Serviceology
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Preface
The True Meaning of "Mobility as a Service"
Hideyuki Nakashima
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2019 Volume 6 Issue 3 Pages 1

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Mobility as a Serviceという,言葉だけでは何のことかよくわからないモビリティサービスの話題がここ1年くらいの間に随分と広まった気がする.日本でも,安倍首相の「相乗りタクシー」導入に向けた発言や2020年のオリンピックが追い風となって急速に実現しそうな雰囲気だ.サービスとしてのモビリティとは実は何であるべきだろうか?

MaaSは,元々はフィンランドのアアルト大学の修士論文(Hikkilä 2014)で使われた用語だ.これは既存の様々な移動手段(電車,バス,タクシー,自転車,レンタカーなど)を統合したモビリティサービスを提案したものであった.ヘルシンキではWhimというMaaSアプリが実用に供されている. ただ,収益性の確保には苦労しているようである.

日本でも国交省,トヨタ,JRなどがMaaSという用語を使っている.それぞれの意味合いは異なっているが,フィンランドとは異なり,「乗合」,「相乗り」あるいは「ライドシェア」の色合いが濃いと感じる.しかし,これらの三つの用語も似て非なるものである.

「乗合」は道路運送法で規定されている概念で,通常のバスや電車の運行形態のことだ.タクシーの乗合は禁じられている.

「相乗り」は元々人々が勝手にグループを作ってタクシーに相乗りしていたものであるが,最近ではマッチングを支援するシステムが出てきた.東京での実証実験の際に,現状の道路運送法の範囲で許されている相乗り方式が採用された.記者が申し込んだら(乗車前にマッチングが成立している必要があるので)相乗りが成立するまでに40分待たされたという記事があったが,終電後の利用など特殊な場合を除いて,あまり効率の良いものではない.未来投資会議の提言で使われている「相乗り」がこれを意味しているとちょっと困る.法律をあまり変えずに済むので,国交省側の妥協点は相乗りということだろうが,利便性より法律を優先するのは本末転倒ではなかろうか.バスやタクシーといった公共交通は住民へのサービスのはずであるが,国交省は住民ではなく業者の方を向いている気がする.日本は業界保護の政策から脱皮する時期だと思う.

「ライドシェア」はUber POOLのような,個人が(ボランティアで)乗合運行する形態を指すようである.

未来シェアが狙っているのは移動の効率化を重視したフレキシブルな方式なので「便乗」と命名した.呼べばいつでもすぐに来て,走行中に別の人が便乗してくるかもしれないという仕組みだ.この仕組みをプラットフォーム(モザド, ジョンソン 2018)としてその上に様々なサービス(観光,飲食,医療など)を載せることをMaaS(サービスとしてのモビリティ)と呼びたい.インターネットのモビリティ版だ.

著者紹介

  • 中島 秀之

札幌市立大学 /(株)未来シェア

参考文献
  •   Heikkilä, S.(2014). Mobility as a Service - A Proposal for Action for the Public Administration: Case Helsinki.
  •   モザド, A.,ジョンソン, N.(2018). (藤原朝子訳)プラットフォーム革命. 英治出版.
 
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