Pediatric Otorhinolaryngology Japan
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Luncheon Seminar 3
Coblation intracapsular tonsillectomy (CIT): How to begin and perform it safely and effectively
Junko TsudaYohei YamamotoKazuma Sugahara
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2025 Volume 46 Issue 2 Pages 64-68

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Abstract

口蓋扁桃摘出術は歴史のある術式だが,術後出血は依然として大きな課題である.本邦では口蓋扁桃の被膜外全摘出術が主流であるが,近年は欧米を中心に世界の多くの地域で,特に小児閉塞性睡眠時無呼吸症に対しては被膜内摘出術へのシフトが進んでいる.被膜を温存することで,神経や血管が多く走行する筋層の露出を回避でき,術後疼痛を顕著に軽減するとともに,術後出血のリスクも極めて低い.これにより手術の安全性は向上し,患児や家族のQOLを改善させ,また術者を含む医療者側の負担軽減にも寄与する.当科では硬性内視鏡下にコブレーターを用いて施行しており,術中出血は極めて少なく視認性も良好であるため,経験の浅い術者への教育にも安全に活用できる.一方で,再増殖の可能性など新たな課題も存在し,十分な事前説明や術後の保存的加療の継続など,適切な対応が求められる.本邦においても,安全かつ有効な被膜内摘出術の普及が望まれる.

I.はじめに―口蓋扁桃被膜内摘出術への世界のシフト

口蓋扁桃摘出術は,耳鼻咽喉科専門研修カリキュラムにおける基本的手術手技の一つであり,専攻医が安全に習得・実施できる体制整備が求められている.歴史のある術式である一方,術後出血は依然として重要な課題であり,小児例に限っても発生率は約2~5%と報告されている1)

本邦では,口蓋扁桃を被膜とともに一塊に摘出する被膜外摘出術(Extracapsular tonsillectomy: ECT)が主流であるが,近年欧米を中心とする世界の多くの地域では,被膜内摘出術(Intracapsular tonsillectomy: ICT)へとシフトが進んでいる.

この背景には,2006年~2007年にオーストリアで扁桃摘出術を受けた6歳未満の小児5例が術後出血で死亡したという重大事例がある.国内で集中的な議論と多施設研究が行われ,その結果,6,765名(18歳未満)を対象とした研究では,術後出血率がtonsillectomy:15%,tonsillotomy:2.3%と有意差を示し,再発性扁桃炎以外の症例にはtonsillotomyを推奨するコンセンサス・ペーパーが発表された2)

手術方法の国際的動向について,2020年に米国の小児耳鼻咽喉科医を対象とした調査(送付約540名,回答率42%)では,20%がICTを施行していると回答した3).さらに2024年4月~5月に実施された世界の小児耳鼻咽喉科医を対象とした調査(回答132名,回答率45.1%,22か国)では,主にECT:44.7%,ICTとECTを同程度に施行:34.8%,主にICT:20.5%であった.これをふまえるとICT施行率は55.3%に達し,特にヨーロッパにおいて高い傾向が示された.

II.被膜内摘出術(ICT)の概念―被膜外摘出(ECT)との違い

従来のECTでは口蓋扁桃の被膜外で剥離を行い全摘出する.被膜の下の筋層には多数の神経や血管が走行しており,筋層が露出することで長く続く強い痛みと術後出血リスクを生じる.これに対し,ICTは被膜を温存し,扁桃組織もわずかに残して切除する.扁桃実質内には筋層に比べて痛覚繊維や太い血管も少なく,さらに残存被膜がbiologic dressingとして,深部筋層を覆うため,疼痛や術後出血リスクの低減が期待できる.

III.当科における小児OSAに対するCITA(図1,2)

当科では2022年12月より,小児の閉塞性睡眠時無呼吸症(Obstructive Sleep Apnea: OSA)に対し,Coblatorを用いた口蓋扁桃被膜内摘出術およびアデノイド切除術(COBLATION Intracapsular Tonsillectomy and Adenoidectomy: CITA,COBLATION Intracapsular Tonsillectomy: CIT)を開始した.当初は症例に応じて従来法(主にQuantumバイポーラー)も施行していたが,良好な術後経過を得たことから早期に全例をCITAへ移行した.

対象は小児OSA症例に限定している.Coblator II surgery system(Smith & Nephew)を用い,出力設定はablation(切除)7–9,coagulation(止血)は3とする.生理食塩水は加圧バッグを用いて十分に供給されるようにする.

Coblatorはバイポーラーシステムのため,電流は即座にリターン電極に回収され,また組織表面温度は約40~70℃と低く(従来の電気メスは450~600℃)であり,周囲組織への熱損傷が軽減される.ワンドはPROciseTM MAXを使用する.これはフラット・スクリーン型(flat-screen)と呼ばれる広い接地面積の電極により切除効率が高く,大型吸引ポートにより詰まりも軽減されている(図1).また,アングルワイダーを用いてワーキングスペースの確保と口角損傷予防に努めている.CITでは術者は患者頭側に立ち,肉眼および硬性内視鏡(0°)を併用して切除する.アデノイド切除では,術者は患者尾側に立ち,硬性内視鏡(70°)下に,ワンドを彎曲させて操作する(図2).

図1  当科のCoblator system
図2  当科のCITAのセッティング

IV.当科におけるCITA症例と従来法症例の比較

当科で2022年12月~2024年4月の1年5か月間にCITAを施行した症例は39例であった.比較対象として,手術担当医の体制が大きく変わっていない直近の2021年7月~2022年11月の1年5か月間に施行された従来法症例を用いた.CITA症例の年齢は2~12歳(平均:5.9歳,中央値:5.0歳)であった.手術時にリスクとなる基礎疾患を有する症例は14例(36%)に認められた.内訳(重複あり)は,知的障害/発達障害:6例,先天性心疾患:5例,21トリソミー:3例,極/低出生体重児:2例,Rubinstein-Taybi症候群1例であり,当科はリスク症例が多い集団を対象としていた.

①術後疼痛(図3
図3  CITAと従来法の術後疼痛の比較

術後の鎮痛薬使用を回数と日数を用いて比較した.鎮痛薬は,アセトアミノフェン静注液またはアセトアミノフェン細粒/座薬を,体重あたり1回10~15 mg/kgの用量で使用した.CITAでは使用回数:平均2.6回,使用日数:平均1.8日であった.従来法では使用回数:平均11.0回,使用日数:平均6.1日であり,いずれもCITAで有意な減少を認めた.当院では術中に麻酔科より全例1回投与されるが,術後に追加投与が不要であった症例が18例に達した.CITA開始後すぐに,術直後にも関わらず疼痛を訴えない患児が多くいることに気付いた.術後疼痛は顕著に軽減されると考える.

②手術時間(図3

当科は研修指定病院であり,基本的に専攻医と指導医が執刀する.従来法17例(鼓膜換気チューブ留置術を併施した5例を除外)の平均手術時間は106.3分(68~139分)であった.これに対しCITA 30例(鼓膜換気チューブ留置術を併施した9例を除外)では平均67.8分(44~90分)と有意に短縮した.

これにより,さらに施行可能な手術件数が増加し,実際に2022年12月~2025年5月の2年6か月間に施行したCITA症例は102例であった.直前の同期間(2020年7月~2022年12月,2年6か月間)に施行した従来法が37例と比較して,約2.8倍の増加となった.

③手術効果について

長期的な効果のデータは当科では未取得であるが,CITA症例のOSA-18質問紙スコアでは,術前スコア平均48.6点から術後3か月スコア32.6点へと有意に改善を示した.RDIスコアにより評価を行えた10例においても有意な改善を認めた.

④創部治癒経過(図4
図4 創部の治癒経過の比較

同時期の同年齢の症例において術後創部の経過を比較すると,従来法ではPOD17でも白苔の付着を認めていたが,CITAでは白苔はなく,良好な治癒経過を示した.

V.手術合併症および機器トラブルへの対応

①術後出血

当科での2年6か月間におけるCITA 102例中,術後出血を2例(1.9%)に認めた.いずれもPOD6~7の後期出血であった.術後出血はWindfuhrらの分類4)に準じて評価した.すなわち,Grade 1:自然に止血したもの,Grade 2:局所麻酔下で止血処置を要したもの,Grade 3:全身麻酔下で止血処置を要したもの,Grade 4:外頸動脈結紮を要したもの,Grade 5:致命的経過をたどったものとした.当科の症例はいずれも,Grade 1であり外科的止血処置は不要であった.原因検索のため手術ビデオを再確認したところ,いずれも被膜損傷により筋層が露出した症例であった.

CITでは扁桃被膜を内側から確認するが,被膜はやや黄色調,筋肉の収縮の出現,軽度の出血増加を目安とする.扁桃組織の十分な切除を施行する必要があるが,小児の被膜は非常に菲薄であり,プラズマによる熱浸達を考慮すると被膜を完全に露出させる必要はない.扁桃組織をわずかに残存させ80~90%の切除を目指すことが適切と考える.

海外報告では,14研究を対象としたCITA 9,821症例の解析で,術後出血率は1.0%であり,一次出血(術後24時間以内):0.1%,二次出血(術後24時間以降):0.8%と非常に低く,安全性の高さが示されている5).術者にとっても,術後出血の懸念が少ない事は心理的にも負担軽減に直結する.

②電極融解の問題

電極融解とは,コブレーターワンド先端の金属電極が高温や過電流により部分的に変形・溶解を起こす現象である.CIT導入後しばらく経過し,手術手技に慣れた頃にワンド先端のアクティブ電極融解により1症例で2本を要する事例が多発し,コスト面で問題となった.対策として,加圧バックによる十分な生理食塩水の供給,1回の通電を5秒以内に制限,ワンドの詰まりは速やかに解除するよう徹底した結果,事象は解決した.

③再増殖のリスク

OSA症状の再燃はないものの,当科39例中2例において術後1年経過した時点で軽度の再増殖を経験した.諸家の報告からは,2~3%に発生するとされ,特に2歳未満の幼少例ではリスクが高いとされる.CIT症例4,111人の長期検討では,9年間で135人(3.3%)が再手術を要し,そのうち75%は2歳未満であった.2歳未満を除くと再手術は0.4%と極めて低率である6).また,アレルギー疾患や上気道再発性感染症を併発する症例も再増殖リスクが高く,術後の保存的加療が重要である7)

VI.結語

小児OSAに対するCIT開始により,術後疼痛は顕著に軽減し,早期の経口摂取再開が可能となり,長期の点滴加療も不要となった.これにより患児のQOLは大きく改善し,付き添う保護者の負担も軽減された.さらに術後出血という最大のリスクが大幅に低下し,手術の安全性が向上した.当科では,従来法ではリスクが高く手術適応が困難と判断された症例に対しても本法を適用し,良好な術後経過が得られた.小児OSAに対する術式は被膜内摘出術が第一選択と考えており,広く普及することが望まれる.

利益相反に該当する事項:なし

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