Serviceology
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Conference Report
KICSS2014 : 9th International Conference on Knowledge, Information and Creativity Support Systems
Takaya Yuizono
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2015 Volume 1 Issue 4 Pages 74-75

Details

1. はじめに

知識・情報・創造性支援システムに関わる学際的研究テーマを取り扱う国際会議KICSS2014が2014年11月6日(木)〜8日(土)の3日間に渡って開催された(http://kicss2014.cs.ucy.ac.cy).場所は,トルコ南方,地中海に浮かぶ島国キプロス・リマソールにあるリゾートホテルELIAS BEACH HOTELであった.会議参加者は約60人,アジア・ヨーロッパを中心とする27カ国から集まっていた.

2. KICSSとは

KICSSの目的は,情報科学,システム科学,知識科学,創造性支援システムをフィールドとする研究者間同士の国際交流を図る場を提供することである.北陸先端科学技術大学院大学の國藤教授とタイ国・タマサート大学のタナラック教授が中心となって企画運営された国際会議である.新しい市場(サービス)を開拓するためにはイマジネーション(人間の創造性)が必要とされており,様々な科学技術やその周辺を知る上で本会議は意義があると考える.

KICSSの第1回会議は2006年にアユタヤ(タイ)で開催され,その後,能美市(日本),ハノイ(ベトナム),ソウル(韓国),チェンマイ(タイ),北京(中国),メルボルン(オーストラリア)とアジア中心に開催されてきた.2013年度は,チェンマイ以来の参加者がきっかけとなり,ヨーロッパ・クラコフ(ポーランド)で開催され,今年は引き続き,ヨーロッパ・リマソール(キプロス)で開催された.

3. 会議プログラム

KICSS2014の採録論文はレギュラー29本,ショート20本であった.それに合わせて,発表はレギュラー29件,ショート20件,キーノート2件,チュートリアル1件であった.セッション数は10であり,初日は,キーノート以外,パラレルセッションで行われた.どのセッションも時間オーバーし,活発な質疑討論が行われていた.

会議参加国27カ国を,発表件数の多い順番にあげると,7件(日本),4件(イスラエル),3件(キプロス,ドイツ,ギリシヤ,ポルトガル,ロシア,イギリス),2件(ボツワナ,ハンガリー,ポーランド,スペイン,タイ,中国),1件(オーストリア,ブラジル,チェコ,エジプト,フィンランド,フランス,アイルランド,イタリア,マルタ,オランダ,スウェーデン,トルコ,アラブ首長国連邦)であった. キプロスを中心とする周辺国から参加者が集まったことがわかる.

1日目は,Co-chair兼Local担当であるキプロス大学Papadopoulos教授による開会挨拶で始まった.その後,アメリカ・コロラド大学のStilman教授によるキーノート講演があった.内容は,人間の脳がもつという基礎言語仮説をもとに,ゲーム理論の一種である言語ジオメトリと発見アルゴリズムに関するものである.研究の動機・応用対象として,組織における創造的な指揮・問題解決が扱われていた.その後,5つのセッションと1つのチュートリアルがあった.この日はパラレルセッションのため,著者は半分のセッションに参加した.会場の雰囲気は写真1に示す通りであり,広すぎず,狭すぎず,お互いの顔をみることができる環境であった.

写真1 発表会場の様子

セッション1は創造性に関する研究が集まっており,人間と計算機の共創モデル,創造開発研修の評価などの研究発表があった.なお,筆者はこのセッションで創造的問題解決会議の評価指標について発表した.セッション2は意思決定における仮説の創造性を計算機によって評価する支援システムなど意思決定に関わる研究発表があった.セッション4はITによる健康情報管理システム,文書要約支援システム,物語のキャラクタ理解,センサーデータを用いたメディアコンテンツ作成プラットフォームといろいろな研究発表があった.写真2に発表の様子を示す.

会議終了後19時からは会場ホテルのテラスでカクテルパーティがあり,参加者との親睦を深めることができた.

写真2 発表の様子

2日目は,ポーランド・AGH大学Skulimowski教授によるキーノートであり,予測ネットワークを用いた意思決定支援に関する講演があった.セッション6はWebに関する研究が集まっており,オンライン広告を評価する方法,クラウドソーシングにおける開放型アイデア発想環境のモデル,SNS理解を支援するための統合型オントロジなどの研究発表があった.セッション7は教育系に関する研究が集まっていた.シリアスゲームを用いた教育コンテンツ作成,計算機科学におけるアルゴリズム技能取得の評価を含め,様々な教育対象が扱われていた.セッション8は個人向け知識マネジメントのコンセプト発表から始まり,Baやミームなどがキー概念として参照されていた.また日本のゲームを題材にした創造性と知識に関する発表,工学系学生とデザイン系学生による共同Web設計ワークショップの発表などが行われた.

そのセッション後に取られた集合写真を写真3に示す.会議の雰囲気を感じるために,参加者の表情に注目して欲しい.また,その日は,Conference Dinnerが会場から離れたレストランで行われた.レストランへの移動はバスで30分ほどであった.会場はリマソール市内にある大衆居酒屋であり,生歌・生演奏があり,参加者全員,大いに楽しみ交流を深めることができた.

写真3 2日目:集合写真

3日目は,2つのセッションがあった.セッション9はクラウド型3D可視化コラボレーション構築プラットフォーム,音声遅延を用いた初心者向けドラム学習支援システムなどの研究発表があった.セッション10はTwitterデータのマイニング処理によるコーヒーサービスに対する顧客価値調査,Web上の2つの情報源から得たテキストを比較・可視化などの研究発表があった.

以上のように,著者自身の研究テーマ(創造支援ツール)と関連する研究分野だけでなく,異なる分野・異なる視点の研究を聴くことができ,大いに刺激を受けることができた.

4. おわりに

今回,過去の会議と比べて,創造性(Creativity)という単語を用いた研究が増えた印象を持った.また研究対象は様々な分野をカバーするものであった.その中,筆者が興味をもった研究方向は2つで,クラウドソーシング(SNSも含む)と人間の様々な感覚データを使用したシステム研究である.これらはサービス研究において,大規模人数の価値観を反映する手法,人間の価値観を感覚データで測定する手法として応用できるのではないかと考える.

次回KICSS2015はタイ・プーケット島で2015年11月12日〜14日開催予定との発表があった.興味を持たれた方は,論文投稿をご検討いただきたい.論文投稿締め切りは6月中旬から7月初旬になると予想される.正式HPは本原稿執筆時点では公開されていないが,Google検索(例えばキーワードはkicss2015)などを用いて探し出して欲しい.

〔由井薗隆也(北陸先端科学技術大学院大学)〕

 
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