Serviceology
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Print ISSN : 2188-5362
Members' Activities
Report of the Organized Session by SIG of Service Science and Knowledge Science as a Practical Science
Michitaka Kosaka
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2019 Volume 6 Issue 2 Pages 56-57

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1. はじめに

2018年3月に承認をされた“実学としてのサービス科学・知識科学研究会”では,約50名のメンバーが参加登録をして,20名程度が参加する毎月1回の研究会と9月に実施した研究合宿において,各人が持っている問題意識を議論してきた.このSIGは,「10年後,どのように社会が変わるべきか,人が変わるべきか,その目指すべき社会像の実現に対してサービス科学・知識科学はどのように貢献できるのか?」を,企業人を中心としたメンバーで議論し,実学としてのサービス科学・知識科学の有効性を明らかにすることを狙っている(佐藤,佐藤 2018).

このSIG活動では,メンバーの議論を通じて,これからのサービス科学・知識科学の応用分野の研究として,以下の3点を重点的に取り組むことにした.

  • (1)高齢社会や地域社会におけるコミュニティやウェルビーイングの研究
  • (2)技術の進展する中でのビジネスにおけるサービス価値創造研究
  • (3)イノベーションを価値空間概念で捉え評価を行う理論研究

2019年3月に,東京工業大学で実施されたサービス学会国内大会においてオーガナイズドセッションを企画して,SIG活動の研究成果の中間発表の位置づけで,13件の研究発表を行ったので,会員活動報告としてその内容を報告する.

2. SIGのオーガナイズドセッション

13件の研究発表を,A.地域・コミュニティ・ウェルビーイングに対するサービス研究,B.ビジネスにおけるサービス価値創造,の2つのセッションに分けて実施した.それぞれのセッションの内容を以下に示す.

2.1 地域・コミュニティ・ウェルビーイングに対するサービス研究のセッション

このセッションは,細野 繁氏(日本電気株式会社)の司会の下で,以下のメンバーによる研究発表と議論が行われた.

  • (1)「異質な知」が集うコミュニティで育まれるウェルビーイング

    村本 徹也(社会福祉法人ラルシュかなの家)

  • (2)地域活性化に向けたサービスデザイン

    近藤 朗(鹿児島女子短期大学)

  • (3)人生100年時代のライフステージ別サービスモデルとコミュニティの役割

    杉山 大輔(エヌシーアイ総合システム株式会社,桜美林大学),成瀬 博(日本電気株式会社),和田 典子(メディトリーナ株式会社,山梨英和大学)

  • (4)ユニバーサルデザインまちづくりワークショップに関する一考察

    三宅 由美子(産業技術大学院大学)

  • (5)地域共創におけるサーバントリーダーシップ

    藤井 美樹(愛媛大学 社会共創学部)

  • (6)旅館におけるおもてなしのナレッジマネジメントの現状と課題

    森下 俊一郎(九州産業大学)

2.2 ビジネスにおけるサービス価値創造のセッション

このセッションは,長岡 晴子氏(株式会社日立製作所)の司会の下で,以下のメンバーによる研究発表と議論が行われた.

  • (1)患者視点の医療サービス品質基準に関する初期的考察

    坂野 弘幸(名古屋市立大学大学院医学研究科 医学・医療教育学分野)

  • (2)15年後の作業会

    西岡 由紀子(株式会社アクト・コンサルティング)

  • (3)サービス事前期待のネットワーク可視化上への評価影響度情報の付与

    富川 数万(大阪府立大学大学院 人間社会システム科学研究科)

  • (4)ゲーミフィケーションを用いたマネジメントにおける実践知獲得手法の開発

    三原 克史,広瀬 優,岡田 久子,関 純,新野 毅,荒添 雅俊(株式会社日立ドキュメントソリューションズ),内田 吉宣(株式会社日立製作所)

  • (5)S-D Logic時代のビジネスモデル

    佐藤 秀樹(日本電気株式会社)

  • (6)ITサービスのビジネスモデリング

    上埜 友子(日本電気株式会社)

  • (7)価値空間概念に基づく新ICT技術によるイノベーションの評価方法

    小坂 満隆(北陸先端科学技術大学院大学,復旦大学コンピュータサイエンス学部),Wu Jie(復旦大学コンピュータサイエンス学部)

2.3 オーガナイズドセッションの感想等

今回のオーガナイズドセッションは,SIGの活動をサービス学会の会員の方々に知ってもらう目的で,できれだけ多くの研究テーマを発表しようと考えた.日程等の関係で,SIG内で議論しているもので発表できていないものもあるが,13件の発表を行うことができた.SIGオーガナイズドセッションの感想を以下に述べる.

  • (1)セッション会場は広く,SIGメンバー中心のセッションでは,大きすぎるのではと心配していたが,多くの方々に参加いただいた.実学としてのサービス科学の研究にサービス学会の多くの方が関心を持っていることを感じることができた.
  • (2)割り当てられたセッションの時間帯が1セッション90分×2セッションであった.そこで,SIGセッションでは,1件あたり持ち時間を15分とし,セッション時間を30分延長してもらった.しかし,SIGメンバー以外からの質問も多く,大幅に予定の時間を超過した.これも,参加者の関心の高さの表れかと考える.次のSIGセッションを行う機会があれば,発表時間や発表件数を大会事務局と相談する必要性も感じた.
  • (3)今回の発表はいずれも中間報告的な側面が強く,2年間のSIG期間で,さらなるブラッシュアップが必要である.

3. 今後の展開等

サービス科学や知識科学は,他の研究分野に比べると実学的な側面の強い研究分野である.現実の問題は何か?それをどのようにして解決できるのか?が研究の出発点であり,企業人を含む実社会で活動している人々にとって有用な研究を追求すべきと考えている.本SIG活動は,このような考え方に共感する方々が,時間の許す範囲で参加し,議論を重ねることを行っている.サービス科学の意義を実学として捉えることを目指してSIG活動を継続する.サービス学会会員の方々のいろいろなご意見をいただけると幸いである.

著者紹介

  • 小坂 満隆

(株)日立製作所システム開発研究所所長,北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科教授,研究科長などを歴任し,現在,同大学院名誉教授,復旦大学客員教授.

参考文献
 
© 2019 Society for Serviceology
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