Serviceology
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Special Issue: "The Keyword of Creation of Innovation in Public Service"
Activities of Ten Years by the Association of Universites of Nishinomiya City
Shoji Yamamoto
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2015 Volume 2 Issue 1 Pages 20-25

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1. はじめに

我が国で「大学コンソーシアム」という組織が形成され始めて20年近い時間が経とうとしている.大学コンソーシアム京都が1993年に設立されて以降,幾つかの地域で同様の組織が構想され設置されていった.現在51大学で構成されている大学コンソーシアム京都は,その活動においてリーダー的な役割を果たしてきている.その活動については,設立10周年誌に詳しいが,この組織は長期的な展望に沿って大学の街である京都を発展させるという目標を持っている.

同じ趣旨で出来上がった組織が数多くある.全国大学コンソーシアム協議会には45の団体が加盟しており,こうした運動が広く普及してきていることがわかる.ただし,その活動には濃淡があり地域の特性を反映したものとなっている.

本稿では,2001年に設立された西宮市大学交流協議会の活動を通して,大学の地域連携によって生み出される「公共サービス」について考えてみたい.

2. 大学コンソーシアムの活動

大学コンソーシアムは地域にある大学や自治体,企業などが地域における連携の核となるべく設立されるものである.本節では主な活動について概観する.

2.1 単位互換制度

単位互換制度は,大学間の連携活動の中核となるものである.これは欧米の大学でも頻繁に行われているように,ある地域にある大学の教育資源を共有することで,その地域の高等教育に関するサービス水準を高めることができ,古くから行われている制度である.大学コンソーシアムが無くてもこうした制度の運営は可能であり,集中して大学が立地している地域では学生がキャンパス間を移動することで講義を受け,なおかつ卒業単位として認められることから,有意義な制度と考えられている.

大学コンソーシアムの多くが単位互換制度を持ち,それを発展させた共通単位講座を主催しているのにはこうした理由がある.特にある施設で集中して各大学が講座を提供して加盟大学の学生が登録すれば科目を履修できるようになると,学生にとってはわざわざ相手のキャンパスに赴く必要が無くなり,利便性も高まる.この集中した施設を持つことができるかどうかは,単位互換制度の発展には重要なステップである.

ある程度キャンパスが近接していても,授業時間にバラツキがあることや女子大学には男子学生を講義に受け入れられないなどの制限が発生すると,単位互換制度は形骸化してくるからである.

こうした事情は各コンソーシアムで共通の難題である.各大学がそれなりの距離にあり,利便性の高いターミナル付近に共通の施設を持たなければ,この制度は絵に描いた餅になりかねない.

大学コンソーシアムには,本稿で取り上げる西宮市の例のように近隣の大学で構成されているものと府県レベルで構成されているものがある.例えば,大学コンソーシアムひょうご神戸のように県内の多くの大学で構成されているものもある.

府県単位のコンソーシアムでは当初からこの単位互換制度の実施が難しいものもあり,地域の高等教育サービスへのニーズに十分応えられないというジレンマに直面することになる.このジレンマを乗り越えるためにeラーニングを導入している事例が見られる.

2.2 市民講座・生涯学習

市民講座や公開講座などの学生向けでは無い地域向けの教育サービスは,従来から大学単位で行われてきた.関西学院大学でも地域住民のための公開講座を実施しており,大抵の大学で実施されているのではないだろうか.これは開かれた大学という理念に基づいたものでもあったが,そこには市民と大学を結ぶチャネルを作り出すという意味合いだけでは無く,学生や大学の活動が近隣住民の理解無しには十分行えないという事情もある.

大学コンソーシアムがこうした講座を提供するのは地域の高等教育サービスの水準を高め,ひいては地域の文化水準を高めるという目的があるからである.文化資源の乏しい地域では,大学の持つ文化資源を廉価に利用できることは住民にとって大きな利益となる.

この活動は,学校教育法に書かれている大学の役割である教育や研究の成果の「社会還元」の直接的な形としても理解されている.

以上のような理由から,大学教員の持つ資源を利用した講座の実施は公共サービスとしての意味合いを持つようになってくる.例えば,実施主体が大学に依頼して講師を派遣して貰っても同じ様なサービスの提供が可能かもしれない.この方法をとったときには講座の継続は実施主体任せになってしまう.

予算があるときには実施されるが,常に計画的に講座が提供されるわけでは無い.予算措置が十分でなければ,実施されないこともあり得るし,そうなれば協力する大学としても継続的な取り組みとして体制を取ることもできない.

大学コンソーシアム京都ではキャンパスプラザ京都という中核的な施設で「京都学」を開講して,住民のニーズに応えている.こうした継続的な試みが街の文化水準に影響を与えるだけではなく,大学の社会との関わりを義務的ではなくまた散発的ではなく実現しているという意味でも重要な活動である(1)

西宮市大学交流協議会でもこうした活動を行っており,成果を上げてきている.市が主催している公開講座との違いや評価についても後述したい.

2.3 インターンシップ・高大連携

ここで取り上げる2つの活動は大学にとって重要性を増している活動である.インターンシップは,大学卒業生と地元の企業を結びつけることを目的としている.特に地方の大学では地域への就職が大きな課題となっている.地域での就職先が無ければ大都市への人口流出,地域の人口減というサイクルで地域経済が縮小してしまう.都市部にある大学でも地元からの進学者の多い大学では,地元での就職対応が必要となる.規模の小さな大学ではインターンシップ先を探したり,交渉したりすることが難しいため,このようなコンソーシアムで共同事業を行うことは,大学の評価を高めるためにも必要である.

同様に地元企業にとっても大学生にアピールする場を手軽に得ることができるという利点から,地域の商工会議所等がメンバーに入っていることが一般的に見られる.

これとは逆に高大連携事業は高校生に大学進学の意味を理解してもらう,高等学校で大学教員の研究に触れてもらうなどして将来の学習イメージを明確にしてもらうことが第一の目的である.その結果,入学者の確保に繋がれば加盟大学への直接的な成果の還元ができる.この様な目的の達成のために大学が地元の高校への働きかけをする際に共同して行うなどの催しを行っている場合がある.高校生にとっても地元の大学の様子を知る機会でもあり,定期的に催しを企画するなどしている.ただ,大学はそれぞれ地元の高校への働きかけではライバル関係にある場合もあり,独自の募集活動との兼ね合いで参加の程度も変化してくる.

2.4 ボランティア活動

近年,各コンソーシアムで取り組んでいる活動に学生のボランティア活動がある.街おこしやイベントの開催など,コンソーシアムの活動の柱になっている場合がある.ただ,これも各大学が地理的に近くないと各大学からボランティアを募って一緒に活動するという仕組みが作りにくい.地域が分かれている場合には,比較的近い大学同士でボランティア活動の基盤としてコンソーシアムを利用する場合もある.

小規模な大学にとっては学生が安心して活動できるボランティア活動の場を提供し,社会活動を通して自らの社会性を高めるという機会を作り出すことができる.この点は,学生にとっても就職に向けてアピールするポイントとなるなど,大学コンソーシアムの活動の成果として取り上げられることがある.

ボランティア活動は多岐にわたり,介護や教育など地域で不足している公共サービスの一端を担うなど,自治体にとっても重要な役割を担っている.大学単独で実施することは可能であるが,それでは,多様な学生と一緒になって活動するという側面が失われてしまう.また,府県レベルのコンソーシアムであっても休暇時期などを使えば一定の期間で実施が可能であることもこの活動の特性と言えるだろう.

2.5 その他の活動と補助金

その他に行われている活動としては,大学教員間で行われるFD活動や職員間で行われるSD活動,ビジネスアイデアなどのコンテストを地元の商工会議所や自治体と共同して開催するなど,地域の実情に合わせた活動が行われている.

財政的な裏付けは後述するがこうした活動を支えるには,加盟大学の会費だけではなく,自治体からの補助金,委託事業,国からの補助金が収入源として当てられる.コンソーシアムの活動を維持するために,委託事業,補助金事業が活動に含まれる場合がある.実際に,コンソーシアムの設立動機に補助金を獲得することが含まれる場合もある.活動自体が補助金獲得を目的としてしまうと本末転倒となるが,少なからずそうした側面があることも付け加えておこう.

3. 西宮市大学交流協議会(2)

本稿で取り上げる「西宮市大学交流協議会(以下協議会)」は全国大学コンソーシアム協議会の加盟団体ではあるが,コンソーシアムを名乗っているわけでは無い.現状の活動の中でコンソーシアムを名乗る必要も無いというのが理由だが,その出発点が大学の交流を目的としたものであり,当初から大学コンソーシアム京都が目指したような世界に通用する大学の街を作るというものでは無かったということもあるのかもしれない.

西宮市は人口48万人を擁する都市であるが江戸時代以来,天領として発展したこともあり,城下町ではない.そのため旧市街地は存在するものの中核となる地域は存在せず町村合併によって規模が拡大した典型的な郊外都市である.灘五郷のうちの二つを擁する酒造りと海運によって発展し,戦間期から戦後に掛けては甲子園球場などの娯楽施設の設置や住宅開発など阪神電鉄と阪急電鉄の不動産開発によって街が形作られた.それでは,協議会が発足するまでの経緯を説明してみよう.

3.1 文教住宅都市

西宮市は,1963年(昭和38年)「文教住宅都市宣言」を行い,市の性格を工業都市ではなく住宅都市であり文教に力を入れるということを宣言した.これは西宮市沖への工場の誘致に関係して行われたものだが,この宣言より前から多くの大学が市内に立地していたのは事実である.

関西学院大学,神戸女学院大学などは神戸市から移転してきており,武庫川女子大学,夙川学院短期大学等は戦前から学校法人が大学の開設位置に立地している.この宣言で学校法人が増えたというわけではないが,少なくとも2000年代になるまでは転出した大学は出なかった.

1992年(平成4年)に「カレッジタウン西宮構想」が提示されたのは,文教都市としての性格を強めると言うよりも「にぎわい」という側面からの政策を加味したものである.そこで取り上げられた4つの柱は,「市民と大学の交流」,「大学間の交流」,「行政・大学・市民の連携」,「学園都市の魅力作り」であった.ここには,「まちの活性化」を大学に期待するという意味合いがあり,食品産業以外に大きな産業を持たない西宮市が大学に期待するところがあったということである.

そこには,工場等規制法によって郊外に大学が転出する中,関西学院大学の三田キャンパスへの移転といった具体的な案件が出てきたことも契機となったのである.

この構想によって,協議会が作られたかというとそうではない.それぞれが交流を持とうにも大学の性格が大きく異なり,共通の価値観を見いだすことが難しい状況であったからである.

3.2 大学交流センター

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は,西宮市に死者1,146名(関連死含む),倒壊家屋61,238世帯という甚大な被害をもたらした.大きな火災こそ発生しなかったが,特に老朽化した木造家屋での被害が集中し,阪急西宮北口駅の北東側では多くの犠牲者を出した.

再開発では,道路の拡幅を含めて災害に強い街作りが図られ,駅前には再開発ビルが建てられることになった.アクタ西宮と名付けられた二棟からなるビルの東館6階に「大学交流センター」が設置された.西宮北口駅は,阪神電鉄の沿線にある武庫川女子大,兵庫医科大学の学生にとっても15分程度でアクセスが可能な駅である.

大学交流センターの設置に関しては,このセンターをどの様に運営するのかが大きな問題となった.この問題を解決するために,大学交流センター運営構想検討委員会が設置され2000年2月から計13回にわたり会合がもたれ,どの様に利用するのかが決定された.

この委員会での結論を受けて2001年3月14日,大学交流センターを利用するために西宮市大学交流協議会が発足することになった.発足当時は,関西学院大学,武庫川女子大学・短期大学部,神戸女学院大学,大手前大学,兵庫医科大学,聖和大学・短期大学部,夙川学院短期大学,甲子園短期大学であった.必要な費用は市と加盟大学が負担し,加盟大学は在籍学生数に比例して費用負担を行った(市が500万円,大学が1000万円).

理事長は関西学院大学学長が務めることとなり,理事会には商工会議所会頭,市長も出席して地元事業者と大学,自治体というメンバーで組織化を進めることとなった.

主な事業として共通単位講座を構想したのは,センターが設置されることが決まっていたからである.他大学のキャンパスで実施する講義に参加することは時間割や女子大のキャンパス内に男子学生が入れないといった規制から現実的ではないからだ.

大学間相互の努力と成果が互恵的でなければこうした事業は継続することができない.その意味でもこの施設の利用によって,コンソーシアムが形成される可能性が出てきたと言えるだろう.

もう一つの動機となったのは西宮市の姿勢である.交流センターの設置に関しては事務局を西宮市が置き,市民サービスのためのセンターとしての性格を盛り込んだからである.そこで,市民対象講座を実施して市民向けのサービスが展開されることをアピールすることになった.これで,主なステークホルダーが努力と成果を共有する機会を得ることができるようになった.ただし,この仕組みを成功させるためには,多くの時間と努力が必要となった.

3.3 共通単位講座

共通単位講座は加盟大学がそれぞれに科目を出し合って加盟大学の学生が受講するものである.受講生を増やすためには学生が受講しやすい時間帯を用意する必要がある.学生は所属大学での講義があるため,昼間に大学を抜けてからまた戻るということは想定しにくい.

そのため,平日の早朝と17時開始という,学生が通学途中に受講しやすい時間帯に講義の設定が行われている.科目は他大学の学生も十分に理解できる内容となるので,ある程度専門性を加味しながらも幅広い学生向けのものとなる様に工夫されている.

基本的に各大学から2科目を提供して貰い,それを春学期と秋学期に配分して開講している.幸いなことに各大学の専門分野は異なっており,普段は学内で受けることが難しい科目を受講できることから,受講者数は安定している.

ただそれだけでは受講者数が増えるわけでは無いので,各大学の履修登録時期にこうした科目を受けることが可能であることをチラシを配布するなどして周知している.その受講者の推移であるが,図1のようになっている.一時期やや減少した時期もあるが,近年は受講者数を伸ばしており,学生にも定着してきたようである(3)

この活動は,協議会にとっては核となる事業であり,運営委員会の下に専門委員会である「共通単位講座委員会」を設けて毎年各大学からの提供科目を調整し,実施をしている.共通単位講座の委員長には運営委員会の副委員長が就任している.運営委員会の委員長は関西学院大学から出していて,大学に設置されている社会連携センターのセンター長が就任している.

図1 共通単位講座の受講者数推移

小規模大学では2科目を提供することが難しい場合もあるが,加盟校の教員の協力で講義自体は継続されている.発足当初の理念の継続という意味ではやや薄れているが,この事業の意義は各大学で共有されているものと思われる.

3.4 市民対象講座

市民対象講座は,協議会の重要な事業として当初から企画されていたものである.大学交流センターが設置された目的の一つである市民との交流の柱となるものであり,「大学の知的資産の社会還元」という考え方のわかり易い形でもあった.

そのために,毎年テーマを決めて各大学から1,2名の講師を出し連続した講座を実施するという大学共同講座という形式を取っている(2013年のテーマは「温故知新」,2014年のテーマは「未来を読む」).市からは,受託事業という形で協議会がこの事業を請け負うことになっている.講師料はおよそ50万円余りが市から拠出されている.この他にも大学が連続した講座を提供するセミナーと単発のレクチャーがある.もちろん講座自体は無料ではなく1500円から3000円の費用がかかる.この収入も講座の運営に当てられている.そのためこの講座の運営に関しては大きなリスクなく運営ができている.参加者推移は図2の通りであり,市民の支持を得ていると言って良いだろう.参加人数は概ね30名から40名であるが,規模の大きなものだと60名近い参加者がある場合もある.

図2 市民対象講座の受講生推移 ●合計 ◆セミナー ■レクチャー ▲共同講座

市としては,低価格でこれだけの生涯学習の機会を提供できていることは,大きな成果であろう.西宮市では従来から「宮水学園」という60歳以上の市民を対象とした本格的な講座を運営しているが,教養的な意味合いの強いものであり,より専門的なこの講座へのニーズは大きなものがあると言って良いだろう.

加盟大学にとっては,大学交流センターを設置して利用することの市民に対する説明理由にもなり,事業の中では市と大学の関係を結びつける意味で重要な意味を持っている.

3.5 社会連携活動・ボランティア活動

協議会が実施している社会連携活動は多岐にわたっているので,その一部を紹介するに止める.

社会連携活動では,西宮市民祭りへの参加やアートフェスティバルへの出品など大学生が市の活動に参加する場合に一定の補助を行うことが中心である.ただし,この活動は当初想定していたものから何度か変遷を経て現在の形になっている.2007年に幾つかの委員会が廃止され,新たに地域活性化支援委員会が設置され,2010年に支援委員会は地域連携推進委員会に変化して現在の形になっている.

こうした活動の主役は学生であり,各大学とも固有の問題を抱えていることも事実である.資格試験が大きな目的となっている大学ではカリキュラムはほとんど必修であり,学生の社会活動といっても割ける時間はあまりないのが実情である.

特にボランティア活動は協議会が行う「学生ボランティア交流事業」として1997年に設立された「西宮学生ボランティア交流センター(NVIC)」の活動を継承した.2013年度には,167名の学生が登録をしており,95名の学生がボランティアに参加している.

2010年からは,これらの事業に加えてボランティア活動の実効性を高めるために「大学連携プロジェクトチーム(NCP)」が設立され,高大連携も含めた様々な活動がこのチームによって実施されるようになった(4).こうしたチームを恒久的に置くことができ,このチームを指導するNPOが関わるようになって活動としては非常に安定することになった.それでは幾つかの特徴的な活動を紹介してみよう.

3.5.1 キャンドルナイト・コンサートの実施

例年12月に市と共催で西宮北口のアクタ西宮と駅の間のアクタ西宮2階円形デッキで実施される屋外コンサートである.来場者が点灯したキャンドルでモニュメントを作り,各大学から出演者を出してコンサートを実施している.6組の出演者で参加者は6,000名余りであった.

2013年には12月1日の夕刻に実施され,飲料を提供するブースも用意された.出演者は,各大学から出ており,NCPが企画や実施を行っている.

3.5.2 仙台七夕プロジェクト

このプロジェクトは東日本大震災を契機として発足したもので,東日本大震災を『考えなおす』『見つめなおす』『思いなおす』をコンセプトに行われている.加盟大学や西宮市内の各地で,学生及び市民の方々から短冊メッセージとカンパ金を収集して,それを届けることを行っている.2013年は7月14日に甲南大学西宮キャンパスで受け渡しが行われた.そこには,東北大学地域復興プロジェクト“HARU”の学生も参加した.その短冊は,仙台の七夕で飾られた.

3.5.3 大学間交流と地域活性化イベント(JOIPA)

学生同士の交流を深めるためのプロジェクトで,商店街を舞台にして他大学の学生と知り合い,街おこしに協力するというもの.2013年は西宮北口,2014年は甲子園口商店街で実施された.

このプロジェクトは,学生間の交流を中心にして決められた地域で幾つかの店舗に入り,参加学生と交流を持つことが目的となっている.

加盟大学は地理的に離れていることもあり,普段は出会う場も特にないので,こうした場を設けて交流を深め,NCPの活動に興味を持って貰うことも目的としている.

3.6 その他の活動

その他の活動として近年はじめられたものに「にしのみや ビジネスアイデアコンテスト」がある.各地で行われているビジネスアイデアコンテストと類似のものであるが,商工会議所が実施主体となり協議会が協力して2012年より実施されている.

協議会の加盟校にビジネスアイデアへの出場者を募り,商工会議所の会員がアイデアのブラッシュアップなどを行って最終案に仕上げて,発表会を行うというプロセスになっている.

2009年に甲南大学が西宮北口キャンパス開設によって協議会に参加している.事業創造に関する学部が進出したこともあり社会連携活動には熱心である.また,聖和大学が関西学院大学と合併し,聖和短期大学が学校法人関西学院の元に存続している.夙川学院短期大学は神戸市に転出して,現在は9大学に数が減っているが,社会連携活動は充実してきている.

4. まとめ

西宮市大学交流センターは,2012年に設立10周年の記念シンポジウムを開催した.協議会は10年間の活動を振り返って必ずしも順風満帆とは行かなかったが,各大学の思惑が一致しない場面もある中で少なくとも共同して幾つかの事業が遂行され,定着してきたことは大きな成果と言えるだろう.特に,施設,事務局,資金という意味で西宮市がバックアップし安定した運営をしていることは非常に重要である.西宮市は運営基金を用意して,赤字が出ても一定期間活動が継続できるようにしている.近年は市民対象講座などが好調で黒字が出ているが,社会連携活動については毎年受託事業として市から費用が出ている.特に2010年から始まったNCPに関しては社会連携事業やPR事業として一定額の費用が計上され,活動の継続が図られており,ボランティア人材育成の点からも協議会の目的達成のために役割を果たしている.

加盟大学は,規模の違いこそあれ,それぞれに連携していることで大学の魅力を高めることができていると考えている.当初は,積極的とは言えない場面もあったが,相違を乗り越えてこの活動が継続しているのは大学の置かれた厳しい現実と発足当初にあった大震災からの復興の礎として大学も積極的に社会と関わろうという意識の高まりがあったからである.ボランティア活動への理解が当初から高かった理由もそこに求めることができる.

一方で,各大学の取り組みも特定の教員の努力によって成り立っていることは確かである.ただし,学生も大学での学習だけではなく,こうした社会活動を経験することの重要性を理解してきており,この点は協議会にとって追い風となると思われる.

5. 将来の課題

こうした公共サービスを地域の企業,大学,NPOが共同して提供している事例は数多く見られるが,自律的な仕組みを作ることは簡単ではない.西宮市大学交流協議会は第一段階を終わったところであり,各ステークホルダーの意識が醸成される段階が過ぎつつあると言えるだろう.大学コンソーシアム京都とは規模も到達点も違いはあるが,第二段階で市民と学生がどれほどこの組織に期待をして参加してくれるかが鍵であり,その芽はできつつあると言えるだろう.西宮市が大学を街作りの重要なプレイヤーとして考えてくれることを願っている.

 謝辞

本稿の作成には,西宮市大学交流センターと関西学院大学 社会連携センターから提供された資料を利用している.改めて謝意を表するものである.

著者紹介

  • 山本昭二

関西学院大学 専門職大学院経営戦略研究科教授,日本消費者行動研究学会会長,商学博士,主に,顧客満足,サービス品質の評価に関する研究を行っている.2005年3月まで関西学院大学商学部教授,2011年4月~2014年3月まで副学長,研究推進社会連携機構長.著書は,「サービス/クォリティ」,「サービス・マーケティング入門」等.

参考文献
 
© 2018 Society for Serviceology
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