Serviceology
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Conference Report
ICServ2015 The 3rd International Conference on Serviceology
Fumiya Akasaka
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2015 Volume 2 Issue 3 Pages 32-33

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サービス学会第3回国際会議 ICServ2015が,2015年7月7日(火)~9日(木)の3日間開催された.開催場所は,San Jose(United States)のMarriott Hotelであった.第3回目の国際会議にして初の海外開催であり,かつ,Service Science, Management, Engineering, and Design(SSMED)発祥の地での開催ということでもあり,記念すべき大会となった.

本会議の参加者数は全体で116名,うち日本からの参加者は90名,海外からの参加者は26名,8か国(United States, Germany, Israel, Taiwan, New Zealand, Denmark, United Kingdom, Netherlands)であった.国別参加者数とその割合は,図1に示す通りである.また,参加者の約6割は大学等の研究機関からの参加であり,残りの4割は企業からの参加であった(図2).

図1 国別参加者数とその割合
図2 産学の割合

会議1日目には,2件の基調講演と口頭発表セッションが行われた.

1件目の基調講演は,Service-Dominant Logic(SDL)の提唱者として有名なProf. Steve Vargo(U. of Hawaii)によるもの(題目:Foundations and advances in Service-Dominant Logic)であり,SDLの提唱に至る背景や苦労,理論体系の発展,イノベーションとの関係などについて,幅広く語られた(写真1).また,2件目の基調講演は,SSMEDの発展において中心的な役割を担ってきたProf. Paul Maglio(U. of California Merced, IBM)による講演であった(題目:Service Science: Enabling Systematic Service System Innovation).人間中心型(Human-centered)サービスシステムのための理論構築が重要だという話が印象的であった(写真2).

写真1 Prof. Vargoによる基調講演の様子
写真2 Dr. Maglioによる基調講演の様子

また,1日目は,Service Innovation and Design, Smart Service Systems, Service Marketing and Managementの3つの口頭発表セッションが並行して行われた(午前・午後).合計41件の口頭発表が行われ,活発な議論がなされた.異分野,異業種の研究者・実務者たちの,問題の捉え方(問題設定)や解き方(アプローチ)を聴き,議論できる場は,他の学会や研究会ではなかなか経験できないものであり,非常にエキサイティングであり,かつ有意義であった.

1日目の口頭発表セッション終了後には,懇親会が行われ(写真3),以下の論文賞が授与された.

  • (1)Best paper award(2件)

  • ●   Methodological reference model for PSS development. Tim C. McAloone
  • ●   A Service Innovation for reducing Food Adulteration problem in Bangladesh. IFFAT TASNIM HAQUE, Youji Kohda

  • (2)Best practionirer award(1件)

  • ●   Qualitative Simulation for Early- Stage Service Design. Yoshiki Morishita, Fumika Murakami, Koji Kimita, Shigeru Hosono, Sayaka Izukura, Hiroshi Sakaki, Eriko Numata, Yoshiki Shimomura

写真3 懇親会の様子

2日目も1日目と同様,2件の基調講演と口頭発表セッションが行われた.

1件目の基調講演は,当初とは予定を変更して,藤川准教授(一橋大学)による講演が行われた.また,2件目の基調講演は,Vikas Krishna氏(CA Technologies社)による講演であった.

2日目の口頭発表セッションは,Service Innovation and Design, Theoretical Perspectives on Service, Service manufacturing system, Product Service System, Human Factors in Service Engineering, Regional development and Sustainabilityという6つのテーマに沿って,27件の口頭発表が行われた.1日目と比較し,発表件数自体は少ないが,非常に幅広いテーマに関して活発な議論が行われた印象がある.

3日目は,事前に応募した参加者のみ,ICServ2015 Tourに参加した.このツアーは,IBM Almaden研究所,Stanford大学,IDEOという,イノベーションの拠点をめぐるツアーであり,著者も参加した.限られた時間の中での訪問ではあったものの,実際に現地に行かないとみられない光景や味わえない雰囲気を感じられたのは,良い経験だった.(写真4は,スタンフォード大学.写真5は,Palo AltoにあるIDEOのオフィス.)

写真4 Stanford大学
写真5 Palo AltoにあるIDEOのオフィス

今回,著者にとっては,初めてのICServ参加であった.ICServは,文理を問わない多様な研究者・実務者が,「サービス」というひとつのテーマに対して議論ができる,非常に刺激的で有意義な場であると感じた.

ただ,一点残念であったことは,国際会議であるにも関わらず,参加者の大半が日本人であったことである.サービス学会自体が日本発の学会であるため,多少仕方がない部分はあるかもしれないが,このような,文理の垣根なく「サービス」を議論できる場は,ぜひとも世界に広めていくべきである.その意味で,ICServの今後の国内外での発展を願うと共に,ひとりの関係者として微力ながら貢献できれば,と考えている.

〔赤坂 文弥(NTT)〕

 
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