2017 Volume 103 Issue 12 Pages 678-687
This study demonstrates in-situ measurement of solute partition coefficient in multicomponent alloys, using X-ray transmission imaging and X-ray florescence spectroscopy. The developed technique was applied to determine partition coefficients of Cr, Ni and Mo between δ phase and liquid phase in Fe-17.4Cr-12.6Ni-2.0Mo-1.6Mn-0.6Si alloys (mass%). In the observation and measurement, X-ray fluorescence spectra were directly obtained by irradiating the incident X-ray beam (23keV) to the solid phase or the liquid phase near solid/liquid interface. The partition coefficients were simply determined from the X-ray florescence analysis. In addition, successive measurements during unidirectional solidification allowed to measure change in partition coefficient along solidification path. During the solidification, partition coefficients of Cr, Ni and Mo changed from 1.01 to 1.08, from 0.76 to 0.70 and from 0.86 to 0.74, respectively. The present study proved that the developed technique was applicable to determine partition coefficients of 3d and 4d transition elements of which characteristic X-ray energies ranged from 4 to 20keV.
固相と液相が共存する温度領域の平衡関係を反映した凝固界面での溶質の分配係数は,ミクロ偏析・マクロ偏析を予測するために必要不可欠な物性値である。しかし,二元系合金を除き,多元系合金の分配係数に関するデータは限られているのが現状である。データが不足している背景には,1)ex-situ測定である従来手法では,測定を完了するまでに相当の時間を要し,高い測定精度は確保できても,効率的かつ系統的な測定は困難であったシーズ面,2)多元系合金のミクロ偏析・マクロ偏析を溶質間の相互作用も含めて陽に取り扱った凝固モデルやシミュレーションは計算コストの面からほとんど実施されず,ミクロ偏析・マクロ偏析の解析は,定性的・半定量的範疇に留まっているニーズ面がある。今後,鋳造材におけるマクロ偏析の低減といったニーズ,計算速度・規模の向上といったシーズを背景に,多元系合金における定量的なミクロ偏析・マクロ偏析の予測は,重要になってくると考えられる。このような定量性を担保したミクロ偏析・マクロ偏析の予測を実現するためには,凝固モデルやシミュレーション技術の向上だけでなく,定量的解析に応える精度の高い分配係数が求められる。
これまで分配係数の測定に用いられてきた手法(以下,従来手法)では,固液共存領域から急冷された試料の断面組織観察により高温に保持していた時の固液界面を同定した上で,その時の固相領域と液相領域の溶質濃度を測定し,分配係数を決定する。固液共存状態で平衡を実現するためのアニール,急冷後の組織観察・組成分析などに相当の時間を要し,1測定でひとつの液相組成に対する分配係数が決定される。化学分析により微量元素の分配係数を決定できるなど優れた点もあるが,多数の液相組成における分配係数の測定には適さない。
より簡便に分配係数を評価する方法として,ランダムサンプリングと呼ばれる手法が提案されている1,2,3)。ミクロ偏析の形成過程を考えると,凝固の進行,つまり,固相率の増加にともない固液界面の固相濃度と液相濃度は単調に増加し,固相内の拡散が無視できる場合には凝固時の固相濃度が凝固組織でも保存される。この状態が実現していれば,凝固組織について数100点の点分析から溶質濃度順に並べた濃度プロファイルは,凝固時の固相の濃度プロファイルに一致する。したがって,得られた濃度プロファイルをシャイルの式4)などの解析式にフィッティングすることにより溶質の分配係数を評価できる。この手法の長所は,言うまでもなく評価手法の簡便さであるが,固相内拡散が無視できない場合や凝固過程で溶質分配係数が変化する場合には,何らかの仮定を置かないと真の分配係数を求めることができない短所もある。
本研究では,従来手法やランダムサンプリングの手法を補完し,効率的で系統的な測定を実現にする手法として,X線イメージングによる固液界面のその場観察と蛍光X線スペクトルのその場測定を組み合わせた手法に注目した。第3世代の放射光施設の稼働とともに,Sn合金,Al合金の凝固現象の時間分解・その場観察が行われてきた5,6,7,8,9)。さらに,鉄鋼材料の凝固現象のその場観察も可能になり10,11),変形や変態などのその場観察も実施されている12,13,14)。したがって,鉄鋼材料も含めて多くの合金系で固液界面を観察するための実験技術はすでに確立しており,蛍光X線スペクトルのその場測定と組み合わせることができれば,固液界面付近の固相と液相の濃度をその場測定する手法が確立し,新たな溶質の分配係数を決定する方法になると期待される。
X線イメージングと蛍光X線分析を組み合わせたその場測定では,(1)固液界面付近の固相と液相の濃度を直接測定するため,仮定なしに分配係数を決定できる,(2)一方向凝固過程で,逐次,固液界面付近の固相と液相の蛍光X線スペクトルを測定すると,凝固パスに沿った液相濃度の変化にともなう溶質の分配係数を連続的に決定することができるなどの長所がある。したがって,従来手法に比べて現実的なコストで,種々の凝固条件で溶質の分配係数を系統的に評価することができる。多元系合金における系統的なデータは,分配係数を液相濃度の関数として表現したり,分配係数に及ぼす溶質間の相互作用の影響を明らかにしたりできる。
X線イメージングと蛍光X線分析を試行する合金として,本研究ではFe-Cr-Ni-Mo合金を用いた。多様な凝固モードが知られているFe-Cr-Ni合金では,ミクロ偏析においてCrとNiが同じように偏析するケースや逆に偏析するケースなどがあり,溶質分配の観点から整理されている15)。また,従来手法を用いた溶質の分配係数の測定もいくつかの報告がある16,17,18)。報告値をまとめると,Crの分配係数は0.91-1.05,Niの分配係数は0.77-0.98,Moの分配係数は0.67-0.85の範囲になっている16,17,18)。このように分配係数の報告値があり,特性X線のエネルギー領域が違う3dと4dの遷移金属元素を含むFe-Cr-Ni-Mo系は,X線イメージングと蛍光X線分析を組み合わせた本手法の検証に適した合金系である。
本研究の目的は,δ相が初晶となるFe-Cr-Ni-Mo合金を対象に,X線イメージングと蛍光X線分析を組み合わせたその場観察・測定手法が実現できることを実証し,凝固パスに沿ったFe-Cr-Ni-Mo合金の分配係数を明らかにすることである。
Fig.1は,単色硬X線を用いた固液界面のその場観察と蛍光X線スペクトルのその場測定を両立するためのセットアップである。図の左側がX線の上流側であり,入射X線ビームのライン上に上流側からビーム形状を調整するスリット,入射X線の強度を測定するイオンチャンバー(入射X線強度が変動する場合のみ使用),グラファイトヒーターの加熱炉を配置した真空チャンバー,透過像を観察する可視光変換型のビームモニタを配置した。また,入射X線に対して上流側45度の角度に蛍光X線を測定するEDS検出器(SDD)を大気中に配置した。蛍光X線の空気による吸収をできるだけ少なくするため,真空チャンバーのカプトン窓とEDS検出器の検出部の距離は5-10 mmにした。グラファイトヒーターの加熱炉およびチャンバーは既報11)と基本的に同じであるが,Fig.1に示すように蛍光X線スペクトルの測定ができるように炉の配置を変更した。炉を入射X線に対して30度傾けることにより,透過像の観察と同時に試料からの蛍光X線をEDS検出器で検出できようになっている。
Setup of X-ray optics for X-ray imaging and X-ray florescence analysis.
真空チャンバーは,ターボポンプとスクロールポンプにより排気し,試料の溶解および凝固時の真空度は数Paであった。また,試料の上部にゲッターとしてスポンジチタンを配置しており,観察・測定中の酸化を抑制した。また,発熱体であるカーボンヒーターの形状を調整して,試料の上下方向に数K/mmの温度勾配が生じるようになっており,炉の温度を一定速度で低下させることにより下部から上部に一方向凝固させることができる。
その場観察・測定は,SPring-8のイメージングビームラインであるBL20B2およびBL20XUで実施した。二つのビームラインではX線源が違うため,X線強度や平行性に違いがあるが,いずれのビームラインでも透過像のその観察と蛍光X線スペクトルのその場測定が可能であり,本研究の観察・測定結果に影響しない。
2・2 測定試料および手順化学分析により決定した試料の組成は,Fe-17.4Cr-12.6Ni-2.0Mo-1.6Mn-0.6Si(mass%)であり,ステンレス鋼SUS316Lに相当する合金である。この組成は,δ相(BCC)が初晶となる領域とγ相(FCC)が初晶となる領域の境界付近であるが,本研究のその場観察・測定ではδ相のみが観察された。
およそ横1.5 mm,縦3 mm,厚さ100 μmの試料をFig.2に示した試料ホルダーに挿入した。X線の入射側に30 μm厚,透過側に150 μm厚のサファイヤ板を用いて試料をはさみ溶鋼を保持した。溶解時の試料厚さは100-150 μmである。EDS検出器に届く蛍光X線の透過強度を向上させるため,入射側には30 μm厚のサファイヤ板を用いた。なお,X線吸収係数の報告値19)を用いて,30 μm厚のサファイヤ板を通過するX線の透過率を評価すると,23keVの入射X線ではおよそ98%であるのに対して,3keV,5keVではそれぞれ3%,24%となる。したがって,溶質濃度にも依るが,特性X線のエネルギーが低いSc以下の軽元素の測定は現状のセットアップでは困難である。
Specimen holder used to measure X-ray florescence spectra in-situ.
一方向凝固過程における固液界面付近の液相と固相の蛍光X線スペクトルの測定は,Fig.3の手順で測定した。(1)X線透過像により固液界面の位置を確認,(2)スリットを調整して幅200 μm,高さ100 μmのX線ビームを固液界面付近の固相に照射して蛍光X線スペクトルを測定,(3)測定後すみやかにスリットを移動し,幅200 μm,高さ100 μmのX線ビームを固液界面付近の液相に照射して蛍光X線スペクトルを測定,(4)続いて,試料の最上部の液相に同様にX線を照射して蛍光X線スペクトルを測定した。試料上部の測定は,液相内の濃度分布の有無を確認するためであり,分配係数の評価には用いない。
Experimental procedures of X-ray florescence analysis for determining solute partition coefficients.
試料下部に平滑界面が形成した状態から冷却速度0.0055 K/s(0.33 K/min)で試料を冷却し,成長速度が低下する凝固末期では冷却速度0.0166 K/s(1 K/min)で試料を冷却した。冷却開始から終了までに要した時間はおよそ1.1×104 s(3時間)であり,この間に11セットの固液界面付近の固相と液相,試料上部の液相の蛍光X線スペクトルを得た。
液相中と固相中の溶質の拡散係数がそれぞれ10−9 m2/s,10−12 m2/s程度であれば,拡散係数と拡散時間の積の2倍を平方根することで定義される拡散距離は,各測定の時間間隔(およそ103 s)では,それぞれ,10−3 m,10−5 mオーダーになる。試料サイズと比較して,液相濃度は比較的均一な濃度分布が期待される。一方,固相内の拡散距離は試料長さ2 mmに対して十分に小さいが,固相内拡散による局所的な組成の変化が無視できるとは限らない。
Fig.4は,蛍光X線スペクトルを測定する過程で観察した固液界面の例である。透過像から画像処理により液相領域と固相領域のピクセル数を計測し,固相率を評価した。端部で試料が薄くなっているため,この評価方法では10%程度の誤差が生じる。ここでは,固相率を試料全体の凝固の進行を表す指標として取り扱い,液相と固相の濃度から直接計算する溶質の分配係数に画像処理により求めた固相率は影響しない。
An example of X-ray transmission image of whole sample. The solid / liquid interface was identified by the transmission image.
一方向凝固過程における固相率の変化をFig.5に示す。“EDS at interface”,“EDS at top”は,それぞれ,界面付近の固相と液相の蛍光X線スペクトルを測定したときの平均固相率,試料の最上部の液相濃度を測定したときの固相率である。測定間隔には若干の変動があるが,測定回数である横軸はおよそ凝固開始からの時間に対応しており,一方向凝固過程で固相率が単調に増加し,凝固パスに沿った測定になっている。
Change in solidi fraction during measuring X-ray fluorescence spectra. “EDS at interface” means average solid fraction for measuring X-ray fluorescence spectra at the solid and the liquid phases near solid / liquid interface. “EDS at top” means solid fraction for measuring X-ray fluorescence spectrum at the top of specimen.
X線を照射した蛍光X線分析では,特性X線のエネルギーに依存するが試料内部からの蛍光X線も計測しており,X線透過方向の固液界面の形状に注意が必要である。Fig.6は,X線の透過方向の固液界面形状の模式図である。Fig.6(a)のように固液界面が試料厚さ方向に平面であれば,透過像の固液界面を挟んだ固相と液相の蛍光X線スペクトルをその場測定することで,液相と固相の濃度を評価できる。しかし,固液界面が液相/固相/サファイヤの界面エネルギーの関係から凸形状になり,さらにサファイヤ板と固相に挟まれた液相領域に溶質が濃化すると,その領域の凝固が遅れ,Fig.6(b)のような界面が形成されることがある。この場合,X線ビームの方向に固相あるいは液相のみが存在する位置で蛍光X線スペクトルを測定すると,固相と液相の測定位置の距離は離れ,濃度測定の精度が低下する恐れがある。
Schematic illustration of solid / liquid interface shape. (a) planar interface, (b) convex solid / liquid interface, induced by interfacial energies and solute pile-up between solid and Al2O3 plate and (c) slightly convex solid / liquid interface.
Fig.4に示した透過像における界面のコントラストから,固液界面はFig.6(c)の形状になっていることが推定できるが,濃度測定の妥当性を確認するため。測定後の試料について断面の蛍光X線分析を行った。Fig.7は,測定後の試料断面の2次電子像と蛍光X線スペクトルの測定から求めたFe,Ni,CrのKα線のピーク強度比である。試料断面で各元素の濃度は一様であり,界面付近の固相と液相の濃度測定が妥当であることが確認された。なお,蛍光X線スペクトルの測定時,固相のサファイヤ板に対するぬれ角が最大である180°の場合,固液界面の曲率半径は試料厚さの半分,つまり,50 μm程度になる。このことを考慮して,固液界面付近の蛍光X線分析は固液界面からおよそ100 μm離れた位置で実施した。
Intensities of Cr Kα, Ni Kα and Mo Kα along the incident X-ray beam direction on the cross section after in-situ measurement of X-ray fluorescence spectra.
その場測定により得られた蛍光X線スペクトルの例として,固相率0.56(Fig.5における5回目の測定)のときの界面近傍の液相と固相の蛍光X線スペクトルの全体像をFig.8(a)に示す。横軸はEDS検出器のチャンネルをとり,X線エネルギーも上の軸に示している。縦軸はFeのKαピークの高さによって規格化した蛍光X線強度である。構成元素であるCr,Fe,Ni,MoのKαピークとKβのピークが検出された。2100-2200チャンネル付近のブロードなピークは試料からのコンプトン散乱であり,2300チャンネル付近のピークは入射X線(23keV)に対応する。構成元素の特性X線のピーク,コンプトン散乱,入射X線が検出されているのに対して,試料中のX線の散乱により生じる白色のバックグランドはほとんど観察されなかった。
X-ray fluorescence spectra at solid fraction 0.56 (measurement number is 5 in Fig.5.) (a) Overview of X-ray fluorescence spectra of the solid and the liquid phases near solid / liquid interface, (b) region of Kα and Kβ peaks of Cr, Fe and Ni, and (c) region of Kα and Kβ peaks of Mo.
試料から発生する散乱X線の強度は,入射X線方向で最大,入射X線に対して90°の方向で最小になるため,一般的にはEDS検出器は入射X線に対して垂直に近いほど望ましい。特に入射X線強度が高い放射光では,散乱による白色X線の強度も大きくなる可能性がある。Fig.1に示すように透過像の観察と蛍光X線の検出を両立させるための制約から入射X線に対して上流側45°の角度で蛍光X線スペクトルを検出したが,特性X線のピークに比べて無視できる程度のバッググランドであった。
Cr,Fe,Niの特性X線のピーク領域,Moの特性X線のピークと入射X線のエネルギーの領域の蛍光X線スペクトルをそれぞれFig.8(b)と(c)に示す。Fig.8(b)に示すようにCr,Fe,NiのKα線とKβ線のピークは明確に検出されているが,1.6mass%のMnのKα線(5.89keV)とKβ線(6.49keV)のピーク(KαとKβのピーク位置を図中に矢印で示している)は検出されてない。検出されなかった原因として,Mnの特性X線の強度が低いこと,MnのKα線とKβ線がそれぞれCrのKβ線とFeのKα線と重なっていることが考えられる。一方,蛍光X線のエネルギーが高く,試料ホルダー,真空チャンバーの窓,空気による吸収が小さいMoの特性X線のピークは,2.0mass%でもCrやNiの特性X線のピークよりも高い。したがって,本研究のセットアップでは,6keV付近に特性X線ピークがある3dの遷移金属元素では数%以上の質量濃度が必要であり,17keV付近に特性X線ピークがあるMoなどの4d遷移金属では1mass%以下でも検出できることが示された。
放射光施設で入射X線を収束させるX線光学系を用いると,室温・大気圧の測定で数10 ppmオーダーの元素のマッピングが可能である20,21)。今後,入射X線を収束するX線光学系を利用できるその場観察・測定のセットアップが構築できれば,測定限界の質量濃度が1桁以上低くなると期待できる。
3・2 固相および液相の溶質濃度の決定Fig.9は,Fig.8の液相の蛍光X線スペクトルに対して,下記の式(1)で示すKα線(右辺第1項)とKβ線(右辺第2項)を用いてフィッティングした結果であり,各元素についてKα線とKβ線のいずれもよく再現している。
(1) |
Example of fitting curves to X-ray fluorescence spectrum. The spectrum was measured at the liquid phase near solid / liquid interface (Liquid phase in Fig.8). (a) Fitting curve around peaks of Cr, Fe and Ni and (b) fitting curve around peaks of Mo.
試料の温度以外その場測定と同じ条件で純物質などの標準試料を測定して,式(1)のPA,PBを除くパラメータを決定した。各元素の蛍光X線の強度は,Kα線の強度を示す右辺第1項のガウス関数の積分値であるPAσA
Fig.10は,厚さdの試料からEDS検出器までの入射X線と蛍光X線の経路を模式的に示している。試料表面からの距離zとz+dzの間の微小領域で発生した元素jの蛍光X線がEDS検出器で計測される強度dKjは,入射X線と蛍光X線が試料中で減衰することを評価すると,式(2)のようになる。
(2) |
Schematic illustration of penetration path of incident X-ray beam and fluorescence X-rays in specimen. In the present setup, α and β are 60 degree and 45 degree, respectively.
ここでI0,ρ,wjは,それぞれ入射X線強度,試料の密度,元素jの質量分率である。μはX線の線吸収係数であり,E0とEjはそれぞれ入射X線エネルギー,元素jのKα線のエネルギーである。Cjは元素だけでなく装置に依存する定数である(チャンバーの窓による吸収,EDS検出器で検出する蛍光X線の立体角,検出効率などを含む)。式(2)をz=0からz=dまで積分することにより,各元素のKα線の強度Kjは式(3)のように求まる。
(3) |
試料の線吸収係数μは,試料の密度ρ,X線のエネルギーに依存する質量吸収係数(μ/ρ)j,質量分率wjを用いて,式(4)のように表される。
(4) |
化学分析により組成が分かっている試料の蛍光X線スペクトルについて,各元素の質量吸収係数22)を用いて,式(3)と(4)により定数Cjを決定できる。本測定では,化学分析した試料を溶解して作製した均一な液相の蛍光X線スペクトルから,各元素の定数Cjの比を決定して,濃度の評価に用いた。
その場測定で得られた固相と液相の蛍光X線スペクトルの解析では,以下の手順にしたがって溶質の濃度を決定した。
(i)試料の平均組成(化学分析値)を用いて計算した線吸収係数と各元素のKα線の強度から式(3)を用いて,仮の濃度
(ii)手順(i)もしくは手順(ii)で求めた仮の組成
(iii)各元素の仮の濃度
ただし,凝固過程における液相と固相の濃度変化は,後述するように最大でも10mass%であり,上記の計算はすぐに収束して組成の測定精度にほとんど影響しなかった。
Table 1は,蛍光X線スペクトルから上記の手順により決定した固相と液相の組成である。1セットの測定ごとに,固液界面付近の固相濃度と液相濃度,試料上部の液相濃度,さらに固液界面付近の固相濃度を液相濃度で割ったCr,Ni,Moの分配係数を示している。先に述べたようにSiおよびMnは検出されていないので,Table 1はFe-Cr-Ni-Mo四元系合金の組成である。SiとMnの濃度を無視したFe-Cr-Ni-Mo四元系で決定された分配係数とFe-Cr-Ni-Mo-Mn-Si系における真の分配係数との差はせいぜい数%であり,SiおよびMnが検出されなかったことの影響は無視できる程度に小さい。
No | fs | Composition C (Fe-Cr-Ni-Mo) | Partition coefficient | |||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Solid near S/L interface | Liquid near S/L interface | Liquid at top | ||||||||||||||
Fe | Cr | Ni | Mo | Fe | Cr | Ni | Mo | Fe | Cr | Ni | Mo | Cr | Ni | Mo | ||
1 | 0.13 | 70.1 | 18.1 | 10.1 | 1.75 | 66.9 | 17.9 | 13.2 | 2.03 | 66.7 | 18.1 | 13.2 | 2.02 | 1.01 | 0.76 | 0.86 |
2 | 0.23 | 70.3 | 17.7 | 10.2 | 1.74 | 66.8 | 17.3 | 13.8 | 2.13 | 66.9 | 17.3 | 13.7 | 2.12 | 1.02 | 0.74 | 0.82 |
3 | 0.35 | 69.7 | 18.0 | 10.5 | 1.79 | 66.5 | 17.2 | 14.2 | 2.13 | 66.3 | 17.6 | 14.0 | 2.17 | 1.05 | 0.74 | 0.84 |
4 | 0.47 | 69.6 | 17.7 | 11.0 | 1.78 | 66.0 | 17.0 | 14.9 | 2.18 | 66.1 | 16.9 | 14.8 | 2.27 | 1.04 | 0.74 | 0.82 |
5 | 0.56 | 69.6 | 17.4 | 11.2 | 1.82 | 65.7 | 16.6 | 15.4 | 2.26 | 64.9 | 16.9 | 15.9 | 2.35 | 1.05 | 0.73 | 0.81 |
6 | 0.64 | 69.2 | 17.1 | 11.9 | 1.90 | 65.6 | 15.8 | 16.3 | 2.34 | 64.4 | 16.5 | 16.8 | 2.39 | 1.08 | 0.73 | 0.81 |
7 | 0.70 | 68.6 | 17.2 | 12.2 | 1.95 | 64.7 | 16.0 | 16.8 | 2.43 | 64.2 | 16.4 | 16.9 | 2.50 | 1.07 | 0.73 | 0.80 |
8 | 0.76 | 68.5 | 16.9 | 12.7 | 1.98 | 64.2 | 16.5 | 16.8 | 2.46 | 63.5 | 16.6 | 17.4 | 2.49 | 1.02 | 0.76 | 0.80 |
9 | 0.81 | 68.2 | 17.0 | 12.8 | 2.03 | 64.5 | 15.2 | 17.8 | 2.53 | 63.1 | 16.1 | 18.2 | 2.65 | 1.12 | 0.72 | 0.80 |
10 | 0.88 | 67.4 | 17.1 | 13.4 | 2.13 | 62.4 | 15.7 | 19.2 | 2.72 | 61.7 | 16.0 | 19.5 | 2.82 | 1.09 | 0.70 | 0.78 |
11 | 0.94 | 67.1 | 16.6 | 14.2 | 2.14 | 61.5 | 15.3 | 20.3 | 2.88 | 58.9 | 17.9 | 20.5 | 2.78 | 1.08 | 0.70 | 0.74 |
Fig.11は,横軸に透過像から求めた固相率,縦軸にCr,Ni,Moについてそれぞれ平均濃度で規格化した溶質濃度である。点線は式(5)で示すシャイルの式4)を用いて求めた溶質の濃度プロファイルである。ここでは,0.65から1.15まで0.05間隔の分配係数に対する濃度プロファイルを点線で示している。
(5) |
Measured concentrations of Cr, Ni and Mo, which are normalized by average concentration, and solid fraction. Dashed lines indicate concentration profile calculated by using Scheil’s equation4).
2・3で述べたように,一方向凝固は,固相内の拡散は無視でき,液相中は完全混合であるシャイルの式の前提条件に近かった。後者の液相中の完全混合の仮定は,Table 1に示したように固液界面付近の液相濃度と試料の上端部の液相濃度にあまり差がないことから満たしている。そこで,前者の仮定が成立すれば,測定した濃度プロファイルは式(5)のシャイルの式4)に従うはずである。
Cr,Ni,Moの濃度プロファイルのいずれも,シャイルの式4)濃度プロファイル(点線)から大きく逸脱することはない。濃度プロファイルと点線を比較してCr,Ni,Moの分配係数を見積もると,それぞれ1.05-1.10,0.75-0.85,0.85-0.90となる。一方,固液界面付近の固相と液相の濃度から計算したCr,Ni,Moの分配係数は,それぞれ1.01-1.08,0.70-0.76,0.74-0.86である。したがって,一方向凝固過程の濃度プロファイルをシャイルの式4)に当てはめた場合,分配係数の評価精度は低い。
シャイルの式4)から計算した濃度プロファイルと測定結果にずれが生じる理由として,(1)試料形状・凝固界面の形状が平滑界面の一方向凝固から逸脱している,(2)固相内の拡散距離が試料長さの1/100程度であっても固相内拡散は無視できない,(3)凝固パスにしたがって分配係数が変化していることが考えられる。シャイルの式4)から見積もった分配係数は,固液界面付近の固相と液相の濃度から決定した分配係数と比較して,いずれも1に近づくようにずれている。固相内の拡散を考えると,凝固の後半で固相内の濃度勾配が大きくなり,固液界面から固相側への溶質の輸送が増加する。固相内拡散が無視できる場合に比べて,固液界面の固相濃度と液相濃度の増加が抑制される。つまり,シャイルの式4)にフィッティングすると,真の分配係数から1に近い値にずれた分配係数が評価されることになる。したがって,本実験の条件でも(2)の固相内拡散が濃度プロファイルに影響していることが示唆される。また,(3)の分配係数の変化について次節で述べる。
3・4 分配係数の組成依存性Fig.12は,その場観察から決定した固相率に対して,その場測定により決定した固液界面付近の液相の濃度,分配係数をクローズドマーク(●,■,▲)で示している。Cr,Ni,Moのいずれも凝固の進行にともない分配係数は1から離れるように変化しており,凝固パスでの分配係数の変化は0.05-0.1である。3・3で述べた(3)の分配係数の変化も無視できないことを示している。
(a) Concentration of Cr, Ni and Mo in liquid phase, evaluated from X-ray fluorescence spectra and (b) solute partition coefficients of Cr, Ni and Mo. Lines in the right side indicate reported values of partition coefficients. Numbers are alloy no defined in Table 3.
分配係数の組成依存性は,各元素について標準濃度(本研究では,試料の濃度)からのずれで1次展開すると,式(6a)−(6c)のようになる。
(6a) |
(6b) |
(6c) |
測定データをスムージングしたFig.12の実線のデータを用いて,最小自乗法により求めた各係数をTable 2に示す。さらに,求めた係数を用いて,式(6)から計算した分配係数をFig.12にオープンマーク(□)で示している。式(6)を用いて計算された分配係数は,いずれの液相の組成に対しても0.02程度の差で測定値と一致しており,SUS316Lに相当する合金において凝固パスに沿った領域で液相組成からCr,Ni,Moの分配係数を評価することが可能である。
Element i | k0i | γi,Cr | γi,Ni | γi,Mo |
---|---|---|---|---|
Cr | 1.04 | –0.104 | –0.063 | 0.303 |
Ni | 0.757 | –0.032 | –0.031 | 0.114 |
Mo | 0.841 | –0.002 | 0.014 | 0.039 |
ただし,Table 2に示した係数を適用できる組成範囲には注意が必要である。本研究では,SUS316Lに相当する合金の凝固パスに沿った測定を行っているため,Cr濃度の減少,Ni濃度の増加,Mo濃度の増加は同時に起こっており,それぞれの元素の濃度変化の独立性は低い。そのため,SUS316Lに相当する合金の凝固パスから逸脱した液相の組成における分配係数を予測する際には,より独立性の高い合金濃度の測定結果も合わせて決定した各係数を用いるべきである。
3・5 文献値との比較Fe-Cr-Ni-Mo系の分配係数の報告値16,17,18)をTable 3に示す。凝固組織中のデンドライトアームの中心領域でもっとも低いCrとNi濃度を合金の平均濃度で割った値であるAlloy No.1,2も,参考のためにその値を分配係数の欄に示している。他のデータは,従来手法により求められた分配係数である。また,これらの合金と本研究で測定した合金の組成は一致しないので,初晶がδ相の合金に対しては式(6a)−(6b)から算出した分配係数も合わせて示している。また,これらの報告値16,17,18)は,Fig.12の右側に直線で示し,Table 3で定義したAlloy Noも付している。
Alloy No | Solidphase | Composition | Partition coefficient | Estimated from eqs.(6) | Ref | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Cr | Ni | Mo | Mn | Si | kCr | kNi | kMo | kMn | kSi | kCr | kNi | kMo | |||
1 | δ | 18.5 | 10.0 | – | – | – | 1.05 | 0.81 | – | – | – | 1.15 | 0.83 | – | (16) |
2 | γ | 18.0 | 19.9 | – | – | – | 0.91 | 0.96 | – | – | – | n/a | n/a | n/a | (16) |
3 | δ | 18.14 | 8.13 | 0.84 | 0.82 | 0.84 | 0.95 | 0.77 | 0.84 | 0.81 | 0.78 | 1.30 | 0.89 | 0.91 | (18) |
4 | γ | 20.14 | 24.00 | 0.99 | 1.00 | 1.26 | 0.97 | 0.98 | 0.67 | 0.74 | 0.57 | n/a | n/a | n/a | (18) |
5 | δ | 18.72 | 12.87 | 2.38 | 1.84 | 0.36 | 1.01 | 0.84 | 0.74 | 0.66 | – | 1.04 | 0.77 | 0.85 | (17) |
6 | δ | 17.08 | 12.12 | 2.16 | 0.97 | 0.98 | 1.01 | 0.82 | 0.85 | 0.80 | 0.79 | 1.19 | 0.82 | 0.86 | (17) |
7 | δ | 18.06 | 13.51 | 3.54 | 1.67 | 0.73 | 1.02 | 0.83 | 0.82 | 0.84 | 0.78 | 1.42 | 0.90 | 0.89 | (17) |
8 | δ | 19.25 | 12.62 | 2.38 | 1.75 | 0.24 | 1.03 | 0.84 | 0.83 | 0.85 | 0.85 | 1.00 | 0.76 | 0.85 | (17) |
Table 3によると,Crの分配係数は0.91-1.05,Niの分配係数は0.77-0.98,Moの分配係数は0.67-0.85の範囲である。Fig.12およびTable 1に示すように,本研究でその場測定により求めたCrとMoの分配係数は,それぞれ1.01-1.08,0.74-0.86であり,報告値の範囲と重複している。ただし,これまでの報告値は,本研究により決定した分配係数に比べて1に近い方向にずれる傾向がある。特に,Niの分配係数ではその傾向が顕著である。従来手法の報告値には0.1程度のバラツキがあり,測定手法が限られるなかで,本研究のその場測定の精度を検証することは容易ではない。しかし,従来手法と同等の分配係数が求められていること,凝固パスに沿った分配係数の変化を測定できていることから,本研究のその場測定は,従来手法と同等あるいはそれ以上の精度で溶質の分配係数を測定できると考えられる。
Table 4に,本研究で行ったその場測定の手法,従来手法,ランダムサンプリング1,2,3)の特徴を示す。本手法の特長のひとつは,平衡する固相と液相の濃度を比較的短時間の実験でその場測定できることにある。一方,短所は,軽元素の測定ができないこと,微量元素の測定ができないことである。したがって,短所である検出元素の制約が影響しない合金系では,凝固パスに沿った測定や多数の液相組成における分配係数の測定など,本手法を利用する意義は高い。また,本手法により多元系合金で系統的な測定を実施すると,式(6)のような評価式も構築でき,分配係数を液相濃度の関数として取り扱うこともできる。これは,ミクロ偏析・マクロ偏析に関わる凝固界面での溶質分配を取り扱う凝固モデルやシミュレーションの精度向上に寄与する。
【Present work】 EDS measurement with in-situ X-ray imaging |
【Conventional methods】 Analysis of sample quenched from semisolid state |
【Random sampling】 Concentration profile in solidified structure |
|
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Method / Principle | •In-situ •Direct EDS measurement of solid and liquid near interface |
•Ex-situ •Measurement of solid and liquid after identifying S/L interface in quenched sample |
•Ex-situ •Measurement of solute profile in solidified structure •Fitting to microsegregation model |
Micro-structure / analysis | •Direct observation of interface •EDS measurement at solid and liquid near interface |
•Rapidly solidified
structure •Fluorescent X-ray spectroscopy, Chemical analysis |
•Point analysis (fluorescent X-ray spectroscopy) at randomly selected positions |
Efficiency / features | •Relatively high •Multiple measurements along solidification path •Systematic analysis |
•Low •Annealing for long duration •One date set / one specimen |
•High •One date set / one specimen |
Target / Accuracy | •Difficult for light elements •Difficult for dilute elements |
•Possible for most elements •Possible for dilute elements by chemical analysis |
•Possible for most elements •Relatively difficult for dilute elements |
Others | •Requiring to use synchrotron radiation X-rays (present setup) | •Difficult to perform systematic measurements | •Accuracy depends on microsegregation
model •Solid diffusion can degrade measurement accuracy |
ランダムサンプリングは,その場測定よりも簡便に分配係数を推定できる手法であり,その簡便さは魅力的な長所である。しかし,ランダムにサンプリングしたミクロ偏析の濃度プロファイルから分配係数を評価する論理には,いくつか考慮すべき課題がある。ひとつは測定された固相の濃度プロファイルを,固相内拡散を無視した仮定に基づくミクロ偏析のモデルを用いて解析する点であり,もうひとつはミクロ偏析を評価する凝固空間を1次元で考えている点である。
前者の課題は,Fig.11に示した測定濃度とシャイルの式から求めた濃度プロファイルが一致しないことからも明らかである。固相内拡散が無視できない場合に,固相内拡散を無視したランダムサンプリングの解析を行うと,求められる分配係数は真の分配係数に比べて1に近い値になる可能性がある。
後者のミクロ偏析モデルにおける幾何学的条件も精度向上のために検討すべきである。固相内拡散を無視するシャイルの式4)では固相率のみに依存する濃度プロファイルが与えられるが,固相内拡散を考慮する場合にはミクロ偏析の濃度プロファイルは凝固空間のスケールと次元に依存する。これまでに,固相内拡散を部分的に考慮したミクロ偏析モデル23,24)やデンドライトの1次アーム間をミクロ偏析の凝固空間として取り扱うミクロ偏析モデル25,26,27)が提案されているが,これらの成果を解析に取り込むことが課題である。つまり,固相内拡散を考慮したミクロ偏析モデルを解析に導入できれば,ミクロ偏析の定量的予測に貢献できる。
ミクロ偏析の定量性を向上させる具体的な手段に,本研究で行ったその場測定とランダムサンプリングの連携が考えられる。本手法により決定した溶質の分配係数を用いて,凝固空間のスケールと次元も含めた解析をランダムサンプリング法で実施できれば,分配係数だけでなく,固相内の拡散係数や凝固空間の次元に関する情報も得られる可能性がある。したがって,本手法とランダムサンプリングを連携させた解析システムの構築が望まれる。
本研究では,放射光を用いたX線イメージングと蛍光X線分析を組み合わせたその場観察・測定手法を開発し,Fe-17.4Cr-12.6Ni-2.0Mo-1.6Mn-0.6Si(mass%)におけるδ相と液相間の溶質分配を凝固パスに沿って測定することを試みた。
(i)X線イメージングにより固液界面をその場観察し,界面付近の固相と液相の蛍光X線スペクトルをその場測定した。現状のセットアップでは,Al,Mgなどの軽金属元素の測定ができない短所はあるが,数mass%以上の3d遷移金属元素,1mass%程度の4d遷移金属元素の分配係数の決定が可能であった。
(ii)一方向凝固過程で,逐次,固液界面付近の固相と液相の蛍光X線スペクトルを測定することにより,凝固パスに沿った溶質の分配係数の変化も測定可能であった。
(iii)凝固パスに沿ってCr,Ni,Moの分配係数は,それぞれ1.01から1.08まで,0.76から0.70まで,0.86から0.74まで変化することを明らかにした。多元系合金において系統的に溶質の分配係数を測定できる本手法の長所を実証した。
(iv)本手法とランダムサンプリングを組み合わせることにより,ミクロ偏析が生じる幾何学的空間や固相内拡散の情報が得られる可能性があり,より精度の高いミクロ偏析の予測が期待される。
放射光を用いたX線イメージング,蛍光X線イメージングのその場観察・測定は,高輝度光科学研究センター(JASRI/SPring-8)の一般課題により実施した成果である。また,その場観察・測定による溶質分配係数の測定は,科学研究費基盤研究(S)で開発された技術をもとに,戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)(課題名:革新的構造材料,研究開発課題名:マテリアルズインテグレーション)において実施した成果である。また,鉄鋼協会「固液共存体の挙動制御によるマクロ偏析低減」研究会での議論を反映した結果である。ここに感謝いたします。