Tetsu-to-Hagane
Online ISSN : 1883-2954
Print ISSN : 0021-1575
ISSN-L : 0021-1575
Regular Article
Dynamic Material Flow Analysis of World Steel Cycle in Machinery
Niina FujitsukaKenichi NakajimaYasunari Matsuno
Author information
JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2014 Volume 100 Issue 8 Pages 1036-1042

Details
Synopsis:

In this work, a dynamic material flow analysis (MFA) was conducted to estimate the global flow and in-use stock of steel for 4 machines (engineering and construction equipment, agricultural machinery, fans and pumps, and conveyance machines) in 42 countries until 2050. Concerning 3 machines (engineering and construction equipment, fans and pumps, and conveyance machines), the growth of in-use stock and demand for steel was estimated based on the historical growth in Japan until now. For agricultural machinery, the growth of in-use stock and demand for steel was estimated based on the historical growth of steel in 42 countries until now. It was estimated that the in-use stock, demand and discard of steels for these machines would be 1.4-1.7 billion t, 100 million t and 80-100 million t, respectively.

1. 背景

鉄鋼材は最も消費量の大きい金属素材であり,天然資源保全と環境保護の観点から,社会中の製品に蓄積された素材を二次資源として有効利用することが重要である。そのために,社会における各種素材の,資源の採掘から,製造,使用,廃棄,回収に至る物質の流れを解析するマテリアルフロー分析(Material Flow Analysis, MFA)の手法が開発され,多様な視点からの研究1,2)が実施されており,これらの金属リサイクルにおける貢献はReck and Graedel2)により紹介されている。

中でもHatayamaらの研究1)では,世界42カ国を対象とした鋼材の動的MFAを行っている。この研究では,鋼材を8用途(土木,建築,産業機械,電気機械,自動車,造船,容器,その他)に分類して現在までの蓄積量,投入量および排出量を推計した。さらに,土木,建築,自動車の3用途について将来推計を行っている。この3用途用鋼材は,2010年における鉄鋼消費量のうち64%を占める。またKawaharaら3)は2010年における鉄鋼消費量のうち2%を占める造船用途鋼材について将来推計を行っている。

しかしながら,2010年における鉄鋼消費量のうち11%を占める機械用途鋼材について,詳細な将来推計は行われていない。その背景には,機械には様々な製品があり1台あたりに用いられる鋼材の重量が大きく異なること,中古品を含む輸出入量に伴うフローの把握が難しいこと等があげられる。

そこで本研究では,機械を各種用途に分類し,相対的に鋼材需要量の大きな用途に焦点を当て,将来の世界における機械用途鋼材の蓄積量,投入量および排出量の将来推計を目的とする。

2. 手法

2・1 機械の分類

内閣府経済社会総合研究所の統計4)では,機械は大きく産業機械,電気・通信機械,重電機,原動機の4つに分類される。Fig.1に2012年におけるこの4種類の機械の国内機種別受注額4)の現状を示す。

Fig. 1.

 Machinery Orders by Machinery Classification 2 in Japan (2012).

さらに,産業機械は風水力機械,運搬機械,産業用ロボット,金属加工機械,化学機械,冷凍機械,合成樹脂加工機械,繊維機械,建設機械,鉱山機械,農林用機械,その他の12項目,電気・通信機械は電子計算機,通信機,電子応用装置,電気計測器,半導体製造装置の5項目,重電機は発電機とその他重電機の2項目,原動機は原子力原動機,火水力原動機,内燃装置の3項目に分類されている。

機械は,このように多様な項目に分類され,それぞれの用途で寿命や使用鋼材の重量が異なると考えられる。そのため項目ごとに分類し推計を行う必要がある。特に,本研究では,2012年における国内生産量が大きい,建設機械,風水力機械,農林用機械,運搬機械の4項目について推計した。なお,2012年におけるこれら4項目の国内機械受注額に占める割合は,建設機械:9%,風水力機械:4%,農林用機械:3%,運搬機械:4%である。

2・2 機械用鋼材の蓄積量,投入量および排出量の推計

2・2・1 推計手法の概要

機械用鋼材を項目ごとに,Hatayamaらの手法1)に基づき推計を行った。また,将来については現在までの推移から各パラメータを決定し,モデルを構築することで,機械用鋼材の蓄積量,投入量および排出量を推計した。統計資料からデータを引用する際,貿易統計5)と機械統計年報6)では品目区分が完全に一致していないことや,貿易統計には中古品の輸出入量などが含まれることが課題として挙げられるが,後述の手法によりその補正を行った。

2・2・2 建設機械の推計

本研究では,建設機械をブルドーザ,アングルドーザー,地ならし機,スクレーパー,メカニカルショベル,エキスカベーター,ショベルローダー,突固め用機械およびロードローラー(自走式のものに限る)と定義した。これは2012年における貿易統計5)の輸出統計品目表の統計番号8429に分類される機械であり,他統計や過去の統計から相当する項目を決定して推計した。機械統計年報では,02土木建設機械,鉱山機械および破砕機の1装軌式トラクタ(ブルドーザに限る),5-7ショベル系(油圧式)掘削機械および9-11整地機械を対象とした。また,貿易統計は輸出入や年次によって区分が異なるため,Table 1に示す項目を対象とした。

Table 1. The correspondence table of engineering and construction equipment (8429, trade of Japan, export, 2012).
Trade of Japan / ExportTrade of Japan / Import
1975 or beforeFrom 1976 to 1980From 1981 to 19871975 or beforeFrom 1976 to 1980From 1981 to 1987From 1988 to 2012
7184118423210842321071841184231118423111842911000
7184128423220842322071842284231128423112842919000
7184138423300842331071843184232118423211842920000
7184218423410842339071844184232198423331842930000
7184248423490842341071844284233318423332842940000
7184258423610842349071844384233328423333842951000
7184288423620842361071844984233338423339842952000
842362084233398423341842959000
84233418423342
84233428423343
84233438423349
8423349

2012年までの日本国内における建設機械の投入量を(1)式によって求め,排出量および蓄積量を求めた。   

I=(ShEx+Im)×W×B(1)

Iは建設機械の投入量[t],Shは出荷台数[台],Exは輸出台数[台],Imは輸入台数[台]を表す。また,Wは1台あたりの重量[t/台],Bは鉄鋼原単位のことである。本研究では,鉄鋼原単位とは製品の重量1 tあたりに含まれる鉄鋼の重量のことを示す。

出荷台数は機械統計年報6),輸出および輸入台数は貿易統計5)から引用した。また,1台あたりの重量については同統計から重量を台数で割ることにより求めた。機械統計年報からは,1963-1965年の間のみ出荷重量の統計が得られたので,1966年以降は1965年の値を用いた。鉄鋼原単位は,建設機械の重量はほぼ鉄鋼材によるものと仮定し1と設定した。なお,文献7)によれば,建設機械のカウンターウェイト中には,赤鉄鉱,磁鉄鉱,鉄粉,コンクリートなどが用いられている。それゆえ,本論文では,鉄鉱原単位を1と仮定していることにより,鋼材消費量,ストック量に関して,若干の過大評価をしていることに留意する必要がある。

寿命分布については,既存研究8)を参考にし,ワイブル分布を使用し,形状母数1.82,製品寿命15年と設定した。

建設機械は,土木や建築の工事に必要となる機械である。そこで各国における土木や建築の工事の増加に伴い,建設機械の保有台数が増加すると考えることができる。さらに,土木および建築用鋼材の投入量は,土木や建築の工事の増加に比例し,建設機械用鋼材の蓄積量は建設機械の保有台数に比例すると考えることができる。そこで,本研究では,建設機械用鋼材の蓄積量が土木および建築用鋼材の投入量に比例するとして,日本における1970年から2012年までの建設機械用鋼材の蓄積量と土木および建築用鋼材の投入量を直線近似し,その近似式を世界42カ国に適応させて2050年までの建設機械用鋼材の蓄積量を推計した。この結果から,建設機械用鋼材の投入量および排出量を推計した。

尚,2050年まで42カ国についての土木および建築用鋼材の投入量のデータは既存研究1)の結果を用いた。

2・2・3 風水力機械の推計

本研究では,風水力機械を気体ポンプ,真空ポンプ,気体圧縮機およびファン並びに換気用又は循環用のフード(ファンを自蔵するものに限るものとし,フィルターを取り付けてあるかないかを問わない)と定義する。これは2013年における貿易統計の輸出統計品目表の統計番号8414に分類される機械である。機械統計年報では,06ポンプ,圧縮機および送風機の1-8ポンプ(手動式および消防ポンプを除く)と07油圧機器および空気圧機器の1-3油圧機器を対象とした。また,貿易統計は輸出入や年次によって区分が異なるため,Table 2に示す項目を対象とした。

Table 2. The correspondence table of fans and pumps (8414, trade of Japan, export, 2012).
Trade of Japan / ExportTrade of Japan / Import
1975 or beforeFrom 1976 to 1980From 1981 to 19871975 or beforeFrom 1976 to 1980From 1981 to 1987From 1988 to 2012
7192718411111841111171927184111108411110841410000
7192728411119841111971927984111208411120841420000
7192798411120841112071928184112918411210841430010
7192818411131841113171928284112928411291841430090
7192828411132841113271928384112938411292841440000
7192838411133841113371928484112948411293841451010
7192848411134841113471928584112958411294841451020
71928584113108411310841451090
71928984113908411391841459010
8411399841459021

貿易統計には中古品の輸出入量などが含まれることの補正のため,(1)式の輸出台数および輸入台数を新品輸出台数および新品輸入台数として投入量を求めた。ここでは,以下の手法より,新品輸出台数および新品輸入台数を推計した。

新品輸出台数および新品輸入台数は,中古品の金額は新品の金額と比較して非常に小さいと仮定し,以下の(2)式から推計した。   

Nn=PnoPn,uPnPn,u(2)

Nnは新品台数[台],Pnoは新品および中古品の総金額[円],Pnは新品の総金額[円],Pn,uは1台あたりの新品の金額[円/台]を示す。

新品1台あたりの金額[円/台]は,機械統計年報の出荷金額[円]を出荷台数[台]で割ることにより求めた。

またその結果から,排出量および蓄積量を求めた。寿命分布については,既存研究8)を参考にし,ワイブル分布を使用し,形状母数1.48,製品寿命15.9年と設定した。

風水力機械は大型冷凍機や大型プラント等に使用され,経済発展に伴い保有量が増加すると考えられる機械である。そこで,上記より求めた2010年までの日本における風水力機械の蓄積量の推移とGDP per capitaの関係を求め,世界各国の風水力機械はその結果と同じように推移すると仮定して,2050年までの蓄積量を推計し,投入量および排出量を算出した。

2・2・4 農林用機械の推計

本研究では,農林用機械のうち,2012年における日本の農林用機械の生産高のうち53%を占める農業用トラクターを検討した。これは2012年における貿易統計の輸出統計品目表の統計番号870190に分類される機械である。また,機械統計年報では,10農業用機械器具および木材加工機械の2-4装輪式トラクタを対象とした。また,貿易統計は年次によって区分が異なるため,Table 3に示す項目を対象とした。

Table 3. The correspondence table of agricultural machinery (870190, trade of Japan, export, 2012).
Trade of Japan / Export
1975 or beforeFrom 1976 to 1980From 1981 to 1987
71251987019198701912
8701913
8701914

農業用トラクターは統計資料9,10)から42カ国,1950年から1999年までの保有台数のデータを得ることが出来た。そこで,(3)式に従い,保有台数から農業用トラクター用鋼材の蓄積量を推計し,その結果から排出量および投入量を求めた。   

S=Nt×W×B(3)

Sは農業用トラクター用鋼材の蓄積量[t],Ntはトラクターの保有台数[台],Wは1台あたりの重量[t/台],Bは鉄鋼原単位のことである。

また,日本における農業用トラクターの出荷台数を統計6)から1966年から2012年まで得ることができた。そこから,(4)式に従い投入量を求めた。   

I=(ShEx)×W×B(4)

Iは農林用機械の投入量[t],Shは出荷台数[台],Exは輸出台数[台]を表す。また,Wは1台あたりの重量[t/台],Bは鉄鋼原単位のことである。なお,農業用トラクターは大幅な輸出超過になっているので,輸入台数は(4)式にて考慮していないが,結果に影響は出ないと判断した。ここで求めた日本における農業用トラクター用鋼材の投入量と蓄積量から,最小二乗法を用いて農業用トラクターの平均寿命を求めた。尚,参考文献1)から,寿命分布はワイブル分布を使い,形状母数は3.5とした。この値を42カ国に設定した。

本研究で対象とした農業用トラクターは,農地を耕すために使われる機械であり,農地が拡大すると導入台数が増える。そのため,経済が発展すると農林用機械の保有台数は増加すると考えられる。そこで,上記より求めた1999年までの一人あたりの農業用トラクター保有台数とGDP per capitaの関係を求め,将来もその結果と同じように推移すると仮定して,2050年までの蓄積量を推計し,投入量および排出量を算出した。

2・2・5 運搬機械の推計

本研究では,運搬機械をその他の持ち上げ用,荷扱い用,積込み用又は荷卸し用の機械(例えば,昇降機,エスカレータ,コンベヤおよびロープウェー)と定義した。これは2012年における貿易統計の輸出統計品目表の統計番号8428に分類される機械である。機械統計年報では,08運搬機械および産業用ロボットの9-12コンベア,13エレベータ(自動車用エレベータを除く)および14エスカレータを対象とした。また,貿易統計は輸出入や年次によって区分が異なるため,Table 4に示す項目を対象とした。

Table 4. The correspondence table of conveyance machines (8428, trade of Japan, export, 2012).
Trade of Japan / ExportTrade of Japan / Import
1975 or beforeFrom 1976 to 1980From 1981 to 19871975 or beforeFrom 1976 to 1980From 1981 to 1987From 1988 to 2012
7193148422300842230071931384221208422120842810000
7193168422400842240071931584221308422130842820000
7193188422500842250071931884221418422141842831000
7193288422621842262171934284221428422142842842000
7193428422622842262284221498422149842833000
7193438422623842262384222408422240842839000
8422629842262984222608422260842840000
84226308422630842860000
84226908422690842890000

2012年までの日本国内における運搬機械の投入量を(1)式によって求め,排出量および蓄積量を推計した。その他の機械では出荷台数を用いているが,運搬機械は機械統計年報6)から生産台数および重量のデータしか得ることが出来なかったため,生産台数を使用した。

生産台数は機械統計年報6),輸出,輸入台数は貿易統計5)から引用した。1台あたりの重量は同統計から生産重量を生産台数で割ることにより求めた。機械統計年報6)からは,コンベアおよびエレベーターについては各年,エスカレーターについては1957-1965年の間のみ生産重量が得られたので,1966年以降は1965年の値を用いた。鉄鋼原単位は,運搬機械の重量はほぼ鉄鋼材によるものと仮定し1と設定した。それゆえ,鋼材消費量,ストック量に関して,若干の過大評価をしていることに留意する必要がある。

寿命分布は,既存研究11)を参考にし,ワイブル分布を使用し,形状母数1.46,製品寿命31.5年と設定した。

運搬機械は大型な物や人を運ぶ機械であり,経済発展に伴い保有量が増加すると考えられる。そこで,上記より求めた2010年までの日本における運搬機械の蓄積量の推移とGDP per capitaの関係を求め,世界各国の運搬機械はその結果と同じように推移すると仮定して,2050年までの蓄積量を推計し,投入量および排出量を算出した。

3. 結果

3・1 建設機械の推計結果

日本における建設機械用鋼材の1965年から2012年までの蓄積量の推計結果をFig.2に示す。また,建設機械用鋼材蓄積量と土木建築用鋼材投入量の関係をFig.3に示す。各国における土木や建築の工事の増加に伴い,建設機械の保有台数が増加するという仮説がある程度成り立つと考えられる。近似式は,(5)式となった。   

Y=0.4938×X(5)

Fig. 2.

 In-use steel stock for construction machinery in Japan, from 1965 to 2012.

Fig. 3.

 Relationship in-use steel stock for construction machinery and Steel input for construction and buildings in Japan.

Xは土木建築用鋼材投入量,Yは建設機械用鋼材蓄積量である。また,決定係数は0.4266となった。

この結果から求めた,2050年までの世界全体の建設機械用鋼材の蓄積量の推計結果をFig.4に示す。2050年には世界全体で約8億t,そのうちアジアでは約7億tの蓄積量となることが推計された。これは世界の2050年における,土木,建築および自動車用鋼材蓄積量12)と比較して約1.3-2.0%にあたる。

Fig. 4.

 In-use steel stock for construction machinery by areas towards 2050.

3・2 風水力機械の推計結果

日本における風水力機械用鋼材の1970年から2012年までの投入量,蓄積量および排出量を推計した。2012年における風水力機械の投入量は約108万 t,蓄積量は1933万 t,排出量は約116万 tと推計された。

また,一人あたりの蓄積量の推計結果をFig.5に示す。2005年には一人あたり0.15 tに達し,それ以降は0.15 t程度の値で飽和していることが分かる。そこで本研究では,風水力機械の一人あたりの蓄積量の飽和値を0.15と設定した。また,日本における一人あたり風水力機械の蓄積量を,GDP per capitaを変数とし,飽和値を0.15として,最小二乗法を用いて,(6)式にカーブフィッティングさせることで形状を決定するパラメータを得た。形状を決定するパラメータαおよびβは,それぞれ10.6,0.59となった。この値を,世界42カ国の将来推計に用いた。   

St=Ssat1+exp(αβ×GDPt)(6)

Fig. 5.

 In-use steel stock for fans and pumps equipment per person in Japan, from 1970 to 2012.

Stt年における一人あたりの国内蓄積量,Ssatは蓄積量の飽和値,GDPtt年におけるGDP/Cap.,αとβはロジスティック曲線の形状を決定するパラメータである。

この結果から求めた,2050年までの42カ国の風水力機械用鋼材の投入量,蓄積量および排出量はそれぞれ約4000万 t,約5億3000万 t,約3000万 tと推計された。42カ国の風水力機械用鋼材蓄積量の推計結果をFig.6に示す。先進国が多いと考えられる北米,C.I.S.およびヨーロッパでは飽和傾向にあることに対して,アジアを中心とした発展途上国では2050年まで増加傾向が見られる。2050年には世界全体で約5億 t,そのうちアジアでは約3億 tの蓄積量となることが推計された。これは世界の2050年における,土木,建築および自動車用鋼材蓄積量12)と比較して約0.8-1.3%にあたる。

Fig. 6.

 In-use steel stock for fans and pumps equipments by areas towards 2050.

3・3 農林用機械の推計結果

世界42カ国における1950年から1999年の農林用の投入量,蓄積量および排出量を推計した。地域別の蓄積量の推計結果をFig.7に示す。1999年における農林用機械の投入量は約105万 t,蓄積量は約1650万 t,排出量は約102万 tと推計された。また,先進国と考えられるヨーロッパ,北米,CISおよび日本における一人あたりの農林用機械保有台数とGDP per capitaの関係をFig.8に示す。一人あたり0.008台から0.035台で飽和していることが見受けられる。1999年における農林用機械用鋼材蓄積量は,日本における鋼材蓄積量のわずか0.79%である。そこで,おおよそ一人あたり0.02台で飽和すると考えても結果にあまり差が生じないと考え,飽和値を0.02台と設定し,世界42カ国でカーブフィッティングを行い,将来推計を行った。

Fig. 7.

 In-use steel stock for agricultural machinery by areas, from 1950 to 1999.

Fig. 8.

 The number of agricultural tractor per person, from 1950 to 1999.

次に,日本における農林用機械保有台数と生産台数の関係から求めた平均寿命は,17年となった。将来推計にはこの値を用いた。

以上の結果から求めた,2050年までの42カ国の農林用機械用鋼材の投入量,蓄積量および排出量はそれぞれ約601万 t,約8031万 t,約479万 tと推計された。42カ国の農林用機械用鋼材蓄積量の推計結果をFig.9に示す。先進国が多いと考えられる北米,C.I.S.およびヨーロッパでは飽和傾向にあることに対して,アジアを中心とした発展途上国では2050年まで増加傾向が見られる。これは世界の2050年における,土木,建築および自動車用鋼材蓄積量11)と比較して約0.13-0.19%にあたる。

Fig. 9.

 In-use steel stock for agricultural machinery by areas towards 2050.

3・4 運搬機械の推計結果

日本における運搬機械用鋼材の1970年から2012年までの投入量,蓄積量および排出量を推計した。2012年における運搬機械の投入量は約36万 t,蓄積量は約1159万 t,排出量は約30万 tと推計された。

また,一人あたりの蓄積量の推計結果をFig.10に示す。2008年には一人あたり0.09 t に達し,それ以降は0.09 t程度の値で飽和していることが分かる。そこで本研究では,運搬機械の一人あたりの蓄積量の飽和値を0.09 tと設定した。また,日本における一人あたり運搬機械の蓄積量を,GDP per capitaを変数とし,飽和値を0.09として,最小二乗法を用いて,(6)式にカーブフィッティングさせることで形状を決定するパラメータを得た。形状を決定するパラメータαおよびβは,それぞれ5.75,0.33となった。この値を,世界42カ国の将来推計に用いた。

Fig. 10.

 In-use steel stock for conveyance machines per person in Japan, from 1970 to 2012.

この結果から求めた,2050年までの42カ国の運搬機械用鋼材の投入量,蓄積量および排出量はそれぞれ約1631万 t,約3億5203万 t,約928万 tと推計された。42カ国の運搬機械用鋼材蓄積量の推計結果をFig.11に示す。先進国が多いと考えられる北米,C.I.S.およびヨーロッパでは飽和傾向にあることに対して,アジアを中心とした発展途上国では2050年まで増加傾向が見られた。これは世界の2050年における,土木,建築および自動車用鋼材蓄積量12)と比較して約0.6-0.9%にあたる。

Fig. 11.

 In-use steel stock for conveyance machines by areas towards 2050.

4. 結論

本研究では,建設機械,風水力機械,農林用機械および運搬機械について世界42カ国における将来の投入量,蓄積量および排出量の推計を行った。この4種機械用鋼材の2010年における国内生産量は156万 tであり,国内鋼材消費量のうち2.4%にあたる。

2050年における4種機械の蓄積量,投入量および排出量は,それぞれ約14-17億 t,約1億 tおよび約約8千万−1億t となった。2050年における世界42カ国の,土木,建築および自動車用鋼材蓄積量は約427-655億 tと推計されており,本研究ではそのうち約3%にあたる4種機械用途鋼材を推計することができた。

尚,本研究では4種の機械について推計したが,他にも原動力機械,重電機機械,電気通信機械,産業機械にも金属加工機械,等があり,それらについても推計が望まれる。また,建設機械,風水力機械および運搬機械については,日本における蓄積量を推計し,その推移から将来の推移を仮定し,将来推計を行ったが,発展の仕方には地域差があることが考えられるため,世界各国の統計から各国のより精緻な推計が求められる。

謝辞

本研究はJSPS科研費25241027の助成を受けたものです。

文献
 
© 2014 The Iron and Steel Institute of Japan

This article is licensed under a Creative Commons [Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International] license.
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
feedback
Top