2016 Volume 102 Issue 11 Pages 607-613
Gas absorption phenomena during tapping from converter to ladle were studied by water model experiments. Gas absorption rate to molten steel was simulated by oxygen-water system and changes of dissolved oxygen in the vessels were continuously observed. In this study, effects of nozzle diameter and tapping height on volumetric coefficient for gas absorption rate, AkO, were investigated and gas absorption phenomena were discussed.
Changes of water amount in both upper and lower vessels were calculated with Torricelli’s law and changes of DO in lower vessel were estimated by the kinetics formula considering dilution. Maximum AkO was found in the early stage of tapping. AkO after the middle stage of tapping were in good agreement with reported values. Changes of AkO during tapping could be classified into 3 regions, I: Growth, II: Transition, III: Steady. The growth of plunge pool was also studied by estimating the depth of penetration of bubbles, Hp, during tapping and was associated to gas absorption phenomena. As a result, strong relationship between the gas absorption phenomena and the growth of plunge pool was confirmed. The similar behavior was found in various initial tapping height and nozzle diameter settings by estimating the experimental results with Hp_obs./Hp_calc. and AkO_obs./AkO_calc.. By using this similarity, experimental results could be reproduced by the empirical formula.
製鋼工程において,転炉から取鍋への出鋼もしくは連続鋳造の取鍋からタンディッシュへの溶鋼注入時には空気巻込みが生じ,窒素ピックアップもしくは再酸化が生じることが課題となっている。溶鋼へのガス挙動に関してはこれまでに,ガス吹込みによる溶鋼中窒素の脱離速度1,2),溶鋼への窒素吸収,脱離速度3,4),脱窒速度に及ぼすに界面活性元素の影響5,6),タンディッシュでの空気巻込み挙動7,8)等に関する検討が報告されてきた。しかしながら,これらの報告は基礎研究もしくは二次精錬段階以降での検討である。一方で,化学工学の分野では水モデルを用いた注入流のガス吸収挙動9,10)を始め,多くの研究が報告されているが,これらの多くは注入速度が一定となる定常状態での検討であり,時間とともに取鍋内溶鋼量,出鋼速度,出鋼孔−湯面間距離といったパラメータが変わる転炉出鋼時のガス吸収挙動に関してはAsai and Muchi11),Chohら12,13)による報告があるものの,まだ不明な点が多いと考えられる。そこで,本研究は注入中に注入速度,高さが変わる転炉を模擬した水モデルを用い,容器内の水中溶存ガス濃度を連続測定することで注入中のガス吸収速度を算出し,注入時のガス吸収挙動に及ぼす諸因子の影響を検討した。
水中には通常8 ppm程度の酸素が溶存しており,溶存酸素濃度(Dissolved oxygen,以下DO)として測定できる。本研究では,窒素が溶鉄に吸収される様子を水−酸素系で再現した。転炉精錬後の低窒素溶鋼を予めDOを低減した水で模擬し,注入中に空気中の酸素を吸収して増加するDOを連続測定することで転炉出鋼中の吸窒挙動を実験的に調査した。
2・1 転炉出鋼模擬水モデルFig.1に示すように,転炉を模擬した容器を上部に,取鍋を模擬した容器を下部に配置した水モデルを構築した。実験条件をTable 1に示す。上容器底部には着脱式ノズルを取り付けてあり,ノズルを交換することでノズル径を調整できる。上下容器の中心軸は揃えてあり,ノズルは上容器中心から1/4D離れた位置に配してあり,注入流の落下位置も下容器中心から1/4D離れた位置である。ただし,D:上容器および下容器の直径である。上下容器内には溶存酸素計(TOA DKK製,DO-31P)を取り付け,注入中のDOを1秒毎に連続測定できる。溶鋼を模擬した水の量は全体で0.055 m3であり,注入開始前に上容器に0.050 m3,下容器に0.005 m3を準備した。事前に下容器に水を準備したのは,溶存酸素計を予め水中に浸漬させておくためである。また,下容器はリフト上に設置されており,初期注入高さ(ノズル下端から下容器内の水面までの距離)を変更できる。雰囲気は1 atmの大気下で行い,後述するように下容器内でArバブリングした場合であっても注入前に換気し,下容器内の酸素濃度を20.9%に戻してから注入を開始した。飽和DOは水温に影響されることから,水温は293±1 Kに調整した。また,必要に応じて注入中の上下容器内をビデオカメラで撮影し,水面高さおよび下容器内に生成する滝壺の様子を調査した。
Experimental apparatus.
Item | Setting |
---|---|
System | Water-Oxygen |
Amount of water | 0.050 + 0.005 m3 |
Initial height (from bottom of nozzle to water surface) | 0.60~0.90 m |
Diameter of vessel | φ400 mm |
Diameter of nozzle | φ10.5, 14, 16.5, 21 mm |
Temperature of water | 293 ± 1 K |
Atmosphere | Air, 1 atm (O2 = 20.9 vol%) |
事前準備として上下容器に所定量の水を満たし,水温を調整するとともに水にArを吹き込んでDOを0.80 ppmまで低下させた。ノズルのバルブを開けた時点を実験開始とし,上容器の水が無くなるまでの間,上下容器内のDOを連続測定した。この時,ノズル径,初期注入高さといったパラメータを変え,これらの因子がDO挙動に及ぼす影響を調査した。
2・3 実験条件実験条件をTable 2に示す。Run.AからDまでは初期注入高さ,Run.EからGはノズル径を変え,Run.Cはベース条件として複数回DO挙動を調査した。また,基礎実験としてRun.HおよびIはビニルホースを通して注入し,注入流を大気と接触させず,滝壺を生じさせない条件でのガス吸収挙動を調査した。Run.Iは下容器内に用意した水0.015 m3のDOを4.37 ppmに調整し,大気からのガス吸収が生じない条件で上容器からDO=0.80 ppmの水を0.040 m3注入し,下容器内の水が上容器内の低DOの水で希釈される挙動を調査した。下容器内の初期水量を他条件よりも増量させたのは,初期水量が他条件と同様に0.005 m3とした場合,希釈に伴うDO低下速度が急激であったためである。
Run | A | B | C (base) | D | E | F | G | H | I |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Diameter of nozzle (mm) | φ14 | φ10.5 | φ16.5 | φ21 | φ14 | ||||
Initial height (m) | 0.60 | 0.70 | 0.80 | 0.90 | 0.80 | 0.74 | |||
Average tapping rate (m3/min) | 0.021 | 0.011 | 0.030 | 0.039 | 0.021 | 0.027 | |||
Tapping time (s) | 140 | 275 | 100 | 77 | 140 | 90 | |||
Atmosphere | Air (O2 = 20.9 vol%) | Covered with tube | |||||||
Initial DO in upper vessel (ppm) | 0.80 | ||||||||
Initial DO in lower vessel (ppm) | 0.80 | 4.37 |
事前検討として,本実験装置の上容器内水面高さの経時変化およびDO挙動を調査した。ノズル径を変えた条件としたRun.CおよびRun.EからGにおいて注入中に上容器を撮影し,画像解析して算出した上容器水面高さの経時変化をFig.2に示す。水面高さの低下速度は水面が高い注入初期ほど大きく,ノズル径が大きいほど大きい結果となった。容器からの流出速度は(1)式に示すトリチェリの定理で表すことができる。ただし,v0:ノズル取付位置での注入流速(m/s),g:重力加速度(=9.81 m/s2),h:上容器側のノズル取付位置−上容器の水面間距離(m)である。
(1) |
Changes of height of water in upper vessel (Run.C, E~G).
実験条件を代入して求めた水面高さの計算値をFig.2に実線で示す。計算結果は実測値を概ね再現できており,以後の解析ではトリチェリの定理で求めた注入速度および水量を用いて解析を行った。また,Run.Cの上容器内DOの経時変化をFig.3に示すが,注入中のDOはほとんど変化していないことから,以後の解析では上容器内DOを一定値として取り扱った。
Changes of DO in upper vessel during tapping (Run.C(base)).
注入流を大気遮断したRun.Hの下容器内DOの経時変化をFig.4に示す。注入中のDO増加は僅かであり,注入流を大気遮断した条件ではガス吸収がほとんど生じないことが分かる。このことから,ガス吸収は注入流の側面および滝壺部で生じると考えられる。ここで,注入流の側面と滝壺部でのガス吸収量を見積もり,注入流の側面からのガス吸収量は僅かであるとしたChohら13)の報告を踏まえると,注入時のガス吸収サイトは主に滝壺部であると推定される。
Changes of DO in lower vessel during tapping (Run.H).
下容器内の水が上容器内の水で希釈される条件としたRun.Iの経時変化をFig.5に示す。系外からの酸素供給が無いと考えた場合の酸素収支を考えると(2)式が成り立つ。Run.Iの実験条件を(2)式に代入して求めたDO挙動をFig.5に示す。
(2) |
Changes of DO in lower vessel (Run.I).
ただし,CDO:下容器側の溶存酸素濃度(ppm),wDO:下容器内の溶存酸素の質量(g),W:下容器内の水量(kg),CuDO:上容器側の溶存酸素濃度(ppm),Q:注入流の質量流量(kg/s)である。以後,特に断りが無い限り,上付きのuを添えた場合は上容器内の値を表し,上付きの添え字が無い場合は下容器内の値を表すものとする。また,下付きの添え字tは時間を表し,t0:現在の値,t1:次の時間ステップの値である。計算結果は実測値を概ね再現できており,本実験系において希釈に伴う酸素収支が成り立っていることが確認できた。なお,初期水量を変えた別の実験の結果も(2)式で再現できたことから,希釈挙動に及ぼす初期水量の影響は無いと考えられる。
3・4 注入中のガス吸収挙動ベース条件として複数回実験したRun.CのDO挙動をFig.6に示す。注入開始後10秒あたりからDOが増加し,初期に急激にDOが増加した後,DOは一定値となる挙動を示した。注入流を大気遮断し,滝壺を生じさせなかった条件ではDOがほとんど変化しなかったことを考慮すると,Run.Cでは滝壺の生成に伴ってDOが急激に増加したと考えられる。また,同一条件で複数回実験しても概ね同じDO挙動が得られており,本実験装置の再現性は良好であることが確認できた。なお,別に調査した実験から,DO計の分析遅れ時間は3秒程度,応答速度は90%飽和値読み取りまで20秒程度であるが,注入初期のDO変化量は飽和値との差と比較すると小さいことから,注入開始直後にDOが停滞するのは混合遅れに起因すると考えられる。
Changes of DO in lower vessel during tapping (Run.C(base)).
初期注入高さを変えたRun.AからDのDO挙動をFig.7に,ノズル径を変えたRun.CおよびRun.EからGのDO挙動をFig.8に示す。初期注入高さが高い条件ほど注入初期のガス吸収速度が大きく,到達DOも高い結果となった。この結果は,Chohら13)が報告した出鋼高さが高いほどガス吸収量も大きくなる結果を支持するものである。一方,ノズル径を変えた条件では,ノズル径が大きい条件ほど注入初期のガス吸収速度は大きかったが,ノズル径が小さい条件ほど到達DOが高くなる結果となった。
Effect of initial height on changes in DO during tapping.
Effect of nozzle diameter on changes in DO during tapping.
下容器内の水量の経時変化が算出できると,注入中の上容器内のDOは一定であるから,注入速度と下容器内のDOの経時変化から(3)式,(4)式を使って酸素収支を検討できる。
(3) |
(4) |
ただし,wuDO:上容器から流入した酸素量(g),wi:下容器内の入置水量(kg)である。一例として,ベース条件Run.Cの酸素収支をFig.9に示す。下容器内の全酸素量wuDOと上容器内の水が起源であるwDO_uの差分が注入に伴って吸収された酸素を示す。下容器内の酸素量は時間経過とともに増加する傾向を示し,注入末期での内訳としては注入に伴って大気から吸収された酸素の割合が大きい結果であった。また,(5)式を使って算出した単位時間あたりの酸素吸収量を算出できる。
(5) |
Changes of cumulative oxygen in lower vessel (Run.C(base)).
ただし,Oab:酸素吸収速度(g/s),t:時間(s)である。(3)~(5)式を用いて算出したRun.Cの酸素吸収速度の経時変化をFig.10に示す。Fig.10に示すように,注入初期は下容器内の酸素量は少ないものの容器内の水量も少ないため,酸素吸収量自体は大きく,中期から末期にかけて徐々に減少する傾向となり,これらの傾向は他の条件でも同様であった。
Changes in oxygen absorption rate during tapping (Run.C(base)).
注入中の下容器には上容器から低DOの水が流入するため,下容器のDOの変化速度を(6)式に示すように希釈を考慮する形で定式化した。
(6) |
ただし,AkO:吸ガス容量係数(m3/s),V:下容器内の水の体積(m3),ρ:水の密度(kg/m3)である。CDO*は飽和溶存酸素濃度であり,水温および酸素分圧により変化するが,本報では注入時の酸素吸収に伴う酸素分圧の変化は僅かであり,水温の変化は無いと仮定し,水温293 K,酸素分圧0.21 atmでのCDO*=8.80 ppmとして解析した。(6)式を用いて算出した吸ガス容量係数AkOをFig.11に示す。ここで,酸素−水系の吸ガス容量係数に関しては,Biń14)により,複数の水モデルでの報告値10,15,16,17)をもとに算出した(7)~(10)式に示す実験式が報告されている。
(7)14) |
(8)14) |
(9)14) |
(10)14) |
Changes in AkO during tapping (Run.C(base)).
ここで,d0:ノズル直径(m),Lj:注入流の長さ(m),Fr’0:修正フルード数(=Q2/(g・d05)),vL:動粘度(m2/s),Nj:注入に伴う動力(N)である。Fig.11にはこれらの式から求めた吸ガス容量係数AkOを同時に示す。これらの式から求まる吸ガス容量係数AkOは,容器内水量が一定となる循環系の実験装置において,注入に伴って生成する滝壺が十分に生成された定常状態での値である。本実験系はバッチ式の注入挙動を模擬しており,注入初期と末期では滝壺の生成状態も大きく変化するが,下容器内にある程度の水が満たされた注入中期から末期にかけて,吸ガス容量係数AkOを実験式で再現できた。(7)式から(10)式までの違いは,ノズル径および注入流の長さといった装置形状,ならびに,修正フルード数もしくは注入に伴う動力で整理するかの違いである。本報では,ノズル径および注入流の長さが本実験系に近く,実験結果を良く再現できる(10)式を用い,実験で得たAkOを計算値で除した値で整理して吸ガス挙動をより詳細に検討する。一例として,Run.CのAkOを(10)式で求めたAkOで除して求めたAkO_obs./AkO_calc.の経時変化をFig.12に示す。Fig.12に示すように注入中の吸ガス容量挙動は,AkO_obs./AkO_calc.が急激に増加する領域,増加速度が緩やかになる領域,一定となる領域に分けられ,これらの領域を滝壺の生成に応じて,I:成長期,II:遷移期,III:安定期と大きく3つの領域に分類した。この傾向は初期注入高さやノズル径に関わらず同様に見られた。吸ガス容量係数は気液界面積と物質移動係数の積であり,気液界面積に大きく影響する気泡の生成挙動に着目すると,I:成長期では下容器全体に気泡が広がる状態であると考えられる。II:遷移期では,水面が高くなったことで下容器全体に広がっていた気泡が注入流直下に集まって気泡柱を形成しており,I:成長期とII:遷移期の境は気泡柱の生成挙動が関与していると考えられる。また,III:安定期では,気泡柱の成長が飽和する領域であると考えられる。ここで,II:遷移期からIII:安定期に変わる時間をTC for AkOと定義し,以後の考察に用いることにする。
Changes in AkO_obs./AkO_calc. during tapping (Run.C(base)).
注入中の滝壺の様子を撮影した動画から求めた注入に伴う気泡到達深さHp_obs.を(11)式に示す実験式14)とともにFig.13に実線で示す。Fig.13中の白丸は画像解析から求めた気泡到達深さの実測値であり,点線は(1)式で求めた注入速度から求めた下容器の水面高さである。
(11)14) |
Changes in depth of penetration of bubbles during tapping (Run.C(base)).
ここで,Hp:水面からの気泡到達深さ(m),Vj:水面位置における注入速度(m/s)である。注入初期は容器内の水量が少ないため注入に伴う気泡は容器底部に到達する。注入中期から末期に差し掛かると気泡先端が容器底部から離れ,この時の時間をTC for bubblesと定義する。TC for bubblesは容器内の浴深と実験式で求めた気泡到達深さの交差する時間と概ね一致した。ここで4・2項で定義したTC for AkOとTC for bubblesを比較した図をFig.14に示す。Fig.14に示した黒丸は初期注入高さ,白丸はノズル径を変更した条件であるが,TC for AkOとTC for bubblesは条件の違いに関わらず一致しており,これは注入に伴う吸ガス挙動が容器内の滝壺生成挙動に強く相関していることを示している。
Relation between critical time for bubbles and AkO.
気泡到達深さを(11)式による計算値で除したHp_obs./Hp_calc.とAkO_obs./AkO_calc.の関係をFig.15に示す。上記した方法で実験結果を整理することで,初期注入高さやノズル径に関わらず全ての実験結果を統一的に説明することができた。ここで,AkO_obs./AkO_calc.が0.80,1.00に達する位置で領域を分け,その時のHp_obs./Hp_calc.をそれぞれ0.50,0.85に対応させる。Hp_obs./Hp_calc.は常に1.00以下であり,気泡先端が容器底部から離れるまではHp_obs.は容器内の水位と同じとみなせるため,(12)式から(14)式に示すようにAkO_obs./AkO_calc.をHp_obs./Hp_calc.で定式化することで,注入中の吸ガス挙動を全領域に渡って表すことができるようになる。
(12) |
(13) |
(14) |
Relation between Hp_obs./Hp_calc. and AkO_obs./AkO_calc..
Fig.16およびFig.17には(12)式から(14)式を用いて算出したAkOを(6)式に代入して求めたDOの経時変化を示す。ただし,容器内の水量は(1)式,AkO_calc.は(7)式,Hp_calc.は(11)式を用いて求めた。初期注入高さが高く,ノズル径が大きい条件ほど初期のガス吸収速度が大きく,初期注入高さが高く,ノズル径が小さい条件ほど到達DOが高い結果が再現できており,気泡生成挙動に着目した吸ガス挙動解析が妥当であることが示された。一方で,ノズル径が大きい条件のガス吸収挙動に関しては計算結果のほうがガス吸収量を少なく見積もる傾向であった。本報ではAkOを算出する際にd0が0.1乗で反映される(10)式を用いたが,報告されている(7)~(10)式におけるAkOに対するd0の冪指数は−1.89~1.65と幅広く,ガス吸収挙動に及ぼすノズル径の影響に関しては今後の検討が必要な課題であると考えられる。
Effect of initial height on calculated DO during tapping.
Effect of nozzle diameter on calculated DO during tapping.
本報では水−酸素系での吸ガス挙動を滝壺生成挙動と関連付けることで,注入中の吸ガス挙動を概ね再現できた。取り扱う系が溶鋼−窒素もしくは溶鋼−酸素となった場合であっても,気液界面からのガス吸収というメカニズム自体は変わらないため,本報で得られた知見ならびに注入流に関する既往の知見18)をもとに溶鋼系での滝壺生成挙動ならびに吸ガス容量係数を評価することで,実操業における転炉出鋼時のガス吸収挙動を再現できると考えられる。溶鋼系では温度の影響が大きく表れ,測定や可視化の課題も多いことから調査は困難であるが,近年高精度化ならびに大規模化した数値解析が注入流への解析にも適用されてきており19),数値解析と溶鋼系での実験調査を重ねることで,未解明の部分が多い転炉出鋼時のガス吸収挙動が明らかにされていくことが期待される。
転炉を模擬した水モデルを用い,容器内の水中溶存ガス濃度を連続測定することで注入中のガス吸収速度を算出し,注入時のガス吸収挙動に及ぼす諸因子の影響を検討した。その結果,以下の知見を得た。
(1)注入時のガス吸収挙動は,希釈を考慮した吸ガス速度式で整理できた。また,実験結果から求めた吸ガス容量係数は注入初期に極大値を示し,容器内の浴深が深くなる注入中期から末期にかけて,既往の実験式で再現できた。
(2)注入時のガス吸収挙動は容器内の水量および容器内に生成される滝壺生成挙動と密接に関係しており,滝壺の生成に応じて,I:成長期,II:遷移期,III:安定期と3つの領域に分類して整理できた。
(3)初期注入高さやノズル径に関わらず,注入時のガス吸収挙動はHp_obs./Hp_calc.とAkO_obs./AkO_calc.によって整理できた。また,これらの関係を使うことで実験結果を概ね再現でき,気泡生成挙動に着目した吸ガス挙動解析が妥当であることが示された。