Tetsu-to-Hagane
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Material Properties and Weldability of Steels Used in Aged Bridges
Mikihito Hirohata
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2017 Volume 103 Issue 11 Pages 629-635

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Synopsis:

In order to obtain basic information for maintenance, repair and reinforcement of aged steel bridges, mechanical properties and weldability of steels used in aged bridges were investigated.

The contents of sulfur were relatively much in steels used in bridges constructed before 1960. The mechanical properties of aged steels were almost the same as those of SS400 and SM400. However, the Charpy absorbed energy of aged steels at 0°C were extremely low. Welding defects were observed in the repair welded parts of aged steel bridges. Although a weld cracking test was performed on the same steel of which the chemical compositions were not suitable for welding, weld crack was not generated. That might be because of the small thickness of steel and the mechanical conditions of welded joints. That is, patch plate welded joints with small thickness generated the small restraint during welding. The results indicated the importance of investigating chemical compositions and the mechanical conditions of welded joints for evaluation of the weldability of aged steels.

1. 緒言

高経年化した橋梁等の社会インフラ構造物の数が増加しており,適切な維持管理によりこれらのインフラ構造物を長寿命化していくことの重要性が高まってきている。鋼橋においては,長期的な供用による部材の腐食および交通荷重の繰返し作用による疲労き裂の発生,進展が主たる損傷の要因となっている1,2)。腐食による減厚部に対しては,鋼板添接補修や補強用形鋼の接合が適用され,疲労き裂に対しては,ストップホール施工,溶接によるき裂埋め戻し,当て板接合,ピーニング処理など種々の措置が講じられる3,4,5,6)

いずれの補修補強工法を適用する場合でも,補修補強の対象となる既設部材の材料特性を明確に把握しておくことが必要である。橋梁分野では採用事例が多くないが,補修補強に溶接接合を用いる場合は,既設鋼部材の機械的性質のみならず,化学組成を含めた溶接性を明らかにする必要がある。しかし,一部の鉄道橋などでは建設後約100年が経過したものが現在も供用されており,これらの高経年鋼橋の補修補強を行う場合に,使用されている鋼材の材料特性に関する資料や情報が喪失されていることがある。今後,多数の鋼橋の経年化が進行し,補修補強が必要となる鋼橋の数が増加する7)ことから,経年鋼材の材料特性や現在の鋼材との相違点を明確にしておくことは重要と考える。

本研究では,経年鋼橋の補修補強を実施する際の基礎的情報を取得することを目的に,1901年から1967年に建設され,近年撤去された経年鋼橋から採取した鋼材を用いて一連の実験を行い,経年鋼材の各種材料特性を調査した。さらに,実際の経年橋梁における補修溶接部の断面観察を行い,欠陥の有無を確認した。また,鋼橋において採用される事例の多い当て板補修を想定し,一部の経年鋼材を用いた当て板溶接の施工試験(重ね継手溶接割れ試験)を実施した結果を報告する。

2. 化学成分および組織観察

長期間の供用による劣化,損傷により撤去された鋼橋,あるいは,交通量の増加に伴う機能不足により架け替えられた鋼橋から鋼材を採取し,化学成分調査を実施した。一部の鋼材の調査結果は,既往の文献8,9,10)を参照したものである。調査対象とした鋼材の一覧をTable 1に示す。それぞれの鋼材が使用されていた橋梁の建設年代は,1901年から1967年である。各鋼材の化学成分分析結果をTable 2に示す。比較のために,鋼橋に多く使用される構造用鋼材(SS400,SM400A,SM490A)の化学成分に関する現行の規定11,12)を表に併記している。なお,表中の炭素当量Ceqおよび溶接割れ感受性組成PCMについては,JIS G 3106に従いそれぞれ以下に示す式により計算している12)。   

C eq ( % ) = C + Mn 6 + Si 24 + Ni 40 + Cr 5 + Mo 4 + V 14 (1)
  
P CM ( % ) = C + Si 30 + Mn 20 + Cu 20 + Ni 60 + Cr 20 + Mo 15 + V 10 + 5 B (2)

Table 1.  Sample steels.
Steel Steel grade Thickness (mm) Bridge and member type Construction year
A Unknown 11 Railway (I beam) 1901
B Unknown 10 Railway (Plate girder, web) 1901
C Unknown 10 Railway (Plate girder, web) 1912
D Unknown 14 Railway (Pier) 1912
E Unknown 9 Roadway (Cross girder) 1927
F Unknown 13 Roadway (Main girder) 1927
G Unknown 10 Railway (Plate girder, web) 1928
H SS41 10 Roadway (Plate girder, web) 1952
I Unknown 9 Roadway (Main girder) 1956
J SS41 9 Railway (Plate girder, flange) 1956
K SS41 8 Roadway (Plate girder, web) 1958
L SS41 19 Roadway (Plate girder, flange) 1958
M SM41W 6 Roadway (Plate girder, manhole) 1959
N SS41 6 Roadway (Plate girder, manhole) 1963
O SM41B 22 Railway (Plate girder, flange) 1967
Table 2.  Chemical compositions.
Steel C Si Mn P S Cu Ni Cr Mo V B Ceq PCM
×10–2 ×10–3 ×10–2 ×10–3 ×10–2
A 13.8 0.8 31.7 71 84 10.7 0.9 0.1 0.1 1 1 19.2 16.5
B 14.2 0.9 37.7 86 75 28.6 1.7 0 0.6 0 0 20.7 17.6
C 14.5 0.2 49.5 20 86 15.6 4.3 2.4 0 0 0 23.3 18.0
D 26.3 1.7 48.5 17 39 1.9 4.7 0.3 0.8 2 0 34.9 29.0
E 20.7 1.0 52.0 35 43 7.0 3.0 1.6 0 0 0 29.8 23.8
F 23.0 0 43.0 26 40 16.0 2.0 1.8 0 2 0 30.6 26.1
G 27.5 0.4 36.7 19 31 14.2 4.0 2.8 0.4 0 0 34.4 30.3
H 23.0 1.0 47.0 13 18 25.0 6.0 4.0 0.5 1 0 32.0 27.0
I 20.8 0.4 35.3 10 29 20.5 4.3 3.8 0.5 0 0 27.7 23.9
J 14.8 6.0 52.0 1 27 15.8 3.1 2.4 1.3 2 0 24.6 18.7
K 9.1 0.2 37.4 7 20 23.9 7.7 6.9 0 0 0 16.9 12.6
L 22.5 0.6 55.0 23 47 23.7 7.9 8.5 0 0 0 33.6 27.0
M 16.0 7.0 56.0 13 22 16.0 2.6 4.1 0.6 2 2 26.7 21.1
N 4.8 1.4 33.0 7 13 7.9 1.9 0.8 0.3 2 2 10.7 8.0
O 18.1 3.1 92.9 13 16 7.4 3.6 1.9 0.1 1 0 34.2 23.4
SS400 ≦ 50 ≦ 50
SM400A ≦ 23 ≧ 2.5C ≦ 35 ≦35 ≦ 44 ≦ 28
SM490A ≦ 20 ≦ 55 ≦ 165 ≦ 35 ≦ 35 ≦ 44 ≦ 28

(mass%)

また,主要5元素(C,Si,Mn,P,S)の含有量と橋梁の建設年の関係をFig.1に示す。わが国においては1888年(明治21年)以降に鋼が橋梁の主要材料として定着してきたことが報告されている13)。既往の研究で調査された1900年以前に建設された橋梁に使用されていた錬鉄のCの含有量は0.005%以下であり,Pの含有量は0.25%以上であった。これに対し,1900年頃からそれ以降に建設された橋梁に使用されていた鋼材のCの含有量は0.1~0.3%程度であり,Pの含有量は0.1%以下であった14)。これらの化学成分からも本研究で調査した材料には錬鉄は含まれていないと判断できる。本研究で調査した経年橋梁の建設年が1928年以前のものについては,鋼種に関する情報が得られなかった。鋼種が不明ではあるが,現在のSS400やSM400Aの規定と比較すると,1912年以降に建設された橋梁から採取した鋼材は概ねSS400およびSM400Aの規定に近い組成となっていた。1901年建設の橋梁から採取したA材およびB材,1912年建設の橋梁の主桁に使用されていたC材については,P,Sの含有量が現在のSS400やSM400Aの規定を大きく越えていた。わが国では1960年頃から溶銑予備処理や二次精錬技術などによる脱硫技術が広く発展,普及してきたことが知られている15)。本研究で調査した鋼材は1960年以前のものがほとんどであり,脱硫技術が未成熟の時代に製造されたものであるため,Sの含有量が比較的多かったと考えられる。

Fig. 1.

 Contains of main chemical compositions.

わが国では1930年以降に鉄道橋の製作に溶接が一般的に使用されるようになった16)。また,溶接構造用圧延鋼材の規格は1952年に制定された12)。一方,冷間割れ感受性組成による溶接割れ発生有無の評価については1980年頃から体系化されたものである17)。溶接性に関する炭素当量Ceqについては,全ての鋼材が現在の溶接構造用圧延鋼材の上限値よりも少ない値となっていた。

また,一部の鋼材(6種)について金属組織観察を実施した結果をFig.2に示す。鋼材の製造年代に関わらず大きな相違はなくフェライト・パーライト組織であった。

Fig. 2.

 Microstructures of steel.

3. 機械的性質

各経年鋼材に対し引張試験を実施し,得られた機械的性質をTable 3に示す。橋梁の建設年代が古く鋼種に関する情報が得られなかったものを除くと,本研究で使用した鋼材は引張強度400 MPa級の強度レベルであった。現行のSS400,SM400Aの降伏応力および引張強度に関する規定は,降伏応力が245 MPa以上,引張強度が400~510 MPaである。経年鋼材は概ねこの規定を満たしていたが,100年以上前の鋼材であるA材,C材,D材は,現在の400 MPa級鋼材の規定を下回る強度であった。また,建設年代が比較的新しいN材(1963年)も,400 MPa級鋼材の強度規定を満たしていなかった。N材については橋梁の主要部材ではなくマンホールの蓋として使用されていた鋼材であり,主部材の使用鋼材(SS41)と異なる鋼種である可能性が考えられる。

Table 3.  Mechanical properties.
Steel Year Tensile test Charpy impact test (at 0°C)
Yield stress Tensile strength Elongation Specimen thickness Absorbed energy
MPa % mm J
A 1901 165 363 13 7.5 9
B 1901 307 477 31 7.5 17
C 1912 257 383 28 7.5 33
D 1912 234 429 25 7.5 7
E 1927 245 415 34 7.5 31
F 1927 248 419 34 10 33
G 1928 271 472 32 7.5 8
H 1952 267 424 22 7.5 94
I 1956 306 451 30 7.5 24
J 1956 265 417 27 5 26
K 1958 274 404 32 7.5 48
L 1958 243 440 33 10 27
M 1959 286 440 32 5 116
N 1963 275 353 22 5 142
O 1967 283 418 21 10 54

また,各経年鋼材に対し試験温度0°Cでシャルピー衝撃試験を実施し,得られた吸収エネルギー値をTable 3に示す。シャルピー衝撃試験片の厚さは各鋼材の原厚によって異なるが,経年鋼材は板厚の薄いものが多く,フルサイズ試験片(厚さ10 mm)が採取できない場合はサブサイズ試験片(厚さ7.5 mm)およびハーフサイズ試験片(厚さ5 mm)を使用した。吸収エネルギー値はそれぞれの試験片厚さで得られた値をそのまま記載している。橋梁の建設年代が1930年以前の鋼材では,試験温度0°Cで脆性的な破壊モードを呈するものが多かった。1950年以降の鋼材では,試験温度0°Cで延性的な破壊モードを呈するものが多かったが,L材(1958年)のみ,脆性的な破壊モードを呈した。L材は1958年に建設された道路橋プレートガーダーのフランジに使用された鋼材である。K材は,同じ橋梁のウェブから採取した鋼材である。同じ橋梁に使用されている鋼材であっても,厚いフランジ材(L材,19 mm)と薄いウェブ材(K材,8 mm)の破壊モードは異なっていた。経年橋梁の補修補強のために鋼材の機械的性質を調査する場合は,主部材から鋼材が採取できないことが多い。このような場合,鋼材を採取しても構造物への影響が比較的小さい二次部材から調査用サンプルを採取することがある。しかし,採取する部材によっては補修補強の対象とする部位の材料特性が妥当に評価できない可能性があり,注意を要する。

4. 経年橋梁溶接部の特性評価

4・1 実橋溶接部の断面観察

本研究で調査対象とした経年橋梁の中には,供用期間中に溶接による補修補強が適用されたものが存在する。鋼材Dは,1912年に建設された鉄道橋のトレッスル橋脚(主に形鋼を利用して櫓状に組んだ橋脚形式であり,わが国では1900年頃まで山間部に架設される鉄道橋に多く採用された)から採取したものである。この橋脚部材は,Fig.3に示すように2つのチャンネル材をレーシングバーによりリベット接合することで矩形断面を構成していた。しかし,レーシングバーの腐食損傷が著しく,1968年以降にレーシングバーを取り外し,タイプレートを溶接する工事が実施された18)。タイプレートの溶接部を切断し,溶接部の断面マクロ写真を観察した結果をFig.4に示す。観察した12断面のうち,3断面においてブローホールと思われる欠陥(Fig.4(a))が確認された。また,2断面において割れ(Fig.4(b))が確認された。

Fig. 3.

 Repair of bridge pier - D by welding.

Fig. 4.

 Weld defect of bridge pier - D.

一方,1956年に建設された道路橋(鋼材:I)では1993年の床版補強工事において,既設横桁の下に補強部材が現場溶接された(Fig.5(a))。補強部材の溶接部を切断し,断面マクロ写真を観察した結果をFig.5(b)(c)に示す。溶接ルート部近傍にブローホールと思われる欠陥が生じている部分があり,現場溶接の施工難度の高さを観察結果は示唆している。本研究で調査した6断面のうち,2断面に溶接欠陥が確認された。しかし,溶接欠陥から疲労き裂などが進展している状況は確認できなかったため,供用時には欠陥の影響はなかったものと推察される。

Fig. 5.

 Reinforcement of bridge-I by welding.

4・2 溶接割れ試験

本研究で調査した鋼材の中から,比較的寸法の大きいサンプルを入手することができたC材およびD材に対し,溶接冷間割れ評価試験を実施した。これらは1912年に建設された同じ橋梁の主桁(C材)と橋脚(D材)に使用されていた鋼材である。D材については,化学成分の観点からは溶接に適さない鋼材であるが,4・1に示したように実際には溶接による補修が適用されている。建設当初,トレッスル橋脚のレーシングバーがリベットで接合されていたが,レーシングバーの腐食損傷が激しく,1968年頃からレーシングバーの代わりにタイプレートを溶接により接合する補修が広く実施されたものである18)。溶接冷間割れ試験として,厳しい評価を与えるとされているy形溶接割れ試験19)が一般には実施される。本研究では,y形溶接割れ試験だけでなく,実構造の継手形式(タイプレート)により近いと思われる重ね継手溶接割れ試験20)も実施した。試験体の形状および寸法をFig.6およびFig.7に示す。いずれの場合も,JIS Z 3312 YGW12に対応する軟鋼~550 MPa級鋼用ワイヤを使用しCO2半自動溶接により試験を実施した。重ね継手溶接割れ試験では,下板に経年鋼材(C材およびD材)を用い,上板には下板と厚さがほぼ同じのSM400A材(C材に対し9 mm,D材に対し12 mm)を用いた。

Fig. 6.

 y-groove weld cracking test specimen.

Fig. 7.

 Controlled thermal severity weld cracking test specimen.

各溶接割れ試験において,板厚に対し良好な溶接ビードが形成される入熱量の範囲から入熱量をy形溶接割れ試験では9 kJ/cm,重ね継手溶接割れ試験では4 kJ/cmとした。

溶接終了後,断面マクロ写真(Fig.8)を撮影し割れの発生有無を確認した。本実験の条件の範囲内では,y形溶接割れ試験,重ね継手溶接割れ試験ともに冷間割れの発生は確認できなかった。既往の研究により,y形溶接割れ試験における冷間割れ発生に影響を及ぼす因子は,材料的観点からは冷間割れ感受性組成(PCM)と拡散性水素量,力学的観点からは継手の拘束の度合いであることが示されている21)。本研究で使用した鋼材(特にD材)のPCM値は大きく,冷間割れの発生が危惧される材料であった。拡散性水素量は測定していないが,溶接に適していない鋼材において冷間割れが発生しなかった理由は,板厚が薄く継手の拘束度合いが高くなかったためと推察される。本研究では実際に溶接補修が適用された1968年頃の溶接材料と溶接割れ試験に使用した溶接ワイヤの比較を行っていないが,現場溶接補修では部材の拘束状態が溶接割れ試験の場合よりも厳しいことも想定され,このことが溶接補修においてFig.4(b)のような割れが生じた理由の一つとも考えられる。

Fig. 8.

 Macrographs of weld cracking specimens.

いずれにせよ,溶接補修を行う際には対象部材の材料特性などの基礎的情報は不可欠である。また,補修部位の拘束状態を適切に評価しうる施工試験方法を選択することが重要であるが,鋼橋の損傷に対する溶接補修を想定した施工試験方法は確立されていない。今後,鋼橋の維持管理の重要性がより高まると予想されることから,鋼橋の溶接補修を想定した施工試験方法の提案が重要な課題の一つになると考えられる。

5. 結言

経年鋼橋の補修補強を実施する際の基礎的情報を取得することを目的に,1901年から1967年に建設された鋼橋から採取した鋼材を用いて一連の実験を行い,経年鋼材の各種材料特性を調査した。また,補修溶接部の断面観察を行い,欠陥の有無を確認するとともに溶接施工試験を実施した。

得られた主な知見を以下に示す。

1)本研究で調査した経年鋼材のうち,1912年以前に建設された橋梁に使用されていた鋼材には,現行のSS400やSM400の規定を上回る量のリン(P)および硫黄(S)が含有されていた。また,1928年以前に建設された橋梁に使用されていた鋼材は鋼種が不明であったが,引張試験を行い引張強度400 MPa級の鋼材であることを確認した。

2)経年鋼材に対しシャルピー衝撃試験を行った結果,試験温度0°Cにおける吸収エネルギーは概ね低い値であった。また,同じ橋梁に使用されている鋼材であっても,異なる部材から採取した鋼材の破壊モードは異なっていた。経年橋梁の補修補強のために鋼材の機械的性質を調査する場合は,主部材から鋼材が採取できないことが多く,鋼材を採取しても構造物への影響が比較的小さい二次部材から調査用サンプルを採取することがある。しかし,採取する部材によっては補修補強の対象とする部位の材料特性が妥当に評価できない可能性がある。

3)実橋において補修溶接が適用された部位の断面観察を行った結果,溶接欠陥が内在している箇所が確認された。また,同じ鋼材を使用して溶接低温割れ試験を実施した結果,溶接に適さない鋼材ではあったが,板厚が薄く力学的観点からは拘束が小さかったため低温割れは発生しなかった。

4)経年鋼橋の損傷部位に対し溶接補修を行う際には,補修部位の拘束状態を適切に評価しうる施工試験方法を選択することが重要である。今後,鋼橋の維持管理の重要性がより高まると予想されることから,鋼橋の溶接補修を想定した施工試験方法の提案が重要な課題の一つになると考えられる。

謝辞

本研究の一部は第23回鉄鋼研究振興助成受給結果によるものであり,ここに記して謝意を表す。

文献
 
© 2017 The Iron and Steel Institute of Japan

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