Tetsu-to-Hagane
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Preface to the Special Issue “Processes of Iron Ore Treatment for Increasing Resource Flexibility”
Taichi Murakami
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2017 Volume 103 Issue 6 Pages 237

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巻頭言

高炉プロセスへ供給する主要鉄源は焼結鉱であり,豪州や南米産の粉鉱石がその主原料である。ここ10数年は中国等の新興国の急激な鉄鋼生産量の増大による輸入鉱石の需要急増の結果の価格高騰やその後の急変動に悩まされてきた。さらに,良質な鉱石の枯渇と品位低下(劣質化)が大きな問題となっていた。そのような背景のなかで,これまで日本鉄鋼協会の研究会(「新塊成鉱の基礎」北大石井主査,「多孔質メソモザイク組織焼結」阪大碓井主査,「複合造粒・層構造設計焼結」東北大葛西主査 等)が実施され,豪州系の難焼結性原料と考えられていた劣質原料の効果的な利用方法の開発がなされてきた。その結果として,これら豪州系は主要原料としての地位を確保したといえる。しかし,これら主要原料の品質がさらに低下する懸念がもたれるようになった。一方,南米系鉱石についても脈石成分(SiO2やAl2O3)量が増加する傾向が認められる。このような原料の処理方法として,粉砕し選鉱した微粉原料の利用は有効な対策となり得る。特に,磁選による選鉱が容易なマグネタイト精鉱は,長期的にみて主要原料のひとつと期待できる。

マグネタイト鉱石はFe2+を含有し,鉄鉱石塊成化プロセスである焼結やペレット焼成炉のような高温・高酸素分圧下においては酸化するため,熱源として取り扱うことが可能である。このことは,酸化熱の有効利用が塊成化プロセスからのCO2排出量削減を実現する可能性のあることを示唆している。また,これはマグネタイト鉱石だけでなく,ミルスケールや製鋼スラグなど他のFe2+含有原料についても同様である。

このような原料性状の変化に対応しつつ高品質な焼結鉱の製造につながる基礎的知見の提供を,「資源対応型高品質焼結鉱製造プロセス」研究会において進めてきた。本号はその研究会の成果報告と共に,資源の低品位化・微粉化に対応する原料処理技術や焼結鉱の高品質化に関する最近の研究成果を取りまとめ,焼結プロセスをはじめとする予備処理プロセスの資源自由度拡大に資することを目的とした。本研究会の成果でマグネタイト精鉱を始めとするFe2+含有原料の有効利用が確立した訳ではないが,その一端を果たせたものと考えている。また,本研究会の成果を生かし発展させた次の研究会(II型研究会「資源環境調和型焼結技術創成研究会」)が製銑部会の支援の下で活動を開始しており,今後も引き続き原料処理の研究が進むことを期待していただきたい。

 
© 2017 The Iron and Steel Institute of Japan

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