Tetsu-to-Hagane
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Preface
Preface to the Special Issue on Multiphase Flow Phenomena in Refining Processes
Takehiko Kumagai
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2015 Volume 101 Issue 2 Pages 73

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巻頭言

鉄鋼プロセスにおける混相現象の数値解析は,近年の計算機の目覚しい進歩と数値解析手法の発達により現実味を増しつつあるが,その一方で,転炉で生じるスピッティングなどマクロスケールとミクロスケールの現象が複雑に絡み合って生じる多重スケール現象は,数値解析による再現が難しいとされている。解析技術の更なる進歩・発展のためには,現象のより深い理解と並んで,信頼性の高い実験データにもとづいて,数値解析による再現の検証を重ねることが不可欠であるが,鉄鋼プロセスを対象として,このような目的で利用できるデータはほとんど整備されていなかった。

このような状況を踏まえ,鉄鋼精錬の反応容器内の現象に焦点を当て,混相流・多重スケール解析技術の開発を行なうことを目的に,平成22年に「精錬反応プロセスにおける混相流・多重スケール解析技術の開発」研究会が発足した。活動の3年間に,9回の研究会を開催し,産学一体となって実験データの蓄積,解析手法の検討を進めた。対象とした現象は,界面挙動,気泡挙動,介在物挙動を柱として,それらからシンプルかつ基礎的で,その現象と関連深い実プロセスへの適用を考慮して抽出した以下の3つである。

・転炉−上吹きにおける液面の窪み形状変化

・RH等減圧容器における気泡膨張

・溶融金属中の介在物クラスターの形態

それぞれの現象はコールドモデル実験において再現,可視化,また凝固金属中の介在物はX線マイクロCTにより可視化,記録され,実験的解析に供されると共に,検証用の実験データとして蓄積された。一方,数値解析による現象の再現は,それぞれ複数の解析コードとそれぞれの現象に即した数学モデルを構築して行なわれた。そして,それらの再現は,実験データとの良い一致を示し,混相現象における数値解析精度の改善ならびに,実験的解析のみでは困難な知見の導出に役立てられた。また,改良された解析手法をベースに,実プロセスへの対応を考慮した,より高精度の解析手法を検討した。

「精錬反応プロセスにおける混相流・多重スケール解析技術の開発」研究会では,これらの得られた知見,実験データ,解析手法(アルゴリズム)の研究成果を,より広く会員に公開する目的で,平成24年度末にシンポジウムを開催し,さらに,この度の特集号の発行となった。また,本特集号に関連するデータの一部を下記URLにおいて試験的に公開する予定である。

URL: http://isij-multiphase.mech.iwate-u.ac.jp/

(精錬フォーラム・混相流研究グループ管理)

今後,数値解析技術の更なる進歩・発展のため,動画を含む実験データ,解析手法の電子ファイル形式などでの公開,蓄積など,データ整備の進展が期待されるが,本特集がその第一歩となれば幸いである。

 
© 2015 The Iron and Steel Institute of Japan

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