2019 Volume 6 Issue 2 Pages 56-57
2018年3月に承認をされた“実学としてのサービス科学・知識科学研究会”では,約50名のメンバーが参加登録をして,20名程度が参加する毎月1回の研究会と9月に実施した研究合宿において,各人が持っている問題意識を議論してきた.このSIGは,「10年後,どのように社会が変わるべきか,人が変わるべきか,その目指すべき社会像の実現に対してサービス科学・知識科学はどのように貢献できるのか?」を,企業人を中心としたメンバーで議論し,実学としてのサービス科学・知識科学の有効性を明らかにすることを狙っている(佐藤,佐藤 2018).
このSIG活動では,メンバーの議論を通じて,これからのサービス科学・知識科学の応用分野の研究として,以下の3点を重点的に取り組むことにした.
2019年3月に,東京工業大学で実施されたサービス学会国内大会においてオーガナイズドセッションを企画して,SIG活動の研究成果の中間発表の位置づけで,13件の研究発表を行ったので,会員活動報告としてその内容を報告する.
13件の研究発表を,A.地域・コミュニティ・ウェルビーイングに対するサービス研究,B.ビジネスにおけるサービス価値創造,の2つのセッションに分けて実施した.それぞれのセッションの内容を以下に示す.
2.1 地域・コミュニティ・ウェルビーイングに対するサービス研究のセッションこのセッションは,細野 繁氏(日本電気株式会社)の司会の下で,以下のメンバーによる研究発表と議論が行われた.
村本 徹也(社会福祉法人ラルシュかなの家)
近藤 朗(鹿児島女子短期大学)
杉山 大輔(エヌシーアイ総合システム株式会社,桜美林大学),成瀬 博(日本電気株式会社),和田 典子(メディトリーナ株式会社,山梨英和大学)
三宅 由美子(産業技術大学院大学)
藤井 美樹(愛媛大学 社会共創学部)
森下 俊一郎(九州産業大学)
このセッションは,長岡 晴子氏(株式会社日立製作所)の司会の下で,以下のメンバーによる研究発表と議論が行われた.
坂野 弘幸(名古屋市立大学大学院医学研究科 医学・医療教育学分野)
西岡 由紀子(株式会社アクト・コンサルティング)
富川 数万(大阪府立大学大学院 人間社会システム科学研究科)
三原 克史,広瀬 優,岡田 久子,関 純,新野 毅,荒添 雅俊(株式会社日立ドキュメントソリューションズ),内田 吉宣(株式会社日立製作所)
佐藤 秀樹(日本電気株式会社)
上埜 友子(日本電気株式会社)
小坂 満隆(北陸先端科学技術大学院大学,復旦大学コンピュータサイエンス学部),Wu Jie(復旦大学コンピュータサイエンス学部)
今回のオーガナイズドセッションは,SIGの活動をサービス学会の会員の方々に知ってもらう目的で,できれだけ多くの研究テーマを発表しようと考えた.日程等の関係で,SIG内で議論しているもので発表できていないものもあるが,13件の発表を行うことができた.SIGオーガナイズドセッションの感想を以下に述べる.
サービス科学や知識科学は,他の研究分野に比べると実学的な側面の強い研究分野である.現実の問題は何か?それをどのようにして解決できるのか?が研究の出発点であり,企業人を含む実社会で活動している人々にとって有用な研究を追求すべきと考えている.本SIG活動は,このような考え方に共感する方々が,時間の許す範囲で参加し,議論を重ねることを行っている.サービス科学の意義を実学として捉えることを目指してSIG活動を継続する.サービス学会会員の方々のいろいろなご意見をいただけると幸いである.
(株)日立製作所システム開発研究所所長,北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科教授,研究科長などを歴任し,現在,同大学院名誉教授,復旦大学客員教授.