Tetsu-to-Hagane
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Review
Analytical Atomic Spectrometry with ICP and MIP Supporting Controls of Product Quality and Manufacturing Process in Iron and Steel Industry
Hirohito NakaTaketoshi Nakahara
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JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2014 Volume 100 Issue 7 Pages 857-866

Details
Synopsis:

This article attempts to give an overview of analytical atomic spectrometry in combination with inductively coupled plasma (ICP) and microwave induced plasma (MIP) for the determination of trace elements in iron and steel. The aim is to introduce, in a first part, recent trends in ICP-atomic emission spectrometry (AES) and ICP-mass spectrometry (MS) in terms of sample dissolution, interference study, chemical separation of the analyte elements, sample introduction technique and isotope dilution method utilized only for ICP-MS. In a second part, this paper is meant for a basic information for a description of high-power MIP produced using an Okamoto cavity for AES, especially its combination with hydride introduction into an MIP. High-power nitrogen MIP-AES has successfully coupled with hydride introduction technique for the single- and multi-element determination of several hydride-forming elements in iron and steel samples. Finally, conclusive remarks will be depicted for ICP-AES, ICP-MS and MIP-AES in the steel-making industry.

1. はじめに

誘導結合プラズマ発光分光分析法(以下,ICP-AES)は,1960年代から1970年代初頭にかけて,Fasselら1)によって,溶液試料を対象にICPを励起源とした発光分光分析法として開発され,高感度,高精度,広いダイナミックレンジ,多元素同時分析による迅速性等,優れた特徴を有するため,各分野で急速に普及した。

鉄鋼業においては,1970年代後半から導入され始め,その有用性が認識されると共に,汎用分析機器として広範囲に普及し,日本鉄鋼協会共同研究会鉄鋼分析部会において標準分析法の確立が精力的に進められた2)。現在は,多くの元素の定量法として,JISに規定されている3)

一方,ICPをイオン源とした質量分析法(以下,ICP-MS)は,1980年代初頭に,Houkら4)やGrayら5)によって発表され,その後様々な改良を加えられながら発展し,ICP-AESを凌駕する高感度性が注目され,広い分野に普及した。鉄鋼業においては,鋼の清浄化や微量元素添加による鋼組織の制御技術の進歩により,微量元素分析の要求増と共に導入され,現在では日常分析法として大いに活用されている。

プラズマ源としてHeや窒素を用いるマイクロ波誘導プラズマ(MIP)は,当初,低出力(200 W以下)で点灯するプラズマで,熱容量が小さく,溶液試料の直接かつ連続的な導入が困難であった。その後改良が進み,ドーナツ型のプラズマで高出力(1 kW)のOkamotoキャビティーが開発され6),溶液試料の直接かつ連続的な導入が可能となり,発光分光分析の励起源や,質量分析のイオン源として,活用されている。

これらICPやMIPを利用する発光分光分析法や質量分析法は,鉄鋼材料の高品位化や,高級鋼の低コスト安定生産など,鉄鋼生産プロセスの高度化に応じた,分析性能の向上を目的に発展してきた。なお,分析性能の向上は,分析機器の性能だけでなく,試料の溶液化や化学分離等の前処理,あるいは試料導入法の技術改善に負うところが大きく,これらの技術の発展により,定量下限,分析精度,迅速性等が大幅に向上した。従って本稿では,これらの技術を含め,これまでのICP,MIPの進歩を概説すると共に,今後の課題について言及する。

なお,ICPやMIPの原理,機能および鉄鋼分析への応用については,数多くの総説7,8,9),解説10,11,12),報告書13)あるいは成書14,15,16)にて紹介されており,本稿ではこれらを参考にした。

2. ICP分析

2・1 分析試料の溶液化

ICP-AESやICP-MSでは,通常,試料導入にネブライザーを用いた溶液噴霧法を用いるため,試料の溶液化は,定量下限や精度に影響を及ぼす,重要な因子となる。

溶液化時には,試料の完全分解や目的元素の完全回収等,湿式化学分析共通の留意点があるが,更に,微量元素の分析に供する際には,雰囲気や試薬,器具等からの汚染に対して,特に注意を要する。すなわち,器具からの汚染を低減するためには,器具はできるだけ,小型化,単純化することが望ましい。例えば,石英やテフロン樹脂製の試験管内で,試料分解から,抽出および測定溶液の調製を行う方法が提唱され(Fig.1)17),試薬量の低減,操作の簡便化を実現するひとつの方法が示された。

Fig. 1.

 Procedure for sample dissolution and solvent extraction17).

鉄鋼試料の分解に関しては,塩酸や硝酸などを用いて,開放系で実施される場合が多いが,鋼中にて形成される,Al,Ca,Cr等の酸化物や炭化物等は,開放系では酸分解できない。通常,このような酸不溶性残渣の分解に対しては,炭酸ナトリウムや二硫酸カリウムなどを用いた融解法が適用されるが,融剤の不純物による汚染や,融剤共存による干渉などの問題があるため,微量分析には適さない。

このような問題に対して,密閉容器内で酸と共に加熱する加圧酸分解法18)や,更に分解効率の良いマイクロ波加熱分解法19,20,21,22)などの,密閉系での分解法が適用され,外界からの汚染低減や,短時間での分解を可能としている。なお,これらの密閉容器を使用する方法は,汚染除去,分解効率の向上に有効であるが,試料量は高々1 g程度と制限がある。

2・2 干渉およびその除去法

ICP-AESやICP-MSにおいては,共存成分によるスペクトル干渉や,主成分元素の共存による発光強度およびイオン強度の低下やバックグランドの増大,あるいは主成分元素のメモリー効果等の妨害が生じる。

ICP-AESにおけるスペクトル干渉は,プラズマガスや共存成分に起因して,分析線の発光強度が変動することにより生じる。スペクトル干渉の原因としては,バックグランド発光の変動,主成分の連続光または線発光による迷光,分子バンドの重なり,原子やイオンの発光線の重なり等がある。これらのスペクトル干渉を回避するためには,通常,まず干渉が少ない分析線を選択した上で,分析線波長位置における共存元素の干渉量を見積もることで,補正する方法が採用される。

一方,ICP-MSでは,プラズマガスや共存成分に起因して生成する分子イオンに対して,通常使用されている四重極型質量分析計では質量分離できないため(Table 1)15),スペクトル干渉の除去が重要課題となり,様々な技術が開発されてきた。

Table 1. Major spectral interferents and mass resolution required16).
IsotopesMassInterferentsMassMass resolution required
28Si27.9769214N228.00615957
28Si27.9769212C16O27.994921554
41K40.9618340ArH40.970214888
51V50.9439635Cl16O50.963772572
52Cr51.9405140Ar12C51.962382375
55Mn54.9380440Ar14NH54.973281559
56Fe55.9349440Ar16O55.957302502
56Fe55.9349440Ca16O55.957502479
75As74.9216040Ar35Cl74.931247772
80Se79.91652140Ar279.924779688
172Yb171.93639156Gd16O171.917048886
40K39.96399940Ar39.9623824684
40Ca39.96258640Ar39.96238193993

ICP-MSにおけるスペクトル干渉の抑制法としては,干渉補正係数による補正,低温プラズマの使用による分子イオン生成の抑制,コリジョン/リアクションセルを用いる方法23,24),二重集束型質量分析計25)や飛行時間型質量分析計26)を用いて質量分離する方法がある。

低温プラズマ法は,分子イオンの生成を抑制するため,通常のICPの操作条件と比較して,低高周波電力(~0.6 kW),高キャリヤーガス流量(~1.2 l min−1)で生成したプラズマを利用する方法である。この方法では,分子イオンのイオン化を抑制できるが,酸化物イオンの生成を推進するため,鉄などの高濃度のマトリックスを含む溶液の分析には適さない。

コリジョン/リアクションセルを用いる方法は,四重極型質量分析計の前段に,コリジョン/リアクションセルを装着し,イオンに気体分子を衝突させ,分析元素はそのままの状態で通過させ,妨害イオンだけを除去する方法である(Fig.2)23)。なお,コリジョン/リアクションガスとしては,H2,CH4,NH3,He等が利用されるが,分析元素やマトリックス組成に応じ,使い分ける必要がある。例えば,鉄鋼中のSiの定量に対してはNH3ガス27),また鉄鋼中のB,Si,P,Sに対してはO2ガス28)が使用されている。

Fig. 2.

 Instrumental configuration of ICP mass spectrometer equipped with collision cell23). 1) argon ICP; 2) sampling interface; 3) electrostatic ion lenses; 4) collision cell; 5) electrostatic ion lenses; 6) quadrupole mass analyzer; 7) detector.

2・3 化学分離法

2・2で述べた干渉抑制法では,溶媒や微量の共存成分による干渉に対しては有効であるが,鉄等の高濃度の共存成分による干渉については,完全には除去できない。従って,目的元素を高感度に,また精度良く定量するためには,主成分元素との分離が不可欠で,これまで様々な分離法が検討されてきた。

2・3・1 抽出分離

鉄に対して,溶媒抽出による分離法で最も汎用的な手法は,4-メチル-2-ペンタノンを用いた方法である。塩酸酸性条件下において,鉄をほぼ完全に抽出分離でき,大多数の分析元素が水相中に残留することから,ICP-AESやICP-MSと組み合わせることにより,多元素同時分析が可能となる17,29,30)

最近,環境負荷や健康管理を考慮して,極力有機溶媒を用いない方法が模索されている。例えば,非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレン(7.5)−ノニルフェニルエーテルを塩析剤としてのLiClと共に試料溶液中に添加すると,液状の界面活性剤相が水から分離すると共に,鉄をクロロ錯体として界面活性剤相に取り込むことにより,99.9%以上の鉄の分離が可能となる31)

一方,室温付近でも液体として存在するイオン液体は,揮発性が低いため環境負荷が小さく,また水への溶解度が小さいため,新しい抽出溶媒として注目されている。近年,鉄鋼中のP32)やCo,Ni,Cu33)の定量等,鉄鋼分析への適用も試みられるようになった。

2・3・2 吸着分離

主にイオン交換分離法が適用されており,目的元素に応じて様々なイオン交換樹脂が選択されている。

鉄との分離において,Fe(III)は,フッ化水素酸2 mol l−1以下では,陰イオン交換樹脂や陽イオン交換樹脂には吸着しないため,これらの樹脂を積層状態で同一カラムに充填し,フッ化水素酸系でイオン交換を行うことにより,20数元素が鉄から分離でき,ICP-MSによる多元素同時分析が可能となった34)。また,ROHS指令において微量分析が要求されるCd,Pb,Hgに対して,Hgは揮散防止の為,硝酸共存が必要であることから,フッ化水素酸−硝酸溶液下で陽イオン交換樹脂を用いて鉄から分離する方法が考案されている35)。低合金だけでなく,クロム−鉄合金や工具鋼等の高合金中のHf,Mo,Nb,Sn,Ta,Ti,W,Zrに対して,フッ化水素酸溶液中で陰イオン交換樹脂を用いて分離し,ICP-AESにより定量する方法も報告されている36)

イオン交換樹脂に対する鉄の吸着を防止する方法について,他に幾つか報告がある。例えば,鉄をEDTAによりマスキングし,鋼中のAl,Be,Ca,Cd,Mg,Mn,Sr,Znを陽イオン交換樹脂に吸着させて分離し,ICP-AESで定量する方法が報告されている37)。また,ヨウ化物イオンと安定な錯イオンを形成するCd,Cu,Pb,Bi,Sb,Teを強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着させ,ヨウ化物イオンを形成しないFeと分離することにより,ICP-AESによる鉄鋼中のCd,Cu,Pb,Bi,Sb,Teの定量法も報告されている38)

イオン交換樹脂に比べて,より分離効率の良い固相抽出剤を用いる方法が提案されている。固相抽出剤としてベンゼンスルホン酸を官能基に持つ化学結合型シリカゲルを用いる方法では,通常のイオン交換樹脂よりも粒径が小さく,表面積が大きいため,より短時間で分離が可能である。鋼中の微量元素と,1-10フェナントロリンを反応させ,金属錯体として固相抽出剤に保持することにより,鉄との分離を可能とし,ICP-MSによる高純度鉄中の微量Ni,Cu,Zn,Cdの定量法が確立されている39)

通常の固相抽出剤は,小容量のシリンジ状容器に注入されているため,多量の試料溶液に対しては分離に長時間を要する。この問題に対し,陽イオン交換樹脂とPTFE製極細繊維で構成されるディスク型固相抽出剤が開発され,多量の試料溶液を短時間に処理が可能となり,鉄鋼中の微量Al,Ca,Mg,Ba,Zn,Cd,Srの定量等40,41)に適用されている。

2・3・3 沈殿分離

鉄を沈殿させた場合,微量元素の共沈損失が生じるため,鉄の一部か担体元素を沈殿させ,目的の微量元素を共沈分離する場合が多い。

鉄の一部をクペロン錯体として沈殿させ,Ti,V,Ga,Zr,Nb,Mo,Hf,Taを共沈捕集し,ICP-AESにより定量する方法が報告されている42)。なお,この方法をそのままICP-MSに適用すると,溶液中に残存する鉄の干渉が大きいため,再沈殿操作を要する43)。また,酸性溶液中で操作可能なMnO2共沈法は,鉄の共沈が抑制可能で,鋼中のAs,Bi,Sb,Snの定量に適用されており,GFAASや吸光光度法と同等な感度で,ICP-AESによる多元素同時分析が可能となった44)

2・4 試料導入法

ICP-AESやICP-MSでは,一般に,ネブライザーを用いた溶液噴霧法が用いられるが,試料の溶液化には長時間を要するため,固体試料を直接分析できる方法の開発が進められてきた。また,効率的な試料導入を図るため,あるいは溶媒に起因するスペクトル干渉を排除するため,様々な試料導入法の検討が行われてきた。

2・4・1 レーザーアブレーション

固体試料の直接導入法としては,レーザーを固体試料に照射して生成する微細な粒子を,ICPやMIPに直接導入するレーザーアブレーション(LA)法が代表的な手法である。

LAを定量分析として利用するためには,概ね二つの問題があり,生成微粒子の試料代表性や均一性と,微粒子の大きさや量が重要な因子となる45)。すなわち,一定の加熱条件下では,元素は固有の融点や沸点を有するため,各元素の気化速度を等しくするのは困難で,選択蒸発が生じる。また,LAでは微粒子生成量が少なく,また生成量に変動があるため,十分な感度や精度が得られないという問題がある。

元素の選択蒸発を解消するためには,試料を全元素が気化できるまでの高温である6000 °C以上に瞬時に上げる必要があり,かつ試料母材は照射後に瞬時に冷えて選択蒸発を抑えるパワー密度とパルス幅の制御を行う必要がある45)。このような条件を満たすレーザー照射条件は,パルス半値幅が1 nsec以下では,平均パワー密度は6.5×108 W cm−2以上が必要である。ただし,必要パワー密度は半値幅の1/2乗で小さくなる。また,鉄試料からの微粒子生成量を,溶液噴霧法でのプラズマへの到達試料量と同等レベルの1 μg s−1以上とするためには,0.3 W以上の平均出力が必要である。これらの条件を満たすレーザーとしては,固体レーザーのQスイッチ連続発振タイプであり,所定のエネルギー密度が得られる照射径となるように,光学系を組み込む必要がある。

Fig.345)は,レーザー照射後,捕集した微粒子の組成について,各元素の生成微粒子中の含有率と試料母材中の含有率の比を求め,各元素の沸点との関係を示した図である。各元素が選択蒸発を生じる度合いは,レーザーエネルギーの影響もあるが,照射方法にも大きく依存する。線状に走査した場合は選択蒸発性が認められるが,照射領域として個々のスポット径が無視できる広い範囲の平面をほぼ均一に走査し,かつその範囲を繰り返し多数回照射して深さ方向にも1パルスのレーザー照射が影響する範囲を無視できる程度に大きくとった場合,選択蒸発現象は殆ど現れなくなる。

Fig. 3.

 Selective vaporization factors as a function of the boiling point of each element45).

また,LAにより生じる微粒子量について,Fig.4のレーザーシステムを用い,0.6 Wの平均出力で鉄鋼試料にレーザーを照射し,生成微粒子をICP-MSに導入した場合に検出されるFeのイオン強度とその変動は,500 μg ml−1の鉄鋼溶解試料溶液を噴霧法で導入した場合とほぼ同等のレベルが確保されていることが確認されている46)

Fig. 4.

 Schematic diagram of the developed LA system46).

さらに,LA法による定量分析において問題となるのは,微小領域や微量元素について,固体標準試料が少ないことである。この問題に対し,鉄鋼およびジルカロイ試料表面にレーザーを照射し,発生した試料粒子をArにより搬送し溶液中に捕集する方法が検討された47)。この方法で得られた試料溶液は通常の噴霧法でICP-MSに導入可能であり,標準溶液を用いて定量できるため,固体標準試料は不要となる。また,LA法と溶液噴霧法との相対感度係数を予め算出し,この係数を用いて定量値を補正する方法が報告されている48)。炭素鋼中のCr,Ni,Co,V,W,Mo,P,Asの定量において,相対感度係数は,Cr,Ni,Co,Vに対してはほぼ1,Moに対しては約1.3,P,Asに対しては約1.7という値が得られており,相対感度係数を用いた補正による定量値は認証値とよい一致が得られた。

LA-ICP-MSにおいても,アルゴンや大気成分に起因する分子イオンによるスペクトル干渉が問題となる場合がある。この問題に対し,アルゴンの代わりにヘリウムを用い,減圧下でプラズマを生成させる減圧ヘリウムICP-MSとLAを組み合わせる方法が考案された49)。この方法では,スペクトル干渉の抑制以外に,イオン化効率の向上が図られ,通常の大気圧LA-ICP-MSでは困難であった,鋼中C,Si,P,Sの定量が可能となった。

LAは,以上のような迅速分析を主体とした適用以外に,レーザーの走査性を生かして,鋼中のAl2O3やCaO等の不溶性介在物の定量に利用され,また酸化物の粒子径と構成元素のイオン強度の関係から求められる校正曲線を用いた粒子径測定にも適用されている50,51,52,53,54,55,56)

2・4・2 水素化物導入法

目的元素を水素化物に変換して気化分離する方法で,気化した目的元素をプラズマに直接導入できるため,試料導入効率が溶液噴霧法に比べて優れており,高感度化が期待できる。通常,水素化物の発生に対しては,テトラヒドロホウ酸塩を用いて行われるが,目的元素の価数によって発生効率が異なるため,予備的な還元剤や酸化剤の選択が重要となる。

水素化物導入法は,MIPとの組み合わせに多くの適用があるが,ICPに対しても報告例がある。例えば,鋼中のAs,Bi,Sbに対して,水素化物発生-ICP-AESおよびICP-MSを適用した例57)では,塩酸条件下でチオ尿素−アスコルビン酸−よう化カリウムを添加することにより,水素化物の発生効率は向上し,またCr,Ni等の共存成分による干渉が抑制されることが明らかにされている。

鋼中のAg,Au,Cd,Co,Cu,Ni,Sn,Znの定量に,水素化物発生-ICP-AESやICP-MSを適用する場合,鉄の干渉抑制剤として,Ag,Auに対してはりん酸,Cu,Co,Ni,Znに対してフッ化カリウムが有効であるとの報告58)がある。また,高合金中のAs,Bi,Co,Cr,Fe,Mn,Mo,Ni,Sb,Se,Sn,Ti,V,Wの定量に対して,溶液噴霧法と水素化物導入法を併用できるマルチモード試料導入システムをICP-AESに適用した方法59)では,共存成分の干渉抑制のために,酒石酸,L-システイン,EDTA,TMTU(1,1,3,3-tetra-methyl -2-thiourea)等が使用されている。

鋼中のSの定量に対して,JIS60)で規定されている硫化水素気化分離メチレンブルー吸光光度法で使用される蒸留装置を用いて捕集袋に回収したH2SをICP-MSに導入する方法が報告されている61)。同位体希釈法と併用することにより,鋼中2 μg g−1のSに対して,±0.05 μg g−1(±1σ)の精度で定量可能である。また,より迅速な方法として,試料を電解により溶液化した際に発生するガス成分を直接,ICP-AESに導入する方法が報告されている62,63)。鋼中のSやPに対して,塩酸系の電解液を用いることにより,各々H2S,PH3として,ICP-AESに導入可能で,迅速かつ高感度な分析が可能となる。

2・4・3 加熱気化導入法

加熱気化導入法(ETV)は,黒鉛炉やメタルボート中で試料を加熱し,気化してプラズマに導入する方法で,溶液噴霧法と比較して,試料溶液量が少なくてすむ(<100 μl),試料の輸送効率が高い,溶媒に起因するスペクトル干渉を除去できる等の特徴を有する。

ETVを鉄鋼分析に適用する場合,鉄等の共存元素の影響を軽減し,目的元素の気化効率を高めるため,化学修飾剤を添加する場合がある。例えば,鋼中Biに対してはNi64),Sに対してはKOH65),Pに対してはZr66)が添加され,大幅な増感効果が得られている。

Okamotoらは,試料の秤量,酸分解や溶融,さらに加熱気化の一連の操作を行うことが可能な,タングステン製のキュベットを作製し,ETV-ICP-AESによる鋼中の様々な元素の定量に適用した。Znの定量67)において,化学修飾剤としてリン酸水素アンモニウムを用いて,灰化段階で安定なリン酸塩が生成することにより高感度化が図られ,鋼中数10 μg g−1レベルのZnに対して,精度良い定量が可能となった。また,沸点の高いZr,Vに対して,オキシン錯体を形成させ,気化温度を大幅に下げ,気化効率を向上させることにより,分析の高感度化を図った報告68)もある。さらに,ほう素は,ほう酸のような揮発性ほう素と,窒化ほう素等の難揮発性ほう素として存在するが,化学修飾剤としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を添加すると,乾燥・灰化段階で,ホウ酸のみがTMA・B(OH)4となり,その後800 °CでICP-MSに気化導入することで,鉄鋼中のほう素の形態別定量が可能となった69)

酸分解を必要としない方法として,鉄鋼試料を固体のまま,黒鉛るつぼに導入する方法70)と,タングステンボードに導入する方法71,72)が報告されている。黒鉛るつぼに導入する方法では,助燃剤としてSnを必要とするが,溶融状態のFeに対して,より濡れ性のよいタングステンボードを利用する方法では,Feがタングステン表面に薄く拡がるため,助燃剤が不要で,分析元素の気化が可能である。

2・5 同位体希釈法

同位体希釈法は,目的元素の同位体の一つを濃縮安定同位体として試料に加えて同位体平衡に達した後,他の同位体との比の変化から含有量を求める方法である。高精度分析が要求される地球科学分野における適用例が多いが,複雑な化学前処理を要する場合に目的元素が完全に回収できなくても,高精度な定量結果が得られるため,鉄鋼分析においても利用されるようになった。

溶媒抽出による鉄分離を伴う鋼中Bの定量73)や,高純度鉄中のMg,Cu,Zn,Ag,Pbの定量74),また鋼中微量Siの定量において,ケイ素をモリブドケイ酸として吸着分離後,Moを定量することによりSiを間接定量する方法75),イオン交換により分離濃縮した鋼中のSbやBを定量する方法76)等に適用されている。また,前述の鋼中Sの定量において,硫化水素を気化分離後,ICPに気相導入する方法61)や,溶媒抽出により鉄を分離後,加熱気化-ICP-MSにてSを定量する方法65)に適用した例が報告されている。

同位体希釈分析の精度は,主に同位体比の測定精度に支配されており,四重極型質量分析計では0.1~0.5%,二重集束型で0.05~0.2%,マルチコレクターを有する磁場セクタ型で0.005~0.02%とされている77)

3. MIP分析

マイクロ波エネルギーを利用して生成するプラズマ,すなわちマイクロ波プラズマとは,周波数300 MHz以上(2450 MHzを用いることが多い)のマイクロ波領域を利用した放電プラズマである。この放電プラズマの発生方法により,容量結合マイクロ波プラズマ(capacitively coupled microwave plasma, CMP)とマイクロ波誘導プラズマ(microwave induced plasma, MIP)の二つの型に分類される。CMPはマグネトロンによって発生したマイクロ波電力を矩形導波管を用いて伝播させ,金属電極の先端部分にプラズマを形成させる。発光分光分析に利用される光源では,シースガスとして,1~10 l min−1のアルゴンあるいは窒素を供給して数100 W程度の電力でプラズマを点灯する。一方,MIPは,空洞共振器(resonant cavity,共鳴キャビティー)内部の電界によって細管(内径1~3 mm)内に無電極放電を生じさせたもので,電力50~200 W,プラズマガスとして0.03~0.7 l min−1のアルゴンまたはヘリウムを使用する。このように,CMPおよびMIPともに,低電力で点灯・維持されるので,プラズマに導入される試料としては,ガス状試料,微少量の溶液(エアロゾル)試料,あるいは脱溶媒した試料がおもな測定対象になる。とくに,MIPが発光分光分析用の励起光源(あるいは質量分析のイオン源)として注目されるようになったのは,1976年にBeenakkerが開発した共鳴キャビティー(以下,Beenakkerキャビティーと呼ぶ)によって,大気圧下でヘリウムプラズマを生成できるようになってからである78)。Beenakkerキャビティーの外に,サーファトロン(Surfatron)やマイクロ波プラズマトーチ(microwave plasma torch, MPT)などのMIPを含めた各種の大気圧プラズマ光源については総説79)を参照いただきたい。Beenakkerキャビティー,サーファトロン,MPTなどによるMIPでは,低出力(200 W以下)でプラズマを点灯・維持するために,容量が小さく,そのために溶液試料のエアロゾルを直接かつ連続的にプラズマ中に導入することは不可能であった。その後,ICPと同様にドーナツ型のプラズマを形成することができる,まったく新しいタイプの高出力(1 kW)のOkamotoキャビティーが1991年に開発された6)。当初,Okamotoキャビティーは質量分析のMIPイオン源として開発され,当時,MIP-MS装置が国内で上梓されたけれども,現在では製造・販売は中止されているので,ここではMIP-MSの説明は割愛する。

以下にOkamotoキャビティーについて述べ,さらに高出力窒素MIP-AESの鉄鋼分析への応用について記述する。

3・1 Okamotoキャビティー

Okamotoキャビティーの断面と電界の軸方向分布をFig.5に示す80)。このキャビティーは高出力(大電力)(最大1.5 kW)が供給でき,ドーナツ状の窒素や酸素,さらには空気のプラズマを大気圧下で生成することができる。このキャビティーは,負荷とのインピーダンス整合(マッチング)を考慮して,扁平導波管(8.4 mm×109.2 mm,インピーダンス約50Ω)を用い,その中心部に円錐状の内導体と円筒状の外導体の先端に設けたフロントプレートから成るモード変換器で構成されている。キャビティーはすべて金属(銅)で構成され,マイクロ波電力も導波管を用いて供給し,整合もよくとれる(反射電力をほぼ零にすることができる)ため,l kW 以上のマイクロ波電力をプラズマ生成に用いることができる。表面波により生成する電界はプラズマの外周部に集中するため,ドーナツ状のプラズマの形成が容易になり,ICPと同様に,溶液試料のエアロゾルを直接かつ連続的にプラズマ中に導入することが可能になった。なお,この場合に用いられるトーチは石英製の同心状の二重管で,その外管(内径:窒素,酸素および空気のときは約10 mm,アルゴンのときには約4 mmである)と内管(先端部の外径は太く,窒素,酸素および空気のときは約9 mm,アルゴンのときには約3 mmである)から成る。内管にはキャリヤーガス(約1 l min−1)とともに分析試料のエアロゾルを,外管には接線方向からプラズマガス(約10 l min−1)を供給し,プラズマの生成とともにその安定化をはかる。このような構成にすると,ドーナツ状の大気圧プラズマを安定に生成することができる。OkamotoキャビティーMIPの発光特性がICPと比較されている81)

Fig. 5.

 (1) Cross-section of the Okamoto cavity and (2) radial distribution of the electric field80).

3・2 高出力MIP-AES

Okamotoキャビティーを用いた高出力MIPは,プラズマガスとして窒素以外にも,酸素,空気,ヘリウム,アルゴン等のガスを用いてもプラズマ放電を維持することができ,通常の溶液噴霧法による高出力MIP-AESにおける分光特性(励起温度や電子密度など)に関する報告82,83)が見られる。また,窒素と酸素の混合ガスを用いた窒素−酸素MIP-AESも興味深い84,85)。溶液噴霧法による高出力MIP-AESの鉄鋼分析への適用例は見られないが,分析元素をMIBK(4-メチル-2-ペンタノン)による抽出操作後に有機溶媒直接導入による高出力MIP-AESを行い,鉄鋼試料分析への可能性が示された86)

3・3 水素化物導入−高出力窒素MIP-AES

すでに,日常分析に汎用されているアルゴンをプラズマガスに用いるICP-AESと比べて,ここで述べた高出力MIPは,発光分光分析の励起光源として興味深く,いくつかのユニークな特長をもつが,現時点ではこれらの特性を発揮・利用するには至らず,鉄鋼分析の分野への適用例は少ないけれども,鉄鋼分析に応用された水素化物導入−高出力窒素MIP-AESに関する一連の研究87)を記述する。

Okamotoキャビティーを用いた高出力窒素MIP-AES装置は市販されていないが,その励起源を分光器と組み合わせて自作された装置による水素化物導入−高出力窒素MIP発光分析システムの概略をFig.6に示す87)。この分光分析装置では,大気圧でドーナツ状の窒素をはじめ酸素や空気およびアルゴンのプラズマをl kW 以上の高出力(大電力)でも安定に生成することができる。窒素はじめ酸素や空気のプラズマを生成するとき,これらのガスは放電を開始しにくいので,まず放電しやすいアルゴンガスを用いてプラズマを発生させる。実際の窒素プラズマの点灯の手順を詳細に以下に示す。最初にプラズマガスとしてアルゴンを12 l min−1以上流し,マイクロ波出力を400 W以上に設定する。この状態でテスラコイルを用いてトーチの上方に火花を飛ばし,アルゴンプラズマを点灯する。その後,出力を900 W以上に増加し,ほぼ同時にプラズマガスをアルゴンから窒素に切り換えると,窒素(100%の窒素)プラズマが点灯・維持される。このとき,導波管間に設置されたスリースタブチューナーの設定は,窒素などのプラズマとほぼ整合するように調節しておき(アルゴンプラズマに対しては不整合状態),窒素プラズマに切り換えたのち,反射電力がほぼ完全になくなるように微調整する。そして,約10分程度プラズマを安定させたのち,実際の測定を開始する。

Fig. 6.

 Schematic diagram of high power N2-MIP-AES system coupled with hydride introduction technique87).

次に,実際に試料を導入して測定する操作を詳しく以下に述べる。Fig.6に示すように,まず波長設定(選択)のために試料導入に溶液噴霧法を適用した場合には,試料溶液を同軸型ネブライザーで吸い上げ,生成した測定元素を含む溶液のエアロゾルを直接キャリヤーガスとともにプラズマ中に導入する。また,試料導入に水素化物導入法を適用した場合は,試料溶液と還元剤であるテトラヒドロホウ酸塩溶液をペリスタポンプで連続的に送液し,ミキシングジョイントで混合する。この後に還元反応によって生成した気体状の水素化物は,気−液分離器で溶液マトリックスから分離されたのち,水分を除去するための硫酸トラップを経てキャリヤーガスとともに噴霧室のドレイン口から導入する。プラズマから放射された光をレンズで集光し,モノクロメーターで分光したのち,光電子増倍管で電気信号に変換されたシグナルをコンピュータで処理し,プリンターでデータ記録する。

通常の溶液噴霧法と,すでに2・4・2で述べた水素化物導入法を高出力窒素MIP-AESに適用し,両者の感度を比較した後に,単元素(single-element)定量および多元素(multi-element)同時定量についての分析方法を確立し,鉄鋼分析へ適用した結果が報告されている。水素化物導入−高出力窒素MIP-AESによる定量では,As88),Se88),Sb89),Te90),Bi91)の単元素毎の結果が報告されており,さらに,As,Sbの2元素92),As,Sb,Biの3元素93),As,Bi,Sb,Seの4元素94)の多元素同時定量の分析特性が報文となっている。得られた単元素定量の測定感度(検出限界)をICP-AES,ICP-MSおよびAAS(atomic absorption spectrometry)による感度と比較してTable 2に示す87)。単元素定量および多元素同時定量のために,測定条件の最適化や共存元素の影響等を検討した後に,水素化物導入−高出力窒素MIP-AESを鉄鋼分析に応用した。その際に用いられた鉄鋼標準試料は,日本鉄鋼連盟の「微量元素定量のための炭素鋼シリーズB」鉄鋼認証標準物質(JSS)であり,欧州規格(EURONORM)の高純度鉄の鉄鋼認証標準物質とNIST鉄鋼認証標準物質(SRM)であった。具体的には,As定量ではJSS 171-7,170-7,168-7,Se定量ではAustenitic NAS8F,NIST 339,Sb定量ではJSS 172-7,173-5,174-5,175-7,Te定量ではJSS 191-1,192-1,193-1,195-1,Bi定量ではJSS 190-1,191-1,192-1,193-1,195-1,NIST 363,また,As,Sbの2元素同時定量ではJSS 171-7,170-7,168-7,175-7,174-5,173-5,As,Sb,Biの3元素同時定量ではEURONORM 097-1,NIST 361,363,As,Bi,Sb,Seの4元素同時定量ではNIST 361,363である。それぞれの定量においては,分析元素の予備還元や干渉の抑制などを行って分析した結果,標準値とほぼ一致する分析値が得られている。分析操作の詳細についてはそれぞれの文献(原著論文)を参照されたい。

Table 2. Comparison of detection limits for arsenic, selenium, antimony, tellurium and bismuth by analytical atomic spectrometry in combination with hydride introduction technique87).
Analytical atomic spectrometryDetection limits for the analytes (ng ml–1)
AsSeSbTeBi
N2-MIP-AES2.990.861.8715.0102
ICP-AES0.10.030.201.00.06
ICP-MS0.0070.010.0050.0270.02
AAS0.0060.010.140.20.025

本法は,干渉を示す主成分元素(Fe)の分離・除去の操作を必要としない迅速分析法である。また,As,Sb,Biは鉄鋼中のトランプエレメントと言われ,鉄鋼スクラップのリサイクルにおいて,これらの元素は微量でも存在すると材料特性に影響を与える。これらの微量元素を管理するという観点からも本法は有用であると思われる。

4. おわりに

ICPやMIPを利用する発光分光分析法や質量分析法について,比較的最近の事例を中心に,鉄鋼分析における進歩を概説した。

ICP-AESやICP-MSは基本的な装置開発の段階は過ぎ,現在は迅速化,高感度化や高精度化など,装置性能の向上を中心に,様々な改良や研究が進められている。迅速化については,オンサイト分析等の特に迅速性を要求される場合には,固体直接分析が可能なLAが有力な手段である。現在は,C,S,P等の非金属元素に関する定量技術の確立や,また微量域における標準試料の整備が課題であり,今後これらの課題が克服されれば,適用範囲はさらに広まると考えられる。

高感度化や高精度化を図るためには,鉄等のマトリックス成分の分離が必要となる場合が多く,本稿でも紹介したように,分析法を確立する上で欠かせないものとなっている。分離技術の最近の傾向としては,環境負荷低減の為の分離試薬の研究と共に,より効率を高めた手法の開発である。さらに分離技術の効率化を進めるために,本稿では割愛したが,ICPに対しても,フローインジェクションを利用した分離技術の自動化の研究が数多く行われており,熟練技術者の減少に対応したスキルフリー化の観点からも,今後益々重要度は高まると考えられる。

本稿で述べたMIP分析に関しては,これまでに鉄鋼分析に適用されたことのある,Okamotoキャビティーを用いた高出力窒素MIP-AESを中心に記述した。このプラズマは,物理的な特性と多様なマトリックスに関する多くの元素の基本的な分析性能についての研究が進展することにより,アルゴンICPに代わるものとして有望である。また,この比較的新しいタイプのプラズマを励起源に用いて発光分光分析に適用された実例は少ないが,幅広く利用されている水素化物導入法と併用することにより,感度の向上を達成することができ,さらに多元素の同時定量を行うことによって迅速な分析が可能である。ただ,Table 2に示すように,他の原子スペクトル分析の感度と比較すると,感度が劣るところであり,今後の研究成果が待たれる。

過去にOkamotoキャビティーを用いた高出力窒素MIP-MS装置が製造され,市販されていたが,現在では製造・販売が中止されて久しかったところに,最近になり,Okamotoキャビティーとは異なる方式で窒素や空気をプラズマガスに用いて生成するプラズマを励起光源とするマイクロ波プラズマ発光分光分析装置95)が市販されるようになり,その鉄鋼分析の分野での利用が期待される。

文献
 
© 2014 The Iron and Steel Institute of Japan

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