Tetsu-to-Hagane
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Preface
Preface to the 100th Volume Memorial Special Issue on Ironmaking
Taichi Murakami
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2014 Volume 100 Issue 2 Pages 109

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巻頭言

「鉄と鋼」が第100巻を迎え,先月はその記念号である1号が発刊されました。今年は2号以降,各分野の特集号が順次発刊されますが,その一番手として製銑特集号を企画いたしました。洋式高炉が我が国で稼働してから157年が,近代製鉄が開始されてから113年が経ち,その間の偉大なる先人たちによる膨大な研究および技術開発が世界No.1の製銑技術の構築を可能にしました。「鉄と鋼」が発刊され,初めて掲載された製銑関係の論文は1巻1号pp.67-72に記載された「骸炭爐に於ける高爐瓦斯使用」です。しかし,これは設備に関する論文であるため,それらを除くと,黒田泰造氏による「溶鉱炉用骸炭について」(Vol.1 1915, No.5, p.470-475.)であろうかと思います。これは大正4年5月に化学工業会福岡支部にて講演した内容と記載があります。「骸炭」とはコークスのことですが,このコークスに求められる特性(硫黄,燐,灰分,水分,粉率,気孔率,耐圧力)が本論文にまとめられています。国内炭は灰分や揮発成分が多く高品質のコークス製造が困難であったため,初期の製鉄事業が非常に困難であったことも記載されています。溶鉱炉技術の進歩とコークス品質の改善により,1902年(明治35年)に1.7t/tHMであったコークス比が1914年に1.0t/tHMに改善したことも報告されており,100年前の諸先輩方の苦労と成果がよく分る貴重な資料です。

さて,創刊当時から100年経過した現在を生きる我々もまた多くの課題を抱えています。すなわち,地球環境問題に発する二酸化炭素排出量削減問題であり,また石炭や鉄鉱石などの原料品位の低下と価格の高止まりです。原発事故後国内ではトーンダウンしたように見受けられる二酸化炭素排出量削減技術確立への期待も世界的には依然高く,国の支援を受けながら様々なプロジェクトが進められているところです。日本鉄鋼協会においても「低炭素高炉実現を目指した固気液3相の移動現象最適化研究会(主査:東北大植田准教授)」が最終年度を迎えています。二酸化炭素排出削減問題はエネルギー問題とも言えます。また,昨今の原料価格の高騰により,鋼材価格の非常に高い割合を原料価格が占める状況が続いています。劣質炭の利用技術や高結晶水鉱石の焼結技術など様々な技術開発がなされてきました。これらの成果の一部にはコークスや焼結の研究会の寄与なくしては実現できないものもあり,現在でも「資源対応型高品質焼結鉱製造プロセス研究会(主査:東北大村上)」が活動しております。奇しくも,100年前と本質的な問題は変わらず,資源とエネルギーにあるように思います。

この状況を鑑み,100巻記念の製銑特集号として,「資源拡大と低炭素化を目指した製銑技術」と題し,「高炉の低炭素化に向けた取り組み」や「石炭配合と原料炭配合」,「焼結鉱の品質」をキーワードとする企画を準備いたしました。この企画に応えて,レビューが5編(高炉が3編,焼結およびコークスが各1編),一般論文が20編(ISIJ Internationalからの転載8編を含む)もの投稿があり,併せて25編の論文で特集号を刊行できる運びとなりました。このように多くの論文を掲載することができ,製銑研究者の積極的な活動とともに,資源エネルギーおよび製鉄プロセスの両フォーラム,各研究会のメンバーのご協力に大変感謝しております。また,「私が選んだ一編」として「鉄と鋼」に掲載された論文の紹介を2名の大学の先生に依頼いたしました。説得力のある選定理由が記されていますので,ご一読をお願いするとともに選定された論文につきましても目を通していただけますと幸いです。

この特集号が次の100年に向け,さらなる製鉄技術の革新に寄与することを祈念しまして巻頭言といたします。

 
© 2014 The Iron and Steel Institute of Japan

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