Serviceology
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Conference Report
Meetup hosted by Sharing Economy Association, Japan
Kazuo Kikuchi
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2017 Volume 4 Issue 3 Pages 36-37

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1. はじめに

シェアリングエコノミーは政府の「日本再興戦略2016」の1つの柱となっている.日本の国内にもシェアリングエコノミー領域のサービスが拡大し,急成長をしている.  

一般社団法人シェアリングエコノミー協会*1が主催するMeetUpは,日本全国・世界進出へとシェア拡大を目指す経営者,事業責任者やシェアリングエコノミーで共助社会を目指す自治体・NPO団体・大学研究機関などが参加するイベントである.

今回は2017年3月24日午後7時からNagatacho GRID 6階を会場にして行われた.同MeetUpは数ヶ月に1度定期的に行っており,今回で5回目となる.本会議報告では,同MeetUpで発表された最新のシェアリングエコノミーの動向を紹介する.

2. シェアリングエコノミー認証委員会進捗状況の報告

シェアリングエコノミーは共助を基本にし*1,個人がサービスを提供し,享受することにある.利用者へのサービス提供にあたって,種々のリスクが生じる場合がある.こうしたリスクによる諸問題への対処が要請される.同様に,シェアリングエコノミーは,海外と比較して日本では認知度が十分に高くはない.こうしたことから安全対策の必要性が日本での普及のカギとなる.シェアリングエコノミー協会では,内閣官房の「シェアリングエコノミー検討会議中間報告書」で示されたシェアリングエコノミー・モデルガイドラインに沿って,国内における業界の標準となる自主ルールの策定と,それに適合することを証明する「シェアリングエコノミー認証制度」を導入することになった.

同ガイドラインは認証委員会で検討されている.同委員会は大学教員やリスク・コンサルタントといった外部の専門家から構成されており,外部評価が重視されている.認証マークを取得した事業者へのメリットとして,信頼性の担保や保険の料金が割引になるといったことが挙げられる.さらに,自治体へも積極的に推薦していく.認証については,会員企業は書面作成の必要がなく,審査員がヒアリングを行う.また認証マークは最短で4か月以内に付与される予定である.

3. 最新シェアサービス ピッチイベント

続いて,同協会に新たに加盟した企業のピッチイベントが行われた.スキル,スペース,ライドの領域に多様なベンチャー企業が日々,創出されている.シェアリングエコノミーは価値共創の形態としても捉えることができる.以下でそのサービス内容を紹介する.

  • (1)カーシェアリング

車に乗りたい人と所有している人を繋げ,個人間で車をシェアするカーシェアリングサービス.交通インフラとして,移動ニーズに焦点を当て,1,000人のユーザーを有している.またコスト構造上,既存事業者では採算が合わず参入できない地方エリアにも,地元法人や行政と組んでサービスを提供している.

  • (2)日本文化体験

社寺での日本文化体験を通じた“セルフクレンズ”の場づくりをする「お寺ステイ」の展開.主な対象は,若い日本人と日本に興味のある外国人である.多国籍な参加者と日本文化体験を通じ,日本の素晴らしさをシェアしている.同社は民泊的ロングステイを軸に,体験イベント参加型のショートステイをカスタマイズできる.

  • (3)荷物預かり

訪日外国人の増加に伴い,観光客が荷物を運びながら観光するのは大変であるという点に着目し,荷物と預かり場所のマッチングを行う.利用者には手ぶら観光を提供し,荷物預かり場所としては観光地に近い場所にあるレストランや会社などの空きスペースを利用している.

  • (4)特許技術の解放

特許技術をソフトウエアにおこしAPIで解放するという考え方のもとでマッチングするビジネス.大企業にとって特許は初期費用と維持費用がかかるものであり,特許を有効活用したい.他方で,特許で保護された技術をシェアしたい企業にとっては開発時間が削減できるメリットがある.このようにテクノロジーのシェアリングを通じて,ビジネスの成長を加速できるプラットフォームビジネスを展開している.

  • (5)子供のグローバル教育

「子ども達にロールモデルを.」というコンセプトのもと,お迎え×幼児向けスキルシェアのビジネスの展開.バイリンガルの先生(お迎えシスター)が子どもの迎えに行き(お迎えサービス),一緒に帰宅し,自宅で英語のレッスン(家庭教師サービス)を行う.子ども達に多様な世界観を共有することで,先生・親・子どものコミュニティを形成する.

  • (6)ヘッドハンティング

企業と求職者をつなぐソーシャルヘッドハンティングを行うプラットフォームビジネスの展開.審査を通過すれば誰でも個人の人材エージェントとして,身近な転職者を企業に紹介し,報酬を受け取ることができるという“紹介者”に特化したキャリア支援サービスである.雇用契約を個人で結び身近な人が転職相談にのるというビジネスモデル.

  • (7)人材流通

才能を流通させるプラットフォームとして,企業とハイスキルのフリーランスを結びつける.利用者はサイルのWebサイト上で人材を検索するか,サイルに紹介を依頼するかでWebや対面で打ち合わせを行う.そしてプロジェクトを成功に導く人材のマッチングを成立させるプラットフォームである.デザイナー,ライターなどをはじめとして100職種ほどのスポットマッチングを行っている.

  • (8)スペースシェアリング

遊休スペースのシェアリングのビジネスモデル.PC作業や打ち合わせスペースなどの場所の需要に対して,空いている店舗のオープンスペースや個室を100円単位で利用できる.同社は渋谷区や渋谷区観光協会と連携し,自治体の遊休資産をスペース貸しできるシステムの提供・運営を行う.

  • (9)トレーナー検索

利用者は同社を通じて自分に合うパーソナルトレーナーを探すことができる.十人十色のライフスタイルを経る中で,利用者は個々の生活や悩みに応じてパーソナルトレーニングを行い,やせたり,リラックスしたり,健康を維持するといった目的を達成する.利用者は同社のWeb上でトレーナーを検索し,トレーナーの詳細を確認して,場所と時間を予約してトレーニングを行う.

UberやAirbnbだけでなく,ニッチな領域で新しいビジネスが創出されていることがわかる.

4. 理事挨拶

株式会社AsMamaの代表取締役CEOである甲田恵子氏は,「モノやスペース,人のスキルのシェアリングが立ち上がり,需要は高まってきている.このシェアリングエコノミーの流れを大きなうねりになるようにしていきたい」としている.このほか,特別会員の紹介として三井住友海上火災保険株式会社と株式会社エフアンドエムが紹介された.同社による会員向けの保険や,シェアリングシティ推進への協力がのべられた.また内閣官房のシェアリングエコノミー促進室の取り組みも紹介された.

〔菊池 一夫(明治大学)〕

*1  https://sharing-economy.jp/, last accessed on July. 25, 2017.

 
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