2024 Volume 45 Issue 2 Pages 116-121
線毛機能不全症候群(primary ciliary dyskinesia, PCD)は主に常染色体潜性遺伝する症候群である.PCDを予測する目的で,欧州で考案されたのがPICADARスコアであり,これは全年齢を対象としたものである.本症の原因遺伝子は人種により異なり,成人と小児では病態も異なるので,本邦の小児患者におけるPCDの予測スコアリングシステムを考案することを本検討の目的とした.当院の当科外来へ紹介された患者のうち18歳以下を対象とし,PCDと診断された群と診断されなかった群に分け後方視的に検討した.単変量解析で有意差を認めた項目について多変量解析を施行した.その結果,新生児期の多呼吸・咳嗽・肺炎,内臓逆位か臓器の位置異常,1年を通して持続する鼻炎,鼓膜の異常所見の4つが有意な項目であった.今回示された4項目を用いた新しい予測スコアを本郷スコアとして提唱した.
Primary ciliary dyskinesia (PCD) is a syndrome that is primarily inherited in an autosomal recessive manner. The PICADAR score is a prediction score developed in Europe for all ages. Because the causative genes of this disease differ depending on the race, and the pathological conditions differ between adults and children, we aimed to devise a predictive scoring system for PCD in Japanese pediatric patients. A retrospective study was conducted on patients under 18 years of age who were referred to our outpatient clinic at our hospital and we divided them into a group diagnosed with PCD and a group not diagnosed with PCD. Multivariate analysis was performed for items that showed significant differences in univariate analysis. As a result, four items were found to be significant: tachypnea, cough, and pneumonia during the neonatal period, situs inversus or situs ambiguous, rhinitis that persisted throughout the year, and abnormal findings in the eardrum. We proposed a new prediction score as Hongo score using the above four items.
線毛機能不全症候群(primary ciliary dyskinesia, PCD)は主に常染色体潜性遺伝する症候群であり,診断には専門的な検査と知識が必要である.そのため,未診断例や誤診されている例も多数見られている.いかなる症例に検査を行うかの指標として,PICADARスコア1)は広く認知されている.PICADARスコアはPCDの可能性を予測するための7つの簡単な質問による予測スコアであり,幼少期に始まる慢性呼吸器症状を持つすべての患者に使用できる.合計スコアを計算し,6点以上でPCDの可能性が高く,精査を検討すべきとされている.またRademacherらが提案した修正PICADAR2)スコアでは,新生児病棟入院の情報を新生児呼吸窮迫と統一し,PICADARスコアと比べ簡便となっている.しかしながら,PICADARスコアは欧州で考案された全年齢を対象にしたPCDの予測スコアであり,修正PICADARスコアは成人の気管支拡張症患者を前提とし,いずれも本邦の小児患者に対する予測スコアとしての妥当性は不明である.
PCDの原因遺伝子が人種により異なり3),成人と小児では病態も異なる4)ことから,これらの要素を踏まえた上で本邦での小児患者におけるPCDの予測スコアリングシステムを考案することを目的とした.
2010年から2023年8月までの間にPCDが疑われて三重大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科へ紹介された18歳以下の患者107症例(男児67例,女児40例)を対象とした.
線毛機能不全症候群の手引き5)における診断基準に則り,Definite PCDとProbable PCDの症例をPCDとした.
診療録を後方視的に検討し,まずPCDと診断されたPCD群(42症例)とPCDと診断されなかったnon-PCD群(65症例)と分け,発症年齢,性別,主訴,臨床症状,各種検査結果などについて検討した.また臨床所見は当科初診時の所見とし,血液検査,呼吸機能検査については紹介施設からの情報に基づいて記載した.鼓膜所見においては陥凹・光錐消失・褐色・混濁・耳漏・穿孔・石灰化・膨隆のいずれかの所見がある場合を鼓膜の異常所見とした.
両群を項目別に単変量解析(2群の平均値の比較にはMann-Whitney U検定を,比率の差の検定にはχ2検定を用いた)を施行し,それらの結果をもとに多変量解析を施行した.そして多変量解析から得られた予測スコアを,ROC曲線を作成して評価した.解析には,SPSS version 29.0を用いた.またそれらの解析についてはp<0.05を有意差ありとした.
この研究は,三重大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認(番号 2285)を得て行い,患者あるいは親権者から文書による同意を取得した.
単変量解析の結果を表1に示す.Mann-Whitney U検定を行った項目については例数(%)を,χ2検定を行った項目については,中央値[最小値−最大値]にて示した.
| PCD n=42 |
non-PCD n=65 |
有意水準(p value) | ||
|---|---|---|---|---|
| demographics | 初診時年齢 | 7.0[0–18] n=42 |
9[0.083–18] n=65 |
0.381 |
| 発症年齢 | 0[0–11] n=42 |
1[0–17] n=65 |
0.001 | |
| 性別(男/女) | 24/18 | 43/22 | 0.347 | |
| 【PICADARスコア】 | ||||
| 幼少期から毎日のように湿性咳嗽がありますか? | 41/42(98%) | 55/65(85%) | 0.027 | |
| 早産でしたか,満期産でしたか? | 35/41(85%) | 52/64(81%) | 0.585 | |
| 新生児期に多呼吸・咳嗽・肺炎などがありましたか? | 31/42(74%) | 14/65(22%) | <0.001 | |
| NICUに入りましたか? | 25/41(61%) | 15/64(23%) | <0.001 | |
| 内臓逆位か臓器の位置異常がありますか? | 12/42(29%) | 3/65(4.6%) | <0.001 | |
| 先天性心疾患がありますか? | 4/42(9.5%) | 1/65(1.5%) | 0.076 | |
| 1年を通して持続する鼻炎がありますか? | 40/42(95%) | 49/65(75%) | 0.007 | |
| 滲出性中耳炎,難聴,鼓膜穿孔のどれかがありますか? | 34/42(81%) | 31/65(48%) | <0.001 | |
| 同胞にPCD | 7/33(21%) | 0/47(0%) | 0.001 | |
| 【合併するアレルギー疾患】 | ||||
| アレルギー性鼻炎 | 6/34(18%) | 12/59(20%) | 0.752 | |
| アトピー性皮膚炎 | 4/11(36%) | 3/13(23%) | 0.395 | |
| 気管支喘息 | 12/22(55%) | 39/49(80%) | 0.03 | |
| 食物アレルギー | 2/6(33%) | 6/13(46%) | 0.599 | |
| 薬物アレルギー | 0/8(0%) | 1/9(11%) | 0.529 | |
| アレルギーの家族歴 | 5/6(83%) | 21/23(91%) | 0.515 | |
| 【投薬歴】 | ||||
| マクロライド | 25/38(66%) | 30/62(48%) | 0.09 | |
| 気管支拡張薬 | 14/38(37%) | 27/62(44%) | 0.508 | |
| 吸入ステロイド | 11/38(29%) | 30/62(48%) | 0.055 | |
| 身体所見 | 【鼓膜所見】 | |||
| 異常所見 | 36/40(90%) | 27/63(43%) | <0.001 | |
| 【鼻内所見】 | ||||
| 鼻内分泌物 | 40/40(100%) | 46/63(73%) | <0.001 | |
| 鼻茸 | 2/40(5%) | 8/63(13%) | 0.198 | |
| 検査所見 | 【血液検査】 | |||
| 好酸球数(/%) | 2.4[0.5–6.6] n=25 |
2.9[0–14] n=41 |
0.488 | |
| 好酸球数(/μl) | 180[19–540] n=25 |
210[10–1341] n=40 |
0.322 | |
| 血清総IgE(IU/ml) | 42.5[3.0–1788] n=16 |
216.5[5.0–1529] n=32 |
0.016 | |
| 特異的IgE(ダニ)(クラス) | 0[0–5] n=17 |
1.0[0–6] n=30 |
0.149 | |
| 特異的IgE(スギ)(クラス) | 1.5[0–4] n=16 |
2.0[0–6] n=28 |
0.511 | |
| 【呼吸機能検査】 | ||||
| FEV1%(/%) | 78.9[44.32–98.36] n=11 |
85.16[59.8–100] n=25 |
0.192 | |
| %VC(/%) | 80.55[52.9–114.8] n=10 |
78.15[22.9–101] n=26 |
0.393 | |
| %FEV1(/%) | 78.1[26–108.5] n=8 |
81.3[51.9–112.4] n=25 |
1 | |
| nNO | 48.65[0.2–1116] n=22 |
259.5[8–2400] n=42 |
<0.001 | |
| 呼気NO | 6.15[1.8–25.2] n=16 |
8.0[0–222] n=35 |
0.446 | |
non-PCD群と比べてPCD群では有意に発症年齢が低かったが,有意な男女差はみられなかった.またPICADARスコアの項目では,幼少期からの湿性咳嗽,新生児期の呼吸器症状,NICU入室,内臓逆位,鼻炎,中耳炎はPCD群で有意に多く,さらにPCDと診断された同胞例も多かった.今回の検討では満期産,先天性心疾患の項目では有意差を認めなかった.合併するアレルギー疾患では,気管支喘息はnon-PCD群で有意に多い結果であった.マクロライド系抗菌薬,気管支拡張薬,吸入ステロイド薬の投薬歴についても検討したが,両群間に有意差は認めなかった.
鼓膜所見・鼻内所見についても検討した.鼓膜の異常所見,鼻内分泌物は,単変量解析にてPCD群で有意に多かった.血液検査,呼吸機能検査では,血清総IgE値と鼻腔一酸化窒素産生量はPCD群で有意に低かった.
PCD群とnon-PCD群の単変量解析で有意差を認めた項目間で多変量解析を施行し,有意差が出た4項目(①新生児期の多呼吸・咳嗽・肺炎,②内臓逆位か臓器の位置異常,③一年を通して持続する鼻炎,④鼓膜の異常所見)の回帰係数・有意確率・オッズ比を表2に示す.回帰係数を単純化し,各項目を満たす場合を1点,満たさない場合を0点とし,代数和により18歳以下のPCDを予測するスコアを作成した(表3 a).以下このスコアを筆者の名前である本郷スコアとする.このスコアを今回検討した全症例に照らし合わせ,スコア別にPCDの割合を評価した.各スコアの割合を図1に示す.本郷スコアが0点でPCDの割合が0%,同様に1点で5.4%,2点で35.7%,3点で76.7%,4点で100%の結果となった.
| 偏回帰係数 | 有意確率 | オッズ比[95%信頼区間] | |
|---|---|---|---|
| (定数) | −4.961 | <0.001 | 0.007 |
| ①新生児期の呼吸・咳嗽・肺炎 | 2.211 | <0.001 | 9.129[3–27.775] |
| ②内臓逆位か臓器の位置異常 | 1.697 | 0.048 | 5.457[1.015–29.35] |
| ③1年を通して持続する鼻炎 | 2.193 | 0.026 | 8.959[3–27.775] |
| ④鼓膜の異常所見 | 1.931 | 0.004 | 6.894[1.829–25.983] |
単変量解析の結果をもとにPCD群とnon-PCD群の比較において有意差を認めた項目について多変量解析を施行した結果,①新生児期の多呼吸・咳嗽・肺炎,②内臓逆位か臓器の位置異常,③1年を通して持続する鼻炎,④鼓膜の異常所見,の4項目で有意差を認めた.
| a.本郷スコア | b.PICADARスコア | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 点数 | 幼少期から毎日のように湿性咳嗽がありますか? | はい―次の質問へ いいえ―ここで終わり |
|||
| 1.早産でしたか,満期産でしたか? | 満期産 | 2 | |||
①新生児期に多呼吸・咳嗽・肺炎はありましたか? |
はい | 1 | 2.新生児期に多呼吸,咳嗽,肺炎などがありましたか? |
はい | 2 |
| 3.NICUにはいりましたか? | はい | 2 | |||
| ②内臓逆位か臓器の位置異常はありますか? | はい | 1 | 4.内臓逆位か臓器の位置異常がありますか? |
はい | 4 |
| 5.先天性心疾患がありますか? | はい | 2 | |||
| ③1年を通して持続する鼻炎はありますか? | はい | 1 | 6.1年を通して持続する鼻炎がありますか? |
はい | 1 |
7.滲出性中耳炎,難聴,鼓膜穿孔のどれかがありますか? |
はい | 1 | |||
| ④鼓膜に異常所見がありますか? | はい | 1 | |||
a.18歳以下におけるPCDを予測するためのスコア(本郷スコア)
多変量解析で得られた回帰係数を単純化,つまり項目を満たす場合は1点,満たさない場合は0点とし,各項目の代数和によりPCDを予測するスコアとして作成した.
b.PICADARスコア
慢性呼吸器症状がみられることが前提となっており,7つの質問から構成され,質問の答えの代数和によりPCDの確からしさを予知する.6点以上の場合PCDの可能性が高い1).

本検討で解析した症例における本郷スコア別のPCDの割合
さらにPCD群・non-PCD群を本郷スコア別に感度・特異度を計算し,ROC曲線(図2)を作成した.得られたROC曲線下面積(AUC: area under the curve)は0.881であり良好な精度と考えられた.

本郷スコアにおけるPCDの予測モデルを縦軸に真陽性率(感度),横軸に偽陽性率(1-特異度)としてROC曲線作成.
(AUC:0.881 95%信頼区間:0.814–0.947)
スコア3点をカットオフ値にすると,感度0.714,特異度0.892,陽性的中率が0.811と有用性が高いことが分かった.つまり4項目中3項目以上を満たせば,18歳以下ではPCDの可能性が高いといえる.
本郷スコアとPICADARスコアとの比較を表3に示す.PICADARスコアは幼児期に始まる慢性呼吸器症状を持ち,かつスコアが6点以上でPCDの可能性が高いとされている.今回検討した全症例においてPICADARスコアも照らし合わせ検討したところ,PICADARスコアの陽性的的中率は0.711であり,PICADARスコアより本郷スコアの方が陽性的中率は高い結果であった.
鼻副鼻腔,気管・気管支から細気管支,耳管と鼓室,卵管内腔,脳室には運動線毛があり,粘液線毛クリアランスとして働いている.気道における線毛は,吸入された病原体や異物を粘液と共に鼻腔や気管から咽頭に向けて一方向性に押し流す気道粘液クリアランスの役割を担い,宿主防御に役立つ.粘液貯留による気道の閉塞や病原体を排出出来ないことは,中耳や副鼻腔,肺の感染症を繰り返し,病変が進むことになる.これは慢性鼻副鼻腔炎,不可逆的で進行性の気管支拡張症や肺機能低下の原因となる6).すなわち線毛運動の異常を起こすPCDは,気道クリアランス障害により,乳幼児期から感染や炎症を慢性的に繰り返し,結果として気管支拡張症を生じ,呼吸機能の低下を招く恐れがある7).成人のPCD患者ではその大部分で気管支拡張症がみられる.気管支拡張症の頻度は,年齢とともに高くなり,成人では95%以上に達するとの報告もある8).さらにこの病変の程度は,肺機能の低下と密接に関連することが知られており,時に呼吸不全に至る.小児のPCD患者の75~85%が新生児期呼吸窮迫をきたすとされており,Mullowneyら9)は,PCD患者が原因不明の新生児呼吸器疾患を罹患することが多いことに着目し,早期の診断が長期的な肺疾患罹患率と死亡率を減らす一因となるとしている.これは気道管理や細菌性気管支炎に対する抗菌薬の投与など,早期の疾患管理が可能となるからである.
PCDでは新生児・乳児期例で呼吸窮迫症候群,乳幼児期で慢性湿性咳嗽,滲出性中耳炎,慢性副鼻腔炎などの疾患がみられ,成人では気管支拡張症や男性不妊・子宮外妊娠を呈し,特徴的な疾患が異なる4).このように付随する疾患は小児と成人で異なることが多く,本邦においては,どのような小児患者に対してPCDを疑い検査を進めるべきかについて定まった基準はない.またInabaら10)による本邦報告のレビューでは,約5割が18歳以上でPCDと診断されており,診断の遅れが問題となっている.PCD患者の多くは診断までに10年ほど要し,そのおおよそが50回医療機関を受診すると言われている11).PCDは一つの検査のみで診断することは困難であり,複数の特殊な検査を要するため診断が難しい.本邦では未診断の症例が多く,また誤診されている症例も少なくはない.特に小児では難治性の副鼻腔炎や滲出性中耳炎の原因がはっきりせず,家族の大きな心理的負担ともなっている12).そのため,本邦において小児でのPCD診断に結びつくような指標の作成が望まれる.今回得られた本郷スコアは,問診3項目と鼓膜所見の計4項目で構成された簡便なPCD予測スコアで,PCDの診断の一助となると考える.
ここで本郷スコアとPICADARスコアについて検討する.新生児期の呼吸器症状の有無については先ほど述べた通り,PCDの早期診断に重要な情報であることがわかる.新生児呼吸窮迫の原因精査の際に内臓逆位が発見されればPCDを強く疑うきっかけになる.またPICADARスコアと本郷スコアのPCD診断の陽性的中率を比較すると本郷スコアがPICADARスコアよりも高く,小児例のPCD診断において本郷スコアの有用性が高いことを示した.この違いは,PICADARスコアでは内臓逆位の点数は他の項目よりも高く,内臓逆位が存在しない症例では,PICADARスコアの値が低くなりやすいという特徴を持つためと考えられる.本邦のPCDの原因遺伝子にDRC1が多く,DRC1のバリアントでは内臓逆位を生じないため,PCDの診断が難しくなる13).本邦では内臓逆位を伴うPCD症例は約4分の1と推定されている14).つまり,内臓逆位を有さないPCD症例が多い本邦では,PCD症例でもPICADARスコアの値は低くなりやすく,PICADARスコアでは本邦のPCD予測は困難であると考えられる.
鼻症状に関しては問診と鼻内所見について解析した.PCDの患者ではそのほとんどで両側鼻腔に粘膿性鼻汁がみられるとされている7).本検討でも単変量解析ではPCD群で鼻内分泌物を認める割合が多かったが,多変量解析では有意差は認めなかった.
PCD患者の鼓膜には様々な所見が見られるも基本的に滲出性中耳炎であり,PCDの早期発見につながる可能性がある15).本検討でも単変量解析ではPCD群で鼻内分泌物を認める割合が多かったが,多変量解析では有意差は認めなかった.陥凹・光錐消失・褐色・混濁・耳漏・穿孔・石灰化・膨隆のいずれかの所見を鼓膜の異常所見としたものの,病態としては滲出性中耳炎が多かった.またPCD患者は早期に重度の耳症状を発症することが多く,その症状は小児期を通じて持続し,3ヶ月以上遷延するとされている16).さらにPCD患者の中耳炎は治療の有無にかかわらず,しばしば成人期まで続く17)ともされている.Reshmaら18)は,PCD患者の大多数が滲出性中耳炎の罹患歴があり,その94%が小児期であったと報告している.
以上から,本邦でのPCD症例では内臓逆位を伴わない症例も多いため,十分な問診と小児期の鼓膜所見の確認,特に滲出性中耳炎の病態を呈しているかが,PCDの早期発見・早期診断へと繋がり,また成人期へ移行した際の気管支拡張症による不可逆的な呼吸機能低下を少しでも遅らせ,防ぐことへと繋がると考える.
今回18歳以下におけるPCDの新しい予測スコア(本郷スコア)を提唱した.提唱した予測スコアの4項目のうちの3項目はPICADARスコアに含まれていた.また今回の解析結果にて,鼓膜所見に異常所見があることがPCDの診断に有用であることが示唆された.
稿を終えるにあたり,統計解析に携わってくださった森下裕之先生(三重大耳鼻咽喉・頭頸部外科)に深謝します.
本研究は,文部科学省の科学研究費(C)(課題番号16K11210,19K09886,22K09665)の支援を受けた.
本論文の要旨は,第18回日本小児耳鼻咽喉科学会(2023年11月別府市)にて発表した.
利益相反に該当する事項:なし