Tetsu-to-Hagane
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Influence of Lime Coating Coke on NOx Concentration in Sintering Process
Kazuaki KatayamaShunji Kasama
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2015 Volume 101 Issue 1 Pages 11-18

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Synopsis:

Decreasing NOx emission in sintering process is a key issue in steel industry. NOx emission in sintering process is decreased by coke combustion under high temperature. It has been investigated that coating layer of CaO-Fe2O3 composition on coke surface (CF coating method) is effective for decreasing NOx. It has been considered that CaO-Fe2O3 coating layer promotes high temperature combustion and functions as catalyst for reduction of nitrogen oxide.

In this study, CaO coating of coke (Lime coating coke: LCC) has been studied as simple technology for decreasing NOx. As the results, LCC has been effective like a CF coating method and it has been understood that CF melt formation on coke surface is important for decreasing NOx. About coating CaO ratio, 10% was preferable. And decrease in mixing time of LCC with iron ores (Post-mixing) was also effective. By LCC post-mixing, 17.6% NOx decreased and sinter productivity increased.

1. 緒言

焼結工程は製鉄所における最大のNOx排出源であるため,1973年のNOx排出規制を機に,鉄鋼各社では焼結機排ガスのNOx低減研究を開始した。これまでに,多くの製鉄所で高炉の拡大改修に合わせて焼結機の機長延長などが実施され焼結鉱の生産量は増大したが,NOx規制値は緩和されることなく厳しくなっていることから,焼結機におけるNOxの低減対策が不可避となっている。

これまでの精力的な研究の結果,焼結排ガス中のNOxは粉コークス等の燃料中窒素由来のFuel NOを主体とし1),粉コークス表面に形成されるガス境膜内の酸素濃度を低下させる高温燃焼がNOx低減に有効であることが明らかとなっている2)。実機の焼結操業では,鉄鉱石造粒用バインダーとして生石灰を配合する通気性改善技術がNOx低減に有効であるが,燃焼速度向上に伴う高温燃焼の促進によって効果が発現すると考えられる3)。その他,粉コークス粒度制御の視点でも検討が行われており,低温で燃焼しやすい0.5 mm以下の微粉コークスを低減することで,NOxを抑制できることが知られている4)。しかしながら,実プロセスにおいて微粉を篩分け除去することは困難であり,実用面での展開が図られていない。

1992年にKasaiらは,予熱した炭材の燃焼実験からカルシウムフェライト組成粉を粉コークス表面に被覆するNOx低減法の有効性を提唱している5,6,7)。このカルシウムフェライト被覆法(CF被覆法)は,粉コークスの燃焼環境を被覆層の触媒効果や溶融反応によって制御する新しい技術思想であり,確実なNOx低減効果が確認されている。しかしながら,粉コークス表面に厚い被覆層を形成させることは燃焼不良を招き生産性を悪化させる恐れがある。また,大量処理を前提とした商用プラントにおいて,被覆層の厚みや成分を精密にコントロールできるプラントイメージを描くことが難しかったため,実用化には至っていない。

本研究では,KasaiらのCF被覆法の着想をさらに発展させ,より簡素な処理工程で高いNOx低減効果を享受できる新しいプロセスの開発検討を行った。粉コークス表面被覆層形成や微粉低減処理のNOx生成と生産性に及ぼす影響を詳細に調査した結果,NOx低減技術として粉コークス表面にCaOのみを被覆した改質技術(Lime coating coke:LCC)の有効性を確認することができた。ここでは,このLCC技術の開発過程における基礎的な検討結果について報告する。

2. 実験方法

焼結NOxの低減に有効な被覆層の組成を明らかにするために,被覆材の量と組成を変更した被覆炭材を準備し,直径300 mm,高さ600 mmの焼結鍋で評価した。次に,NOx低減に有効な粉コークス表面の反応を理解するために,不活性なアルミナボール充填層内の被覆炭材燃焼実験と被覆層−鉄鉱石間の溶融挙動の直接観察を実施した。

なお,本検討においては,(1)式で計算されるNOx転換率(ηNO:窒素入量に対するNOx生成量のモル比)を用いて焼結NOxを評価した。また,排ガス中に含まれるCOおよびCO2は点火ガス,粉コークスおよび石灰石由来とみなし,NOxは全て粉コークスに由来すると仮定して計算を行った。   

ηNO=100×NOx/{(CO+CO2)NCOKE/(CLPG+CCOKE+CLS)}/10000(1)

ここで,

ηNO:NOx転換率(%)

NOx:排ガスNOx(ppm)

CO:排ガスCO(%)

CO2:排ガスCO2(%)

NCOKE:粉コークス由来の窒素入量(mol)

CLPG:点火ガス由来のカーボン入量(mol)

CCOKE:粉コークス由来のカーボン入量(mol)

CLS:石灰石由来のカーボン入量(mol)

2・1 粉コークスの処理方法

焼結鍋試験で用いた粉コークスの粒度分布をTable 1に示す。粉コークスAは,0~5 mmの一般的な焼結用粉コークスである。粉コークスBは,Aの0.5 mm以下を篩分け除去した粉コークスである。粉コークスCは,Aの1.0 mm以下を篩分け除去した粉コークスである。焼結鍋試験で評価する被覆炭材の製造フローをFig.1に示す。被覆材と粉コークスを撹拌羽根内蔵型のミキサー内で水分を添加しながら180 s間の混練被覆処理を実施し,含水率8%のサンプルを調製した。生石灰単独被覆のLCC以外に生石灰と0.25 mm以下の豪州鉱石粉の混合物を被覆したコークス(CFCC)も製造した。CFCC製造においては使用する生石灰と鉱石粉の重量を同じにした。混練後のLCCやCFCCでは,生石灰中のCaO分が水和反応によりCa(OH)2へ変化した状態で粉コークス表面に被覆された。

Table 1. Coke size distribution for sintering pot test.
–0.25 mm–0.5 mm–1.0 mm–3.0 mm–5.0 mmMean size
A12.9%8.2%27.0%27.9%24.0%1.78 mm
B0%0%34.2%35.4%30.4%2.18 mm
C0%0%0%53.8%46.2%2.92 mm
Fig. 1.

 Preparation for LCC and CFCC. (Online version in color.)

2・2 焼結鍋試験

直径300 mm,高さ600 mmの焼結鍋を用いて各種炭材評価の焼結試験を行った。試験水準をTable 2(S1-S8),Table 3(S9-S15)およびTable 4(S16-S22)にそれぞれ示す。また,S1~S8およびS9~S15の試験フローをFig.2およびFig.3にそれぞれ示す。鍋実験においては,全水準で熱源以外の混合造粒時間300 s,造粒物目標水分7.5%,層厚600 mm,点火時間90 s,吸引負圧15.0 kPaとして焼成し,生産率・冷間強度測定と排ガス分析を実施した。なお,原料配合については,当社内の代表的なブレンド鉱石を用い,焼結鉱目標成分SiO2=5.10%,C/S=1.78,MgO=1.30%,Al2O3=1.78%になるよう副原料配合を調製した。粉コークス配合は,鉱石と副原料の合計(新原料)に対して外数4.5%とした。

Table 2. Sintering pot test conditions (S1-S8).
Coke typeCaO for coating (CaO/coke)Quick lime ratio for iron ore granulation
S1Coke0%1.0%
S2Coke0%1.5%
S3Coke0%2.0%
S4LCC4%1.0%
S5LCC10%1.0%
S6LCC20%1.0%
S7CFCC10%1.0%
S8CFCC20%1.0%
Table 3. Sintering pot test conditions (S9-S15).
Coke typeCaO for coating (CaO/coke)Mixing time of bonding agent
S9Coke0%300 s
S10Coke0%20 s
S11LCC10%300 s
S12LCC10%150 s
S13LCC10%120 s
S14LCC10%60 s
S15LCC10%20 s
Table 4. Sintering pot test conditions (S16-S22).
Coke sizeCoke typeCaO for coating (CaO/coke)Mixing time of bonding agent
S16ACoke0%300 s
S17BCoke0%300 s
S18CCoke0%300 s
S19ACoke0%300 s
S20BCoke0%300 s
S21ALCC20%20 s
S22BLCC20%20 s
Fig. 2.

 Flow of sintering test (S1-8).

Fig. 3.

 Flow of sintering test (S9-15).

S1~8の条件では,被覆層の組成と量を変更した被覆炭材を用いて,Fig.2の鍋実験フローに従い造粒・焼成を行った。被覆CaO量はコークスに対して外数4~20%の範囲とし,−5 mm粒度の粉コークスに被覆材を配合しLCCとCFCCを調製した。これら被覆炭材を他の焼結原料と1.0 mφの試験用ドラムミキサー内で300 s間混合造粒したのち焼成した。S1~3では,鉱石造粒用の生石灰配合率を新原料に対して1.0~2.0%の範囲で変化させ,従来の生石灰配合によるNOx低減効果も確認することとした。

S9~15の条件では,Fig.3の鍋実験フローに従って,LCCとその他原料の混合時間を変更して,造粒・焼成を行った。LCCを鉱石造粒の初期から添加する一般的な方法(前添加)ではLCC混合時間が300 sとなるが,このような長時間の造粒ではLCCの被覆層が部分的に壊れる可能性があると考え,投入タイミングを調節しLCCの混合時間を20~150 sとした後添加条件でも試験した。さらに,LCCの被覆層の残存状況を確認するためにドラムミキサー処理完了後の造粒物を採取し,C・CaO・Feの3成分EPMAマッピングを行った。

S16~22の条件では,LCCのCaO被覆効果と粉コークス粒度調製効果の加算性を確認するために,Table 1中のコークスAおよびBからLCCを調製し鍋試験を行った。

2・3 アルミナボール充填層内の被覆炭材燃焼試験

鉱石の溶融影響がない条件下でLCCの燃焼反応を解析する目的で,アルミナボール充填層を用いた被覆炭材燃焼試験を実施した。被覆炭材の配合条件(C1-12)をTable 5に示す。1.4~2.0 mmの粉コークスに生石灰や0.25 mm以下の豪州鉱石粉を被覆材として配合し,両者の組成や量を変更した被覆炭材を調製した。

Table 5. Coating conditions of coke combustion test.
QL (%)Ore (%)Coke (%)
C100100
C250
C3100
C4200
C5010
C6020
C751.3
C853.3
C955.0
C1057.5
C11520
C121010

(QL: quick lime)

燃焼試験装置の概略をFig.4に示す。不活性なアルミナボール(2.0 mmφ)を主原料として,被覆炭材3.0%とベントナイト微粉1.0%を添加し,水分0.05%で造粒した。ここでベントナイトはアルミナボールに炭材を接着させるバインダーとして使用し,実験装置への装入の際にこれらが分離・偏析することを防止した。その後,造粒物を直径100 mm,高さ400 mmの本装置に充填して,点火時間90秒,吸引負圧4.0 kPa一定のもとで被覆炭材を燃焼させ,排ガス中のNOx濃度などの測定を行った。

Fig. 4.

 Apparatus for coke combustion test.

2・4 被覆層溶融挙動の直接観察

粉コークス表面被覆層と鉄鉱石の溶融挙動を調査するため,Fig.5に示す赤外線加熱炉(ゴールドイメージ炉:GI炉)を用いて昇温速度15°C/秒,最高温度1400°C一定の条件で昇温実験を行った。2.0 mm粒度の粉コークスもしくはCaO 10%配合のLCCを8 mmφのアルミナ坩堝内中央に配置し,その周囲に0.5~1.0 mm粒度の鉱石粉を並べた疑似鉱石層内で被覆層の溶融挙動を観察した。

Fig. 5.

 Observation system of coating layer melt formation.

3. 結果

3・1 LCC配合時の焼結生産性および焼結鉱強度

焼結鍋試験における生産性関連指標の結果をTable 6(S1-S8),Table 7(S9-S15),Table 8(S16-S22)にそれぞれ示す。LCCおよびCFCC前添加条件S4~8では,粉コークス前添加条件S1と比べて歩留ηや冷間強度SIが向上し生産率Pも改善した。特に,被覆CaO量を10%以上としたS5~S8では,鉱石造粒用の生石灰配合率を2%まで高めた条件S3と同レベルの高い生産率であり,さらにLCCやCFCCの方が高歩留・高SIであった。

Table 6. Sintering pot test results (S1-S8).
Coke typeT (s)FFS (mm/min)η (%)P (t/d/m2)SI (%)
S1Coke (A)30026.467.333.674.6
S2Coke (A)30027.968.835.974.6
S3Coke (A)30029.867.237.372.8
S4LCC (A)30026.065.932.775.8
S5LCC (A)30028.070.437.075.9
S6LCC (A)30028.671.237.875.7
S7CFCC (A)30028.069.636.474.9
S8CFCC (A)30028.670.337.674.9

(T: mixing time of bonding agent)

Table 7. Sintering pot test results (S9-S15).
Coke typeT (s)FFS (mm/min)η (%)P (t/d/m2)SI (%)
S9Coke (A)30025.870.034.174.7
S10Coke (A)2028.272.538.976.6
S11LCC (A)30027.373.237.676.0
S12LCC (A)15027.774.739.476.9
S13LCC (A)12027.976.540.677.2
S14LCC (A)6028.374.940.177.1
S15LCC (A)2029.673.440.974.7

(T: mixing time of bonding agent)

Table 8. Sintering pot test results (S16-S22).
Coke typeT (s)FFS (mm/min)η (%)P (t/d/m2)SI (%)
S16Coke (A)30024.769.233.075.6
S17Coke (B)30025.770.335.273.4
S18Coke (C)30025.164.230.968.8
S19Coke (A)30029.365.736.474.0
S20Coke (B)30030.564.436.972.2
S21LCC (A)2030.972.441.275.2
S22LCC (B)2032.468.840.770.7

(T: mixing time of bonding agent)

LCC後添加条件S11~15では,粉コークス前添加条件S9と比べて歩留やSIが向上し,フレームフロントスピードFFSも改善したため,生産率の改善効果が大きかった。この傾向はドラムミキサー内でのLCC混合時間の短い条件で強くなった。

微粉コークス比率を低減した条件S20では通常粒度の粉コークス条件S19に対して歩留・強度の低下が確認された。LCCの場合も微粉低減粉コークスから製造した場合において同様の傾向を示したことから,焼結生産性・強度の観点では通常粒度の粉コークスからLCCを製造することが望ましいことがわかった。

3・2 LCC配合時の排ガス分析結果

焼結鍋試験における排ガス分析結果をTable 9(S1-S8),Table 10(S9-S15),Table 11(S16-S22)にそれぞれ示す。LCCおよびCFCC前添加条件S4~8では,粉コークス前添加条件S1と比べてηNOが低下し,排ガス酸素濃度もわずかに低下した。LCC後添加条件S11~15では,粉コークス前添加条件S9と比較してηNOと排ガス酸素濃度が大幅に低下したことから,LCC前添加よりも優れていることがわかった。微粉コークス比率を低減した条件S20では通常粒度の粉コークス条件S19に対してηNOは低下したが,排ガス酸素濃度は増加した。

Table 9. Exhaust gas analysis of sintering pot test (S1-S8).
Coke typeT (s)CO (%)CO2 (%)O2 (%)NOx (ppm)ηNO (%)
S1Coke (A)3000.869.213.124030.7
S2Coke (A)3000.849.213.023629.9
S3Coke (A)3000.789.013.122729.2
S4LCC (A)3000.969.513.223328.7
S5LCC (A)3000.839.512.922727.8
S6LCC (A)3000.829.412.922527.9
S7CFCC (A)3000.839.412.923128.4
S8CFCC (A)3000.819.312.722628.2

(T: mixing time of bonding agent)

Table 10. Exhaust gas analysis of sintering pot test (S9-S15).
Coke typeT (s)CO (%)CO2 (%)O2 (%)NOx (ppm)ηNO (%)
S9Coke (A)3000.918.913.522630.7
S10Coke (A)201.2910.512.028332.0
S11LCC (A)3000.889.113.321327.8
S12LCC (A)1500.929.512.921326.6
S13LCC (A)1200.989.712.621826.4
S14LCC (A)601.019.412.920926.0
S15LCC (A)201.0410.112.221725.3

(T: mixing time of bonding agent)

Table 11. Exhaust gas analysis of sintering pot test (S16-S22).
Coke typeT (s)CO (%)CO2 (%)O2 (%)NOx (ppm)ηNO (%)
S16Coke (A)300 s0.89.013.622729.8
S17Coke (B)300 s0.99.113.421127.2
S18Coke (C)300 s0.57.914.616425.3
S19Coke (A)300 s0.88.813.222429.5
S20Coke (B)300 s0.88.713.120427.2
S21LCC (A)20 s1.010.411.822324.6
S22LCC (B)20 s0.89.812.320023.7

(T: mixing time of bonding agent)

3・3 アルミナボール充填層による被覆炭材燃焼試験結果

被覆炭材燃焼実験における排ガス分析,燃焼完了時間およびηNOの結果をTable 12に示す。試験開始から排ガス酸素濃度が19.5%に到達した時刻までの時間を燃焼完了時間とした。

Table 12. Exhaust gas analysis, combustion time and ηNO.
CO (%)CO2 (%)O2 (%)NOx (ppm)Combustion time (min)ηNO (%)
C1No coating0.926.213.823418.528.9
C2CaO (5)0.716.413.322416.527.7
C3CaO (10)1.075.614.520220.127.1
C4CaO (20)1.204.715.718819.628.9
C5Ore (10)1.155.015.318619.427.2
C6Ore (20)1.315.414.420418.427.4
C7CaO (5)-Ore (1.3)0.746.113.620518.326.2
C8CaO (5)-Ore (3.3)0.846.013.817718.722.5
C9CaO (5)-Ore (5)0.945.614.116419.021.8
C10CaO (5)-Ore (7.5)1.075.414.314817.919.9
C11CaO (5)-Ore (20)1.055.214.613918.719.4
C12CaO (10)-Ore (10)1.345.314.815118.620.6

被覆材中の生石灰比率とηNOの関係をFig.6に示す。アルミナボール充填層内では,鉱石粉やCaOの被覆層形成によってNOxは低下したが,限定的な効果に留まった。一方,CaO・Fe2O3系の混合被覆組成(CFCC)の条件では特筆して高い効果が発現し,融液生成の活発な共融組成に近づくほど改善した。これらのことから,NOx低減効果はCaO自体の反応ではなく,カルシウムフェライト(CF)系融液の生成を介して発現することが明らかとなった。また焼結鍋試験結果と同様,CFCCの条件では被覆用CaOを5%から10%まで高めることによってηNOが改善する傾向が確認された。

Fig. 6.

 Relation between coating layer composition and ηNO.

被覆材配合率と燃焼時間の関係をFig.7に示す。被覆層が溶融しないLCC条件では,被覆材を10%以上の高配合とした場合,燃焼時間が延長し燃焼性が低下することがわかった。一方,被覆層が溶融するCFCC条件では,被覆材配合率25%までの範囲で被覆無し条件と同等の燃焼時間となり,燃焼性を高位に維持することができた。

Fig. 7.

 Relation between coating material ratio and combustion time.

3・4 ゴールドイメージ炉での観察結果

GI炉の観察写真をFig.8に示す。LCCのCaO被覆層は800°C程度で健全な状態であったが,1200°C程度の温度に達すると隣接する鉄鉱石と反応してCF系融液を生成する現象が確認された。さらに,この融液が周囲へ拡散することで鉄鉱石とCaO被覆層の溶融量が増加し,最終的には広範囲で液相生成が認められるとともに被覆層が完全に溶融して粉コークスは露出した。一方,粉コークスの場合は,1300°Cまで昇温しても液相の生成量が極めて少なかった。

Fig. 8.

 Melting behavior of coating layer and iron ore. (Online version in color.)

4. 考察

4・1 NOx転換率に及ぼすCaO被覆量の影響

NOx転換率(ηNO)および生産率に及ぼす原料全体への生石灰配合率の影響をFig.9に示す。焼結実験では,被覆炭材の使用によりNOxが低下し,従来の生石灰添加技術より高い効果を享受した。被覆CaO量については,10%までの範囲で高めることによって効果が改善し,10%以上では効果が飽和した。さらに,被覆層組成の観点では,LCCはCFCCと同等のNOx低減効果を享受できることがわかった。生産率は原料全体への生石灰配合率を増やすことによって改善したが,CaO配合を10%以上としたLCCやCFCCでは,生石灰単純添加よりも高い生産率を得ることができた。Table 9に示した排ガス酸素濃度はLCCやCFCC条件で低下したことから,燃焼性の向上によって生産率を改善できた可能性がある。少量の被覆材で高いNOx低減効果を得るためには,約10%のCaO配合率が最適であると考えられる。

Fig. 9.

 Relation between quick lime ratio, ηNO and productivity (S1~8).

4・2 ドラムミキサー内でのLCC混合時間の影響

NOx転換率(ηNO)および生産率に及ぼすLCC混合時間の影響をFig.10に示す。LCCについては,ドラムミキサーでの混合時間短縮に合わせてNOxが低下し,混合時間を20秒まで短くした条件で5.2%のηNO改善効果(NOx低減効果17.6%)を享受した。一方,粉コークスについては,後添加操作によってηNOが悪化する逆の傾向となった。LCCの混合時間短縮はNOx低減効果を高めるだけでなく,生産率向上にも有効であることが確認された。粉コークスの混合時間を短縮する方法について,Oyamaらは混合時間を30秒まで短縮した条件で生産性が向上することを報告しており8),LCCについても同様の傾向が確認された。ただし,混合時間の更なる短縮に向けては,原料中で均一に存在させることができず生産性悪化の懸念があるため,混合状態を確認しながら混合時間調整をするべきと考える。粉コークスやLCCの混合時間短縮によって,Table 10に示したように排ガス酸素濃度の低下が確認されていることから,Oyamaらの報告した造粒性改善に加えて燃焼性の改善も生産性向上に寄与したと考えられる。

Fig. 10.

 Relation between LCC mixing time, ηNO and productivity (S9~15).

次に配合原料中LCCのEPMAマッピングをFig.11に示す。通常粉コークスを前添加した場合,コークス表面に鉄鉱石類の付着層形成が認められ,後添加操作はこの付着抑制に有効であることがわかった。LCC前添加条件では鉄石類の付着以外にCaO被覆層の崩壊も進んだが,後添加条件では平均200 μm程度の健全な被覆層を保持することが可能であった。CaO被覆層を保持するためには,他原料との混合時間を極力短くする造粒処理が有効であり,これによって高いNOx低減効果を発現したものと考えられる。

Fig. 11.

 EPMA results of raw mixture. (Online version in color.)

4・3 粉コークス微粉除去効果とLCC効果の加算性

粉コークス粒度変更による層内温度およびηNOの変化をFig.12に示す。層内温度は層高300 mm位置と110 mm位置の2点の平均値を用いた。−1.0 mm粉コークスについては,除去する量が多いほど層内温度が上昇しηNOが改善する従来通りの傾向が確認された4)。微粉コークスは,燃焼時間が短くコークス粒子への畜熱量が少なくなるため,低温で燃え尽きるものと考えられる。このことから,微粉除去はコークス粒子への蓄熱量を高めることができηNOの改善に寄与したものと推察される。

Fig. 12.

 Results of temperature in sintering bed and ηNO with different size of coke breeze (S16~18).

0.5~5 mmコークスから製造したLCCを使用した条件におけるηNOをFig.13に示す。微粉除去コークス使用やLCCの単独適用の場合と比べて,両者を組み合わせた条件において,ηNOが最も小さくなり,20%のNOx低減効果を享受した。このことから,微粉除去の効果とCaO被覆の効果には加算性があり,NOx抑制を第一に考える場合,粉コークス粒度調製も積極的に実施すべきと考えられる。

Fig. 13.

 Effect of fine coke removal & LCC (S19: Base, S20: fine removal, S21: LCC, S22: fine removal & LCC).

4・4 LCC燃焼時のカーボン燃焼率の評価

焼結層内におけるLCCの燃焼挙動を理解するために,焼結鍋試験の粉コークス前添加S9,粉コークス後添加S10およびLCC後添加S15の条件について焼成前後のカーボン収支を計算した。焼結排ガスに含まれるCO,CO2の発生は粉コークスおよび点火ガスの燃焼と石灰石の脱炭酸反応に起因しカーボンの炭酸ガス化率をこれら物質によらず一定とみなすと,カーボン入量に対する炭酸ガス化カーボン量の比率を燃焼率ηCとして扱うことができる。   

ηC=outputC/inputC(2)
  
outputC=(CO+CO2)×Q×T×1000/22.4(3)
  
inputC=CCOKE+CLPG+CLS(4)
  
ηCO=CO/(CO+CO2)(5)

ここで,

ηC:全カーボン入量に対するガス化カーボン総量の比(−)

output C:ガス化したカーボンの総量(mol)

input C:全カーボン入量(mol)

CCOKE:粉コークス由来のカーボン入量(mol)

CLPG:点火ガス由来のカーボン入量(mol)

CLS:石灰石由来のカーボン入量(mol)

CO:排ガスCO濃度(%)

CO2:排ガスCO2濃度(%)

Q:排ガス流量(Nm3/min)

T:焼結時間(min)

カーボン収支の計算結果をTable 13に示す。炭材の燃焼率は粉コークス前添加条件S9に対して,粉コークスおよびLCCを後添加した条件では改善した。今回のGI炉観察結果で見られた高温域でのコークスの露出作用によって燃焼性を維持して未燃発生を抑制でき,焼結鉱生産性・強度にも悪影響を及ぼさなかったと推察される。

Table 13. C balance (sintering test S9,S10 and S15).
S9S10S15
Coke typeCokeCokeLCC
Mixing time of bonding agent300 s20 s20 s
CLPG (mol)14.114.114.1
CCOKE (mol)159.7161.3159.8
CLS (mol)65.766.360.2
T (min)23.321.320.3
Q (Nm3/min)1.931.982.13
Output C (mol)195.6221.9215.4
ηC (–)0.820.920.92

4・5 LCCの効果発現メカニズム

Kasaiらはカルシウムフェライト被覆粉コークスのNOx低減メカニズムとして粉コークスの露出する高温域の選択的な燃焼の効果であると考察しているが5),被覆層の溶融挙動観察と鍋実験での燃焼率評価から,このメカニズムの妥当性が改めて確認された。葛西らの手法とLCCは異なる被覆層組成であるものの,周辺に鉄鉱石が多量に配置される実際の焼結反応においては,簡易な粉コークスのCaO単独被覆処理(LCC)だけでも鉄鉱石との反応を利用することによって低NOx化を実現できたと考えられる。

Kasaiらの焼結鍋試験ではCF被覆粉コークスの使用によって着火・燃焼性の低下が確認されたが,この原因はカルシウムフェライト被覆材を粉コークス重量の約4倍配合したことによって5),今回のLCC・CFCC試験に比べて極端に厚い被覆層が形成されたためと推察する。被覆層をCaO単体としたLCCでは,強力な付着力を持つ生石灰バインダーを被覆材に選択したことで,少量で強固な被覆層を形成することができ,燃焼不良を起こすことなくNOxを抑制することができた。被覆物を1種類にすることにより,工業的にもより簡素なプロセスでの処理が可能と考えられる。

焼結層内におけるLCCの燃焼挙動をFig.14に示す。粉コークスの燃焼性を高める視点では,粉コークス表面の鉄鉱石付着層を薄くすることが有効であるが,コークスを初めから露出させた状態に近づくため,低温域で活発な燃焼形態となりNOxが悪化するものと考えられる。すなわち,NOx低減と燃焼性向上の両立は,鉄鉱石付着層厚の制御では困難であり,LCCのように1200°C付近の温度域で高い溶融性を備えた被覆層を形成させ低温下(1200°C以下)での燃焼抑制と高温下(1200°C以上)における燃焼改善を同時に進めることで達成される。NOx低減機構として,上記高温域の燃焼促進によるコークス表面の酸素分圧低下およびNOx還元反応におけるカルシウムフェライトの触媒機能が挙げられるが,それぞれの寄与率を明確にすることが今後の検討課題である。

Fig. 14.

 LCC combustion in sintering bed.

5. 結言

新しいNOx低減技術の開発を目的として,粉コークスのCaO単独被覆処理による燃焼制御技術(LCC)の検討を行った。その結果,粉コークス表面にCaO10%の被覆層を形成することで燃焼性を悪化させることなくNOxを低減できることがわかった。CaO被覆層は崩壊しやすいため,ドラムミキサーでの他原料との混合時間を極力短くすることが重要であり,混合時間を短縮した条件では約18%のNOx低減効果を享受した。このLCCの効果は,CaO自体の反応ではなくカルシウムフェライト融液の生成を介して発現されることも明らかになった。本法と微粉コークス除去にはNOx低減効果の加算性が成り立ち,粉コークス粒度調製によってさらに高い効果を得ることも可能である。

今回検討したCaO改質処理は,粉コークス燃焼性を直接制御する新しい視点のNOx低減技術であり,今後実機化へ向けた処理設備の設計検討を進めていきたい。

文献
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© 2015 The Iron and Steel Institute of Japan

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