | 34.2 | 74 | 15.9 |
柔軟な勤務制度が利用可能$ | 1,835 | 33.8 | 113 | 24.4 |
注)業種,正社員数,50代以上比率は,無回答があるため,割合の合計は100%にならない
各疾患による休職率の業種間比較について,負の二項回帰分析の結果を表2に示す.製造業を基準とし,50代以上の比率,企業規模,がん検診及び人間ドックの実施有無,労働組合の有無,柔軟な勤務制度有無で調整すると,メンタルヘルスの休職率比は,情報通信業で2.14(95%信頼区間,以下95%CI: 1.74~2.64),教育・学習支援業で1.53(95%CI: 1.14~2.06),医療・福祉で1.58(95%CI: 1.25~1.98)と有意に高く,運輸・郵便業では0.53(95%CI: 0.42~0.66)と有意に低かった.その他サービス業で1.16(95%CI; 0.99~1.37),学術研究で1.30(95%CI: 0.95~1.79)とやや高く,建設業で0.81(95%CI: 0.65~1.01)とやや低かったが,いずれも統計的な有意差は認めなかった.
説明変数 | メンタルヘルス | がん | ||||||||||||||||||
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モデル1 | モデル2 | モデル1 | モデル2 | |||||||||||||||||
休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | |||||||||
業種(reference; 製造業) | ||||||||||||||||||||
建設業 | 0.71 | 0.57 | – | 0.89 | .002 | 0.81 | 0.65 | – | 1.01 | .066 | 1.24 | 0.94 | – | 1.62 | .127 | 1.17 | 0.89 | – | 1.55 | .256 |
情報通信業 | 2.72 | 2.22 | – | 3.33 | < .001 | 2.14 | 1.74 | – | 2.64 | < .001 | 0.64 | 0.45 | – | 0.93 | .019 | 0.83 | 0.57 | – | 1.21 | .332 |
運輸・郵便業 | 0.44 | 0.36 | – | 0.55 | < .001 | 0.53 | 0.42 | – | 0.66 | < .001 | 1.81 | 1.46 | – | 2.26 | < .001 | 1.32 | 1.05 | – | 1.67 | .019 |
卸売・小売業 | 1.06 | 0.92 | – | 1.22 | .425 | 0.99 | 0.86 | – | 1.15 | .928 | 0.96 | 0.78 | – | 1.17 | .660 | 1.03 | 0.84 | – | 1.27 | .767 |
学術研究 | 1.36 | 1.00 | – | 1.86 | .051 | 1.30 | 0.95 | – | 1.79 | .103 | 1.06 | 0.66 | – | 1.69 | .806 | 0.98 | 0.61 | – | 1.58 | .936 |
宿泊・飲食業 | 0.91 | 0.71 | – | 1.17 | .464 | 0.87 | 0.68 | – | 1.13 | .303 | 1.18 | 0.85 | – | 1.64 | .330 | 1.28 | 0.92 | – | 1.79 | .144 |
生活関連サービス等 | 1.04 | 0.76 | – | 1.41 | .821 | 1.07 | 0.78 | – | 1.47 | .662 | 1.20 | 0.78 | – | 1.83 | .403 | 1.30 | 0.85 | – | 1.98 | .232 |
教育・学習支援業 | 1.32 | 0.98 | – | 1.77 | .067 | 1.53 | 1.14 | – | 2.06 | .005 | 1.28 | 0.86 | – | 1.92 | .227 | 1.07 | 0.71 | – | 1.62 | .735 |
医療・福祉 | 1.50 | 1.19 | – | 1.88 | .001 | 1.58 | 1.25 | – | 1.98 | < .001 | 1.46 | 1.07 | – | 1.99 | .016 | 1.52 | 1.12 | – | 2.08 | .008 |
その他サービス業 | 1.13 | 0.97 | – | 1.32 | .125 | 1.16 | 0.99 | – | 1.37 | .061 | 1.33 | 1.08 | – | 1.63 | .007 | 1.18 | 0.96 | – | 1.47 | .123 |
その他 | 0.81 | 0.64 | – | 1.04 | .098 | 0.82 | 0.64 | – | 1.05 | .124 | 0.89 | 0.64 | – | 1.25 | .497 | 0.85 | 0.61 | – | 1.20 | .360 |
50代以上比率 | 0.83 | 0.80 | – | 0.86 | < .001 | 1.17 | 1.13 | – | 1.22 | < .001 | ||||||||||
がん検診ダミー | 1.08 | 0.97 | – | 1.20 | .161 | 1.12 | 0.96 | – | 1.29 | .145 | ||||||||||
人間ドックダミー | 1.18 | 1.06 | – | 1.31 | .002 | 0.91 | 0.79 | – | 1.05 | .197 | ||||||||||
労組ダミー | 1.25 | 1.12 | – | 1.40 | < .001 | 1.26 | 1.08 | – | 1.46 | .003 | ||||||||||
柔軟な勤務制度ダミー | 1.21 | 1.09 | – | 1.33 | < .001 | 1.02 | 0.90 | – | 1.17 | .724 |
説明変数 | 生活習慣病 | 心疾患 | ||||||||||||||||||
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モデル1 | モデル2 | モデル1 | モデル2 | |||||||||||||||||
休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | |||||||||
業種(reference; 製造業) | ||||||||||||||||||||
建設業 | 1.30 | 0.75 | – | 2.24 | .345 | 1.27 | 0.73 | – | 2.21 | .392 | 0.86 | 0.48 | – | 1.51 | .592 | 0.85 | 0.48 | – | 1.51 | .572 |
情報通信業 | 1.22 | 0.67 | – | 2.22 | .520 | 1.54 | 0.83 | – | 2.87 | .174 | 1.09 | 0.61 | – | 1.96 | .764 | 1.37 | 0.75 | – | 2.51 | .308 |
運輸・郵便業 | 2.70 | 1.83 | – | 3.99 | < .001 | 2.17 | 1.43 | – | 3.28 | < .001 | 2.45 | 1.71 | – | 3.52 | < .001 | 1.96 | 1.33 | – | 2.88 | .001 |
卸売・小売業 | 1.09 | 0.74 | – | 1.62 | .658 | 1.21 | 0.81 | – | 1.81 | .341 | 0.62 | 0.40 | – | 0.96 | .030 | 0.68 | 0.44 | – | 1.05 | .081 |
学術研究 | 0.40 | 0.10 | – | 1.66 | .206 | 0.42 | 0.10 | – | 1.75 | .231 | 1.03 | 0.43 | – | 2.44 | .949 | 0.93 | 0.39 | – | 2.23 | .879 |
宿泊・飲食業 | 0.83 | 0.39 | – | 1.77 | .622 | 0.88 | 0.41 | – | 1.90 | .750 | 1.50 | 0.87 | – | 2.59 | .142 | 1.57 | 0.90 | – | 2.72 | .111 |
生活関連サービス等 | 0.77 | 0.27 | – | 2.18 | .629 | 0.86 | 0.31 | – | 2.44 | .781 | 0.92 | 0.39 | – | 2.17 | .853 | 1.02 | 0.43 | – | 2.41 | .970 |
教育・学習支援業 | 0.66 | 0.23 | – | 1.86 | .429 | 0.59 | 0.21 | – | 1.68 | .323 | 1.01 | 0.45 | – | 2.26 | .985 | 0.91 | 0.40 | – | 2.07 | .822 |
医療・福祉 | 0.55 | 0.22 | – | 1.39 | .206 | 0.56 | 0.22 | – | 1.43 | .225 | 1.00 | 0.52 | – | 1.92 | .993 | 1.02 | 0.53 | – | 1.97 | .943 |
その他サービス業 | 1.35 | 0.90 | – | 2.03 | .146 | 1.32 | 0.87 | – | 2.02 | .192 | 1.46 | 1.01 | – | 2.11 | .044 | 1.36 | 0.93 | – | 2.00 | .115 |
その他 | 0.92 | 0.46 | – | 1.85 | .822 | 0.93 | 0.46 | – | 1.86 | .833 | 0.96 | 0.52 | – | 1.78 | .900 | 0.99 | 0.53 | – | 1.84 | .967 |
50代以上比率 | 1.14 | 1.06 | – | 1.22 | < .001 | 1.16 | 1.09 | – | 1.24 | < .001 | ||||||||||
がん検診ダミー | 1.33 | 1.00 | – | 1.77 | .047 | 1.69 | 1.30 | – | 2.19 | < .001 | ||||||||||
人間ドックダミー | 0.71 | 0.54 | – | 0.95 | .021 | 0.67 | 0.51 | – | 0.89 | .005 | ||||||||||
労組ダミー | 1.12 | 0.84 | – | 1.51 | .432 | 0.99 | 0.75 | – | 1.31 | .962 | ||||||||||
柔軟な勤務制度ダミー | 0.99 | 0.76 | – | 1.30 | .969 | 1.45 | 1.14 | – | 1.84 | .003 |
説明変数 | 脳血管疾患 | 難病 | ||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
モデル1 | モデル2 | モデル1 | モデル2 | |||||||||||||||||
休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | |||||||||
業種(reference; 製造業) | ||||||||||||||||||||
建設業 | 1.05 | 0.68 | – | 1.62 | .821 | 0.98 | 0.63 | – | 1.53 | .942 | 1.28 | 0.74 | – | 2.22 | .382 | 1.33 | 0.76 | – | 2.31 | .319 |
情報通信業 | 0.74 | 0.42 | – | 1.28 | .283 | 0.95 | 0.54 | – | 1.68 | .873 | 1.46 | 0.82 | – | 2.59 | .203 | 1.49 | 0.83 | – | 2.69 | .186 |
運輸・郵便業 | 1.68 | 1.20 | – | 2.35 | .002 | 1.26 | 0.88 | – | 1.80 | .201 | 0.67 | 0.37 | – | 1.22 | .195 | 0.67 | 0.37 | – | 1.24 | .202 |
卸売・小売業 | 1.21 | 0.91 | – | 1.62 | .193 | 1.32 | 0.98 | – | 1.77 | .064 | 1.32 | 0.90 | – | 1.92 | .151 | 1.33 | 0.91 | – | 1.94 | .146 |
学術研究 | 1.48 | 0.79 | – | 2.75 | .220 | 1.38 | 0.73 | – | 2.60 | .316 | 1.23 | 0.51 | – | 2.96 | .650 | 1.26 | 0.52 | – | 3.08 | .607 |
宿泊・飲食業 | 0.96 | 0.56 | – | 1.64 | .881 | 1.05 | 0.61 | – | 1.80 | .857 | 1.53 | 0.83 | – | 2.82 | .177 | 1.56 | 0.84 | – | 2.89 | .160 |
生活関連サービス等 | 1.45 | 0.80 | – | 2.64 | .219 | 1.66 | 0.91 | – | 3.03 | .098 | 1.23 | 0.51 | – | 2.94 | .642 | 1.29 | 0.54 | – | 3.10 | .571 |
教育・学習支援業 | 1.34 | 0.74 | – | 2.40 | .332 | 1.08 | 0.60 | – | 1.96 | .798 | 0.69 | 0.24 | – | 1.97 | .491 | 0.71 | 0.25 | – | 2.02 | .516 |
医療・福祉 | 0.61 | 0.31 | – | 1.20 | .152 | 0.65 | 0.33 | – | 1.28 | .212 | 2.05 | 1.16 | – | 3.61 | .013 | 2.12 | 1.20 | – | 3.75 | .010 |
その他サービス業 | 1.56 | 1.15 | – | 2.11 | .004 | 1.39 | 1.01 | – | 1.89 | .040 | 1.47 | 0.98 | – | 2.20 | .063 | 1.53 | 1.01 | – | 2.31 | .045 |
その他 | 0.63 | 0.35 | – | 1.12 | .116 | 0.59 | 0.33 | – | 1.05 | .074 | 0.88 | 0.45 | – | 1.74 | .724 | 0.89 | 0.45 | – | 1.75 | .732 |
50代以上比率 | 1.18 | 1.12 | – | 1.25 | < .001 | 0.97 | 0.89 | – | 1.06 | .511 | ||||||||||
がん検診ダミー | 1.06 | 0.85 | – | 1.32 | .597 | 0.88 | 0.66 | – | 1.18 | .409 | ||||||||||
人間ドックダミー | 0.97 | 0.78 | – | 1.19 | .747 | 1.05 | 0.80 | – | 1.38 | .723 | ||||||||||
労組ダミー | 1.28 | 1.03 | – | 1.59 | .029 | 1.23 | 0.92 | – | 1.65 | .161 | ||||||||||
柔軟な勤務制度ダミー | 0.99 | 0.81 | – | 1.21 | .892 | 1.00 | 0.77 | – | 1.31 | .977 |
CI; Confidence Interval, p; p-value
モデル1;正社員数と業種を調整した
モデル2;正社員数と業種に加えて,50代以上比率,がん検診の有無,人間ドックの有無,労組の有無,柔軟な勤務制度の可能性を調整した
がんの休職率比が有意に高かったのは,運輸・郵便業1.32(95%CI: 1.05~1.67)と医療・福祉1.52(95%CI: 1.12~2.08)であった.生活習慣病及び心疾患の休職率比は運輸・郵便業で有意に高かった(生活習慣病2.17(95%CI: 1.43~3.28),心疾患1.96(95%CI: 1.33~2.88)).脳血管疾患の休職率比はその他サービス業1.39(95%CI: 1.01~1.89),難病では,医療・福祉2.12(95%CI: 1.20~3.75),その他サービス業1.53(95%CI: 1.01~2.31)で有意に高かった.
労働者の年齢層が高い(50代以上の比率が高い)とメンタルヘルスの休職率比が有意に低い一方で,難病以外の身体疾患の休職率比は有意に高かった.労組ダミーは概ね休職と正の方向で関連しており,メンタルヘルス,がん及び脳血管疾患で有意差を認めた.柔軟な勤務制度ダミーもメンタルヘルスや心疾患による休職と正の方向で関連していた.
非正社員の病気休職者が複数名存在する企業を除外して負の二項回帰分析を行った結果(表3)については,概ね上記の分析と整合していた.医療福祉におけるメンタルヘルス関連の休業率は高い傾向にあったもののわずかに有意ではなかった.また,脳血管疾患の休業率はその他サービス業に加え,卸売・小売業や生活関連サービス業でも有意に高かった.心疾患の休職率比は運輸・郵便業に加え,宿泊・飲食業,その他サービス業で有意に高かった.
説明変数 | メンタルヘルス | がん | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | |||||
業種(reference; 製造業) | ||||||||||
建設業 | 0.81 | 0.64 | – | 1.02 | .075 | 1.27 | 0.95 | – | 1.71 | .110 |
情報通信業 | 2.15 | 1.73 | – | 2.66 | < .001 | 0.86 | 0.58 | – | 1.28 | .463 |
運輸・郵便業 | 0.48 | 0.37 | – | 0.61 | < .001 | 1.24 | 0.95 | – | 1.62 | .114 |
卸売・小売業 | 0.95 | 0.82 | – | 1.11 | .516 | 0.96 | 0.77 | – | 1.21 | .755 |
学術研究 | 1.37 | 0.99 | – | 1.91 | .060 | 0.77 | 0.43 | – | 1.38 | .380 |
宿泊・飲食業 | 0.86 | 0.66 | – | 1.12 | .272 | 1.31 | 0.92 | – | 1.89 | .138 |
生活関連サービス等 | 1.02 | 0.73 | – | 1.42 | .927 | 1.33 | 0.83 | – | 2.13 | .243 |
教育・学習支援業 | 1.54 | 1.14 | – | 2.09 | .005 | 1.20 | 0.78 | – | 1.85 | .395 |
医療・福祉 | 1.28 | 0.98 | – | 1.65 | .066 | 1.51 | 1.06 | – | 2.15 | .024 |
その他サービス業 | 1.06 | 0.90 | – | 1.26 | .474 | 1.20 | 0.94 | – | 1.52 | .141 |
その他 | 0.80 | 0.62 | – | 1.04 | .090 | 0.87 | 0.60 | – | 1.25 | .440 |
50代以上比率 | 0.83 | 0.80 | – | 0.86 | < .001 | 1.13 | 1.08 | – | 1.18 | < .001 |
がん検診ダミー | 1.04 | 0.93 | – | 1.17 | .487 | 1.19 | 1.01 | – | 1.40 | .037 |
人間ドックダミー | 1.23 | 1.11 | – | 1.37 | < .001 | 0.89 | 0.76 | – | 1.04 | .147 |
労組ダミー | 1.22 | 1.08 | – | 1.37 | .001 | 1.23 | 1.04 | – | 1.45 | .014 |
柔軟な勤務制度ダミー | 1.17 | 1.05 | – | 1.30 | .003 | 0.99 | 0.86 | – | 1.16 | .942 |
説明変数 | 生活習慣病 | 心疾患 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | |||||
業種(reference; 製造業) | ||||||||||
建設業 | 1.17 | 0.63 | – | 2.17 | .624 | 1.07 | 0.59 | – | 1.95 | .812 |
情報通信業 | 1.29 | 0.64 | – | 2.59 | .476 | 1.45 | 0.74 | – | 2.81 | .277 |
運輸・郵便業 | 1.89 | 1.17 | – | 3.05 | .009 | 1.95 | 1.25 | – | 3.05 | .003 |
卸売・小売業 | 1.13 | 0.73 | – | 1.76 | .590 | 0.77 | 0.47 | – | 1.24 | .276 |
学術研究 | 0.52 | 0.12 | – | 2.23 | .381 | 1.27 | 0.52 | – | 3.08 | .601 |
宿泊・飲食業 | 1.04 | 0.48 | – | 2.28 | .914 | 2.06 | 1.16 | – | 3.66 | .013 |
生活関連サービス等 | 0.87 | 0.26 | – | 2.87 | .819 | 1.47 | 0.61 | – | 3.53 | .392 |
教育・学習支援業 | 0.67 | 0.23 | – | 1.96 | .468 | 1.11 | 0.48 | – | 2.58 | .802 |
医療・福祉 | 0.79 | 0.31 | – | 2.02 | .623 | 0.70 | 0.28 | – | 1.79 | .462 |
その他サービス業 | 1.24 | 0.77 | – | 2.01 | .382 | 1.55 | 1.00 | – | 2.38 | .049 |
その他 | 1.08 | 0.53 | – | 2.20 | .838 | 1.05 | 0.53 | – | 2.08 | .894 |
50代以上比率 | 1.12 | 1.03 | – | 1.21 | .010 | 1.17 | 1.09 | – | 1.26 | < .001 |
がん検診ダミー | 1.46 | 1.07 | – | 1.99 | .018 | 1.81 | 1.36 | – | 2.42 | < .001 |
人間ドックダミー | 0.70 | 0.51 | – | 0.96 | .025 | 0.68 | 0.50 | – | 0.92 | .011 |
労組ダミー | 1.14 | 0.82 | – | 1.58 | .429 | 0.90 | 0.66 | – | 1.22 | .488 |
柔軟な勤務制度ダミー | 1.07 | 0.80 | – | 1.44 | .631 | 1.39 | 1.06 | – | 1.82 | .017 |
説明変数 | 脳血管疾患 | 難病 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
休職率比 | 95%CI | p | 休職率比 | 95%CI | p | |||||
業種(reference; 製造業) | ||||||||||
建設業 | 1.06 | 0.66 | – | 1.70 | .819 | 1.35 | 0.76 | – | 2.40 | .307 |
情報通信業 | 1.04 | 0.57 | – | 1.88 | .907 | 1.44 | 0.78 | – | 2.67 | .244 |
運輸・郵便業 | 1.20 | 0.79 | – | 1.81 | .398 | 0.62 | 0.31 | – | 1.21 | .160 |
卸売・小売業 | 1.42 | 1.03 | – | 1.95 | .034 | 1.31 | 0.88 | – | 1.96 | .179 |
学術研究 | 1.37 | 0.67 | – | 2.81 | .383 | 1.43 | 0.58 | – | 3.53 | .438 |
宿泊・飲食業 | 1.24 | 0.71 | – | 2.19 | .452 | 1.02 | 0.49 | – | 2.15 | .954 |
生活関連サービス等 | 2.11 | 1.12 | – | 3.95 | .020 | 1.30 | 0.50 | – | 3.38 | .592 |
教育・学習支援業 | 1.34 | 0.73 | – | 2.47 | .341 | 0.75 | 0.26 | – | 2.17 | .601 |
医療・福祉 | 0.56 | 0.24 | – | 1.32 | .185 | 2.21 | 1.18 | – | 4.12 | .013 |
その他サービス業 | 1.46 | 1.03 | – | 2.07 | .035 | 1.55 | 1.00 | – | 2.40 | .050 |
その他 | 0.67 | 0.36 | – | 1.24 | .201 | 0.74 | 0.35 | – | 1.57 | .440 |
50代以上比率 | 1.16 | 1.09 | – | 1.24 | .000 | 0.96 | 0.87 | – | 1.05 | .355 |
がん検診ダミー | 0.99 | 0.78 | – | 1.27 | .941 | 0.83 | 0.61 | – | 1.14 | .252 |
人間ドックダミー | 1.03 | 0.81 | – | 1.30 | .831 | 1.07 | 0.80 | – | 1.44 | .637 |
労組ダミー | 1.21 | 0.95 | – | 1.55 | .125 | 1.26 | 0.92 | – | 1.71 | .148 |
柔軟な勤務制度ダミー | 1.06 | 0.85 | – | 1.32 | .612 | 1.06 | 0.80 | – | 1.41 | .670 |
CI; Confidence Interval, p; p-value
正社員数と業種に加えて,50代以上比率,がん検診の有無,人間ドックの有無,労組の有無,柔軟な勤務制度の可能性を調整した
順序ロジスティック回帰分析の結果を表4に示す.メンタルヘルスによる休職のオッズ比は,情報通信業2.88(95%CI: 2.15~3.86),教育・学習支援業1.70(95%CI: 1.21~2.63),医療・福祉1.71(95%CI: 1.27~2.31)の3業種において有意に高く,運輸・郵便業においては0.42(95%CI: 0.32~0.57)と有意に低かった.
説明変数 | メンタルヘルス | がん | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
OR | 95%CI | p | OR | 95%CI | p | |||||
業種(reference; 製造業) | ||||||||||
建設業 | 0.80 | 0.60 | – | 1.06 | .122 | 1.27 | 0.93 | – | 1.75 | .137 |
情報通信業 | 2.88 | 2.15 | – | 3.86 | < .001 | 0.68 | 0.42 | – | 1.10 | .116 |
運輸・郵便業 | 0.42 | 0.32 | – | 0.57 | < .001 | 1.30 | 0.98 | – | 1.72 | .064 |
卸売・小売業 | 0.97 | 0.80 | – | 1.17 | .736 | 0.96 | 0.75 | – | 1.23 | .768 |
学術研究 | 1.41 | 0.92 | – | 2.14 | .114 | 0.98 | 0.57 | – | 1.70 | .940 |
宿泊・飲食業 | 0.93 | 0.67 | – | 1.29 | .663 | 1.25 | 0.84 | – | 1.86 | .279 |
生活関連サービス等 | 0.85 | 0.55 | – | 1.31 | .452 | 1.14 | 0.68 | – | 1.91 | .610 |
教育・学習支援業 | 1.70 | 1.21 | – | 2.63 | .003 | 1.15 | 0.71 | – | 1.85 | .567 |
医療・福祉 | 1.71 | 1.27 | – | 2.31 | < .001 | 1.54 | 1.07 | – | 2.21 | .020 |
その他サービス業 | 1.19 | 0.96 | – | 1.47 | .113 | 1.13 | 0.87 | – | 1.46 | .366 |
その他 | 0.80 | 0.58 | – | 1.11 | .189 | 0.83 | 0.56 | – | 1.25 | .384 |
50代以上比率 | 0.81 | 0.78 | – | 0.85 | < .001 | 1.17 | 1.12 | – | 1.22 | < .001 |
がん検診ダミー | 1.10 | 0.95 | – | 1.27 | .202 | 1.19 | 0.99 | – | 1.41 | .058 |
人間ドックダミー | 1.34 | 1.17 | – | 1.54 | < .001 | 0.87 | 0.73 | – | 1.04 | .122 |
労組ダミー | 1.31 | 1.13 | – | 1.52 | < .001 | 1.33 | 1.11 | – | 1.58 | .002 |
柔軟な勤務制度ダミー | 1.24 | 1.09 | – | 1.42 | .001 | 1.02 | 0.87 | – | 1.20 | .825 |
説明変数 | 生活習慣病 | 心疾患 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
OR | 95%CI | p | OR | 95%CI | p | |||||
業種(reference; 製造業) | ||||||||||
建設業 | 1.62 | 0.91 | – | 2.88 | .103 | 0.92 | 0.48 | – | 1.75 | .799 |
情報通信業 | 1.13 | 0.49 | – | 2.58 | .776 | 1.61 | 0.83 | – | 3.12 | .163 |
運輸・郵便業 | 2.03 | 1.26 | – | 3.27 | .003 | 1.87 | 1.19 | – | 2.94 | .007 |
卸売・小売業 | 1.25 | 0.79 | – | 1.97 | .333 | 0.82 | 0.51 | – | 1.31 | .398 |
学術研究 | 0.51 | 0.12 | – | 2.16 | .359 | 0.65 | 0.20 | – | 2.16 | .487 |
宿泊・飲食業 | 1.02 | 0.45 | – | 2.31 | .962 | 1.58 | 0.82 | – | 3.04 | .168 |
生活関連サービス等 | 1.09 | 0.38 | – | 3.10 | .876 | 1.13 | 0.44 | – | 2.90 | .804 |
教育・学習支援業 | 0.78 | 0.27 | – | 2.24 | .642 | 0.72 | 0.25 | – | 2.06 | .544 |
医療・福祉 | 0.57 | 0.20 | – | 1.60 | .285 | 1.12 | 0.54 | – | 2.31 | .766 |
その他サービス業 | 1.16 | 0.71 | – | 1.92 | .551 | 1.52 | 0.98 | – | 2.34 | .061 |
その他 | 1.11 | 0.53 | – | 2.31 | .787 | 1.21 | 0.62 | – | 2.36 | .584 |
50代以上比率 | 1.11 | 1.02 | – | 1.21 | .011 | 1.13 | 1.05 | – | 1.22 | .001 |
がん検診ダミー | 1.33 | 0.96 | – | 1.85 | .083 | 1.34 | 0.98 | – | 1.82 | .064 |
人間ドックダミー | 0.77 | 0.56 | – | 1.07 | .123 | 0.75 | 0.55 | – | 1.02 | .071 |
労組ダミー | 1.26 | 0.90 | – | 1.75 | .173 | 1.07 | 0.78 | – | 1.47 | .673 |
柔軟な勤務制度ダミー | 1.04 | 0.77 | – | 1.40 | .821 | 1.45 | 1.10 | – | 1.91 | .008 |
説明変数 | 脳血管疾患 | 難病 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
OR | 95%CI | p | OR | 95%CI | p | |||||
業種(reference; 製造業) | ||||||||||
建設業 | 1.05 | 0.63 | – | 1.72 | .860 | 1.37 | 0.75 | – | 2.51 | .310 |
情報通信業 | 0.84 | 0.43 | – | 1.66 | .620 | 1.65 | 0.87 | – | 3.12 | .126 |
運輸・郵便業 | 1.26 | 0.84 | – | 1.89 | .257 | 0.68 | 0.35 | – | 1.32 | .255 |
卸売・小売業 | 1.50 | 1.08 | – | 2.08 | .016 | 1.40 | 0.93 | – | 2.11 | .111 |
学術研究 | 1.63 | 0.82 | – | 3.24 | .164 | 1.29 | 0.49 | – | 3.40 | .604 |
宿泊・飲食業 | 1.23 | 0.68 | – | 2.21 | .495 | 1.56 | 0.80 | – | 3.04 | .194 |
生活関連サービス等 | 1.60 | 0.80 | – | 3.23 | .186 | 1.54 | 0.63 | – | 3.75 | .340 |
教育・学習支援業 | 1.34 | 0.69 | – | 2.57 | .386 | 0.77 | 0.27 | – | 2.23 | .629 |
医療・福祉 | 0.80 | 0.40 | – | 1.59 | .528 | 1.98 | 1.04 | – | 3.76 | .038 |
その他サービス業 | 1.56 | 1.09 | – | 2.23 | .014 | 1.39 | 0.87 | – | 2.23 | .170 |
その他 | 0.68 | 0.36 | – | 1.30 | .245 | 0.93 | 0.44 | – | 1.96 | .851 |
50代以上比率 | 1.17 | 1.10 | – | 1.25 | < .001 | 0.97 | 0.88 | – | 1.07 | .517 |
がん検診ダミー | 1.09 | 0.85 | – | 1.40 | .492 | 0.91 | 0.67 | – | 1.25 | .576 |
人間ドックダミー | 1.04 | 0.82 | – | 1.32 | .733 | 1.10 | 0.82 | – | 1.49 | .522 |
労組ダミー | 1.37 | 1.07 | – | 1.75 | .013 | 1.39 | 1.01 | – | 1.91 | .044 |
柔軟な勤務制度ダミー | 1.04 | 0.83 | – | 1.30 | .750 | 0.99 | 0.74 | – | 1.33 | .965 |
OR; Odds Ratio, CI; Confidence Interval, p; p-value
業種,正社員数,50代以上比率,がん検診の有無,人間ドックの有無,労組の有無,柔軟な勤務制度の可能性をモデルで調整した
がんによる休職のオッズ比は医療・福祉で1.54(95%CI: 1.07~2.21)と有意に高かった.運輸・郵便業でも高い傾向にあったが,有意差は認めなかった.生活習慣病や心疾患による休職のオッズ比は,運輸・郵便業で有意に高かった(生活習慣病2.03(95%CI: 1.26~3.27),心疾患1.87(95%CI: 1.193~2.94)).脳血管疾患では卸売・小売業 1.50(95%CI: 1.08~2.08),その他サービス業1.56(95%CI: 1.09~2.23),難病では医療・福祉1.98(95%CI: 1.04~3.76)において休職のオッズ比が有意に高かった.
労組ダミーや柔軟な勤務制度ダミー等,業種以外の変数との関連も負の二項回帰分析とほぼ同様の結果であった.
負の二項回帰分析及び順序ロジスティック回帰分析の結果,企業規模,年齢構成,がん検診・人間ドックの実施状況,労働組合の有無及び柔軟な勤務制度の有無を調整した上で,病気休職率が両分析で共通して高かった業種を挙げると,メンタルヘルスでは情報通信業,医療・福祉及び教育・学習支援業,生活習慣病と心疾患では運輸・郵便業,がんでは医療・福祉,脳血管疾患ではその他サービス業,難病では医療・福祉であった.なお,非正社員数が一定割合を占める企業を除外したところ,医療・福祉産業においてメンタルヘルス関連の休職との関連が弱まった.当該業種において非正社員による休職が多かったことが考えられる.
休職は重度の疾患への罹患をある程度反映しているものの,社会経済的要因にも影響される.病気休職者の多い業種は,例えば,その業種で福利厚生が整っている企業や労働者の意見が重視される企業が多いことを反映している可能性もある.そのため社会経済的要因に含まれる労使関係や企業福利の代理指標(労組ダミー,柔軟な勤務制度ダミー)をモデルに投入して分析を行ったが,それでも業種間に休職率の差があった.また,労働組合の存在,柔軟な勤務制度が利用できることはメンタルヘルスによる休職率と正の関連があった.精神疾患は身体疾患と比べ病状が客観的に把握しにくい傾向があり,休職の可否が労使関係に影響されやすいと考えられる.そのため,労働者の発言力があり,福利厚生が整っている企業の方がメンタルヘルスによる休職を選択しやすいのではないかと推測される.
情報通信業,医療・福祉,教育・学習支援業の3業種においてメンタルヘルスによる休職率が高いという結果は,説明変数の違いにもかかわらず,情報通信業や医療・福祉,学術研究,教育・学習支援業の労働者が精神疾患を受療するオッズが高いという先行研究の結果2)と整合的である.なお情報通信業の企業は都市部に立地する傾向にあり17),この業種でメンタルヘルスによる休職率が多いという結果は,都市居住18)の影響も含まれている可能性がある.都市居住と精神疾患の関連を説明する潜在的なメカニズムとして,社会的ストレスへの曝露が考えられている19,20).情報通信業,医療・福祉,教育・学習支援業の3業種は,専門的・技術的職業従事者の比率が高いという共通点がある.当該職種はストレスを感じる労働者の割合が高く,仕事の量・質の負荷を訴える割合も高い傾向が示されている21).精神疾患の労災認定事案も専門的・技術的職業従事者の事案が最も多い22).事務職に比べ管理的職業や専門的・技術的職業においては「過重ノルマ中心」「長時間労働中心」の負荷が経験されやすいとされ23),専門・技術職において業務負荷が大きいことが考えられる.専門・技術職の業務負荷の大きさには,業務の量だけでなく業務の曖昧さが関連している可能性がある.高原ら8)は,教育業・医療業及び第3次産業の「専門・技術・研究」職の職務特性として,仕事の複雑多様性の高さと成果明瞭性や役割明瞭性の低さを指摘している.専門職の定型業務の集約度は管理職についで低く,業務の非定型性と長時間労働との関連も指摘されている24).このような「専門・技術・研究」職や専門職における職務特性の検討結果から,専門・技術職の職務内容は非定型的で不明瞭であることが考えられ,業務における役割を明確化することはストレスを緩和する可能性がある25,26).労働条件通知書への業務の変更範囲の明示義務化27)といった政策は,業務の曖昧さを減らし,労働者の健康に資するかもしれない.
生活習慣病による休職率が運輸・郵便業において高かったことは,メタボリックシンドロームや高血圧等の有病率が運輸業で高いとした先行研究,糖尿病の有病率や肥満等のリスク因子の存在率が運輸労働者で高いとした米国の調査28,29)とも整合している.メタボリックシンドロームに関連する生活習慣の存在率が高いという先行研究の結果から5),運輸・郵便業における生活習慣病の有病率の高さは生活習慣の関与が想定される.この運輸・郵便業における生活習慣病のリスクが高いという結果が,トラックドライバーの勤務形態30)など,特定の職種における働き方に起因するか今後検討が必要である.心血管系疾患のリスク因子となる糖尿病・高血圧を含む生活習慣病による休職率の高い運輸・郵便業において,心疾患による休職率も高いことは予想できる結果である.
がんによる休職率は医療・福祉で高い傾向にあった.本調査では,対象となった企業の従業員の半数弱を40歳未満が占めている11).若年成人(15~40歳)におけるがんの罹患は女性で特に多いこと31)から,本研究結果は,医療・福祉産業において女性労働者の割合が高いこと32)を反映している可能性がある.一方で,医療従事者は乳がんのリスクが有意に高いという台湾の研究33)と整合しており,交替勤務や夜間勤務などの影響34)も想定される.
なお「その他サービス業」には,様々な業態が含まれており,脳血管疾患による休職との関連を説明することは困難である.ただし,運輸労働者やサービス職(もしくはそれに含まれる一部職種)の労働者において脳血管疾患のリスクが高い傾向にあったという先行研究の結果35,36)は,その他サービス業(サービス職として働く労働者が多いと考えられる)における脳血管疾患による休業率が高いという結果と部分的に整合している.仕事のストレス,極端な気温での作業,長時間労働,交代勤務37)といった,脳卒中のリスク因子がサービス職およびサービス業に多いことが考えられる.
また,難病における休職率が医療・福祉産業で高かったという結果は,様々な解釈が可能であり,例えば,医療・福祉産業における障害者雇用率の高さを反映しているかもしれない.JILPT調査11)によると,過去3年間の病気休職制度の新規利用者に占める障害者手帳取得者比率は平均6.38%だが,難病(13.72%)はその2倍以上で,心疾患(20.36%),脳血管疾患(18.24%)に次いで手帳取得比率が高い.障害者実雇用率は各産業で「医療,福祉」(3.09%)が最も高く38),医療福祉産業が難病に伴う障害者手帳保持者を多く雇用していることが,難病による休職率の高さを一部説明すると考えられる.
以上で論じたような,業種と疾患との関連には未測定の交絡や逆因果の影響も想定される.過去の研究39)で議論されているように,疾患にかかりやすい人や欠勤の可能性が高い人が特定の職業や労働環境を選択する可能性がある.ただし,必ずしも因果を反映しないとしても,疾患との関連があれば疾患のハイリスク集団を同定することに利用でき,二次予防政策上の意義はある.OECD公衆衛生白書40)は,日本の二次予防政策の見直しを提言しており,本研究の結果は,企業による産業保健活動に加え,こうした政策議論に貢献できると考える.
本研究の限界について述べる.第1に,本研究は常用労働者50人以上を雇用し病気休職制度がある企業を対象としており,中小企業や病気休職制度が未整備の企業に結果を当てはめることが難しい.また,有効回収率が3割に満たないことから,従業員の健康に関心のある企業に回答が偏っている可能性がある.調査対象企業における回答者の職位は指定されておらず,回答者の役職によって回答の正確性が異なるかもしれない.第2に,他の研究の幾つかは性別や労働時間や収入,居住場所を調整しているが,本研究ではデータの制約のためそうした変数を制御できなかった.特に,がんによる休職率の結果の解釈には注意が必要である.また,学歴も健康に関わるが,同様の理由で回帰モデルに含めることができなかった.データの制約から,目的変数は一部カテゴリ化されており,データ構造に完全に適合した単一のモデルを採用することは困難であった.企業規模もカテゴリ化されており,残差交絡によるバイアスが生じている可能性もある.さらに,先行研究41)・調査9)の結果から筋・骨格系の疾患による休職率も高いことが想定されるが,一次データに同疾患による休職者数は含まれていなかった.
先行研究で示されている業種間における症状の有訴率,疾患の有病率や受療率の違いについて,本研究では病気休職率を指標としても確認することができた.アブセンティーズムのリスクを有する業種に対する疾患別の対策立案が重要である.
アーカイブデータをご提供いただいた独立行政法人労働政策研究・研修機構の皆さまに感謝いたします.
利益相反自己申告:申告すべきものなし