Tetsu-to-Hagane
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Jet Flow Characteristics of 3-Slot Nozzle at Gas Wiping Process in Continuous Galvanizing Line
Gentaro TakedaHideyuki TakahashiKazuhisa Kabeya
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2016 Volume 102 Issue 10 Pages 576-582

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Synopsis:

This paper presents a study of the gas wiping process, which is used in coating processes to control the final coating weight applied on a substrate. The wiping process is one of the factors which limit the maximum line speed of continuous galvanizing lines (CGL). A multi-slot type wiping nozzle was proposed for improving coating weight controllability, and was investigated by numerical simulation in recent years. Here, the impinging jet characteristics of a 3-slot nozzle are investigated by experimental and numerical analysis, focusing on the jets mixing process and the impinging pressure distribution. The gas wiping capability is tested in wiping model experiments with a molten paraffin coating. It is confirmed that the impinging pressure distribution of a 3-slot nozzle with a lower auxiliary jet velocity is sharper than that of a single-slot nozzle, and this leads to a coating weight decrease. When the jet velocity of the auxiliary slots approaches that of the main slot jet, the width of the impinging pressure distribution spreads and the coating weight increases. The turbulent kinetic energy of flow field is changed by auxiliary jets velocity, and the energy distribution decide the width of mixed jet flow.

1. 緒言

自動車,建材,家電用表面処理鋼板を製造する連続溶融亜鉛めっきライン(Continuous Galvanizing Line,以後CGL)のめっき付着量制御には,一般的にガスワイピング法が用いられている。ガスワイピング法は,気体噴流を用いて液体付着量を制御する手法であるため,鋼板およびめっき液に非接触で亜鉛付着量を制御でき,付着量均一性,薄めっき性および経済性に優れているなどの利点がある。通常,単一スリットノズル(以後,1−スリットノズル)が用いられており,1−スリットノズルから噴射される二次元ジェットの特性1),ガスワイピング機構の理論解析2,3,4)については,実験・数値解析ともにこれまで多くの研究がなされてきた。

それらに基づくと,生産性を高めるために連続ラインの通板速度を上昇させるには,通板速度に応じてガスワイピングの噴射圧力を適宜制御させればよいことがわかる。しかし,めっき処理工程が無い連続焼鈍ラインでは4.0 m/sを超える通板速度で操業されているのに対し,CGLの通板速度は最大でも3.0 m/s程度にとどまる。その主要因は,めっき厚を数μmまで薄膜化するためのめっき絞り性能5)やガスワイピングの際に発生するスプラッシュと呼ばれる表面欠陥の問題6)とされている。

近年,上記の課題を克服するワイピングノズルとして,多段スリットノズルの研究が実施され始めている。Tamadonferら7),Dubois8)は鋼板に垂直な主スリットを挟むように2つの補助スリットを配置した3−スリットノズルを対象にし,数値シミュレーションでその噴流特性やめっき絞り性能の検証を行った。1−スリットノズルと比較すると,3−スリットノズルの方が最大衝突圧力は高くなるものの,めっき付着量はより厚くなるという計算結果が示されている。また既報9)において,筆者らは3−スリットノズルの噴流特性やめっき絞り性を,パラフィンを用いたモデル実験で初めて調査した。そして,ノズル先端部の形状によって3噴流合流後の噴流形態が変化し,めっき絞り性能は向上も低下もすることを示した。しかし,めっき絞り性能に対する補助スリット噴流速度の影響や,噴流形態の変化などは十分に考察されていない。

本論文では,既報9,10,11)で用いた3−スリットノズルで種々の圧力条件における衝突圧力分布測定を行い,3−スリットノズル噴流の基礎特性を調査した。さらに,既報と同様のワイピング模擬実験でめっき絞り性能を調査した。また,流動解析(Computational Fluid Dynamics,以後CFD)も合わせて実施し,3−スリットノズルの噴流発達形態とめっき絞り性能への影響について考察した。

2. ガスワイピング理論

ガスワイピングによるめっき付着量制御機構としては,以下に示す考え方2,3)が知られている。Fig.1に示すように,溶融めっき浴から引き上げられる鋼板に付着しためっき液膜にワイピングガス噴流の衝突圧力と衝突後鋼板に沿って流れる衝突壁面噴流のせん断力が作用するとして,この液膜流れを次の仮定の下にモデル化する。

Fig. 1.

 Analytical model of gas wiping.

①鋼板面上の液膜流れは二次元定常層流とし,鋼板に平行な方向の流れに対して,鋼板に垂直な方向の流れは十分小さいとする

②めっき液の表面張力,酸化,鋼板の表面粗さ,合金化現象は無視する

③鋼板とめっき層の界面はすべらない

したがって,めっき液膜の運動方程式は次式となる。   

μLd2uLdy2=ρLg+dPdx(1)

次に質量保存側より,単位幅当たりのめっき液持上げ量qは   

q=y=0y=tuL(x,y)dy(2)

境界条件は   

uL=Vaty=0(3)
  
μLduLdy=τaty=t(4)

式(1),(2)を境界条件(3),(4)で解くことにより,以下の解が得られる。   

T=S+S2+4G2G(5)

ここで,   

T=tρLg/μLV(6)
  
S=τ/ρLμLVg(7)
  
G=1+(dp/dx)/ρLg(8)

TSGはガスワイピングに関する無次元数であり,Tは無次元めっき厚,Sは無次元せん断応力,Gは無次元圧力勾配,μLはめっき液粘度,uLはめっき液x方向速度,ρLはめっき液密度,gは重力加速度,Pは衝突圧力,tは最終めっき膜厚,Vは通板速度である。このように,めっき膜厚はワイピングガスによる圧力勾配dp/dxと壁面せん断応力τによって決定される。1−スリットノズルでは,ノズルギャップを固定すれば噴射圧力とノズル−鋼板距離に応じてdp/dxτは一義的に決定される1)。しかし,3−スリット等の多段スリットノズルの噴流特性の研究事例は少なく,近い形態としては同軸円形噴流の混合・拡散に関する研究12)が先行している。

3. 実験方法および数値解析方法

3・1 3−スリットノズル

従来の1−スリットノズルと比較して,多段ノズル噴流形態に関わるノズル形状や噴射条件のパラメータは多い。既報9)において,主スリット−補助スリットの噴射口間距離が3噴流合成後の噴流形態に大きく影響することを示した。主スリット−補助スリット間距離を狭くしないと,めっき絞り性能は向上しなかった。本論文で用いた3−スリットノズル先端断面の概略図をFig.2に示すが,既報を踏まえて主スリット−上下補助スリット間距離は0.1 mmとした。また,補助スリットの噴射角度(主スリットと補助スリットの角度)も噴流形態に大きく影響すると推定される。Takahashiらの報告13)では,ワイピングノズル外形角度は鋭角であるほど,めっき絞り性能が優れることが示されており,既報で用いた外形角度50°のノズルよりも外形角度を増減させると,スリット噴流以外の要因でめっき絞り性能が変化することが予想される。ノズル部材強度も加味して,ノズル外形角度50°,上下スリットは中央スリットに対して噴射角度を上下対称に20°傾斜させた1種類のノズルを用いた。使用ノズルの外観写真をFig.3に示す。

Fig. 2.

 Tip shape of 3-slot gas wiping nozzle.

Fig. 3.

 Photograph of 3-slot wiping nozzle.

ワイピングガスには,コンプレッサーにより加圧された圧縮空気を用いた。圧縮空気は減圧弁で所定圧力に調整された後,分配ヘッダーより3スリットに供給される。分配後の配管には,それぞれボールバルブが取り付けられており,中央スリットおよび上下スリットのノズルヘッダー圧力はそれぞれ任意に調整可能である。ノズル内部に設置された整流孔を通過することで流れが均一化され,その後スリット部を通過しノズル外部に吐出される。中央,上下スリットともにスリットギャップD=1.0 mm,スリット幅長さは250 mmである。

3・2 ワイピングモデル装置

めっき絞り性能評価は,既開発のワイピングモデル装置を用いて実施した9,10,11)。装置の概略をFig.4に示す。本装置は,コイル状のストリップを払い出し,塗布液浴に浸漬させた後,対向するワイピングノズルのガス噴流で塗布液付着量を調整し,ストリップを巻取る構成となっている。ワイピングノズルは,噴流測定と同様にFig.3に示したものを使用し,中央スリット噴射角度が水平になるように設置した。

Fig. 4.

 Experimental gas wiping apparatus.

本実験では塗布液に融点が約60°Cのパラフィンを用い,塗布実験時の浴温は融点より約30°C高い90°Cで行った。ワイピングノズル通過で10°C程度冷却されるものの,その後1.5 m上方のトップロール到達までに,パラフィンが凝固することはない。Table 1にCGLおよびワイピングモデル装置におけるめっき液の物性値,ワイピング条件,第2章で示した無次元数T,S,Gの値を示す。ワイピングモデル装置の無次元数T,S,G,はそれぞれCGLの範囲内にあること,および本装置を用いた実験で得られるめっき膜厚は,前述したワイピング理論から予測される値と精度良く一致すること9)から,無次元めっき厚Tが0.03≦T≦0.04の薄膜領域,無次元せん断応力が0.6≦S≦1.0,無次元圧力勾配が230≦G≦460の範囲において,CGLと本装置の間に相似則が成立すると考えられる。また鉄−亜鉛の場合,合金化反応を伴うことがあるが,パラフィンと金属面では界面反応を伴わないため,純粋にワイピング理論のみを検証することができる。

Table 1. Physical properties of coating materials, conditions of coating process and dimensionless numbers.
CGLWiping simulator
Coating materialZincParaffin *1 (HNP-5)
Operation temperature [°C]46090
Coating density [kg/m3]6623759
Coating viscosity [Pa·s]0.002940.0071
Coating surface tension [N/m]0.810.0026 *2
Nozzle – strip distance [mm]5-1010
Transfer speed [m/s]1.0-2.50.67
Plenum pressure [kPa]10-701.5 (center slot)
0-1.0 (upper, lower slot)
T0.024-0.0740.03-0.04
S0.5-3.00.6-1.0
G50-500230-460

*1 NIPPON SEIRO CO. HNP-5 *2 Maker’s publication

付着量の計測法には,実験後サンプルの塗布膜断面観察,塗布膜剥離前後の重量比較(以後,重量法),渦電流式接触膜厚計による計測などが考えられる。本実験では,比較的広い面積の平均付着量を精度良く定量化するため,重量法を採用した。

3・3 衝突圧力測定

噴流の衝突圧力測定方法をFig.5を用いて説明する。噴流を衝突させる板は,幅300×高さ300 mm,板厚1 mmのSUS板を使用し,その中央にはφ0.5 mmの孔を空け,裏面に圧力センサーを取り付けた。ノズル先端からSUS板までの距離は,ワイピングモデル実験と同様に10 mmとした。このSUS板はXYステージに取り付けて上下方向に移動させることで,噴流の衝突圧力分布測定を行った。尚,XYステージの繰り返し停止位置精度は±10 μmである。1点あたりの測定時間は5秒間で,その平均値で評価した。

Fig. 5.

 Schematic diagram of impinging pressure measurement.

3・4 ワイピングガス噴流のCFD解析

ノズル噴射出口から鋼板までの領域における噴流発達形態については,汎用解析ソフトFluent14.5を用いた2次元定常解析を行って評価した。乱流モデルにはRealizable k-εを採用した。これは,標準的なk-εモデルよりも2次元噴流等の解析により適しているとされているためである14)。また,壁近傍の取り扱いは,壁関数モデルと壁近傍モデルを合体させた改良型壁処理を採用した15)。使用した解析メッシュをFig.6に示す。メッシュ数は約8万である。

Fig. 6.

 Example of mesh for CFD analysis.

4. 実験結果および考察

4・1 上下スリット噴流のめっき絞り性への影響

Fig.4に示す実験装置を用いて,パラフィンワイピング実験を行った。実験条件はTable 1に示した通りである。中央スリットのヘッダー圧力は1.5 kPaで固定し,上下スリット圧力をそれぞれ単独で,あるいは上下スリットを同時に0.2~1.0 kPaで噴射させた。

Fig.7に実験結果を示す。上下スリット圧力が0.0 kPaの結果は,中央スリットのみ噴射させた場合の塗膜付着量を示す。上下スリットをそれぞれ単独で噴射する場合に比べ,上下スリットを同時に噴射した場合が,今回の圧力範囲においては最もめっき絞り性能が高く,薄膜となった。上下スリットをそれぞれ単独で噴射した場合を比較すると,上スリットを噴射した方がやや薄膜化した。また,圧力影響をみてみると,上下スリット圧力0.2 kPaでどの噴射パターンでも最薄になり,それ以上の圧力にすると付着量が増加する傾向を示した。通常の1−スリットノズルでは,2章に示したガスワイピング理論の通り,ガス噴射圧力を増加させれば塗膜付着量は減少する。しかし,3−スリットノズルでは,上下スリット噴流によって中央スリット噴流の形態が変化するため,噴射圧力増加が必ずしもめっき絞り性向上に繋がらないことを示している。

Fig. 7.

 Coating weight in paraffin wiping experiments with 3-slot wiping nozzle.

Fig.8に,Fig.5の方法で測定した衝突圧力分布の測定結果を示す。ここで,横軸のx方向位置はスリットギャップDで無次元化した。衝突圧力分布は,その傾きが急峻であるほど,2章のガスワイピング理論におけるGが大きく,めっき絞り性に優れることを意味する。そこで,塗膜付着量が1−スリットより減少した上下スリット0.2 kPaと増加した1.0 kPaの噴流特性を詳細に調べた。Fig.8(a)は,中央スリットおよび上下スリットを同時に噴射した場合で,中央スリットのみの分布に比べて,上下スリット0.2 kPaにすると衝突分布幅が広がらずに最大圧力が上昇していて,中央スリット単独より急峻な分布となっている。上下スリット1.0 kPaにすると,最大圧力はさらに上昇するものの衝突分布幅が倍以上に広がり,圧力勾配としてはやや緩い角度になった。完全に左右対称な分布にならなかったのは,製作ノズルが完全な対称形状になっていないことに起因すると考えられる。Fig.8(b)は中央スリットと上スリットを噴射した場合の圧力分布結果である。上スリットを噴射すると左右非対称な圧力分布となり,最大圧力になる位置が中央スリット高さよりわずかに下側(x/D<0)に移動した。そして,噴流の上側(x/D>0)と下側(x/D<0)で圧力勾配が異なる噴流形態となった。このような噴流形態の変化がめっき絞り性に影響したものと推定される。

Fig. 8.

 Measured impingement pressure distribution on strip surface.

Fig.9は,CFDによって計算されたFig.8の条件に対応する衝突圧力分布である。またFig.10は,実測(Fig.8)とCFD結果(Fig.9)の圧力半値幅yp1/2(最大圧力値の半分の圧力値になる噴流幅)を比較した図である。上下スリット圧力1.0 kPaではCFDの半値幅がやや小さく,分布そのものは完全には一致していないが,圧力半値幅増減の傾向から,CFDは実測をほぼ再現できていると判断される。そこでCFDを用いて,各条件の噴流混合形態を詳細に比較する。

Fig. 9.

 Calculated impingement pressure distribution on strip surface.

Fig. 10.

 Comparison of half-width of pressure distribution.

4・2 3−スリットノズルの噴流形態

スリットノズル先端から鋼板までの噴流の混合形態を示す一例として,Fig.11に(a)中央スリット1.5 kPa,(b)中央スリット1.5 kPa,上下スリット0.2 kPa,(c)中央スリット1.5 kPa,上下スリット1.0 kPaのときのCFD解析による速度コンター図を示す。本解析においてガス噴射速度は,圧力1.5 kPaでは約42 m/s,0.2 kPaでは15 m/s(対中央スリット速度比35.7%),1.0 kPaでは32 m/s(同76.2%)であった。(a)と比較して,(b)(c)では中央スリット噴流の減衰が弱まり,より後方まで高い風速が保たれるようになる。このようにノズル近傍では,速度分布で噴流混合挙動を比較可能である。しかし,鋼板近傍の壁面噴流領域では動圧から鋼板面への静圧へと変化する形態となり,噴流方向や壁面噴流半値幅も変化するため速度分布だけで混合形態を単純比較することは困難である。そこで本論文では,CFD結果の動圧と静圧を合計した全圧分布で,噴流の混合形態を比較した。スリットノズル噴射口から鋼板近傍の範囲(y/D=0~8,ノズル先端をy=0として表記)における全圧分布の変化をFig.12に示す。(a)は中央スリットのみ1.5 kPa(1噴流),(b),(C)は中央スリット+上下スリット(3噴流),(d),(e)は中央スリット+上スリット(2噴流)の解析結果である。

Fig. 11.

 Velocity contours of single and 3-slot jets.

Fig. 12.

 Total pressure distributions between nozzle tip and strip with single, 2-slot and 3-slot jets.

(b)上下スリット0.2 kPaでは,噴射時は上下スリットからの噴流による動圧のピークがみられるが,直ちに合流してy/D=2の位置ではピークは消失し,単噴流に近い形になる。上下スリットからの弱い噴流によって中央噴流は周囲気体との速度差が軽減されるため,減衰が抑えられ,鋼板近傍における圧力も増大したものと推定される。このような噴流形態になったことで,ワイピング力としても向上したものと考えている。(c)上下1 kPaでは,y/D=4までは上下スリット噴流のピークが残存しており,その後完全に混合したあとは拡散が進行し,1−スリット噴流と比べてなだらかな圧力分布となった。

(d)上スリット0.2 kPaの場合,x/D>0(上側)では(b)と同様,x/D<0(下側)では(a)と同様の噴流形態となり,中央スリットの拡散抑止が不十分であったため,全圧ピークとしてもさほど増加しなかった。このように,スリット噴流の拡散抑止には,スリット噴流両側から低速噴流を供給することが有効であることが示唆された。(e)上スリット1.0 kPaでは,2噴流が完全混合する前のy/D=4程度までは,中央スリット噴流が偏ることでx/D<0側の圧力勾配が非常に急峻に変化し,ワイピング性能向上の可能性もありそうだが,2噴流混合後は分布が急になだらかになり,y/D=10でのワイピングではめっき絞り性能は低下することがわかった。

これまで議論してきた二次元噴流の拡散を,より直接的に評価するため,CFD解析結果の乱流エネルギー(k-εモデルのk)分布で比較を行う。Fig.13Fig.11と同条件における乱流エネルギー分布である。中央スリット噴流にとって,静止気体中への噴射となる(a)では,噴流の両縁での大きな速度差に起因する強い乱流エネルギーが発生する。一方,補助噴流のある(b)では,周囲気体との速度差が軽減することで中央スリット両縁の乱流エネルギーは低減することが確認できる。また,上下スリット噴流の外縁においてもさほど強い乱流エネルギーは発生せず,合成後の噴流幅には大きく影響しない。ノズル出口から鋼板までの流れ場(−4≦x/D≦4,0≦y/D≦10)における乱流エネルギーの積分値で比較すると,(a)を100として(b)では79.3と約20%減少した。(c)の場合,中央スリット噴流の両縁よりも上下スリット外縁の乱流エネルギーが大きくなることで,合成噴流幅が3噴流分まで広がるものと考えられる。上記の乱流エネルギー積分値は84.7となり,(b)と比較すると流れ場全体の乱れ度は大きくなった。

Fig. 13.

 Turbulent kinetic energy contours of single and 3-slot jets.

5. 結言

3−スリットノズルのめっき絞り性能に対する補助噴流の働きを考察するため,パラフィンを用いたワイピング試験を行い,さらにはワイピングガス噴流の衝突測定およびCFD解析を行った。得られた結果は以下の通りである。

(1)中央スリット1.5 kPaに対して,上下スリット0.2~0.4 kPaまではめっき付着量が低減してめっき絞り性能向上が認められるが,上下スリットをそれ以上の圧力にすると,めっき絞り性能は徐々に低下する。上下スリットを同時に使う方が,めっき絞り性能は高い。

(2)ワイピングガス衝突圧測定によると,めっき絞り性が向上した条件(上下スリット0.2 kPa)では圧力勾配が急峻になり,めっき絞り性能が低下した条件(上下スリット1.0 kPa)では圧力勾配が緩くなる。

(3)CFD解析によると,上下スリット噴流によって中央スリット噴流と周囲流体との速度差が低減し,中央スリット噴流両縁の乱流エネルギーが低下することで噴流拡散が抑えられる。

(4)上下スリット噴流速度が中央スリットの35%程度と低速の場合は,3噴流混合後の噴流幅を拡大させない。上下スリット噴流速度が上昇すると,上下スリット噴流の外縁が混合噴流の外縁となり,混合噴流幅が広がる。その結果,鋼板衝突圧力分布が緩やかになり,ワイピング性能が低下する。

上述のように,上下スリット流によって,中央スリット噴流の拡散形態と混合噴流幅が大きく変化し,結果としてめっき絞り性に影響する。3−スリットノズルの設計や使用条件の適正化には,衝突圧の評価に加え,流れ場の乱れ度も重要なパラメータとなることが明らかになった。

文献
 
© 2016 The Iron and Steel Institute of Japan
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