Journal of the Society of Materials Engineering for Resources of Japan
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Research articles
Development of Reinforced Concrete Dismantling System Using Steam Pressure Cracking Agent SPC
―Drilling Process of Reinforced Steel Rebar in Cocreate―
Kouta NAGAOTatsuya MIYOTAHiroyuki MIZUMAMasanobu NAKATSUYuichi IWAMATakashi KAZUMIJumpei NANAOShinichi ITOMamoru TAKAHASHIYasuyuki MIYANOKenji MurataOsamu KAMIYA
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2024 Volume 34 Issue 1 Pages 20-28

Details
Translated Abstract

In a series of experiments on a demolition system using a steam pressure cracking (SPC) agent were conducted. The results were obtained by drilling 11mm diameter (D10 class) rebar in concrete using three types of rake angle bits at the tip of a small rock drill with a power of 2.24kW (Compressed Air power). The rebar could be pierced by the rock drill a time of 730~1020 seconds. Thus, it was confirmed that it is possible to process holes for SPC for concrete demolition with reinforcing bars. However, a drilling speed of rebar was about one-fiftieth of concrete. Observing the steel chips, there are two types of drilling mechanisms. One is a drilling mechanism in which the rebar undergoes compressive deformation at the tip of the bit, and microscopic chips are discharged at the tip of the bit with each impact. The chips are not more than 1mm wide. The second is to discharge macro chips of several millimeters in size, and the entire rebar is subjected to compressive deformation and because of multiple impacts from the end of the rebar, drilling proceeds in steps.

― コンクリート中の鉄筋掘削工程について―

E - mail: kamiya@gipc.akita-u.ac.jp

日本素材物性学会誌、第34巻、第1号、論文 662 , 本公開日:令和6年7月19日

令和6年3月26日受付、令和6年4月16日受理

本記事は、J- STAGEを通じて早期公開をした。公開日:令和6年6月23日

DOI: https://doi.org/10.5188/sjsmerj.662

1. 緒言

 著者らは、 鉄筋コンクリート廃棄物の迅速解体を目指して、 非火薬である蒸気圧破砕剤

(SPC)を用いて実験を[1-4] を行ってきた。ここでは、全行程の中で最も時間とエネルギーのかかる小型削岩機(ルートハンマー)を用いた SPC 充填用の孔掘削工程に注目して実験を行ったので報告する。

 地震などの自然災害により崩落した岩盤やコンクリートなどの廃棄物は速やかに解体撤去しなければならない[5-8] 。しかし、自然災害時においては、過酷な環境で作業員が削岩機などで廃棄物の解体作業を行わなければならず、被害の規模によっては人が現場に立ち入れない可能性もある[ 6, 9, 10] 。そのため、第一には遠隔で安全に解体できる工法を適用する必要がある[11] 。

岩盤やコンクリートを遠隔で解体するために、これまで行われてきた工法は4 種類の系統に分類される。1 番目は「重機解体工法」である[12, 13] 。コンクリートを嚙み砕く圧砕工法や、ノミで打撃して破砕するブレーカー工法がある[14] 。経済的で効率の良い解体法である反面、重機から発生する振動と粉塵が問題となる。また、重機自身のアタッチメントの爪幅などに制約されるなど、適用サイズに限界がある。

 2 番目は「切断工法」であり、ダイヤモンド砥粒を固定した円盤状のブレードを回転させて機械的に切断するウォールソー工法、ダイヤモンド工具を配列したワイヤーソーをコンクリートに巻き付けて、ワイヤーに張力を与えながら回転させて切断するワイヤーソー工法がある[6, 7] 。また、コンクリートに多数の円形孔を開けて切断する場合がある。その他に硬質の砥粒を含む高速水流によるアブレッシブウォータージェット法と高温で溶断するプラズマジェット法[14] がある。しかし、2 次的な汚染が発生することと、これらのシステムを遠隔で稼働するには複雑な機械システムと制御装置を必要とするという難しさがある。

 3 番目は、「内部膨張工法」[15] であり、セメント系の水和反応による膨張圧力を利用する静的破砕剤工法がある。騒音が無く、効率的に破砕できる利点があるが、一方では、鉄筋を解体できなかったり、破砕するまでに1,2日という長時間かかったりするので、緊急時には使用できないという難点がある。また、破砕の瞬間を予測できないので、人が近づいたときに破砕するなどの危険を伴う場合がある。また、油圧割岩工法も内圧を利用したもので、掘削孔にテーパー状のくさび型工具を挿入して、油圧ジャッキで破砕させる方法であり、振動が無くき裂ルートを調整しやすい利点がある[13]。一方では、油圧岩割機を使用する場合は、くさびの近くに自由空間が必要であり、周りが障害物で拘束されたコンクリートに適用することは難しい。

 4番目は微小発破すなわち少量の爆薬を2次元的に敷設した「マイクロブラスティング工法」である[16]。大型ブレーカーに比較して振動と騒音を低減できる利点があるが、爆薬を使用するので有資格者が必要であり、現場によっては法令上の制約を伴うので、多数の現場で同時に作業することは困難となる。

我々は、不要となった鉄筋コンクリート構造物に対して過酷な環境下においても、遠隔操作により安全で速やかな解体作業を可能とする、蒸気圧破砕薬剤(Steam Pressure Cracking:SPCと呼ぶ)[17-19]を用いた解体システムの研究開発を進めている。SPCは、静的破砕剤と爆薬の中間的な位置づけであり、両者の欠点を無くし、利点を生かした工法と言える。SPCは非火薬[17,20]なので、使用にあたって特別な許可や有資格者を必要としないというメリットがある。そして、静的破砕剤では鉄筋の切断が難しいが、SPCでは切断が可能であり爆薬よりも振動が少ない[2]。Figure 1(a) はSPCを用いた鉄筋コンクリートの迅速解体手法の全体工程を示し、本研究で示すSPCシステムは、工程の2,3および4を遠隔自動化を図り、安全な作業とするものである。

 SPCシステムでは、機械で岩盤やコンクリートを掘削し、蒸気圧破砕薬剤を充填するための充填孔等を加工するが、解体対象物が鉄筋入りコンクリートであっても鉄筋を貫通し掘削孔を加工できなければならない。すなわち、SPCに着火して破砕するのは短時間であるが、施工のほとんどはSPC充填孔の掘削に費やされることになる。そのため、廃棄物の早期解体のためには、鉄筋コンクリート掘削時に掘削速度を増速して加工する必要がある。これまで、コンクリート部分の掘削に関する報告[20,21]は、多く見られるが鉄筋部分の掘削を扱った研究は見られない。本報告では、主に鉄筋部分の掘削に着目し、掘削速度を向上させるための工夫を加えた各種ビットを用いて、掘削速度を示すとともに、微視的な観点から掘削メカニズムを解析したものである

2. 解体工程の仕事エネルギー

著者らが進めている解体手法の工程は、 二つに分けられる。ひとつは、 蒸気圧破砕剤

(SPC) の瞬間的な化学反応エネルギーによる鉄筋コンクリートの破砕工程である。ふたつめは、 破砕剤の充填孔を機械システムにより加工するための掘削工程である。 前者の SPC による破砕は、前報[4] に示したが、化学反応エネルギーと形成されるき裂の表面エネルギーとのバランスとして破壊力学的な観点から解析した。その基本的な考え方を、付録に示した。後者の、機械システムによる SPC 充填孔の掘削工程では、機械加工による掘削エネルギーが切りくずの形成に消費されと解釈する。これは切削理論における、素材の比切削エネルギーと同様の考えである。

 現場における、S PC システムを用いた実作業としては、ほとんどの時間を充填孔の掘削に費やす。鉄筋コンクリートの掘削においては、コンクリートは容易に掘削できるが、鉄筋の掘削は、多くのエネルギーが消費される。

本研究では、鉄筋掘削に着目して、その問題点について検討を進める。

3. 実験方法

掘削機械の掘削効率評価実験は、Figure 1 に示すように SPC システム試作機の掘削機構を用いて行う。供試体(鉄筋入りコンクリート)を試作機の下部に設置し、SPC システム試作機の掘削機構で供試体を掘削し、供試体内の鉄筋を貫通するまでの掘削量と時間を測定し掘削効率の評価を行う。Figure 2 に示す供試体( 幅W238×高さH238×奥行D175mm ) の上部に置かれている鉄筋は、実験に用いた異形鉄筋は D10(JIS-G3112) である。この鉄筋は、コンクリート供試体内に固定しているもので、公称直径 9.53 mm 、リブを含めた最大外径は約 11 mm である。この他に、D8,13,16,19,22などがあるが、本実験では、一般的な建物への使用頻度の高い D10 を用いた。掘削に使用する S P C システム試作機の掘削機構に取り付けるビットは Figure 3 に示すように、工具すくい角度を- 60 °(通称平形)、-20 °、0 °の 3 種類を使用した。ビットの素材は、本体が高張力鋼で、刃の部分はタングステンカーバイド(WC: 超硬材と呼ぶ)である。また、- 60 °に関しては切りくず排出の観点からスパイラル溝付ビットも製作した。平形は市販されているビットで鉄筋を切削しながら掘削する用途となっている。-20 °、0 °はそれぞれ平形ビット(直径 42 mm、高さ 70 mm) を追加工し、先端角を鋭くすることで工具すくい角を従来よりも大きめにとり、平形ビットよりも鉄筋の削り量を多くして鉄筋入りの供試体の掘削効率の向上を狙ったものである。平形ビットのすくい角は、-60 °なので以降では、平形工具を-60 °ビットと呼ぶ。

4. 実験結果と考察

地震や洪水により使用できなくなった鉄筋コンクリート製の構造物を対象にして、蒸気圧破砕剤 SPC を用いて迅速解体する場合に、SPC を充填するための穴を機械的に掘削することが実験目的である。鉄筋コンクリートを掘削するための加工法は緒言で示したように多く存在するが、ここでは過酷な環境下を想定して削岩機方式、すなわち通称ルートハンマーと呼ばれる機械で実施した。ルートハンマーは、コンクリートに対しては掘削効率

が良いが、鉄筋部分では掘削速度が著しく低下する。本実験では、これまで知られていない掘削機構の解明や掘削効率の改良を行った。

4.1 切削効率に及ぼす要因

ルートハンマーでのコンクリートの掘削後、一旦引き抜いた状態を、Figure 4 に示した。周囲にコンクリート粉末を排出して、速やかに掘削が進んでいる。Figure 5 には鉄筋を貫 通して掘削し、再度コンクリ― トに達した状態を示す。切断された鉄筋の断面が、黒い楕円として観察できる。 Figure 6 に示すように、鉄筋掘削後には、穴の先端に、10 ㎜以上の大きさの鉄筋切りくずが残留している場合がある。

Figure 3 に示すように、ビットの回転方向を考慮して、すくい角度を- 60 °(オリジナル)、- 20 °および 0 °の 3 種類で掘削した。

各種ビットによる掘削実験から得られた時刻歴掘削量のグラフを Figure 7 ~ Figure 9に示す。切削深さと加工時間の関係を示しており、コンクリート、鉄筋、コンクリートの各掘削段階においての時刻歴掘削量を直線近似し、直線の傾きを掘削速度として評価した。Table 1 に各種ビットの掘削速度を示す。実験を行った結果、3種類のビットにおいて、供試体内の鉄筋を貫通することが出来た。コンクリート切削においては、いずれのビ

ットにおいても掘削速度は同程度であった。鉄筋掘削においては、Table 1 に示すように- 60 °ビット掘削速度が若干速く、0 °と-20 ° は、ほぼ同程度の掘削速度であった。 ビットにおけるすくい角度が、掘削速度にほとんど影響を及ぼさなかったことから、ルートハンマーによる鉄筋の掘削機構は、ドリルのような回転方向のトルクによる仕事で被削材を削り取っているのではないことがわかる。すなわち、ドリルでは刃物が被削材に接触したまま、刃先は旋盤工具先端のように定常的に素材を削りとるため、刃先角度であるすくい角が掘削速度に影響を及ぼす。一方で、ルートハンマーでは、常に刃先がジャンプしており、削るのはなくチゼル(くさび状のハンマ) 状の工具で叩いているために、すくい角の影響はなかったと言える。一般に、切削効率として比切削エネルギー( Es ) を使うことが出来る。これは、単位体積の切りくずを形成するために消費されたエネルギーであり、切削が困難な時ほど大きな値となる。比切削エネルギーは物性値ではなく、切削方法や切削油など環境依存型の値である。Es は次の式で表される[2 3 ] 。

E s =P/ MRR (1)

ここで、P はシステムの出力[J /s] (=[W] ) であり、本システムのルートハンマーでは

2.24 kW であ る。 MRR( material removal rate ) は、 単位時間 当たり の切 削量 [ mm3 /s] であり、本研究では、鉄筋の掘削時の値に注目して、掘削初めから終了までの平均値を計算すると、

MRR = V r / T r ( 2)

V r は掘削する鉄筋の体積であ

り、ビットと鉄筋の直径から計算

でき、いずれのすくい角度でもほぼ等しい 。 T r は、 鉄筋掘削に要

する時間であり、ビットのすくい角度-60°、-20°および-0° に対して 730 s 、940 s 、1020 s となり、 先端が鈍化している- 60 °ビ ットの時間が最も短いことが解 る。- 20 °と- 0 °については誤差の範囲で同等と見なした。本研究の鉄筋 D10 は、Figure 2 に示すように高さ 0.5 ㎜程度

数式( 1 ) および( 2 ) に、本システムにおける実験値を代入して得られた、Es を Table 1 に示す。 著者らは以前、 同じシステムを用いた時に、 コンクリートの比切削率(Es) が 2.65 [J/mm3 ] であることを示した。鉄筋の、Es はコンクリートの 200 倍程度であることが解る。このため、Figure 4, 5, 6 で切削時間を見た場合、コンクリートを 10 ㎜切削す

るのには約1 5 s程度であるが、直径 11 ㎜の鉄筋を貫通するのに 730 s 以上かかっている。このように、加工時間が長くなることの理由については、切りくずを観察し、切削機構の観点から検討する。

4.2 ビットによる鉄筋の掘削機構

Figure 1 0 に、ルートハンマーで鉄筋を掘削するときに発生する切りくずを示す。

Figure 1 0( a ) (b ) で観察されるように、➀、➁および➂の 3 種類の切りくずが存在する。

➀は、10 ㎜に達する大きな鉄筋の切りくずであり、これをマクロ切りくずと呼ぶ。➁は、薄い針状の微細鉄切りくずであり、これをミクロ切りくずと呼ぶ。➂は、コンクリートが脆性破壊したカケラおよび粉状の切りくずである。マクロ切りくずは、10 ㎜以上の鉄片が繰返しチップ先端で鍛造されたような形態を示す。一方、ミクロ切りくずは、Fi g u r e

10( a ) ( b) の➁で示すように、針状の幅1㎜以下で長さが 10 ~ 20 ㎜程度の形態を示す。

Figure 11 に、電子顕微鏡で観察したマクロ切りくずの表面を示す。圧縮加工を受けた、フレーク状(剥片状)の鋼が、多数折り重なり合体していることから、繰返し打撃をうけ、エネルギーを吸収していることが推測される。この観察結果は、鉄筋の高い比加工エネルギーを裏付けている。

Figure 12 に、マクロ切りくずとミクロ切りくずの形成機構の違いを示す。 マクロ切りくずは(a-1) (a-2) に示すように、鉄筋が繰返し圧縮加工を受けてビット周辺にはみ出した鉄片が繰返し疲労によりき裂が発生して、やがて脱落したものである。一方、ミクロ切りくずは、

( b-1) (b-2) に示すようにビットが急停止するときに表面を掘削して、両側に形成されるミクロなバリに関連する。バリが分離すると、Figure 10 で観察したような、ビット形状に対応した針状のミクロ切りくずになる。ミクロ切りくずの大きさは、最初にビットが保有していた運動エネルギーに比例する。また、打撃エネルギーが小さく、なおかつ鉄筋とビットの直径が大きい場合は、圧縮応力が小さくなるので、切りくずを発生しない場合が予測される。このような限界値は、鉄筋の環境依存型の物性としての比切削エネルギーを、実験システムにより計測することにより正確なデータを得ることが出来る。Figure 13 に模式図で、マクロ切りくずとミクロ切りくずの形成機構を示した。中央にある逆三角形は、奥行きのある-60 ° および- 20 ° ビットの断面を示している。打撃してはジャンプして回転を繰り返している。一回もしくは複数回で、ビットに沿った針状のミクロチップが形成される。周辺では、十分に成長したマクロ切りくずが、根元で疲労破壊して不連続的に形成される。 Figure 1 3 の右に示すように-20° ビットでは、先端の食込みは深くなるが、ミクロチップは排除されにくくなると考えられる。そのため、Table 1 に示されるように、単位時間当たりの切削量 MRR は、-20°よりも-60°のビットの方が大きなっている。この現象は、ビットが接触時に上下運動のみを行っていることに関連しており、一般的なドリルのように、接触時に水平方向の運動が加われば、異なった現象がみられると予測され、今後の課題でもある。

4.3 解体システムの問題点と改善

鉄筋の切削中、もしくは鉄筋貫通後において、掘削孔先端にマクロ切りくずが残留し、ビット 側面と掘削孔壁面の間に切りくずが介在して嚙みこみが発生し、ビットの回転が止まる事象が発生した。Figure 6 にそのようなマクロ切りくずを示している。実験においては、手作業で切りくずを取り除き復帰することが出来るが、災害現場においては、最も危険な場所に身をさらすことになり問題となる。残留したマクロ切りくずが噛み込まずに、排除される事を目標にして、従来のビットを改善して Figure 14 のような新たなビットを製作した。これは、スパイラルの溝に沿ってマクロ切りくずが排除されるように設計したものである。この新しい溝付ビットを使用して掘削実験をした結果、マクロ切りくずはスムーズに排除されて、噛み込みは発生しなかった。そして、連続して鉄筋コンクリートの掘削をすることが出来たので、問題点を解決することが出来きた。

スパイラル溝により、マクロ切くずの排除に加えて、コンクリート粉と切削油の排除が

促進される事により、切削速度の改善が推測される。また、ビットと掘削面との接触面積が減少して、エネルギー損失が低くなるとこが期待される。さらに、砂骨材の破砕粉の排出が促進される。切削条件によっては、ハンドハンマーの内部機構の潤滑油が破砕粉と混じり粘り気があり付着しやすい破砕粉(塊)となり排出が困難になる場合があるが、その排出も改善される。

5 . 結言

蒸気圧破砕剤(SPC)を用いた解体システムに関する一連の実験において、本研究では出力 2.24 kW の小型削岩機( ルートハンマー) の先端に 3 種類のすくい角のビットを用いて、コンクリート中の直径 11 ㎜(D10)鉄筋を切削することにより、次のような結果を得た。

  1.    鉄筋はルートハンマーにより、730 ~ 10 20 秒( 12 ~ 17分)の時間で貫通することが出来た。したがって、鉄筋入のコンクリート解体のための SPC用の孔を加工することが可能である ことを確認した。しかし、その切削速度は、コンクリートの約 50分の1であった。
  2.    すくい角の影響は、-60 °では切削速度が 0.0175mm/s とやや高く、-20 °、0 °の範囲で、切削速度は 0.01 mm/sと低い値であった。これは、刃先が常に上下振動しているため、す くい角-60 ° では、ミクロ切くず排除が起こりやすい事を示した。
  3.    鉄筋の切りくずを観察することにより、掘削機構は 2 種類あることが明らかとなった。ひとつは、鉄筋の加工面は、ビット先による打撃による圧縮変形を受けて、打撃毎にミクロな切りくずを排出する掘削機構である。そのためミクロ切りくずは幅が 1 ㎜以下で長さが10 ㎜程度の針状である。ふたつは、数㎜の大きさのマクロ切りくずで、鉄筋がチップ先端で圧縮応力を受けて鉄筋の端から 10 ㎜以上のバリを形成して、複数打撃の結果疲労により脱落するため、ステップ的に掘削が進むものである。
  4.    鉄筋の掘削段階および鉄筋貫通後において発生した金属片の嚙みこみによるビットの回転停止事象は、ビットにスパイラル溝を加工して金属切りくずを外部に排出することで解決することができた。

今後、鉄筋の掘削限界サイズや掘削速度の改善に関してさらなる検討が必要である。

謝辞

本研究は JSP S 科研費 2 0K05162 の助成を受けたものである。ここに謝意を表します。また、本研究を進めるにあたり、研究施設の使用、実験実施許可、試験片の提供などに便宜をはかって頂いた日本工機株式会社、三和テッキ株式会社および国立大学法人秋田大学の関係部署と関係諸氏に深く感謝申し上げます。

参考文献

付録 破砕剤( SPC)による鉄筋コンクリート破砕のエネルギーバランス

The drilling results of reinforced concrete by remote control cracking system is shown in Figure A-1. The reinforced concrete was mainly separated into three parts. Broken rebars were also present on the fracture surface. The cracks were predominantly controlled by induction holes. The mechanism of control cracking was analyzed in a previous study. In this study, the relationship between SPC energy and crack surface area was examined. If a clear relationship is obtained, the amount of SPC and the distance between the holes with respect to the cracking target concrete can be determined.

Figure A-2 shows the relationship between the energy W of the SPC and the crack surface area of concrete structures of different sizes. Based on fracture mechanics, it can be concluded that the internal strain energy is released by forming a fracture surface. The pressure energy caused by the SPC agent is converted to strain energy, W, which is called the elastic wave, and W is released by crack propagation of length c. Fracture energy can perceived as the surface energy γs of the fracture surface. This can be expressed by the following formula:

W=2cγs       (1)

where W is the total strain energy corresponding to the energy of the SPC agent, c is the crack length corresponding to the area of the fracture surface, and γs is the surface energy as a material constant of the concrete used.

The energy of the SPC required to form a 1 m2 crack in the concrete was 276.7kJ/m2, which corresponds to γs of equation (1).

W=276.7s [kJ] (2)

Where s is the area of the fracture surface,

The impact value when the general steel bar is broken is approximately 100 J / cm2. When 10 bars of 12 mm diameter are arranged in concrete 1 m2, the sum of the energy when impacting and destroying this is 3.14 kJ. This value is sufficiently small when compared to the coefficient of 279.8 kJ/m2, as shown in Figure A-2.

Figure A-1 shows the broken reinforced bars on the fracture concrete surface. It is presumed that the hole and reinforcing bar correspond, or the deformation to destruction is small. Moreover, this is a brittle low strain energy.

Acknowledgments

本研究は JSP S 科研費 2 0K05162 の助成を受けたものである 。 ここに謝意を表します 。 また 、 本研究を進めるにあたり 、 研究施設の使用 、 実験実施許可 、 試験片の提供などに便 宜をはかって頂いた日本工機株式会社 、 三和テッキ株式会社および国立大学法人秋田大学 の関係部署と関係諸氏に深く感謝申し上げます 。

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