Serviceology
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Conference Report
SPRING Symposium 2014 in Sapporo
Daisuke Kamo
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2015 Volume 1 Issue 4 Pages 64-65

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サービス産業生産性協議会(SPRING)および公益財団法人日本生産性本部主催によるシンポジウムが2014年9月9日(火)13:30~17:00に札幌全日空ホテル・鳳の間で開催された.本シンポジウムは,「新たな価値を創出するサービス・おもてなしとは」をテーマに,地元の北海道生産性本部および経済産業省北海道経済産業局が共催し,主として地域の企業経営者,管理者,スタッフや経済団体の幹部,スタッフ,労働組合,NPO,行政などから250名が参加した.参加者は優れたサービスを提供する企業事例をもとにこれからのサービスイノベーションがどうあるべきかについて,業務改革や人材育成,顧客満足,ビジネスモデル,おもてなし,地域活性化などの様々な観点からの講演や討議に熱心に耳を傾けた.

写真1 シンポジウム全景

シンポジウム冒頭で挨拶した秋草直之サービス産業生産性協議会代表幹事・富士通株式会社顧問は,「サービスというのは商品であり,それ自身が何らかの形でお金を生んでいくというビジネスモデルでなければならない.それに対しておもてなしは日本の文化であり,サービスとは一線を画すもので,サービスとして新しい商品開発を行っていくべきである」と語った.続いて共催者として挨拶した秋庭英人北海道経済産業局長は,「産業特性や地域資源を生かした政策を展開する地方創生,ローカルアベノミクスを実行する.そのためにはサービス産業の生産性を向上させることが重要である」と述べ,その先行事例である「おもてなし経営企業選」に北海道ブロックから選出されている企業の例を紹介した.

写真2 秋草SPRING代表幹事
写真3 秋庭北海道経済産業局長

次に,実際の優れたサービスやおもてなしを提供する企業の事例として,株式会社スーパーホテルの山本健策・経営品質部取締役部長は「5つ星のおもてなしを実現するスーパーホテルの仕組み経営」と題してスーパーホテルの企業理念,仕組み,理想とする人材像を基軸に同社の歩みを紹介した.山本氏は「当社がもっとも大事にしているのが,1つは創業の精神の継承,もう1つが経営理念と仕組みの浸透である.この2つを全社員,全現場のスタッフに伝播することによって,おもてなし経営の素地ができあがる」と述べ,「当社の考えるビジネスで成功する人は“運のいい人”で,運のいい人とは,感性と人間力を磨いた人だと考えている」と語った.さらに,自分で考え,自分で行動し,そして感謝,感動を人に与えることができる人を自律型感動人間と捉え,理想の姿として掲げていることや,人の健康と環境に優しいホテル作りを目指した「LOHASホテル」の考え方は,当社の進むべき道の明確さとも相まって大変印象的であった.

写真4 山本スーパーホテル取締役部長

2つ目の事例では「バス沿線世帯への訪問ヒアリング.非顧客へのアプローチを核としたおもてなし経営」をテーマに野村文吾十勝バス株式会社代表取締役社長が講演した.2011年度に路線バスの運賃収入が40年ぶりに前年度を上回り,12年度には2桁の増収を達成させる原動力ともなった訪問ヒアリングの営業戦略を中心に,同社の取り組みが説明された.具体的には,「バスは移動の手段で目的ではない」をキーワードに,様々な商品を開発,お役立ち企業として多くのお客様に受け入れられたことや,様々な取り組みを行う中で誰でもチャレンジする「風土」が醸成されてきたこと,さらには「新たな価値が生まれれば,新しいお客様が生まれ,顧客創造が実践できたことなどが現場の視点で語られた.また,介護事業や幼児のお世話など「お役立ち企業」として,さらなる意欲と可能性についても展望を力強く語る姿がとても印象的であった.

写真5 野村十勝バス社長

最後のディスカッションでは,大久保寛司人と経営研究所所長をファシリテーターに迎え,登壇した山本氏,野村氏の講演を深掘りする自由な議論が行われた.大久保氏はまとめとして,「輝いている人に出会う,いい人とたくさんコンタクトすることはすごく大事で,そうすると自分もワクワクしてくる.今後もいろいろな素晴らしい集まりがあると思う.参加者の皆様にはそういう場を活用して頂いて,素晴らしいエネルギーを自分から出せるようになって頂けると良いと思う」と述べ,議論を締めくくった.

〔加茂大輔 (サービス産業生産性協議会)〕

写真6 大久保人と経営研究所所長
 
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