2014 Volume 1 Issue 3 Pages 48-49
2014年6月下旬,“コンピュータと人間のインタラクション:HCI(Human-Computer Interaction)”と“ヒューマンインターフェースと情報マネジメント:HIMI(Human Interface and the Management of Information)”をテーマとするHCII 2014がギリシャのクレタ島で開催された.今回,報告者はLearning Serviceセッションで発表するために参加したので,同会議について以下に報告する.
本会議は,“Engineering Psychology and Cognitive Ergonomics”や“Design, User Experience and Usability”など,主に情報科学と人間科学の学際領域に含まれる12の別テーマ会議との共同開催だったので,67ヶ国から約2,000人が参加する大規模な会議となっていた.日本からも約40名が参加していたと思われる.会議はエーゲ海に面したクレタ島北岸沿いにあるホテル(Creta Maris)の Conference Center (写真1)をメイン会場として開催された.同ホテルはプール3面とPrivate Beachを有する大型高級リゾートホテルであり,ヨーロッパ諸国を中心とした多くの行楽客が長期宿泊していた.ギリシャでは,5月下旬から海水浴シーズンだとのことで,会議が開催された6月下旬はシーズンのピークにあたっていたようである.従って、家族を同伴している会議参加者も数多く見受けられた.
まず,6月22日から24日までで21のTutorialが開かれた.そして24日の夕方18:00から,IBM Software Group の James R. Lewis による基調講演が行われた.基調講演のテーマは“Usability: Lesson Learned”,心理学や統計学を基盤とする研究からUse-centered design(UCD)やUser Experience(UX)の領域へと発展してきたこの30年間におけるUsabilityの変容を解説した.引き続き同日夜,19:45からセンター前の広場でConference Reception が開催された(写真2).この季節,ギリシャのでは22:00くらいまでは日が落ちないので,適度な温度の晴れた青空の下で数百人の参加者がギリシャの風土料理を楽しんだ.
25日から27日の3日間は本格的なパラレルセッションが続いた.上述したように13の会議が連携しているため発表数も膨大である.8:00にスタートして18:00に終了する各日の発表は,2時間ごと4タームに区切られている.各タームで概ね20超のセッションが平行していたが,それぞれが5ないし6件の発表で構成されている.従って,1日あたり約500,3日間で1,500件程度の発表だったと推定する.各ターム間は30分以上の休憩が設けられているものの,30℃を優に超える(25日は38℃)なか,広いホテル内の会議室を渡り歩きながらの聴講は肉体的にもかなり厳しかったが,各セッションとも20~30名の聴講者が参加し,Q&Aも活発だった.どちらかというと実践事例の発表の方が多かったようだ.
今回,報告者は27日午前中に,HIMI(Human Interface and the Management of Information)の中の“Learning Services”セッションで発表した.同セッションはHIMIのInternational Program Boardメンバーである東京理科大学の山本栄教授の提案によって今回から新設されたもので,首都大学東京の木見田康治助教がChairを務めていた(写真3).本セッションには教育サービスの設計,実施,評価に関するものからサービス自体の教育ツールに関するものまで下記5件の発表が集まった.
来年度もまた本セッションが企画される見込みである.
本会議ではサービス学関連セッションとして,他にも以下のものがあった.
本会議の特徴として,Springerによって編集された予稿集が会期中に発行販売されるという点があげられる.このため,800wordsのAbstract締切が昨年の10月(開催8ヶ月前),Camera-ready締切が今年2月(開催4ヶ月前)という非常に前倒しの日程であり,またWordの原稿もSpringerが提示するFormatへ完璧に準拠することが求められる.しかし,会議中に自らの発表論文が製本されている分厚い実物書籍を見ると,また格別の思いがわいてくる.
次回のHCII 2015は2015年8月2日~7日にLos Angeles(California)で開催される.サービスの実践事例の発表を予定する方や,サービスとの関連が強い人間科学系の研究状況について広く情報収集したい方には参加を検討していただくのが良いだろう.次回も同じセッションがあるという保証はないが,例えば以下のセッションはサービス学研究との親和性が高いと考えられる.
〔櫻井 良樹 (熊本大学)〕