2015 Volume 101 Issue 3 Pages 184-189
Temperature distribution in layer of the iron ore sintering process is one of the most important factors to decide the sinter quality. To estimate the temperature distribution in sinter layer needs knowledge of coke combustion rate. The purpose of this study is to clarify that coke combustion rate in the fine layer of the quasi-particle with considerations about void ratio and liquid formation. The following results were obtained. Interface chemical reaction rate constant, kc, was independent on the mixing ratio of coke. The higher mixing ratio of coke made the larger effective diffusion coefficient of oxygen, because the higher mixing ratio of coke made the higher void ratio in the sample after coke combustion. The coke combustion rate became small with increasing of liquid formation amount, because liquid phase in quasi-particle prevented oxygen diffusion in there.
高炉を用いた製銑プロセスにおいて焼結鉱が原料に占める割合は約8割であり,焼結鉱品質は高炉操業成績に直接大きな影響を与えていると言える。焼結鉱製造プロセスにおいて,焼結層内温度分布は焼結鉱品質を決定する重要な因子の一つであり,この層内温度分布は焼結鉱品質向上のためになくてはならない情報といえる。
この焼結層内温度分布を推定するためには,コークスの燃焼速度に関する知見が必要不可欠である。焼結層内のコークスの賦存状態はFig.1のような3パターン示すことがHidaら1)により報告されている。コークスの燃焼速度はこれら賦存状態に影響を受けると考えられる。しかしながら,これまでの焼結層内温度分布推定についての報告1,2,3)では,S’型のコークス賦存状態のみしか考慮をされてこなかった。しかしS’型コークスの燃焼速度は,疑似粒子中微粉層内の酸素の拡散抵抗を無視しているため,実際の焼結プロセスの燃焼速度よりも通常かなり大きく見積もられてしまう。本研究では疑似粒子中微粉層内の空隙率および液相生成を考慮したコークスの燃焼速度を明らかにすることを目的としている。
Classification of coke distribution situation in quasi-particle.
焼結プロセスにおける疑似粒子は,主にヘマタイト粉とコークス粉によって構成されている。焼結鉱製造プロセスにおいては,コークス燃焼中にヘマタイトの還元反応,酸化反応,溶解反応が同時に生じる。これらは,コークスの燃焼挙動に複雑に影響を与える。これらの影響を排除するために,本研究ではAl2O3粉をヘマタイトの代替材料として用いた。Al2O3粉と微粉コークスの混合粉から,疑似粒子を模したタブレット状の試料を準備した。
粒径−125 μmの微粉コークスと,粒径−250 μmのAl2O3粉をTabel 1に示す所定の配合率で十分混合した。成型したタブレット試料を実験中取り扱うのに十分な強度を付加するために,5 mass%の小麦粉をAl2O3とコークスの混合粉に添加した。添加した小麦粉は600 Kで燃焼除去されるため,本研究の結果には影響を及ぼさないと考えた。全ての粉試料を十分混合したのち,混合試料粉は直径10 mmのステンレス製ダイスで少量の水分と共にタブレット状に圧粉成型した。タブレット試料の高さは10 mm,空隙率は35%である。
Coke | Alumina | [Coke mixing ratio based on Hematite weight] | |
---|---|---|---|
Type 1 | 12.2 | 87.8 | [10] |
Type 2 | 18.1 | 81.9 | [15] |
Type 3 | 24.9 | 75.1 | [20] |
Type 4 | 30.6 | 69.4 | [25] |
Type 5 | 36.2 | 63.8 | [30] |
本研究におけるコークス燃焼に伴う試料の重量減少量測定は,Fig.2に示す熱天秤を用いて行った。実験試料は繊維状耐火物と共に白金製バスケットに装入した。この繊維状耐火物はタブレット試料と白金製バスケットが直接接触することを防止するために用いた。縦型電気抵抗炉を用いて,所定温度における均一加熱条件を可能にした。均熱帯の温度は1073 K,1223 K,1373 K,1523 Kとした。燃焼実験開始前に,バインダー,水分,揮発成分を実験試料から除去することを目的に,所定の実験温度においてN2雰囲気中で試料の熱処理を行った。その後,反応管内部に4 Nl/minで空気を導入することで,実験中雰囲気を大気雰囲気とした。実験試料の重量変化が無くなった時点を,実験終了時間とした。
Schematic diagram of experimental apparatus.
本研究では反応率を試料から固定炭素が除去された割合で定義した。炭素燃焼反応は,COガスの生成を無視すると次のように表すことができる。
(1) |
試料重量の変化は,本燃焼実験における固定炭素の減少量とみなした。時間t経過した際の反応率Fは式(2)のように示される。
(2) |
各温度におけるType 3の試料の反応率曲線をFig.3に示す。この図から,反応条件が高温になるほど燃焼反応速度が増大することが分かる。他のTypeの試料においても同様の傾向を示した。
Effect of reaction temperature on reaction curve of type 3 samples.
Fig.4に1373 Kにおける各Typeの反応率曲線を示す。この図からコークスの混合量が少ない試料ほど短時間で燃焼が終了する傾向が示唆された。他の反応温度においても同様の傾向が確認された。これらの結果をコークス燃焼速度の反応速度解析に用いた。
Effect of difference of coke amount in samples on reaction curve at 1373 K.
本研究では,反応速度定数を導出するために未反応核モデルを用いた。試料中での燃焼反応は,次の5つのステップを経て進行するものと考えられる。
1.ガス境膜を通しての気相本体から粒子表面へのO2の移動
(3) |
2.コークス燃焼後のAl2O3層を経由する粒子表面から反応界面へのO2の拡散
(4) |
3.反応界面における燃焼反応
(5) |
4.コークス燃焼後のAl2O3層を経由する反応界面から粒子表面へのCO2の拡散
(6) |
5.ガス境膜を通しての粒子表面から気相本体へのCO2の移動
(7) |
総括反応速度式は擬定常近似により次のように示される。
(8) |
(9) |
燃焼反応が不可逆反応であることから平衡定数Kを無限大と仮定すると,式(8)は以下の様に表すことができる。
(10) |
また
(11) |
反応率Fは式(12)のように示される。
(12) |
t=0のときr=r0およびt=tのときr=riという境界条件で,上述の式(10),(11),(12)を組み合わせると式(13)が導出される。
(13) |
ガス境膜内物質移動係数kfはRanz-Marshallの式4)から導出可能である。
有効拡散係数Deと界面化学反応速度定数kcは,式(13)による実験結果の混合律速プロットから導出した。
2・2・3 界面化学反応速度定数Fig.5に各温度における試料中コークス配合率と界面化学反応速度定数kcの関係を示す。kcの値は,コークス配合率に依存せず,高い実験温度においてより大きな値を示した。kcの温度依存式は,各実験温度における全てのTypeのkcの平均値を用い,アレニウスプロットから算出した。Fig.6には,本研究におけるkcのアレニウスプロットを示した。これを用いて,算出された温度依存式は式(14)のように示される。
(14) |
Effect of coke amount in sample on kc.
Temperature dependence of kc.
各温度における試料中コークス配合率と有効拡散係数Deの関係をFig.7に示す。全ての温度において,コークス配合率が高いものほどDeの値は大きくなる傾向を示した。これは,コークス配合率が高い試料ほど,コークス燃焼後の空隙率が大きくなるためであると考えられる。それゆえ,試料中のO2の拡散性が向上したと推察される。試料中の有効拡散係数は,空隙率と温度依存性を考慮すると式(15)の様に示すことができる。
(15) |
Effect of coke amount in sample on De.
式(15)は両辺対数をとることによって式(16)のように示すことができる。
(16) |
nの値はFig.8に示すように,ln DeのlnTに対する傾きから算出することができ,本研究では2.09となった。一般的に,このnの値は1.75~2.0であると報告されており,本結果の値はそれほど大きく逸脱していないと考えられる。tortuosity factor τは試料中の空隙率に影響を受けると考えられる。式(15)と前述のnの値を用いて,各空隙率,各温度におけるτの値を計算した。Fig.9に各実験温度におけるτの平均値と空隙率の関係を示す。この関係から式(17)の近似式を導出した。
(17) |
Temperature dependence of De.
Porosity dependence of labyrinth factor τ.
以上の考察から,酸素の有効拡散係数は式(18)のようになる。
(18) |
実際の焼結鉱製造プロセスにおいては,コークスの燃焼に伴って生じるカルシウムフェライト融液の生成が,酸素の拡散に強い影響をもたらすことが考えられる。また,カルシウムフェライトの還元反応もコークスの燃焼に伴って同時に進行すると考えられる。このような状況はコークスの燃焼挙動を解明するためには複雑すぎるため,FeOを含まないCaO-SiO2-Al2O3スラグをカルシウムフェライトの代わりに使用することで単純化し,コークス燃焼挙動に及ぼす液相生成の影響について調査を行った。
粒径−125 μmの微粉コークスと,粒径−250 μmのAl2O3粉,および粒径−250 μmの23.1CaO-14.7Al2O3-62.2SiO2スラグ粉をTable 2に示す所定の配合率で十分混合した。コークス粉に対するアルミナの配合量を,それぞれTable 1のType 1,Type 2,Type 3と同等の12.1,18.1,24.9 mass%になるように決定し,配合されたアルミナ粉を体積分率で0,10,30,50 volume%スラグ試料で置換した。これらの混合粉は燃焼実験に用いるために,2・1節に示したのと同様の手法でタブレット状に圧粉成型した。また本実験は燃焼温度1523 Kにおいてのみ行った。
Coke | Alumina | Slag | ||
---|---|---|---|---|
Type 1 12.1 mass%Coke | Slag 0% | 21.9 | 78.1 | 0 |
Slag 10% | 21.9 | 70.3 | 7.8 | |
Slag 30% | 21.9 | 54.7 | 23.4 | |
Slag 50% | 21.9 | 39.05 | 39.05 | |
Type 2 18.1 mass%Coke | Slag 0% | 30.8 | 69.2 | 0 |
Slag 10% | 30.8 | 62.3 | 6.9 | |
Slag 30% | 30.8 | 48.4 | 20.8 | |
Slag 50% | 30.8 | 34.6 | 34.6 | |
Type 3 24.9 mass%Coke | Slag 0% | 38.6 | 61.4 | 0 |
Slag 10% | 38.6 | 55.3 | 6.1 | |
Slag 30% | 38.6 | 43.0 | 23.4 | |
Slag 50% | 38.6 | 30.7 | 30.7 |
Type 3の試料の反応率曲線をFig.10に示す。この図から,スラグの配合率が高い試料ほど燃焼反応速度が小さくなることがわかる。他のType 1およびType 2の試料においても同様の傾向を示した。Type 3の試料のスラグ有りの場合と無しの場合における,燃焼実験後の断面観察顕微鏡写真の比較をFig.11に示した。この観察から,合成スラグを配合した試料ではスラグの膜が生成していることが確認された。すなわち,スラグの配合率が高い試料ほど燃焼反応速度が小さくなったのは,スラグ融液が酸素の拡散を妨げていたためだと考えられる。
Effect of difference of slag amount in type 3 samples on reaction curves of at 1523 K.
Difference of optical micrographs between slag 0% and slag 50% samples of type 3. (Online version in color.)
未反応核モデルによる混合律速プロット解析により,反応速度定数を導出した。Fig.12にスラグ配合割合と界面化学反応速度定数kcの関係を示す。この図から,kcはスラグ配合割合に対して依存性を示さず,試料中の融液生成はkcの値に影響を及ぼさないと考えられる。
Effect of slag amount in sample on kc.
スラグ配合割合と有効拡散係数Deの関係をFig.13に示す。この図から,スラグ配合割合が大きくなるほどDeは小さくなることがわかる。この結果の主な要因は,試料中の融液生成が酸素の拡散を妨げたためと考えられる。Fig.13の結果に対してカーブフィッティング法を用い,各Typeにおけるスラグ配合割合とDeの関係式を求めた。
Effect of slag amount in sample on De.
Type 1
(19) |
Type 2
(20) |
Type 3
(21) |
融液生成に伴うDeの変化は,τが変化したことにより生じたと想定される。そこで,f(0)/ f(VCF)をコークス燃焼速度式の補正係数として用いた。f(0)は融液生成を伴わない場合の酸素の有効拡散係数である。融液生成割合とτの関係式は式(22)のように示すことができる。
(22) |
本研究で計算に必要な物性値は文献5)から引用した。
焼結鉱製造プロセスにおける疑似粒子の燃焼挙動を理解することを目的として,空隙率および融液生成が微粉層中のコークスの燃焼挙動に与える影響について調査を行い,以下の知見を得た。
1.界面化学反応速度定数kcはコークス配合率に依存しない。
2.コークス配合率が高いほど,燃焼後の試料中空隙率が上昇するため,コークス配合率が高いほど酸素の有効拡散係数が大きくなった。
3.疑似粒子中に生成する融液は酸素の拡散を妨げるため,融液生成量が多いほどコークス燃焼速度は小さくなった。
4.疑似粒子中の微粉層における,コークス燃焼の界面化学反応速度と酸素の有効拡散係数は次のように示された。
A:頻度因子 (m/s)
C(O2,CO2):気相におけるO2またはCO2濃度 (mol/m3)
C(O2,CO2)・i:反応界面におけるO2またはCO2濃度 (mol/m3)
C(O2,CO2)・s:粒子外表面におけるO2またはCO2濃度 (mol/m3)
De:アルミナ粉層中の有効拡散係数 (m2/s)
DO2:0[K]における空気中の酸素の分子拡散係数 (m2/s)
(D(O2,CO2))eff:アルミナ粉層中のO2またはCO2の有効拡散係数 (m2/s)
E:活性化エネルギー (J/mol)
F:反応率 (−)
K:平衡定数 (−)
kc:界面化学反応速度定数 (m/s)
kf:ガス境膜内物質移動係数 (m/s)
n:拡散係数の温度依存性を表す定数 (−)
R:ガス定数 (J/mol/K)
r0:試料の球形近似後の初期半径 (m)
ri:試料の球形近似後の未反応核の半径 (m)
T:温度 (K)
t:時間 (s)
U:空塔速度 (m/s)
u:ガス流速 (m/s)
VCF:微粉層中の融液の体積割合 (−)
wt:時間tまでの試料重量変化 (g)
W:実験終了までの試料重量変化 (g)
τ:迷宮度因子 (−)
τ':融液生成を考慮した迷宮度因子 (−)
ρcm:試料中の炭素濃度 (mol/m3)
ε:コークス燃焼後微粉層中の空隙率 (−)