Tetsu-to-Hagane
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Material Flow of Iron in Global Supply Chain
Kenichi NakajimaKeisuke NansaiKazuyo MatsubaeTetsuya Nagasaka
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2014 Volume 100 Issue 6 Pages 750-755

Details
Synopsis:

Recently, the issue of sustainable management of resources has been increasingly recognized. Accordingly, the issue to understand the relationship between natural resources consumption and product supply chain in the world has been also increasing. Material flow analysis (MFA) is a useful tool to understand the resource consumption and material cycle in national economy. However, detailed MFA studies of the materials embedded in foreign trade flows are rare.

This study identified global trade flow of iron embedded in every bilateral trade between 231 countries by multiplying the trade volume of the commodity in BACI (Base pour l’Analyse du Commerce International) database and the iron content of each commodity. Moreover, we focused on the case of Japan, China, and United State, and estimated each mass of iron embedded in the imports and export. The identified total flows of iron embedded in international trade is 1.15×109 t-Fe, and 35.2% of the flows is concentrated in three countries, which is Japan, China and United State known as crude steel production countries.

1. 諸言

鉄鋼材料は,社会を形成する構造材料であり,鉄の生産量は他の金属材料と比較しても突出している。2010年の粗鋼生産量は1.41×109 t1)であり,生産に伴い誘発された鉄鉱石の生産量は2.59×109 t(1.28×109 t-Fe)2)であった。鉄鋼材料の生産は,還元剤であるコークス3)やニッケル,クロム等の合金元素の需要とも密接に関係4)しており,鉄鋼材料の需要拡大に伴う温室効果ガスの排出量の増加や資源採掘に伴う生物多様性への影響などの環境問題の誘発も懸念されている3,4)。一方で,リサイクルを含めた資源利用の高度化や効率化は,サプライチェーンを通じて,天然資源消費量の削減5)や温室効果ガス排出量の削減6)等への貢献が期待できることも周知の事実である。

このような背景のもと,物質フロー分析(Material flow analysis, MFA)による鉄や関連物質を対象とした需給構造の解析が精力的に実施5,7,8,9,10,11,12)されており,鉄のフロー・ストック量を含めて,サプライチェーンを通じた資源利用の全体像が明らかになりつつある。代表的な事例研究としては,Wangら7)による世界の68の国・地域を対象とした各国の鉄のフロー・ストック量と国際貿易に伴う鉄の移動量の解析やPauliukら8)による200ヵ国を対象とした鉄のストック量の算定などがあげられるが,WangらおよびPauliukらの研究を含めて,一部の研究9,10,11,12)を除いたMFA研究の多くは,各国間の貿易に伴う物質の移動量や国際サプライチェーンに関する詳細な解析は,十分には実施されていない。このため,各国間の繋がりが不明確であり,各国の経済活動に伴い誘発される資源採掘や環境負荷物質の排出などの他国への影響を把握する事が非常に困難である。一方,温室効果ガス排出量の議論においては,国際貿易に伴いサプライチェーンを通じて誘発される温室効果ガス排出量の解析が数多く実施14,15,16,17)されており,Izardら14)は,アメリカを対象として国際貿易に伴う鉄の移動量を基に炭素材の国境税に関する議論を行っている。これに対して,著者ら12)は,廃棄物産業連関に基づく物質フロー分析モデル(Waste Input-Output Material Flow Analysis model, WIO-MFA)13)と貿易統計18)を組み合わせる事で,貿易に伴う物質の移動量を俯瞰的に把握するための推計手法を提案すると共に,事例として日本を取り上げて国際貿易に伴う鉄およびアルミニウムの移動量を示した。しかしながら,世界全体を対象とした貿易に伴う鉄の移動量についての俯瞰的且つ詳細な解析は未だ十分には明らかになっていない。

そこで,本研究では,先行研究の手法を応用する事により,各国間の貿易に伴う鉄の移動量を同定することで,貿易を介した各国間の繋がりを明らかにすることを目的とする。具体的には,世界の231の国・地域の国際貿易量を解析する事により,世界全体を対象とした鉄の国際サプライチェーンを明らかにすると共に,主要な粗鋼生産国19)である中国,日本,アメリカを対象として,貿易に伴う鉄の移動量を貿易品目ごとあるいは貿易相手国ごとに明らかにする。

2. 解析方法

解析は,WIO-MFAによる組成情報13)が整っている2005年時点を対象年次として,国際貿易量については,BACI(Base pour l’Analyse du Commerce International)20)より,231の国・地域(i, j)間を対象とした各品目群の輸出・輸入量vij(k)を金額単位あるいは物量単位で抽出した。品目群については,HS(Harmonized Commodity Description and Coding System)コードに基づいて,6桁分類で掲載されている約6000品目群を,294品目群(2桁:8品目,6桁:286品目)に集計して抽出した。しかしながら,6桁分類でのHSコードであっても,複数の異なる貿易商品が該当するコードがあり,鉄を含有する商品はその一部である場合がある。本研究では,BACIから得た各商品kの貿易量に鉄鋼材を含む製品割合を考慮するための0から1の範囲を取るカットオフ値ri(k)を設定し,これを貿易量に乗じることで,鉄含有商品の貿易量の推計精度を高めた。貿易に伴う鉄の移動量への換算には,各種の文献1,2,21)やWIO-MFA13)等から得られる各商品の鉄の含有率ci(k)を乗じて推計を行った。すなわち,商品kの貿易により生じる国間(i, j)の鉄移動量tij(k)tij(k)=vij(k)×ri(k)×ci(k)として算定した。この推計した移動量の妥当性を検証するため,国jにおける鉄のマテリアルバランスを次のように確認した。一国における鉄の入出力を簡単に表現すると,入力となるのは,国jにおいて採掘した量gjと輸入品に含まれ国jに投入された鉄の量 m j = Σ k Σ i t ij ( k ) ,リサイクルにより廃棄物から再生された量wj,前年の在庫品に含まれる鉄の量zjである。ただし,本研究ではデータ取集の困難性からzj=0とした。一方,出力となるのは,輸出品に含まれ国jから出る鉄の量は e j = Σ k Σ i t ji ( k ) と計算できる。入力量から出力量を引いた差分sj=gj+mjej+wj+zjは,国jの生産活動等の経済活動を満たすために投入されて国jに留まった鉄の量と理解することができる。このsjは原理的に0以上となるべきであるが,上述の限られたデータによる推計では,sjがマイナスを示し,一部にマテリアルバランスの不整合が認められた。本研究では,xi(k)=ri(k)×ci(k)とし,このマテリアルバランスと鉄の移動量合計は初期の推定値と不変とすることを制約条件とし,二次計画法によりxi(k)調整することでtij(k)との差分の二乗和が最小となる鉄の移動量tij*(k)を求めた。本研究の解析はマテリアルバランスの不整合が解消されたtij*(k)を用いて行った。

3. 結果と考察

3・1 鉄の国際サプライチェーン

世界全体を対象とした2005年の貿易を介した鉄の移動量は1.15×109 t-Feであり,その内訳は,鉱石が43.2%,銑鉄や鋼材等の素材が35.5%を占めると得られた。各国間の取引量をみると,鉄鉱石の主要産出国(ブラジル,オーストラリア,インドなど)から粗鋼の主要生産国(中国,日本,アメリカなど)への取引が上位を占めており,231の国・地域間の鉄の移動量のうち上位の10位までの移動量が占める割合は27.2%に達し,上位の40位までの移動量が占める割合は43.7%に達すると得られた(Fig.1)。なお,世界全体の貿易を介した鉄の移動量に対して,主要な粗鋼生産国である上位3ヶ国(中国,日本,アメリカ)への鉄の移動量(0.40×109 t-Fe)は35.2%を占めると得られた。このことからも資源の流れが上位数か国に集中している事が解る。

Fig. 1.

 The 40 largest global flows of iron through international trade in 2005; top 10 flows are indicated in red letters.

更に,特筆すべきは,世界における資源の流れに対してBRICS(ブラジル,ロシア,インド,中国,南アフリカ)およびNext eleven(N-11:韓国,フィリピン,パキスタン,イラン,インドネシア,エジプト,トルコ,ナイジェリア,バングラデシュ,ベトナム,メキシコ)の諸国が占める割合である。世界の資源輸入量に対する中国を除いたBRICS諸国が占める割合は2.8%であり,N-11を加えた15か国を見てみても僅かに15.7%に留まると得られた。無論,これらの国々には,インドやブラジルのように豊富な資源埋蔵量を有する国も含まれているが,これら新興国の工業化の促進に伴う生産規模の拡大や,人口増加や経済発展に伴う資源需要の拡大などにより,Vuurenら22)が指摘するような需要拡大等が起こり得る可能性を秘めている。この事は,埋蔵量が豊かな鉄についても資源管理が求められることを示唆していると言える。

3・2 日本・中国・アメリカにおける鉄の国際サプライチェーン

2005年における上位3ヶ国の粗鋼生産国は,中国(336×106 t),日本(112×106 t),アメリカ(94.9×106 t)であり世界全体の粗鋼生産量の48.9%に達する。2010年においても同様の傾向を示しており,中国の粗鋼生産量の増加に牽引されて上位3ヵ国の粗鋼生産量が占める割合は57.8%に達した。

Fig.2に日本の貿易を介した鉄の移動量を,Table 1に鉄の移動量の国別内訳と品目群別内訳を示した。日本は,鉄鉱石の輸入を含めた貿易を介した鉄の輸入量は97.6×106 t-Feであった。これに対して,貿易を介した鉄の輸出量は50.8×106 t-Feであり,輸入量に対して52.1%に相当する鉄を鋼材あるいは自動車などの高加工度製品として海外に輸出していると得られた。国・地域別にみてみると,輸入に関しては,鉄鉱石の産出国であるオーストラリア,ブラジルからの貿易を介した鉄の輸入量が鉄の輸入量の72.3%を占めており,輸出に関しては,韓国,中国,台湾への輸出が57.1%を占めアジア向けの輸出が大きな割合を占める事が判る。一方,品目群別にみてみると,輸入に関しては,鉄鉱石の全量を海外に依存23)している事に起因して,鉱石を介した鉄の輸入量が全体の86.8%を占めており,輸出に関しては,鉄スクラップ(8.9%)や鋼材類の輸出の他,高加工度製品(輸送機械:8.5%,機械:8.5%,電気電子機器:6.3%)が高い割合を占める事が判る。ここで,鉄スクラップについては,中国の粗鋼生産量の増加に牽引されて,4.50×106 t-Feの鉄スクラップの輸出があったが,今後は中国国内からの老廃スクラップの供給増加が予想24)されている事も考慮すると,更なる海外市場の開拓あるいは国内循環の促進の必要性が高まると思われる。

Fig. 2.

 Top 10 flows of iron embedded in Japanese a) imports and b) exports in 2005.

Table 1. Proportions of iron embedded in Japanese international trades in 2005, by commodity and country. (294 commodities and 230 countries)
Country name1000 tShare, %HS-codeCommodity name1000 tShare, %
ImportAustralia51,25452.5260111Iron ore, concentrate, not iron pyrites,unagglomerated78,51580.5
Brazil19,33419.8260112Iron ore, concentrate, not iron pyrites, agglomerated6,2386.4
India6,6986.984Nuclear reactors, boilers, machinery, etc1,6601.7
China3,9334.085Electrical, electronic equipment1,3711.4
South Africa3,4753.6260300Copper ores and concentrates1,0021.0
Korea3,2213.3720110Pig iron, non-alloy, < 0.5% phosphorus9461.0
Philippines2,5082.6720839Flat rld prod/coils > 3 mm6080.6
Taiwan1,4891.5720917Flat rld prod/coils < .5 <15720.6
Chile1,2861.3720916Flat rld prod/coils < 1 > 3 m4950.5
United States7830.887Vehicles other than railway, tramway4580.5
Others (220 countries)3,6053.7Others (284 commodities)5,7215.9
Total97,586Total97,586
ExportKorea10,17924.8720449Ferrous waste or scrap, nes4,5038.9
China8,47620.787Vehicles other than railway, tramway4,3308.5
Taiwan4,75011.684Nuclear reactors, boilers, machinery, etc4,3048.5
United States4,61411.385Electrical, electronic equipment3,2046.3
Thailand4,42310.8720712Semi-finished bars, i/nas < 0.25%C, rectangular, nes2,6845.3
Malaysia1,5003.7720839Flat rld prod/coils > 3 mm2,5225.0
Hong Kong1,4953.7720851Flat rld prod n/coils < 102,3834.7
Indonesia1,4003.4721049Flat rolled i/nas, coated with zinc, width > 600 mm, nes2,1124.2
Singapore1,1032.789Ships, boats and other floating structures1,8243.6
Panama9772.4720838Flat rld prod/coils < 3 > 4.1,8173.6
Others (220 countries)11,88329.0Others (284 commodities)21,11841.6
Total50,801Total50,801

中国は,鉄鉱石の生産国であるが,自国での鉄鉱石消費量の58.2%を海外に依存している世界1位の鉄鉱石の輸入国23)であり,中国国内の最終需要に牽引されて,貿易を介した鉄の輸入量(228×106 t-Fe)に対する輸出量(51.5×106 t-Fe)が占める割合は22.6%に留まる(Table 2)。国・地域別にみてみると,輸入に関しては,鉄鉱石の輸入に伴いオーストラリア,インド,ブラジルからの貿易を介した鉄の輸入量が70.6%を占めており,輸出に関してはアメリカへの輸出に加えて,韓国(15.9%),日本(7.6%)を含めたアジア地域への輸出が大きな割合を占める事が判る。品目群別には,鉄鉱石と鉄スクラップの輸入量が84.7%を占めており,銑鉄・鋼材や機械,電気電子機器などが主要な輸出品目であることが判る。今後は,1人当たりの鉄の社会蓄積量の増加8)に伴って,例えば,国内需要向けの鋼材生産から輸出向けの鋼材生産への転換,そしてその為の素材や製品の高付加価値化がより進む事などが可能性として考えられるが,本手法を発展させて時系列での解析に適用する事により,それらの動向把握が期待できる。

Table 2. Proportions of iron embedded in Chinese international trades in 2005, by commodity and country. (294 commodities and 230 countries)
Country name1000 tShare, %HS-codeCommodity name1000 tShare, %
ImportAustralia73,88932.4260111Iron ore, concentrate, not iron pyrites, unagglomerated165,22172.5
India46,84820.6260112Iron ore, concentrate, not iron pyrites, agglomerated21,6209.5
Brazil40,15317.6720449Ferrous waste or scrap, nes6,1292.7
South Africa11,9945.3720917Flat rld prod/coils < .5 < 13,4051.5
Japan8,4763.785Electrical, electronic equipment2,6701.2
Russia5,9722.684Nuclear reactors, boilers, machinery, etc2,5811.1
Taiwan5,6382.5720839Flat rld prod/coils > 3 mm2,4721.1
Korea4,5572.0720918Flat rld prod/coils > .5 mm2,0290.9
United States3,2061.4721049Flat rolled i/nas, coated with zinc, width > 600 mm, nes1,7320.8
Republic of Kazakhstan3,1671.4721030Flat rld prod elctr zinc1,1700.5
Others (220 countries)23,90010.5Others (284 commodities)18,7728.2
Total227,802Total227,802
ExportKorea8,17415.984Nuclear reactors, boilers, machinery, etc5,98711.6
United States7,75115.185Electrical, electronic equipment5,27110.2
Japan3,9337.6720712Semi-finished bars, i/nas < 0.25%C, rectangular, nes3,4026.6
Hong Kong3,7017.2721391Bars&rods, circular cross2,5194.9
Taiwan2,9755.8720110Pig iron, non-alloy, < 0.5% phosphorus2,1864.2
Thailand2,8225.5720711Rectangular i/nas bars, < .25%C, width < twice thickness2,1844.2
Indonesia1,6053.1721420Bar/rod, i/nas, indented or twisted, nes1,6893.3
Vietnam1,3922.7720851Flat rld prod n/coils < 101,4542.8
Singapore1,3002.5720838Flat rld prod/coils < 3 > 4.1,4062.7
Italy1,2472.4732690Articles of iron or steel, nes1,3712.7
Others (220 countries)16,54932.2Others (284 commodities)23,98246.6
Total51,449Total51,449

アメリカの貿易を介した鉄の輸入量は77.3×106 t-Feであり鉄の輸出量は41.0×106 t-Feであった。鉄鉱石の約8割を国内生産でまかなっている事23)から,貿易を介した鉄の輸入量に占める鉄鉱石の割合は11.4%に留まり,機械(9.5%),輸送機械(8.6%)などの輸入が上位を占める。国別にみてみると,輸出および輸入共にカナダ,中国,メキシコが上位を占めており,輸入に関しては,ブラジルを含めた上位4カ国からの貿易を介した鉄の移動量が55.3%を占め,輸出に関しては韓国を含めた上位3ヶ国の占める割合が53.3%を占める事が判る(Table 3)。自国での資源供給を確保した上で,主要な貿易相手国とは,輸入と輸出を介した双方向の繋がりを確保している事が判る。

Table 3. Proportions of iron embedded in United States’ international trades in 2005, by commodity and country. (294 commodities and 230 countries)
Country name1000 tShare, %HS-codeCommodity name1000 tShare, %
ImportCanada17,12622.284Nuclear reactors, boilers, machinery, etc7,3599.5
Brazil10,45513.587Vehicles other than railway, tramway6,6718.6
China7,75110.0720110Pig iron, non-alloy, < 0.5% phosphorus6,1818.0
Mexico7,4209.6720712Semi-finished bars, i/nas < 0.25%C, rectangular, nes5,1596.7
Japan4,6146.085Electrical, electronic equipment4,7926.2
Russia3,2894.3260112Iron ore, concentrate, not iron pyrites, agglomerated4,6226.0
Germany3,0323.9260111Iron ore, concentrate, not iron pyrites, unagglomerated4,1805.4
Korea2,9123.8721391Bars&rods, circular cross2,1722.8
Venezuela2,1762.8720310Ferrous products from direct reduction of iron ore1,9712.6
Taiwan1,9482.5721420Bar/rod, i/nas, indented or twisted, nes1,4461.9
Others (220 countries)16,57921.4Others (284 commodities)32,74942.4
Total77,301Total77,301
ExportCanada17,07233.6260112Iron ore, concentrate, not iron pyrites, agglomerated6,33715.5
Mexico5,09710.0720449Ferrous waste or scrap, nes6,14015.0
China3,2066.384Nuclear reactors, boilers, machinery, etc5,44513.3
Korea1,6883.385Electrical, electronic equipment2,7806.8
Turkey1,0602.187Vehicles other than railway, tramway2,6006.3
Germany9221.888Aircraft, spacecraft, and parts thereof1,2113.0
Japan7831.5731815Bolts/screws nes, with/without nut/washer, iron/steel1,0042.5
England6831.3720410Waste or scrap, of cast iron8752.1
India6381.3721049Flat rolled i/nas, coated with zinc, width > 600 mm, nes5581.4
Malaysia5981.2720429Waste or scrap, of alloy steel, other than stainless5551.4
Others (220 countries)9,22118.2Others (284 commodities)13,46232.9
Total40,967Total40,967

4. 結言

本研究では,貿易を介した各国間の繋がりを明らかにすることを目的として,世界の231の国・地域の国際貿易量を解析する事により,世界全体を対象とした鉄の国際サプライチェーンを明らかにすると共に,主要な粗鋼生産国である中国,日本,アメリカを対象として,貿易に伴う鉄の移動量を貿易品目ごとあるいは貿易相手国ごとに明らかにした。以下に主要な成果を述べる。

・世界全体を対象とした2005年の貿易を介した鉄の移動量(1.15×109 t-Fe)に対して,主要な粗鋼生産国(中国,日本,アメリカ)への鉄の移動量(0.40×109 t-Fe)は35.2%を占めており,資源の流れが集中している。一方で,BRICSおよびN-11の諸国が占める割合は,世界の資源輸入量に対する中国を除いたBRICS諸国が占める割合は2.8%であり,N-11を加えた15か国を見てみても僅かに15.7%に留まる。

・日本では,鉄鉱石の全量を海外に依している事に起因して,貿易を介した鉄の輸入量に対して,鉱石を介した鉄の輸入量の占める割合は86.8%に達する。輸出については,鉄スクラップや鋼材類の輸出の他,輸送機器・機械・電気電子機器等が高い割合を占める。中国では,自国での鉄鉱石採掘に加えて,相当量の鉄鉱石を輸入しており,貿易を介した鉄の輸入量に対して,鉱石を介した鉄の輸入量の占める割合は82%に達する。輸出については,銑鉄・鋼材や機械・電気電子機器が高い割合を占める。他方,アメリカは自国での鉄鉱石採掘に伴って機械・輸送機器類の輸入を介した鉄の輸入量が上位を占める。

今後の資源調達と貿易政策,更には持続可能な資源管理を考える上では,鉄についても中国および新興国の動向を的確に把握する必要があると考えられる。国際貿易統計を含めた既存の統計情報等を利用した本手法は,より解像度の高い精緻な解析に先立って,これらの概観を把握する上で有用であると考えられる。また,機械類など加工度の高い製品等の影響についても把握できることも本手法の有用性の1つであると考えられる。

最後に,今後の課題と展望に触れて本論文を占める。本研究では,231の国・地域間の294品目群の貿易を介した鉄の移動量の推計に際して,貿易量や組成情報など膨大な情報を処理しており,各データには不確実性を有している事は事実である。これらのデータが有する不確実性に基づく感度分析は今後の課題である。Lenzenら11)は,サプライチェーンを通じた資源利用と生物多様性への影響の解析を通じて有益な情報を発信している。本手法を発展させることで,同様の解析をより詳細に金属や素材ごとに実施できると考えており,これは本研究の今後の関心の1つである。

謝辞

本研究は,科学研究費補助金(25241027),環境研究総合推進費(S-6-4)および科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)による「リソースロジスティクスの可視化に立脚したイノベーション戦略策定支援」研究開発プロジェクトの成果である。

文献
 
© 2014 The Iron and Steel Institute of Japan

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