2014 Volume 100 Issue 3 Pages 331-339
Hot metal desiliconization is carried out by the addition of iron oxide at the tilting runner in the blast furnace casthouse for better hot metal dephosphorization and subsequent BOF operation. The authors proposed the application of a swirling flow to the hot metal at the tilting runner, aiming at effective silicon removal by mixing of the desiliconizing agent and hot metal, since hot metal desiliconization is determined by mass transfer of FexO in the slag in the low FexO concentration range. A basic investigation of the swirling flow was carried out in a water model experiment. The swirling flow was generated in a funnel-shaped container with various flow rates, outlet diameters, etc. The proper flow condition was characterized by a swirl number. The experiment showed that mass transfer of a tracer in model slag was enhanced under the swirling flow condition. A 5-ton hot metal experiment was carried out with a specially designed vessel to generate a swirling flow of hot metal. The desiliconization experiment with addition of iron ore showed that silicon removal was enhanced by application of the swirling flow of hot metal, especially with slag of low FexO content. An analysis was performed for the desiliconization reaction after the addition of iron ore and showed that the mass transfer of Si was increased by almost two times when the swirling flow was applied, which reflects good mixing of the desiliconizing agent and hot metal.
溶銑の珪素濃度の低下は,溶銑脱りん処理の時間の短縮や効率の改善,および後続の転炉吹錬における装入溶銑のP濃度の低下にスラグ発生量の削減など,幾つかの操業上の有益な点をもたらす。溶銑からの脱珪は,工程省略のためにしばしば高炉の鋳床で行われる。一般には,溶銑収容容器(高炉鍋やトーピードカー)の上方に位置する傾注樋で,脱珪剤としての酸化鉄を溶銑に添加する1,2)。酸化鉄による脱珪反応は以下のように表される。
(1) |
脱珪剤のもとの酸化鉄濃度は(%massFexO)=60-80であるが,傾注樋で溶銑と反応してFexOが消費され,傾注樋の出側では(%massFexO)<40となる。脱珪剤はスラグとなり,溶銑収容容器に流入し,落下流による撹拌でさらに溶銑と反応する。最終的なスラグ中のFexO濃度は10 mass%以下である。したがって,充分に脱珪を行うには,脱珪剤投入後に形成されるFexO濃度が40 mass%以下のスラグの反応が重要といえる。
酸化鉄による脱珪反応に関する研究として,過去に幾つかの報告がなされている3,4,5,6)。Naritaら5)は高周波誘導炉で1.5~3 kg規模の溶銑脱珪実験を行い,スラグ中FexO濃度が40%以下になると脱珪反応は溶銑中Siの物質移動とスラグ中FexOの物質移動の混合律速となることを報告している。Shibataら6)はタンマン炉で120 g規模の溶銑脱珪実験を行い,脱珪反応速度がスラグ中FexOの物質移動に強く影響されることを報告している。このように,低FexO濃度域ではスラグ中FexOの物質移動を促進することが必要である。
物質移動を促進するには撹拌操作が有効である。撹拌操作として通常はガス吹込やインペラ撹拌が行われるが,これらの操作を高炉鋳床で行うには特別で大がかりな設備が必要となる7)。一方,溶銑流路での操作という高炉鋳床脱珪の特徴を利用して,溶銑に自発的渦流(旋回流)を発生させて混合操作を行う方法が考えられる。すなわち,溶銑流動に作用する慣性力もしくは重力によって自発的に渦流を発生させればよい。流体に旋回を付与するには,吸い込み部を有するろうと形状に流体を導く方法が最も簡単である。これまでに,旋回流の実験室規模での調査や溶銑脱硫への適用が報告されている8,9,10,11)が,高炉鋳床脱珪への適用はこれまでに例がない。
本報では,脱珪反応における物質移動の促進を目的に,高炉鋳床の溶銑流動を利用した旋回流の形成による,脱珪剤と溶銑の新しい混合方法を試みた。旋回流の基礎的調査のためにろうと形状部を有する容器で水モデル実験を行った。続いて5トン規模の溶銑を用いて,溶銑に旋回を付与する容器を使用したときの脱珪挙動を調査した。
ろうとを通過する液体の流動状況および混合特性を基礎的に理解するために,水モデル実験を行った。実験に使用した容器の代表的な寸法をFig.1に示した。容器は塩ビ板で作製し,受水部,ろうと部,樋部からなる。受水部からろうと部への入口は,滑らかな旋回流を得るためにろうと部の中心軸とずらせている。ろうと部の直径(160 mm,180 mm,200 mm),角度(45°,30°,0°),出口径(60 mm,80 mm)の寸法を変化させた。ろうと部の角度は,ろうと斜面部の水平に対する角度とした。
Schematic illustration of experimental vessel for water model and experimental setup.
実験装置の模式図をFig.1に併せて示す。上方に設置したタンクから実験容器に水を供給した。実験容器は水平に対して5°だけ下方向に傾けた。比較のために,ろうと部のある条件と無い条件で実験を行った。
本実験では,旋回流の流動特性を調査するためにろうと部での水面高さを測定した。水面高さは,Fig.1のb-b断面に相当する出口中心軸を含む断面(以後中心断面と呼ぶ)で測定した。水の流量は1.0×106~2.1×106 mm3/secとした。ろうと部の入口での流速はプロペラ流速計を用いて測定した。
スラグとメタルの混合を模擬するために,模擬スラグとトレーサ物質を用いた実験を行った。模擬スラグとして流動パラフィン(比重0.85)を使用した。トレーサ物質としてβ-ナフトールをパラフィン中に2.85×10−4 mg/mm3となるように事前に混合した。純水を実験容器中に一定流量で供給し,200 gの流動パラフィンをろうと部入口で添加した。流動パラフィンを添加する時間は3秒とした。流動パラフィンが水と混合すると,トレーサ物質のβ-ナフトールが水側に移動する。流動パラフィンを添加している間の水を回収し,水中のトレーサ物質濃度を吸光法(波長309 nm)によって測定した。吸光強度から,事前に作成した検量線をもとにβ-ナフトール濃度を求めた。
2・2 溶銑脱珪実験溶銑5トンを用いたパイロット規模の実験で脱珪反応の調査を行った。実験容器の代表的な寸法をFig.2に示す。実験容器は投射部と旋回部からなる。投射部は箱形で,溶銑が供給され,さらに脱珪剤がランスから投入される。旋回部はろうと形状である。旋回部の下には溶銑を受銑鍋に導く樋がある。溶銑が旋回部で旋回するように,投射部から旋回部への入口は旋回部の中心軸とずらしている。旋回部の出口径は予備実験から180 mmとした。実験容器は耐火物で内貼りしている。実験容器を含む実験設備の模式図をFig.2に併せて示す。溶銑は5トン規模の低周波誘導溶解炉で溶製し,搬送鍋から実験容器に供給した。溶銑は投射部から旋回部に流入し,受銑容器に流入する。実験容器は,一般的な高炉鋳床の傾注樋と同様に,水平に対して5°だけ下方向に傾けた。実験容器の出口から受銑鍋の底までの距離は3.1 mであった。
Schematic illustration of experimental vessel for hot model and experimental setup.
溶銑の流量は,受銑鍋の下に設置したロードセルで測定される受銑鍋の重量変化から評価し,約1 ton/minに制御した。実験容器内部の溶銑の流動は脱珪剤を添加しない条件で観察した。旋回部での流動状況はCCDカメラで観察した。旋回部入口における溶銑流速は,直接測定することが困難であるため,CCDカメラで観察された溶銑上を浮遊するスラグの移動速度で評価した。
脱珪剤は粉状の鉄鉱石と生石灰を重量比80:20で混合して調製した。鉄鉱石の代表的成分の含有量はFe2O3=96.2 mass%,SiO2=1.24 mass%であった。脱珪剤はランスを通じて0.20-0.45 kg/secで投射部の溶銑に投射した。比較のために,旋回流を形成させない条件での実験も行った。この場合には,旋回部の形状を旋回流の生じないように改造した。
初めに,タンクから実験容器に水を供給した際のろうと部の水の流れを調査し,自由渦を伴う多様な旋回流を観察した。観察に際しては,必要に応じ模擬スラグを添加した。Fig.3(a)には種々の流量におけるろうと部の中心断面の水面高さを示す。水面高さは流量の増えるほど大きくなった。ろうと部の角度や出口径を変えた実験でも水面高さを測定し,結果をそれぞれFig.3(b)および(c)に示す。角度および出口径が大きいと水面高さは低くなった。
Height of water at central section of funnel under various conditions.
これらの観察結果に基づき,旋回流と混合特性の関係についてFig.4に示すように解釈した。図中の(A)のように旋回流が小さい場合,ろうと中央部に大きな空隙が生じる。このとき,渦の中央部での旋回流同士の接触は起こらず,流体表面のスラグへのせん断力は働かない。したがって混合特性は低いと考えられる。一方,ろうと部で流体が干渉しすぎると,図中の(C)のように流体は渦の中央部で充満するようになる。このとき,浮遊したスラグは渦中央に集積して滞留し,不均一に分散するようになる。図中の(B)の場合,適度な旋回流が形成されてスラグと流体が渦の中央部で接触することで,効果的な混合が期待される。したがって良好な混合効果を得るためには,図中(B)のような旋回流を形成させることが鍵となる。
Schematic illustration of relationship between mixing properties and flow characteristics in funnel.
流体の旋回運動を特徴付けるためにスワール数12)を引用する。本系ではスワール数Sを次のように定義する。
(2) |
ここでGθは旋回流の角運動量(kg・m2/sec),Gxはろうと部出口における軸方向運動量(kg・m/sec),dはろうと部の出口径である。Gθはろうと部入口の流速とろうと部の直径から算出し,Gxはろうと部出口における自由落下条件での流速から求めた。
Fig.5に,スワール数をろうと部出口の単位面積あたりの液体通過量(Throughput,mm3/sec/mm2)に対して示した。水モデルの結果はろうと部角度30°において2つの異なる出口径で得られたものである。各々の出口径での結果で,スワール数は液体通過量とともに大きくなった。黒塗りのデータはFig.4の(B)のような旋回流が観察されたことを示す。好適な旋回条件はスワール数が1.5~2.0の範囲であることが分かる。後述する溶銑脱珪実験における実験容器もここでの結果を参考に設計した。
Relationship between flow rate of fluid and swirl numbers.
旋回流による混合特性を,模擬スラグとしての流動パラフィンとトレーサを用いて調査した。Fig.6に,容器入口で流動パラフィンを流水に投下し,容器出口で回収した水相のβ-ナフトール濃度を示す。流量は1.3-1.4×106 mm3/sec,容器出口径は60 mmとした。旋回を付与した条件でのろうと部の角度は30°であり,スワール数は1.6であった。β-ナフトール濃度はろうと無しの場合よりも有りの場合において大きく,旋回流によって混合が促進され,トレーサの移動量が大きくなったことを反映した結果が得られた。実験容器から回収容器への落差については,落差の大きい方が落下エネルギーによる撹拌効果でβ-ナフトール濃度は高くなった。ただし落差の大小によらず,旋回の付与による撹拌促進効果は認められた。
Concentration of β-naphthol in water phase under various conditions.
流動パラフィン相から水相へのβ-ナフトールの移動反応の速度を,流通式反応槽としての取扱いに基づいて評価した13)。
本系におけるβ-ナフトールに関する物質収支は次式のように表した。
(3) |
ここでFi,Foはそれぞれ反応部の入り側および出側の水の流量(mm3/sec),φi,φoはそれぞれ反応部の入り側および出側の水中の流動パラフィンの体積分率(-),CBi,CBoはそれぞれ反応部の入り側および出側の流動パラフィン中のβ-ナフトール濃度(mg/mm3),rBは反応速度(mg/mm3/sec),Vは反応部の体積(mm3)である。CBiは,流動パラフィンから水相へのβ-ナフトールの移動量を水相のβ-ナフトール濃度の変化から求め,これより流動パラフィン中のβ-ナフトール濃度の変化に換算して見積もった。
反応槽内が定容で完全混合とすれば,Fi=Fo,φi=φoであり,上式は次のようになる。
(4) |
本実験において,水相中のβ-ナフトール濃度は飽和濃度に対して充分小さいのに対し,流動パラフィン中のβ-ナフトール濃度は反応部の通過により1/2近くに低下する。したがって流動パラフィン相から水相へのβ-ナフトールの移動反応を一次反応とする。
(5) |
ここでkBは反応速度定数(1/sec)である。これを(4)式に代入して整理すると(6)式および(7)式を得る。
(6) |
(7) |
ここでθはV/Fiで表される反応物の反応部内の平均滞留時間(sec)である。本実験におけるθを決定するのは困難であるので,移動反応の大小をkBθで評価する。なお,別に行った予備実験において,水の流量を変化させて実験容器内での水の滞留時間を変化させたときに,kBθの値の変化には流量(滞留時間)自体は支配的な影響を及ぼさなかったことを確認している。
Table 1に,本実験の諸条件とkBθを示す。反応部出側での流動パラフィン中のβ-ナフトール濃度は,反応部出側の水相中のβ-ナフトール濃度からβ-ナフトールの移動量を求め,これを流動パラフィン中のβ-ナフトール濃度の変化に換算して算出したものである。kBθはFig.6に見られたのと同様に,ろうと部での旋回付与により大きくなっていることが判る。旋回付与によるkBθの増分は,実験容器から回収容器への落差が200 mmの場合は0.030から0.035へと1.2倍になり,落差が800 mmの場合は0.55から1.00へと1.8倍になったこのことは,ろうと部で旋回を付与している場所で物質移動が促進されるのみならず,旋回時の混合促進によって落下後の撹拌の際に物質移動が大きくなるような条件が加えられることを反映していると考えられる。
Funnel part | Slope angle of funnel part (deg) | Falling height(mm) | Flow rate(mm3/sec) (×10–6) | Transferred weight of β-naphtol (mg) | β-naphtol content (g/L) (×104) | kBθ | |
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CBi | CBo | ||||||
Not applied | – | 200 | 1.39 | 23.1 | 2.85 | 1.87 | 0.030 |
Applied | 30 | 200 | 1.32 | 24.7 | 2.85 | 1.80 | 0.035 |
Not applied | – | 800 | 1.38 | 33.1 | 2.85 | 1.44 | 0.055 |
Applied | 30 | 800 | 1.33 | 42.2 | 2.85 | 1.06 | 0.100 |
Fig.2に示す実験容器に溶銑を供給し,溶銑が滑らかに旋回することが観察された。この時の条件から見積もられたスワール数をFig.5に示す。横軸の液体通過量の値は溶銑実験と水モデル実験で異なるが,好適な旋回流の得られたスワール数の値は溶銑実験と水モデル実験で同等となる。
溶銑を使用した実験における溶銑流の流れを数値流動解析でも検討した。数値解析は,汎用の流体解析ソフトウェアであるFluent(ANSYS,Inc.)14)を用い,3次元モデルで計算した。乱流モデルにはk-εモデル15)を,混相流モデルにはVOF(Volume of Fluid)モデル16)を用いた。
一例として,溶銑流量が1 ton/min,旋回部の入り口部の幅が150 mm,旋回部の出口径が180 mmの条件での流線図(俯瞰)をFig.7に示す。図中の流線の色の違いは,流線の観察のために計算に使用した粒子ごとの軌跡を示す。灰色で示した面は溶銑浴面を表す。旋回部の流線の観察から,溶銑が1~2回転する旋回流が形成されることが確認された。
Calculation result of the flow pattern of hot metal in hot model experiment.
脱珪実験の結果をTable 2および3に示す。Fig.8に脱珪実験時の時間推移の一例を示す。メタルおよびスラグを採取する際には溶銑供給および脱珪剤の投射を停止する必要があるため,Table 2,3およびFig.8に示すように実験は断続的に行った。サンプル採取および次ステップへの準備に必要な停止時間はFig.8中の溶銑重量推移の平坦部に相当するが,概ね2分程度であった。各々のステップで,初めは溶銑のみを供給し,溶銑流量が安定してから脱珪剤を投入するようにした。このため,受銑鍋中の珪素濃度は脱珪剤を投入しない期間の溶銑と投入した期間の溶銑が混合されたものとなる。
DR11 | DR12 | DR13 | |||||||
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① | ② | ③ | ① | ② | ③ | ① | ② | ③ | |
Initial [Si] (mass%) | 0.3 | 0.3 | 0.3 | 0.31 | 0.31 | 0.31 | 0.37 | 0.37 | 0.37 |
[Si] at blasting room (mass%) | 0.28 | 0.25 | 0.22 | 0.24 | 0.22 | 0.21 | 0.31 | 0.33 | 0.33 |
[Si] at container ladle (mass%) | 0.24 | 0.17 | 0.17 | 0.21 | 0.16 | 0.16 | 0.23 | 0.20 | 0.25 |
Hot metal flowing time (sec) | 60 | 92 | 82 | 207 | 100 | 142 | 139 | 75 | 110 |
Time for blasting DeSi agent (s) | 50 | 63 | 60 | 90 | 90 | 130 | 66 | 72 | 68 |
Amount of DeSi agent (kg/t) | 19.5 | 16.4 | 18.6 | 45.1 | 31.2 | 27.6 | 43.9 | 34.3 | 41.7 |
(%FeO) at blasting part (mass%) | 30.8 | 26.0 | 27.3 | 39.2 | 32.2 | 25.2 | 42.1 | 37.3 | 38.0 |
Amount of hot metal (T) | 2.18 | 3.43 | 4.88 | 2.07 | 3.12 | 4.74 | 1.39 | 2.15 | 3.12 |
Falling height (m) | 2.69 | 2.44 | 2.21 | 2.71 | 2.50 | 2.24 | 2.85 | 2.70 | 2.48 |
Hot metal temperature (°C) | 1401 | 1384 | 1374 | 1401 | 1384 | 1374 | 1357 | 1346 | 1326 |
[Si] at basin part (mass%) | 0.12 | 0.17 | 0.12 | 0.04 | 0.12 | 0.15 | 0.09 | 0.14 | 0.16 |
Mixing power density (W/T) | 173 | 95 | 72 | 108 | 84 | 53 | 208 | 125 | 69 |
ksiA (10–2m3/sec) | 5.96 | 2.82 | 4.62 | 5.27 | 4.56 | 2.89 | 4.77 | 3.80 | 2.97 |
k’siA (10–4m3/sec) | 1.68 | 1.23 | 2.69 | 1.89 | 1.85 | 1.48 | 1.23 | 1.27 | 1.65 |
DR10 | DR14 | DR15 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
① | ② | ③ | ① | ② | ③ | ① | ② | |
Initial [Si] (mass%) | 0.29 | 0.29 | 0.29 | 0.25 | 0.25 | 0.25 | 0.28 | 0.28 |
[Si] at blasting room (mass%) | 0.26 | 0.24 | 0.22 | 0.18 | 0.17 | 0.19 | 0.23 | 0.23 |
[Si] at container ladle (mass%) | 0.23 | 0.21 | 0.21 | 0.20 | 0.19 | 0.19 | 0.18 | 0.21 |
Hot metal flowing time (sec) | 124 | 111 | 117 | 159 | 84 | 116 | 295 | 172 |
Time for blasting DeSi agent (sec) | 70 | 85 | 100 | 56 | 57 | 67 | 104 | 31 |
Amount of DeSi agent (kg/t) | 24.8 | 21.2 | 26.2 | 44.0 | 22.7 | 19.2 | 31.0 | 33.1 |
(%FeO)at blasting part (mass%) | 34.6 | 35.6 | 29.7 | 35.6 | 22.3 | 15.8 | 37.7 | 36.7 |
Amount of hot metal (T) | 1.72 | 3.14 | 4.48 | 1.60 | 2.51 | 3.55 | 3.51 | 5.52 |
Falling height (m) | 2.80 | 2.52 | 2.26 | 2.79 | 2.61 | 2.42 | 2.47 | 1.99 |
Hot metal temperature (°C) | 1374 | 1348 | 1348 | 1391 | 1383 | 1372 | 1350 | 1330 |
[Si] at basin part (mass%) | 0.16 | 0.15 | 0.20 | 0.09 | 0.14 | 0.18 | 0.13 | 0.18 |
Mixing power density (W/T) | 184 | 101 | 57 | 153 | 110 | 75 | 83 | 41 |
ksiA (10–2m3/sec) | 2.21 | 1.98 | 0.62 | 3.18 | 2.04 | 0.49 | 2.26 | 0.97 |
k’siA (10–4m3/sec) | 0.61 | 0.73 | 0.31 | 0.96 | 0.72 | 0.21 | 0.92 | 0.56 |
Typical time chart in hot model experiment.
Fig.9には,本実験の脱珪率を投入した脱珪剤総量に対して示す。脱珪率は次式で算出した。
(8) |
Relationship between amount of desiliconization agent and degree of desiliconization.
ここで[Si]iは搬送鍋中の溶銑の珪素濃度(mass%),[Si]fは実験終了後の受銑鍋中の溶銑の珪素濃度(mass%)である。脱珪率は旋回流を発生させた条件で高位となり,実験全体の評価ではあるが脱珪反応に及ぼす旋回流の効果が示唆された。
Fig.10に,本実験における溶銑中珪素濃度の変化を模式的に示す。溶銑中珪素濃度の変化は,実験時に溶銑を採取した場所に対応して,投射室と受銑鍋での変化の各々について求めることが出来る。投射室と受銑鍋での溶銑中珪素濃度の変化をそれぞれΔSi1およびΔSi2とすれば,下式のように算出される。
(9) |
(10) |
Parameters in analysis of hot model experiment.
ここで[Si]blおよび[Si]Lは,それぞれ投射室および受銑鍋における溶銑珪素濃度(mass%)を表す。ΔSi1およびΔSi2を脱珪剤添加量に対してFig.11および12に示す。図中の各点は,実験中の各ステップごとに得られた値を示す。
Relationship between amount of desiliconizing agent and ΔSi1 in blasting room.
Relationship between amount of desiliconizing agent and ΔSi2 in container ladle.
旋回流は投射室以降で付与されるため,投射部におけるΔSi1はFig.11に示すように旋回流付与の有無の影響は見られない。ΔSi2については投射室と受銑鍋の珪素濃度の差であるが,Fig.12に見られるように旋回付与条件において大きくなった。これは旋回流による溶銑と脱珪剤の混合促進を示唆している。
脱珪反応における物質移動速度に及ぼす旋回流の効果を評価するために,さらに実験結果の解析を行った。本実験における代表的なパラメータをFig.10に模式的に示す。旋回室の出口でメタルとスラグを採取するのは困難であったため,解析は投射室と[旋回室+受銑鍋]の2つの領域が対象となり得る。本研究は旋回流の効果に焦点を置いているため,以降は[旋回室+受銑鍋]の解析を行うこととする。
[旋回室+受銑鍋]における脱珪反応の解析に関して以下の事柄を考慮した。上述のように,各実験ステップの最初は実験容器に脱珪剤を投入せずに溶銑のみが供給される。脱珪剤を投入してから,剤は受銑鍋に流入しスラグとして浴面に浮上する。予備実験で,受銑鍋に溶銑が流入しても受銑鍋内の浴面上のスラグの巻き込みは起こらず,浴面上のスラグによる脱珪反応は生じないことが確認された。すなわち,脱珪反応の解析については脱珪剤を投入した期間の脱珪量を対象とすればよいことになる。このような前提に基づけば,反応の解析は受銑鍋内の珪素濃度[Si]Lよりも,Fig.10の滝壺領域(Basin part)での脱珪剤投入期間における珪素濃度[Si]baを対象に行うべきと考えられる。滝壺領域とは,溶銑鍋に流入した溶銑が鍋内の溶銑と混合する直前の過渡的領域を示す。[Si]baは,投射室で反応した後の脱珪剤によって,さらに旋回室と滝壺部で脱珪反応を生じた結果としての珪素濃度であり,旋回による効果を反映したものである。[Si]baは受銑鍋内の珪素の重量バランスから次式により求められ,Table 2および3に示した。
(11) |
ここでW°とW●は各実験ステップのそれぞれ最初と最後の受銑鍋内の溶銑重量(kg),[Si]°Lと[Si]●Lは各実験ステップのそれぞれ最初と最後の受銑鍋内の溶銑珪素濃度(mass%),tfは溶銑供給時間(sec),tbは脱珪剤を投射した時間(sec),Pは溶銑の流量(kg/sec)である。
このようにして求めた[Si]baを用いて,[旋回室+受銑鍋]の実質的な脱珪量ΔSi3を次式で算出した。
(12) |
Fig.13に,実験中の各ステップごとに得られたΔSi3を脱珪剤添加量に対して示す。ΔSi3は脱珪剤を投入した期間の実質的な脱珪量の計算値であり,ΔSi2が一部で負の値となったのに対し,全て正の値が得られた。また,旋回付与条件において大きくなった。
Relationship between amount of desiliconizing agent andΔSi3 at basin part.
旋回の効果をさらに確認するため,投射室で採取したスラグ中の(T.Fe)濃度とΔSi3の関係を調べた。結果をFig.14に示す。投射する前の脱珪剤の(T.Fe)濃度は50 mass%以上である。投射室での反応で酸化鉄が消費され,脱珪スラグ中の(T.Fe)濃度は概ね30 mass%以下,FeO換算では40 mass%以下となっている。このようなスラグを伴う脱珪反応において,(T.Fe)濃度が低くても旋回流を付与することによりΔSi3は明らかに高位である。これは旋回流による溶銑と脱珪剤の混合の効果を実際的に示すものである。
Relationship between (%T.Fe) in slag in blasting part andΔSi3.
Fig.13とFig.14を比べると,スラグ(%T.Fe)とΔSi3の関係を採ったFig.14の方が良好な相関に見える。Fig.14では,旋回流付与条件においてさらに良い正の相関を示している。これらは,脱珪剤原単位が大きいとスラグ(%T.Fe)も上昇するが,低(%T.Fe)スラグでは脱珪反応がスラグ中FeOの物質移動に依存し,スラグ中(T.Fe)濃度との相関が顕著になること,また旋回流有りの水準では投射室以降の撹拌が良好であるためスラグ中(T.Fe)濃度との相関が顕著になること,の傍証といえる。
本実験系の物質移動についてさらに解析を行った。滝壺領域における脱珪反応は一次反応を仮定すれば以下のように表される。
(13) |
ここでkSiは見かけの物質移動係数(m/s),Aはスラグとメタルの界面積(m2),Vは溶銑の体積(m3),[%Si]*は反応界面における珪素濃度(mass%)である。
本実験系でスラグとメタルの界面積を決定するのは困難なため,評価はパラメータkSiAによって行い,以下の仮定を適用した。本解析では脱珪剤を投入している期間を対象とするため,[Si]baの初期値は[Si]blと等しいとした。またスラグ中のFexO濃度が40 mass%以下では,脱珪反応はスラグ側の物質移動に支配されるとする。したがって[%Si]*に関して,Naritaら5)の報告した[%Si]*とスラグ中FexO濃度の関係から求めることにする。このときのスラグのFexO濃度は,投射室で採取したスラグの値を用いる。反応時間は滝壺領域の滞留時間とする。滝壺領域の溶銑体積は,自由落下する溶銑の貫入深さに基づいて見積もった17,18)。
上述の仮定に基づいて求めたkSiAをTable 2および3に示し,さらに脱珪剤投入速度に対してFig.15に示した。kSiAは旋回付与条件において大きくなった。
Relationship betweenksiA and feeding rate of desiliconizing agent.
本実験で,受銑鍋内の溶銑量は実験の経過とともに増え,実験容器と受銑鍋内の浴面との距離は変化する。また溶銑の温度も実験の間に変化する。これらの影響を以下のように考慮する。
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ここでk’Siは修正物質移動係数,εは撹拌動力密度(W/t),nは定数,ΔEは脱珪反応の見かけの活性化エネルギー(kJ/mol),Rはガス定数(=8.314 J/mol/K),Tは溶銑温度(K)である。Hは実験容器と受銑鍋内の浴面高さの距離(m),Wは溶銑の重量(ton)である。定数nと活性化エネルギーΔEは,文献値19)からそれぞれ0.5,63(kJ/mol)とした。
このようにして求めたk’SiAをTable 2および3に示し,さらに脱珪剤投入速度に対してFig.16に示した。旋回を付与しない条件でのk’SiAは,個々の実験ごとの多少の差はあるが,平均値は0.046であった。この値は受銑鍋内の反応のみに起因する移動係数であると考えられる。
Relationship betweenksi’A and feeding rate of desiliconizing agent.
旋回を付与した条件でのk’SiAは,旋回を付与しない条件でのそれに比して,ばらつきは大きいものの明らかに高位であり,約2倍に向上していることが判る。これは旋回の付与によって脱珪スラグと溶銑がよく混合され,脱珪反応が促進されたことを反映している。
溶銑脱珪においては,溶銑中の炭素もスラグ中のFexOと反応する。脱炭反応に及ぼす旋回流の影響を評価するために,[投射室+受銑鍋]における溶銑の炭素濃度の変化ΔC2を算出した。結果をFig.17に示す。これらの結果は種々の温度および浴面高さで得られたものであるが,旋回付与の有無に関わらずΔC2は同程度の値であることが判った。
Relationship between amount of desiliconizing agent and ΔC2 in container ladle.
Uchiyamaら2)は,高炉鋳床での溶銑脱珪における酸化鉄の反応割合(酸素効率)を調査し,本研究の投射室後の溶銑に相当する珪素濃度0.2~0.3 mass%の範囲では,脱炭反応に使われる酸素の割合(脱炭酸素効率)が,脱珪反応に使われる酸素の割合(脱珪酸素効率)を上回ることを示している。
Asai and Muchi20)は,転炉吹錬におけるような溶銑からの同時脱炭および脱珪反応の理論的解析を行っている。その結果によれば,吹錬の初期においては溶銑温度が低いため,C-Si-Oの平衡関係は脱炭よりも脱珪に有利な条件になることが示されている。本実験において,溶銑温度は高炉出銑後の温度を想定し,溶鋼温度に対し相対的に低いことから,同様に脱珪が優先的に進む条件であると考えられる。またPanら3)は,FeO含有スラグによる溶銑中の珪素の酸化反応を調査し,脱珪反応は界面における化学反応速度が十分大きいため,低(FeO)スラグによる脱珪反応は溶銑中[Si]の物質移動とスラグ中(FeO)の物質移動の混合律速であると報告している。一方,溶銑中には[C]が充分に存在するため,(FeO)含有スラグによる脱炭反応速度は界面の(FeO)濃度に比例するとしている。
本実験結果のFig.12とFig.17において,旋回を付与しない条件では,ΔSi2とΔC2が同程度もしくは後者が大きいことが観察され,Uchiyamaらが示した結果と定性的に一致する。一方,旋回を付与した条件では,ΔSi2がΔC2を上回っていることが分かる。脱珪が有利と考えられる溶銑条件においても,すなわち,旋回の付与による撹拌効果が,物質移動の促進に伴う脱珪反応の一層の促進に寄与していることを反映するものと考えられる。
高炉鋳床での脱珪反応の促進を目的に,溶銑流への旋回の付与によるスラグとメタルの混合増大とそれに伴う脱珪反応の促進について調査した。得られた結果は以下の通りである。
1.水モデル実験で種々の条件での旋回流発生状況を観察し,良好な混合のための条件を把握した。スワール数を用いて本実験系における好適な混合条件を決定した。
2.模擬スラグとトレーサ物質を用いた水モデル実験を行い,旋回流付与により物質移動が促進することを確認した。
3.脱珪剤投射部と溶銑旋回部を有する実験容器を製作し,溶銑5トンを用いたパイロット規模の脱珪実験を行った。旋回を付与した条件では,旋回流による溶銑と脱珪スラグの混合促進を反映し,脱珪率は高位となった。実験容器の脱珪剤投射部の溶銑試料を採取した結果から,脱珪剤投射後に溶銑旋回部を経て溶銑鍋に流入すると脱珪量が大きくなることを確認した。
4.脱珪剤投入期間における脱珪反応の解析を行った。本実験系を脱珪剤投射部,および溶銑旋回部+溶銑鍋の2領域に分け,それぞれの領域での溶銑中Si濃度の変化を評価した。溶銑鍋内の滝壺領域で脱珪反応が集中的に生じるとして解析を進め,脱珪剤投射後に (T.Fe)濃度が低下したスラグでも,旋回の付与により脱珪量が大きくなることを確認した。脱珪反応に関する物質移動係数は旋回付与により約2倍に向上した。