Tetsu-to-Hagane
Online ISSN : 1883-2954
Print ISSN : 0021-1575
ISSN-L : 0021-1575
Regular Article
Resistance of Hydrogen Embrittlement on Hot-Sheared Surface during Die-Quench Process
Takashi MatsunoYoshihito SekitoEisaku SakuradaTamaki SuzukiKaoru KawasakiMasayoshi Suehiro
Author information
JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2014 Volume 100 Issue 3 Pages 359-365

Details
Synopsis:

This study investigated resistance of hydrogen embrittlement on a hot-sheared surface of die-quenched steel sheets. The specimens were sheared at 750 °C and 650 °C after austenitization, and then quenched by water cooling. Additionally, the specimens were cathodically hydrogenized for 48 hours to accelerate cracking by hydrogen embrittlement. This sequence resulted in the residual tensile stress of over 1 GPa on the sheared surface and hydrogen concentration of about 1.5 ppm. Despite these severe conditions, cracking by hydrogen embrittlement was not observed. The state of micro-structure in the vicinity of the sheared surface might cause this high resistance against cracking. Indeed, sub-micron grained ferrite or deformed uncertain soft and hard phases, which might be more ductile than martensite, were observed around the sheared surface.

1. はじめに

ホットスタンピングとはオーステナイト域まで加熱された鋼板をプレス成形すると同時に金型内で急冷して焼き入れする成形技術である。高張力鋼板の冷間加工にみられる高い成形荷重や形状凍結性の問題はホットスタンピングでは生じにくい1,2)。近年では軽量化と耐衝突特性向上を目的とした自動車用部材の高強度化が進んでいるが,これに伴いホットスタンピングの適用が急速に進んでいる1)

一方で,加熱炉のような専用の装置を新たに導入する必要があること,一般の冷間プレスに比べて長い時間を成形に要すること等がホットスタンピングでは課題となっている1,2)。ホットスタンピング後の部材(以下,ホットスタンピング材)に対するせん断加工手法の確立も課題の一つである。ホットスタンピング材は高強度であるため,レーザー切断による穴開けやトリム加工が行われる場合が多い。生産性向上のためにはレーザー切断に代わりせん断加工を行うことが望ましいが,高強度材のせん断加工では高い加工力に起因する工具の短寿命化が懸念される。工具の寿命まで考慮すれば,レーザー加工の方がコスト的に有利であるとの報告もなされている3)。また,一般に高強度材は水素脆化による割れが懸念され4,5,6),ホットスタンピング材のせん断切り口においても拡散性水素量と引張残留応力がある所定値以上であれば割れが生じるとの報告がなされている7,8)

このような背景のもと,ホットスタンピング材への熱間せん断加工の適用が検討されている。これまでの熱間せん断加工に関する報告は2通りに大別され,第一の手法は焼き入れ後の鋼板を再加熱した後のせん断加工9,10)であり,第二の手法は鋼板を熱間成形した直後のせん断加工と焼き入れ7,11,12,13)である。熱間せん断加工に要する加工力は冷間せん断加工に比べて大幅に低いため9,10,11,12,13),工具の長寿命化が期待できる。また,水素脆化と切り口の引張残留応力に起因する割れ(以下,水素脆化割れ)に関し,第一の手法では熱間せん断加工部は焼き戻されて軟化し,かつ,残留応力が低減するためにこのような割れは起こらないとされる10)。第二の手法において熱間せん断加工部は焼き戻しを受けないが,せん断切り口面に残留する引張応力は冷間せん断加工部に比べて低く,これにより水素脆化割れの可能性が低いとの報告がなされている7)

本法では第二の手法に関しさらに詳細な検討を行った。その結果,熱間でせん断加工を行った際に1.5ppm程度の水素濃度,かつ,1 GPa程度の高い引張残留応力にも関わらず水素脆化割れが生じないという結果を新たに得た。熱間加工である以上,拡散性水素が鋼中に侵入すること,もしくは焼き付きや局所的な抜熱に起因した引張残留応力が生じる可能性は否定できない。ゆえに水素脆化割れが発生しないという結果は熱間せん断加工・焼き入れプロセスの適用において有利に働くと考えられる。本報ではさらに熱間せん断切り口表層の観察と硬さ測定を行い,水素脆化割れの抑制メカニズムの考察を行った。

以下,熱間せん断加工・焼き入れプロセスの模擬実験の手法と結果,および,水素脆化割れ抑制メカニズムの考察を示す。

2. 実験条件

2・1 供試材

供試材としてアルミめっきされた板厚2.3 mmのホットスタンプ用鋼板(22MnB5相当鋼)を試作して用いた。Table 1にその化学成分を示す。なお,焼き入れした供試材の硬さは約480 HV0.1(約4.7 GPa)となった。また,供試材の冷間せん断切り口にはFig.1に示すように水素脆化割れと思われる割れが生じた。

Table 1. Chemical commotion of a specimen (mass %).
CSiMnBOthers
0.20.21.20.003Ti, Cr
Fig. 1.

 A crack on the cold-sheared surface of the quenched specimen. (Online version in color.)

体積膨張測定方式の冷却変態測定装置により測定した供試材のMS点は420°Cであった。また,供試材のAr3点は後段に示す方法により580°Cとして同定した。

Ar3点の測定に際しては,900°Cまで炉加熱により試験片を昇温した後に90秒保持し,その後に熱間せん断加工・焼き入れ試験用の金型上にピン支持で試験片を放冷した。この放冷条件は,後述の熱間せん断加工・焼き入れ試験における試験片設置条件と同一である。試験片の熱履歴はFig.2のようになり,温度の下降は580°Cで一旦停留している。温度の停留はγ→α変態に伴う変態熱に起因するものであり14),この点をAr3点とみなした。

Fig. 2.

 Time history of temperature. (Online version in color.)

2・2 熱間せん断加工・焼き入れ試験

Fig.3にせん断加工に用いた金型の模式図を示す。せん断加工は200×150 mmの供試材における長手方向中央から20×150 mmの矩形を抜き落とすものとした。パンチとダイのクリアランスは0.15 mm(供試材板厚の6.5%)とした。パンチ下死点で供試材の全面がブランクホルダーに接触するように,パンチとブランクホルダーの隙間がほぼ無い金型の構造とした。また,供試材はばね式のピン上に設置する方式とした。これは,供試材設置時の抜熱を避けるためである。

Fig. 3.

 Schematic image of tools for warm-shearing and quench.

熱間せん断加工に際しては,供試材を炉加熱により950°Cへ昇温してそのまま炉内で90秒保持し,さらに供試材を金型に設置した後に所定の温度(750°C,650°C)となるまで放冷した。ここで,750°Cと650°Cは2・1節に示した供試材のAr3点よりも高い温度である。供試材を750°Cと650°Cとする温度制御は時間制御とし,供試材が所定温度となるまでの時間はFig.2より見積もった。所定の温度になった後にせん断加工を開始し,パンチが下死点へ達すると同時にダイプレートより噴水することで供試材を急冷した。

2・3 せん断切り口の分析

2・3・1 遅れ破壊の評価

水素脆化割れの有無を判定するにあたっては,Fig.4のごとく評価用試料を所定の大きさに切り出して観察を行った。観察には光学顕微鏡を用いた。

Fig. 4.

 Sheared surfaces for analysis. (Online version in color.)

ここで,評価用の試料の水素脆化割れを促進するべく陰極水素チャージを行った。陰極水素チャージは電解液としてチオシアン酸ナトリウム溶液を満たしたビーカー中に試験片と白金電極を設置し,試験片が陰極,白金電極が陽極となるように0.1 mA/cm2の電流を48時間印加した。ガスクロマトグラフィー法(昇温到達温度は400°C)により測定した評価用試料の水素濃度は約1.5 ppmであった。

2・3・2 残留応力測定

X線により切り口面の切断稜線方向と板厚方向の残留応力を測定した。測定は切断稜線の中央部に対して行った。切り口面上の測定位置は,板厚を4等分する3点とした。

なお,比較のために焼き入れした供試材を冷間せん断加工した切り口においても同様に残留応力を測定した。

2・3・3 金属組織の分析

水素脆化割れ評価の結果を考察するべく,切断稜線中央部のせん断切り口表層の金属組織に対して光学顕微鏡観察,硬さ測定,EBSD解析,およびTEM観察を行った。

光学顕微鏡観察と硬さ測定にあたってはせん断切り口断面をエポキシ樹脂中に埋め込み,さらにナイタールエッチングを施した試料を用いた。硬さ測定にはナノインデンテーション法を用い,その押し込み荷重を0.01 Nとした。EBSD測定に用いた試料にはせん断切り口断面を切り出した後にコロイダルシリカによる研磨を行い,さらに電解研磨を施した。TEM観察用の試料にはせん断切り口断面の破断面表層より集束イオンビーム(FIB)にて薄膜を切り出して用いた。

なお,硬さ測定とEBSD解析,およびTEM観察において,その分析部位をせん断切り口の破断面とした。これは,冷間せん断切り口では破断面上に水素脆化割れが生じることによる8)。破断面の定義についてはFig.1,および後段のFig.5を参照されたい。

Fig. 5.

 Hot-sheared surface at the 1.5 ppm hydrogen. (Online version in color.)

3・実験結果

3・1 せん断切り口外観

せん断切り口の外観をFig.5に示す。Fig.5より,せん断切り口はいずれの温度条件においても水素脆化割れが生じていないことがわかる。図示は省略するが,Fig.5に示す箇所以外のせん断切り口においても割れは確認できなかった。

なお,Fig.5から明らかなように,いずれの水準においても板厚に対するせん断面の割合は70%以上である。また,加工開始温度による熱間せん断切り口の形状(せん断面の割合)の差異は小さい。これは同様の実験を行った過去の報告11,13)にほぼ一致する。

3・2 残留応力

供試材の切断稜線方向と板厚方向の残留応力測定結果(引張を正に定義)をFig.6に示す。いずれの加工開始温度においてもせん断切り口の引張残留応力の最大値は1.0 GPaを超えており,焼き入れ材を冷間せん断加工した切り口と同等の引張残留応力となっている。これは,熱間せん断切り口の引張残留応力が低いとしたSenumaら7)の報告とは異なる傾向である。残留応力分布の詳細を述べれば,加工開始温度が750°Cのせん断切り口は板下面(ばり側)から1.0 mmと1.65 mmの測定点において板厚方向の引張残留応力が1.0 GPaを超えており(Fig.6(b)参照),加工開始温度が650°Cのせん断切り口は板下面から1.0 mmの測定点において切断稜線方向の引張残留応力が1.0 GPaを超えている(Fig.6(a)参照)。板下面より0.35 mmの測定点では加工開始温度に関わらず他の測定点に比べて引張残留応力が低い。この測定点においては,切断稜線方向と板厚方向の引張残量応力はともに500 MPa以下である。冷間せん断切り口においてはFig.6(a)に示すように板下面から1.15 mmの位置で切断稜線方向の引張残留応力が1.0 GPaを超えている。その値は加工開始温度が650°Cの熱間せん断切り口の引張残留応力にほぼ同等である。また,Fig.6(b)より冷間せん断切り口の板厚方向の引張残留応力はいずれの測定点においても200 MPa程度であり,熱間せん断切り口の引張残留応力より低い。

Fig. 6.

 Residual tensile stress on sheared surfaces.

上記の結果からは熱間せん断切り口ではせん断面において引張残留応力が高く,破断面において引張残留応力が比較的低いとみなすことができる。3・1節に述べたようにせん断面率は70%を超えていることから,引張残留応力の高い板上面側2点は全てせん断面上となる。これは破断面側で引張残留応力が高い冷間せん断加工15)と逆の傾向であるため,熱間せん断切り口の引張残留応力は何らかの熱応力に起因して生じたものと考えられる。

3・3 せん断切り口表層の金属組織

まず,加工開始温度が750°Cのせん断切り口の分析結果を示す。Fig.7は加工開始温度が750°Cのせん断切り口断面の光学顕微鏡写真であり,観察位置は板下面から約1.2 mmと0.4 mmとなる。Fig.7より,せん断切り口表層(Fig.7中の部位1)はそれ以外の部位2と比べて明らかに異なる組織となっている。Fig.7(a)と(b)の比較から,部位1の領域(切り口面からの距離)はせん断切り口の破断面側においてより広い。

Fig. 7.

 Cross section of hot-sheared surface at the 750 °C.

Fig.8は破断面近傍の硬さ測定結果(Fig.7(b)に示した箇所を狙って測定)である。加工開始温度が750°Cのせん断切り口において,表層より遠い部位2は約6 GPaの硬さとなっている。一方,せん断切り口表層である部位1は約4 GPaの硬さであり,部位2に対して硬さが低下している。金属組織の詳細は明らかとされていないものの,Soら13)によれば熱間せん断加工・急冷後のせん断切り口表層にはマルテンサイトとは異なる軟質部が生じる。本報の実験結果も同様の傾向となっている。

Fig. 8.

 Hardness in the vicinity of the fractured surface at the 750 °C.

続いて,Fig.7(b)に示した箇所のEBSDの測定結果をFig.9に示す。Fig.9(a-1)の逆極点図マップ(IPF)とFig.9(a-2)のイメージクオリティーマップ(IQ)より,部位2はラス状の金属組織であることが分かる。これまでに炭素量0.2 mass%のマルテンサイトにおいてナノインデンテーション法により約5.5 GPaの硬さが測定されていることから16)Fig.9(a-1)と(a-2)のEBSDの結果を合わせて考えれば,部位2はマルテンサイトである。他方,Fig.9(b-1)とFig.9(b-2)より部位1は粒径が約1.0 μmの粒状の金属組織である。TEM像においても部位1ではFig.10に示すような微細なポリゴナル組織が観察された。したがって,せん断切り口の軟質部である部位1は微細なフェライト組織とみなすことができる。

Fig. 9.

 EBSD analysis of the fractured surface at the 750 °C.

Fig. 10.

 TEM image on the fractured surface at the 750 °C.

続いて,加工開始温度が650°Cのせん断切り口の分析結果を示す。Fig.11はせん断切り口断面の破断面近傍における光学顕微鏡写真であるが,加工開始温度が650°Cである熱間せん断切り口の表層(部位1)においても,加工開始温度が750°Cの場合と同様に表層以外(部位2)と異なる組織が生じている。ただし,加工開始温度750°Cの場合と異なり,部位1には塑性流動線が確認できる。Fig.12Fig.11に示した箇所近傍における硬さ測定の結果であるが,その値は測定箇所に応じて大きくばらついているものの,線形近似した硬さのデータから切り口に近づくほど硬さは低くなっている。これは切り口表層が硬質組織と軟質組織の混合組織であること,および表層に近づくに従って軟質組織の割合が増える(もしくは硬質組織の硬さが低下する)ことを示している。EBSD像については明瞭なものが得られなかったため図示は省略する。明瞭なEBSD像が得られなかった理由としては,部位1に加わった塑性変形(Fig.10における塑性流動線の存在)により導入された転位に起因することが考えられる。さらに,TEM像からは部位1の組織中にナノサイズの微細なオーステナイトが散見された(Fig.13)。

Fig. 11.

 Cross section of hot-sheared surface at the 650 °C.

Fig. 12.

 Hardness in the vicinity of the fractured surface at the 650 °C. (Online version in color.)

Fig. 13.

 TEM image of micro structure in the vicinity of hot-sheared surface at the 650 °C.

4. 考察

ホットスタンプ材のせん断加工に関するこれまでの報告では,水素脆化割れを起こす可能性の指標として引張残留応力7)と拡散性水素濃度8)が用いられてきた。Senumaら7)は切り口の引張残留応力が1.3 GPa程度となる熱間せん断加工条件で水素脆化割れが生じることを報告しており,Nishibataら8)は0.1 ppm以上の拡散性水素濃度となる場合にホットスタンプ材の冷間せん断切り口に水素脆化割れが生ずることを報告している。本報においてもホットスタンプ材の冷間せん断切り口に水素脆化割れが生じたが,せん断切り口において1.1 GPa程度の高い引張残留応力が測定された。(Fig.6(a))。

しかしながら3・1節と3・2節に示したように,本報で行った熱間せん断加工試験においては1.5 ppmの水素濃度,かつ,1.0 GPaを超える高い引張残留応力であってもせん断切り口に水素脆化割れが生じなかった。このような結果は上述の引張残留応力や拡散性水素濃度で説明することはできない。よって,これら以外の因子が熱間せん断切り口の水素脆化割れに寄与していることが考えられる。

そのような因子の一つとして,3・3節に述べた熱間せん断切り口表層の微細な金属組織の存在が挙げられる。特に加工開始温度が750度の条件で観察されたような微細なフェライト組織は優れた靱性を有することが知られており17),このような知見からは熱間せん断切り口表層の組織の靱性が高いために水素脆化割れが抑制された可能性が示唆される。また,組織形態に応じて拡散性水素挙動が異なることから18,19,20,21),これらの組織が切り口表層の水素の挙動に影響を及ぼすことも考えられる。

熱間せん断切り口表層にこのような金属組織が生じた原因としては,せん断加工に伴う切り口表層のひずみが大きいためにマルテンサイトへの変態が抑制されたことが考えられる。熱間状態で塑性ひずみを加えた22MnB5鋼を急冷(焼き入れ)すれば,その金属組織はマルテンサイトを主としたベイナイト・フェライトを含むものとなる(ひずみを加えない場合は全てがマルテンサイトとなる)22)。この際,試験片に加えるひずみ量が大きい程,もしくはひずみを加える際の温度が高いほどフェライトが生じる割合が高い22)。せん断切り口表層の塑性ひずみは一般に4を超える大ひずみであるから23),熱間せん断切り口表層のオーステナイトの多くはフェライトに変態するものと思われる。また,加工開始温度が650°Cの熱間せん断切り口表層にFig.13のような残留オーステナイトが生じた理由としては,急冷過程までに切り口表層のオーステナイト全てが変態しきれなかったことが考えられる。加工開始温度が650°Cの熱間せん断切り口においては塑性流動が確認できることから(Fig.11を参照),熱間せん断切り口の表層にあたる部位では変形と同時に動的に変態が起こった可能性が高い。急冷(焼き入れ)過程までに変態しきれずに取り残された微細なオーステナイトに炭素が濃化した結果,安定なオーステナイトとして残留したことが推測される。

なお,ひずみ量が高い状態でオーステナイトから変態(または再結晶)したフェライトがFig.10のような微細粒となることは,これまでに広く知られた事実である24,25,26,27,28)。特に文献28)においてはドリル穴表層に微細フェライトが生じる現象を議論しており,本報の実験結果に類似している。本報の試験においては,さらに冷却速度が速いことも結晶粒の微細化に寄与したと思われる29)

5. まとめ

本報では熱間せん断加工直後に焼き入れした熱間せん断切り口に対し,その水素脆化割れの耐性を調査した。得られた結果は以下の通りである。

1)熱間せん断切り口に水素脆化割れは生じなかった。

2)熱間せん断切り口の拡散性水素濃度は約1.5 ppmであり,引張残留応力は1.0 GPaを超えていた。これらはこれまでに報告された冷間せん断切り口の水素脆化割れ発生の指標を上回るものである。

3)熱間せん断切り口の表層には母相であるマルテンサイトとは異なる微細金属組織が生じていた。このような金属組織の存在が水素脆化割れの抑制に寄与したと考えられる。

文献
 
© 2014 The Iron and Steel Institute of Japan

This article is licensed under a Creative Commons [Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International] license.
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
feedback
Top