2025 Volume 77 Issue 1 Pages 57
東京大学生産技術研究所次世代モビリティ研究センター(ITSセンター)は2014年4月に発足した組織です.その前身である先進モビリティ研究センターは2009年4月に発足しており日本で初めて,土木・交通工学,機械・制御工学,情報・通信工学などの各分野が横断的に連携してITSの研究開発を行う大学研究組織としたもので,それから数えますと間もなく17年目に入ります.当初,ITS(Intelligent Transport System)とは,「高度道路交通システム」と呼ばれ,道路交通が抱える事故や渋滞対策など,主として道路交通に関わる課題解決の仕組みとして考えられていました.近年では関連する分野・技術が大きく進展したことにより,本センターは,改めてITSを「人~インフラ~移動体が情報通信で結ばれた環境下で,移動に関する安全・安心,環境・効率,快適・利便の向上に寄与する一連の技術や,社会・経済制度全般を対象としたモビリティ・イノベーション」と位置付けています.
本センターは2019年に構成員の一部見直しを図り,体制の強化を実施しました.今までの人間・社会系部門,機械・生体系部門,情報・エレクトロニクス系部門の3部門に加え,基礎系部門,物質・環境系部門の研究者を迎えて,より学際的な組織となりました.「自動運転による次世代交通システム」,「ビッグデータ時代におけるモビリティ社会のデザイン」,「道路交通のみならず鉄道などの公共交通も含めた総合的なモビリティデザイン」を主要な課題として研究を推進しています.
生産技術研究所を含む学内8部局による東京大学「モビリティ・イノベーション連携研究機構(UTmobI)」を本センター主導で創設し,文理融合で総合的にモビリティ・イノベーションに資する知の体系化に取り組んでいます.また,こうした研究開発活動だけでなく,国内学術組織を横断する「モビリティ・イノベーション推進連絡協議会(2018年3月設立)」,および「一般社団法人・モビリティ・イノベーション・アライアンス(2022年7月設立)」の発足にも尽力しました.国内の各地域の大学やITS関連組織などと共同で開催する「ITSセミナー」として, 2024年10月に「ITSセミナーin福井~モビリティで変わる地域づくり~」を開催し,地域間連携を育むとともに地域課題にも取り組んでいます.また産官学連携や国際連携の推進にも積極的に取組んでおり,2024年には,米国・テキサスA&M大学,アリゾナ州立大学,および三重県多気町との連携協定の締結を実現しました.さらに,一般社会人向けにUTmobI主催で実施する「UTmobIフォーラム」などを通した社会還元活動にも努めています.
本特集号は,2024年12月12日(木)~13日(金)に熊本城ホール(熊本県熊本市)で開催された第22回ITSシンポジウム2024(主催:特定非営利活動法人 ITS Japan,共催:熊本大学)において本センターのメンバーが発表したものを中心にまとめたものです.本シンポジウムの運営には,その設立当初からITSセンターのメンバー,UTmobIの構成員が深く携わり,運営やプログラム委員会に参画しております.本特集号を通して,最新の次世代モビリティの研究成果をご紹介致します.