Serviceology
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Conference Report
AMA SERVSIG 2014 International Service Research Conference
Keiko Toya
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2014 Volume 1 Issue 2 Pages 48-49

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 【AMA SERVSIG 2014】

AMA(American Marketing Association)は世界最大のマーケティング組織である.AMAのSERSIG(Service Special Interest Group)国際大会は2年に1度開催される.SERVSIGは同じ都市で2度開催しないことをポリシーとしている. 2014年は6月13日から15日までの三日間ギリシャ第二の都市テッサロニキで行われた.ホストはマケドニア大学. そう,あのアレキサンダー大王のマケドニアである.テッサロニキはギリシャ北部に位置し, 東ローマ帝国時代からの重要な貿易港で, 市内には重要な遺跡が多数残る.会場のマケドニアパレスは目の前が海岸のホテルで, 海岸は早朝から夜中まで散歩やジョギングの人で賑わっていた.

ギリシャの経済危機から,また,コソボに程近い開催地であることから,治安も多少心配していたが,それは全くの杞憂であることがわかった.海岸にそって連なるコーヒーショップは連日深夜まで大変な賑わいをみせていた.

写真1 The White Tower in Tessaloniki

 【参加者・セッションテーマ】

本年の参加者は283名.マーケティング分野の中でのサービス研究の盛り上がりを反映して, 発表申込アブストラクトは過去最高に達し,355本(52カ国)の応募のうち,244本(採択率69%)が採択された.発表申込を国別に見ると,英国54,ドイツ38,ギリシャ(ホスト国)33,フィンランド26,オーストラリア26,米国23となっている.圧倒的に欧州からの発表が多い. AMAのSIGにしては北米からの出席者が少なくなったのは,開催地がギリシャであったこと,同時期にFrontiers in Serviceがマイアミで開催されたことからであろう. 例年よりもさらに女性参加者比率が高まっている(6割以上か)ことは注目に値する.日本からの参加者も数名あった.

写真2 チェア紹介
写真3 コーヒーブレーク

大会構成は,プレナリーセッションが3つ,特別セッションが16トラック(テーマは5つ)である.特別セッションを含めた発表セッションは7つが同時並行するかたちで進められた. 各セッションのテーマはSERVSIGらしいサービスエンカウンター,ブランディング,BtoBサービス,顧客行動などに加え,産業別のものとしてスポーツ,旅行,健康,公共サービスなどのセッションが立てられている. 目立つのはやはりサービスドミナントロジック&価値共創であろうか,このテーマの発表は近年非常に増えている.

その一方で,欧州の研究者の参加が多いサービス研究の会議に参加する醍醐味は,S-D Logic(サービス・ドミナント・ロジック)など,米系研究への批判的論調であり,バランスのとれたサービス研究視点を得るという意味で,大変勉強になる.また,BtoB(ビジネスービジネス)の関係性,マーケティングや環境や社会問題に関係するサービス研究が比較的多いことも特徴である.

写真4 発表風景1
写真5 発表風景2
写真6 キーノート

 【本大会の特徴】

本年の大会テーマは“Services Marketing in the New Economic and Social Landscape”である. サービス経済化や高齢化, エネルギー危機などの社会環境の変化と, それに伴う企業や政府の役割の変化,そしてそれらを反映したサービスマーケティング研究の必要性は世界的に増大している. このテーマに関する特別セッションとして, 二日目の午後にThe European Association for Research on Services, RESER; Cross Disciplinaryが行われた. マーケティング分野以外(経済・イノベーションなど) の研究者のサービス経済化に関する発表内容は興味深いものであった.マーケティングは実務に役立たなければ存在意義がない学術分野である.現実の環境が急速に変化している中で,他の学術分野と手を携えて進化して行こうというサービス・マーケティング研究者の姿勢を示したセッションであった.

個人的にはキーノートスピーチの一つ,Grönroose教授の研究姿勢についてのコメントが印象に残っている.「枠を超えろ,既存の理論にとらわれるな.但し,常にロジカルでいろ.」そのメッセージは変化のただ中にいるこの分野の研究者にとって必須の心得であろう.

〔戸谷圭子 (サービス学会理事 明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科)〕

 
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