2025 Volume 77 Issue 1 Pages 1-2
ヘビの体のどこからどこまでが首かという生物学的な問いには大変興味をそそられますが,何の
一方,人間界に目を向けると,いまごろ多くの大学が,いわゆる10兆円ファンドの運用益を財源にした文部科学省の新事業,国際卓越研究大学制度 1) への認定申請作業で慌ただしくしていることでしょう.新しいカテゴリーの大学としてこれに採択されれば,年間百億円超の資金が今後25年間にわたって配分されるという期待感もあり,大学としてはここが頑張りどころです.しかし,何事もタダで得られるものはなし.この環境変化の下で,大学組織に「変化の
平成25年(2010年)に策定された文部科学省国立大学改革プランには,「今後10年で世界大学ランキングトップ100に10校ランクイン」という目標が掲げられました 2), 3).これを受けて2014年度から2023年度に掛けて,スーパーグローバル大学創成支援事業が実施されました 4) .ところが10年経った現在,THE大学ランキング2025の上位100にランクインした我が国の大学はわずか2校 5) .QS世界大学ランキング2025の上位100に入るのは4校のみ 6) .当初の目標は達成されていません.
これに危機感と罪悪感を抱かない大学関係者はいないと思います.しかしながら,運営費交付金が毎年1%ずつ10年以上にわたって削減されるという環境変化に対して,大学が適応しつつある過程がこれだとしたら? 人手不足のなか研究時間を削りながら大学運営にコミットし,研究資金を集め,国内外のトップ研究者に伍して国際会議の論文採択数を競い合う.大抵の大学研究者はそのように努力しているでしょうし,若手研究者にしわ寄せが及ばないように人員ポストのやり繰りに苦労しつつも,地道な研究から新たな価値の創造に努めているはず.それでも間に合わずに貧乏暇なし,貧すれば鈍する状態に陥っているのではないでしょうか.予算を減らして良い研究論文が増えるくらいなら,さらに予算を減らせばよい.でもそんなはずはないので,本音を言うと少しでも元に戻して頂きたいところです.
しかしそれでは大学の体質は変わらない,あの国のあの大学には勝てない,予算なら自分で取ってこい,ということで巨大隕石のような衝撃を与えようとするのが今回の国際卓越研究大学制度なのでしょう.大型予算の配分を受けるには,組織運営を少しずつ改善してきた努力とはまた別に,劇的な改善効果をスポンサーに約束してみせる必要があります.その変化が合理的であればよいのですが,予算取りの
それでも,古いパソコンはいつかは戦力外通告を受けます.大学も同じく,ずっとそこに留まっていれば相対的に沈みます.当座の善し悪しに関わらず変化の
さて今回の環境変化がもたらすものは華麗に羽化したチョウか,あるいは脱皮してちょっと大きくなったヘビか,ひょっとすると奇妙奇天烈な形に進化したバージェス動物群か,これからの大学版社会実験の動向にご注目ください.