Tetsu-to-Hagane
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Review
Analysis for Non-Metal Inclusions and Precipitates Leading to the Optimal Steel-Properties and Processes
Katsumi YamadaRyo Inoue
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2014 Volume 100 Issue 7 Pages 867-872

Details
Synopsis:

Metallic materials as represented by steels mostly contain various precipitates such as nitrides, carbides and inter-metallic compounds in addition to non-metallic inclusions, oxides and sulfides. These are present as an inevitable former or by design. Those varieties, size and distribution types are very wide then one of important structural factors that affects on various properties of materials.

Therefore, accurate analysis of them is considerable significance to control target properties of materials reproducibly. In the steel research field, study of analytical methods for inclusion in steels has been actively conducting since 1960’s. Especially in chemical analysis method, systematization and standardization like JIS has been promoted by corroborated researches in an ISIJ. Previously established methods and detail of analysis of chemical states have been described in publications edited by ISIJ and comprehensive review paper has been issued by Takayama. In this short article, direct observation methods with microscopy, rapid analysis categorized as instrumental analyses, non-destructive inspections and extraction method for non-metallic inclusions are briefly reviewed.

1. はじめに

鉄鋼材料に代表される金属材料中のマトリックス中には,酸化物,硫化物に代表される非金属介在物に加え,窒化物,炭化物そして金属間化合物等の析出物が存在している。これらは不可避的に形成するものと目的を持って積極的に形成させるものが存在するが,その種類やサイズおよび分布形態は非常に多岐にわたっており,材料の諸特性を左右する重要な組織因子のひとつである。これらを正しく評価することは,目的の特性を再現良く得るうえで重要である。特に鉄鋼分野においては,1960年代頃より,鋼中介在物の分析方法に関する研究が盛んに行われ,化学分析分野においては,鉄鋼協会共同研究会主導による体系化,JIS化が推進されてきた。これまでに確立された手法の概要や,特に化学的状態分析法の詳細は既に鉄鋼協会の記念講座に詳しい1,2)。また,Takayamaら3)がこれまでのレビューとして網羅的総説を出しているので,それらを参照されたい。本稿では,顕微鏡を活用する直接観察法と,機器分析の中に分類される迅速法,さらに非破壊分析法の代表例として超音波・介在物センサーについて概説し,非金属介在物抽出法についても述べる。

2. 研磨面直接観察法

2・1 顕微鏡観察

非金属介在物・析出物を評価する手法としての顕微鏡観察法は,これらのマトリックス中での存在形態を直視できる大きなメリットがある。例えば,Fig.1(a),(b)に示すように,鋼中のA系介在物としてよく知られる展伸形状を有したMnSや溶体化処理でも固溶しないTiNなどは,鏡面研磨などの簡単な試料処理と光学顕微鏡観察によってサイズやその分布を知ることが出来る。光学顕微鏡での評価可能な介在物・析出物は概ねμm以上のものであり,1998年のISO4967に準拠したJIS05554)やASTMで評価方法が規定されている。ここでは紙面の制約があるため,光学顕微鏡をはじめとした種々の介在物試験の詳細については鉄鋼便覧の総説を参照されたい5)

Fig. 1.

 Optical micrographs of typical A type inclusion observed in a polished steel (a) and TiN in an chemical etched steel (b). (Online version in color.)

さて,光学顕微鏡で評価可能な大きな介在物・析出物は,脱硫や脱酸,脱窒といった反応の産物であり,主として鋼の静浄度という観点で評価が行われてきた。近年では,製鋼段階における脱酸や脱硫技術の進展により,鋼の静浄度自体が非常に向上しており,光学顕微鏡によって介在物量を定量的に評価するニーズは低くなっている。

製品造り込みのための加工熱処理工程で積極的な制御対象となる,更に小さな析出物については,走査電子顕微(以下SEM)観察に拠らなければならない。この時,重要なのは観察面の試料処理であり,鋼マトリックスのみを選択的に溶解し,不安定かつ微細な析出物を現出する電解エッチング法(SPEED法)が良く知られた方法である6)。熟練技術者による機械的な鏡面研磨ままでも一定の観察は可能であるが,組織との対応や再現性の面では電解法による試料調整が望ましい。また,近年のSEMの分解能向上により,積極的なエッチングを施すよりも,透過電子顕微鏡(以下TEM)用に実施される電解研摩を採用することにより,Fig.2に示すような数10 nm程度の極微細析出の観察も可能となっている7)。電解研磨を用いた試料調整法は,サイズや分布および平均組成把握のために電子線プローブマイクロアナライザー(以下EPMA)等で得られていたよりも格段に高い分解能での情報取得を可能にし,製鋼段階で形成される介在物の複合状態まで明瞭に識別できるようになっている。さらに近年では,電解研磨や化学研磨に頼らない試料調整法として,アルゴンエッチングやグロー放電によるプラズマエッチングを試料最終処理に用いて,より精緻な観察が可能になってきている8)

Fig. 2.

 SEM image of fine platelet (V, Cr)N observed within a δ-ferrite grain in a 9%Cr heat resisting steel.

SEMやEPMAによって得られるデータの統計的処理については,近年のPC能力の進歩に伴い装置メーカーから様々な処理ソフトがリリースされており,電子顕微鏡観察の弱点であった情報の代表性について克服されてきた。Fig.3には市販のEPMAによる800を超える介在物自動解析の一例9)を示した。対象となっているのは鋼中のCr炭化物とMnSである。2 mm角を越える広域領域の反射電子像(COMPO像)を二値化処理後,多量の介在物を自動認識して分析を行い,各介在物のサイズ,炭素濃度等の情報が得られている。図中グラフは,横軸に投影面積円相当径(Heywood径),縦軸に個数をプロットしており,介在物のほとんどがM23C6型のCr炭化物であること,MnSの大きさは1 μm程度で,全体の10%未満であることなどが明らかになっている。

Fig. 3.

 Compositional discrimination and frequency analysis of Cr carbide and MnS conducted by EMPA particle analyzer.

Fig.4には鉄鋼材料内ではないがSEMをベースとした粒子解析の事例を示した10)。この分析例は,自動車工業の製造現場における清浄度を調査するため採取された粒子の組成調査例である。粒子解析機能を装備した最新のSEMでは,EPMAと同様にステージスキャンもしくはビームスキャンによって,多量の粒子を自動認識し,組成と形状の高速評価が可能となっている。この例では,図中EDSスペクトルから製造現場内での汚染源が,主としてベアリング鋼から発生しているとされた。

Fig. 4.

 Chemical classification of filtered particles conducted by the latest full automated particle analysis in SEM-EDS. (Online version in color.)

古くから知られているEPMAもSEM/EDSのいずれも,数100から1000個程度の対象物を組成情報と共に数時間以内で得られるため(但しEPMAの分析時間は分析元素数に大きく依存する),材料特性との相関を考察する研究者にとって非常に有用である。但し,処理情報のベースとなる顕微鏡像取得の規定が明確に決まっていないため,その標準化については今後の課題である。なお,より微細な数10 nm未満の析出物評価に対しては,当然ながら透過電子顕微鏡(TEM)に拠らざるを得ない。例えば,高強度かつ高成形性を実現する鋼材中に微細に分散させたナノメートルサイズのMC型複合炭化物に対しては,FE-TEMや球面収差補正電子顕微鏡を用いた,より精緻な解析が出来るようになってきている11)。ただし,これらの情報はXRDや化学分析によるマクロ情報との連携が必須であることは言うまでもない。

2・2 SEM-EDS

ここでは,特に近年目覚しい進展を遂げているSEM-EDS法について,介在物・析出物評価の観点から概説する。EDS(Energy Dispersive X-ray Spectoroscopy)は,電子顕微鏡分野で広く使われる分析法である。エネルギー分解能や,分析感度の点ではEPMA法に劣るものの,多元素同時分析を特徴としてTEM,SEM分野で発展を遂げてきた12)。しかしながら,従来のSSD(Solid State detector)では,試料から発生する特性X線の検出効率が極めて低く,信号の殆どを無駄にしていた。これに対して,2000年頃より,新しいタイプの高効率X線検出器(Silicon Drift tube Detector, SDD)が汎用化し,従来よりも2桁以上のX線を検出できるようになり,分析時間の圧倒的な短縮が実現している13)。このため,EMPAのように大面積を一晩かけてマッピングし,粒子解析するような作業については,もはやSEM-EDSマッピングによって,より短時間かつ高分解能で実行可能になっている。もちろん,軽元素や微量元素の感度やエネルギー分解能についてはEPMAが依然として優位である14)。ある程度,評価対象がはっきりしている介在物や微細析出物については,今後SEM-EDSマッピングが汎用化していくと考えられる。先に紹介したFig.4の事例は,まさにこの最新型のSEM-EDS分析事例である。

3. 迅速分析法

一般に,介在物・析出物分析に関して適用される化学分析的なアプローチとしては,湿式分析に加え,スループットを重視した発光分光法が盛んに利用されるようになっている。ここでは,主に固体試料に適用され,機器分析に分類されるスパーク放電発光分析法と,溶液化した試料に適用される誘導結合プラズマ(Induced Coupled Plasma)発光分光分析法について,さらに,大型の介在物を対象とする,超音波介在物センサーについて概説する。

3・1 スパーク放電発光分光分析法15)

鉄鋼JIS分析G1253に規定され,スパーク放電発光分光分析法と呼ばれる分析法は,試料と電極間にArイオンを流し,対象試料をスパーク放電によって気化励起する。発光線の波長分離と強度測定により,定量・定性分析が迅速に行える。鉄鋼現場分析において,燃焼分析法によるガス成分(C, N, S)分析値と併用し,ほぼ5分以内での製品出荷検査ができる。その一方で,試料の気化位置を制御することは難しいため,鋼中介在物や析出物に対しては定性分析の域を出ない。それでも迅速な定性分析は現場の製品管理に有用であり,発光のパルス分布を精緻に解析することによりAl2O3やMnSといった鋼特性(耐疲労特性や切削性など)に大きな影響を及ぼす介在物の種別,粒径評価や酸可溶・不溶介在物の分離などが行われている16,17,18)Fig.5は,鋼中のAl発光強度をFe強度で規格化することにより,二種の鋼材中の酸不溶Al酸化物の存在頻度の差を定性的に示したものであり,製鋼工程へのフィードバックに有用な情報である16)

Fig. 5.

 Influence of insoluble Al content on the appearance of abnormal Al emission conducted by QV.

3・2 レーザーICP-AES,MS法

ICP発光(Atom Emission Spectroscopy, AES)やICP質量分析(Mass Spectrometry, MS)法はいずれも,霧状(溶液)の試料とArガスを誘導コイル内に導入し,プラズマ中による励起に伴う原子発光線や,イオンの質量測定によって元素同定と定量を行う手法である。例えば,後述の抽出残渣の定量においては,得られた残渣を酸溶解して高精度分析に供することができる。しかし試料処理に要する時間がかかるため,鉄鋼プロセスにおける迅速分析としては課題があった。これに対して,レーザー(アブレーション)ICP-AES,MS法は,出力の大きなレーザーによって直接試料を気化する方法であり,迅速かつ高精度の定量分析が実現している。Akiyoshiらはこの手法を鉄鋼微量分析に適用するにあたり,そのレーザー照射条件を最適化することで,元素による蒸発速度の差を解消し,照射領域の組成とバルク組成がほぼ同様に取り扱えることをいち早く示している19)。この手法により,元素によっては,液体試料を用いるICP-MSと同様に数ppmレベルの検出下限を実現している例20)もある。しかし,これらの結果は,あくまでもバルク定量に限定されるものであり,鋼中の非金属系介在物や,析出物にそのまま適用できるものではない。もちろん,数10 μm~数100 μmにレーザー照射領域を制御し,なおかつ顕微鏡と組み合わせることにより,情報取得領域を限定することで大きな介在物への適用は可能であるが,分析領域の制御が難しいため,定性的情報に留まる。このため,現状では,介在物・析出物の統計的評価に対して積極的な利用を行っている例は少なく,もっぱら別章で説明のある抽出残渣試料への適用が多い。

3・3 超音波・介在物センサー

鉄鋼材料をはじめとする金属材料の疲労強度や溶接部靭性など,構造物として極めて重要な特性に大きな影響を与える粗大介在物は,超音波や磁気を利用したセンサーでの検出が行われている。UT(Ultrasonic Testing)と呼ばれる超音波探傷は,非破壊で比較的大きな体積を評価可能であり5),数10 μm~100 μm程度の介在物に対しては,周波数50~100 MHzの高周波の利用が報告されている。しかし,鋼の静浄度が向上している近年では,これらの技術を用いても,低頻度で発生する大型介在物の存在を捉える事が益々困難になっている。このため,周波数15 MHz程度の全没水浸式のUT装置の開発がされている21)。このような方式では,10キロ以上の試料中に高々一個程度しかない100 μm以上の大型介在物も見逃さないため,安全部材の信頼性評価には極めて重要な技術といえる。磁気探傷法(MT:Magnetic Testing)についても,超音波ほど深い情報は得られないものの,センサーの走査によって,大面積の評価ができる利点が大きい。顕微鏡観察法では容易に検出できない脱酸生成物,スラグ巻き込みなど大型の鋳造欠陥や溶接部欠陥は,種類は何であれ重大な影響を及ぼすため,まずは検出が最優先である。UT,MTいずれの手法も,部品を直接評価する,あるいは現場で迅速に評価できる手法で実用性が大きい。これらの手法により欠陥位置を特定した上で光学顕微鏡による検証や,残渣の極値統計結果と組みあわせることにより,欠陥原因の特定へと進むのが望ましい。

4. 非金属介在物抽出法

鋼試料研磨面上に現れた非金属介在物粒子について,その大きさを光学顕微鏡,レーザー顕微鏡,走査電子顕微鏡(SEM)等により,組成をX線マイクロアナライザー(EPMA),二次イオン質量分析計(SIMS),分析電子顕微鏡(AEM)等により測定する方法は簡便な測定法であることから広く用いられている。しかし,測定した非金属介在物の粒径・個数は二次元の値であり,これを三次元の粒径・個数に換算する際に誤差を生じやすいことが報告されている22,23,24)

これら機器を用いた平面的な非金属介在物測定法と比べ,非金属介在物抽出法はマトリックスを溶解し非金属介在物粒子のみを取り出して三次元的に観察できるため,正確な粒径測定ができ,複合非金属介在物のミクロ形態分析に優れている。非金属介在物の抽出では,介在物の種類によっては抽出処理中に溶損してしまうことが難点であることから,酸分解法,ハロゲン有機溶媒法,水溶液系電解液を用いた定電流電解等による介在物の抽出分離が従来検討された。Narita25)は酸溶液によって抽出可能な鋼中の酸化物系介在物をまとめており,SiO2,Al2O3,Cr2O3,TiO2およびCaO・6Al2O3は酸濃度にほとんど関係なく定量的に抽出できると述べている。しかし,酸によって抽出したAl2O3介在物の濃度から算出した酸素濃度は,鋼の全酸素分析値より低くなっている26,27,28,29)。Al2O3試薬28,29,30)および合成したTi酸化物31)が酸溶液へ溶損することが示されているが,熱酸にTiO2試薬がほとんど溶解しないという報告32)もある。また,V2O533),Nb2O534,35)の酸溶液への溶解について論じられている。冷硝酸法によりTi2O3,ZrO2,Fe-Nb-O系化合物が定量的に抽出されている36)

ハロゲン−有機溶剤による抽出法は操作が簡便である上に抽出できる介在物の種類が多いことが知られており,SiO2,Al2O3およびTiO2の抽出が可能とみなされている25)。Kawamuraらは臭素−メタノール法およびヨウ素−メタノール法において合成 Ti 酸化物が溶解しないことを示し31),鋼中のTi2O3,Fe-Nb-O系化合物を抽出できると述べている36)が,ヨウ素−メタノール法により鋼から抽出したTi酸化物としての酸素濃度は鋼の全酸素分析値より著しく低くなっている31)。V2O5はヨウ素−メタノール中に溶損すると述べられている33)。CaO/Al2O3(モル比)=1/7~3/1のCaO-Al2O3系化合物が抽出できるとされている25)が,Yoshidaら37)は合成した3CaO・Al2O3+12CaO・7Al2O3混合物が60 °Cの臭素−メタノールに溶損し,3CaO・2SiO2+CaO・SiO2混合物は臭素−メタノールおよびヨウ素−メタノールのいずれにも溶解することを示している。

電解法では,中性および酸性の水溶液系電解液を用いた電解法が主流であった。Piperら38)は酸性電解液を用いて6~8%CaOを含むSiO2-Al2O3系介在物を抽出している。Kawamuraら39)は中性およびアルカリ性電解液を用いた定電位電解法により分離したCaO・SiO2および2CaO・SiO2としてのCa濃度が,鋼の全Ca濃度と一致したと報告している。しかし,水溶液系電解液を用いた電解法では電流密度が低いことや試料表面が不働態化しやすい等1)の理由から,今日ではアセチルアセトン−テトラメチルアンモニウムクロリド−メタノール系(AA),サリチル酸メチル−テトラメチルアンモニウムクロリド−メタノール系(MS),トリエタノールアミン−導電剤(LiCl,テトラメチルアンモニウムクロリド等)−メタノール系(TEA)の非水有機溶媒系電解液が用いられている。これらの非水溶媒系電解液を用いた定電位電解法による窒化物1,40),炭化物41)および硫化物42,43)の抽出について,その再現性の高さが示されている。酸化物の電解液への溶解は,ZrO2,Ti2O3,Ti2Al2O5について報告されている43)。化学的に不安定なCaO系,MgO系酸化物の電解液への溶解について,Yoshidaら37)は2%TEAに0.1 w/v% BaOを入れて撹拌することにより0.06 w/v% Baを含む2%TEA電解液を作成し,この電解液にCaO(およびCaS)がほとんど溶損しないことを示している。2%トリエタノールアミンを含むTEAに金属Baを溶解して電解液を脱水することによりMgOが溶損なく電解抽出されている44)。3CaO・Al2O3+12CaO・7Al2O3混合物45),3CaO・2SiO2+CaO・SiO2混合物45),MgO・Al2O344)についても示されている。従来報告されている各種介在物抽出法をまとめてTable 1に与える。

Table 1. Various methods for extraction of inclusion particles reported previously.
I-MethanolBr-MethanolAcidPotentiostatic electrolysis (nonaqueous electrolyte)
Al2O3
3Al2O3·2SiO2
B2O3, BN×10%AA
CaO×××2%TEA-BaO
3CaO·Al2O3, 12CaO·7Al2O3not good×2%TEA-BaO, 3%MS, 10%AA
3CaO·2SiO2, CaO·SiO2not goodnot good×2%TEA-BaO, 10%AA
Ce2O3, CeO2×2%TEA-Ba
Cr2O3HCl, HNO3
FeO, MnO, (Fe, Mn)Onot good××
(Fe, Mn)O·Al2O3
3(Mn, Fe)O·Al2O3·3SiO2
(Fe, Mn)O·Cr2O3
FeO·TiO2, FeO·Ti2O3
FeO·V2O3
MgO×××2%TEA-Ba
MgO·Al2O3×2%TEA, 10%AA, 40%MA
Nb2O5, NbN, NbC, NbCNHCl, H2SO4, HNO3, HClO410%AA
RE-oxide4%MS
SiO2
TiO2, Ti2O3, TiOHNO3, HClO410%AA, 4%MS, 40%MA
TiAl2O54%MS, 40%MA
V2O5not good×
ZrO2cold HNO32%TEA, 10%AA, 4%MS, 40%MA
AlN, AlOxNy10%AA
CaS, CaS-MnSnot good××2%TEA-BaO, 4%MS
Ce2S32%TEA, 2%TEA-Ba
Cr2N, CrNHNO3, EDTA10%AA
(Cr, Fe)23C6, (Cr, Fe)7C3H3PO410%AA
(Fe, Mn) Cnot goodnot goodnot good10%AA
FeS, MnSnot good××TEA, MS, 10%AA
Mo2C, (Fe, Mo)3Cnot good10%AA
RE-sulfidenot goodnot good4%MS
RE-oxysulfide×4%MS
Si3N410%AA
TaN
TiN, TiC, TiCN, TiSnot good10%AA
VN, VC, VCNHCl, H2SO4, HClO410%AA
ZrN, ZrCNcold HNO310%AA
ZrC, ZrS, Zr3S4not goodnot goodcold HNO34%MS, 10%AA

AA,MS,TEAの非水溶媒系電解液を用いた電解法では鋼の溶解許容量が少なく,抽出された介在物の代表性が課題であったが,Chinoら46)はマレイン酸−テトラメチルアンモニウムクロリド−メタノール(MA)を電解液として用いることにより,従来の電解液の50倍以上の鋼を電解できることを報告している。MA中への酸化物の溶損についての報告43,44)がある。

5. まとめ

本章では,非金属介在物・析出物の分析に関して,直接観察による顕微鏡法,間接分析としての発光分光法および非破壊的介在物センサー,さらには高精度組成定量の可能な抽出分析法について,1970年頃から最近に至る研究の一部をレビューした。特に機器分析や化学分析手法は,すでにJIS,ASTM等で規格化されているものが多いものの,その適用にあたっては鋼種,対象介在物・析出物に応じて慎重に行う必要がある。あらゆる種類,サイズの対象物を一つの手法で評価できることが理想ではあるが,そのような万能な方法は未だに開発されていない。このため,それぞれの手法の特徴を理解し,これらを補完的に使用することが正しい評価の早道である。本文中にも記述したように,顕微鏡法による二次元情報のみでは介在物・析出物のサイズ,量を評価するうえで誤差を生じやすい,一方で抽出法では,試料中の平均情報が得られやすい利点はあるものの,正しく抽出可能な介在物・析出物のサイズや種類が限定されることがある。従って,常に複数の手法による補完的な評価が必要である。

特に走査電子顕微鏡法の高度化には目覚しいものがある。ここでは,紙面の都合で触れなかったが,集束イオンビーム加工装置(Focused Ion Beam,通称FIB)と,EDS法の組み合わせによって,加工面の観察と分析を行い,材料中の析出物の三次元情報を得る試みも行われている47)。こうした研究は,従来の二次元情報としての顕微鏡法の限界を打開するものであり,主観に依らない画像処理技術,ビッグデータ処理の技術向上によって,近い将来の汎用化が期待できる。

文献
 
© 2014 The Iron and Steel Institute of Japan

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