Tetsu-to-Hagane
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ISSN-L : 0021-1575
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New Granulation Process Aiming at Uniform Size Distribution for Utilizing Fine Iron Ores
Takahide HiguchiNaoyuki TakeuchiYusuke IshigakiTetsuya YamamotoHidetoshi MatsunoNobuyuki Oyama
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2017 Volume 103 Issue 6 Pages 289-298

Details
Synopsis:

The influence of agitating in pelletizer at HPS process on granulation and sintering properties was investigated with using typical iron ores and pellet feeds. Pellet feeds added in the sintering mixture easily formed the large aggregates bearing large amount of water and other portion of pellet feeds remained in the small size fraction in quasi-particle. The large quasi-particles generated at HPS process were mainly observed at the specific area in pelletizer due to size segregation effect. These large quasi-particles could be destructed selectively by agitating motion of impeller, resulting in achieving not only uniform quasi-particle size distribution after pelletizing but also improvement of granularity after following coke breeze coating. HPS process with agitating method showed higher permeability due to the decrease in charging density, leading to improvement of productivity. In addition, product yield also improved in spite of higher flow rate compared to conventional HPS process. Based on material and heat balance analysis, it was found that combustion efficiency improved by agitating treatment. Heat transfer from combustion heat to sensible heat of sintering cake was enhanced by agitating. In terms of rotation conditions, it was found that particle flow pattern was changed greatly and destruction efficiency decreased at the higher impeller speed according to DEM simulation. The optimum rotation speed observed in the experiment could be explained by the impact force to quasi-particle and macroscopic flow dynamics.

1. 緒言

近年,鉄鋼業を取り巻く環境としては,製造コストの低減および,排出二酸化炭素の削減等による環境負荷の低減が一層求められている。その一方で,鉄鉱石の品位は年々低下しており,製銑工程においては,鉄鉱石中の脈石分の増加は,焼結凝結材比および高炉還元材比が上昇する一因となる。従って,鉱石性状に応じた操業設計や新規技術の開発が喫緊の課題である。このような環境変化における対抗策の一つとして,高品位微粉鉱の焼結利用が挙げられる。ペレットプロセスで使用される高品位微粉鉱(ペレットフィード:PF)は,平均粒径が約150 μm以下と非常に細かく1),従来の焼結プロセスでは造粒不良により通気性の低下を引き起こす。これに対して,Niwaら2)の報告したHPS(Hybrid Pelletized Sinter)プロセスでは,従来の焼結造粒ラインの後段にペレタイザーと粉コークス外装用のコーティングミキサーを設置する事で,PFの造粒性向上と粉コークスの燃焼性改善を志向している。HPSプロセスの操業実績として,生石灰原単位を約40 kg/t-sまで増加させ,PF配合率を最大60 wt%まで増加させた事が報告されている。PF使用時の課題としては,グリーンボール粒径の適正化が重要であり,Sakamotoら3)は,焼結ベッド内における伝熱律速の観点から,HPSプロセスにおける造粒粒子の適正粒径を直径5 mmから10 mmの範囲と報告している。造粒粒子径は,添加水分量,造粒機の運転条件4)および生石灰配合率の調整により,ある程度制御可能であるが,種々の操業変動に対して長期的かつ安定的に制御する事は困難である。ペレット製造プロセスにおいては,ペレタイザー下流に設置されたローラースクリーン等によりグリーンペレットの粒度を管理するのが一般的である5)。しかし,焼結プロセスではペレットプロセスに比べて粒度分布の制約が緩い事もあり,造粒粒度分布を能動的に制御する技術は,これまでに報告されていない。

そこで本研究では,HPSプロセスにおける高品位微粉鉱の更なる多量使用を目的とし,造粒性状および焼結性状に及ぼすペレタイザーでの撹拌操作の影響を基礎的に検討したので,これを報告する。

2. 実験方法

2・1 原料

Table 1に実験で用いた鉄鉱石の化学成分を示す。Ore Aは豪州産のピソライト鉱石,Ore Bは南米産のヘマタイト鉱石,Ore C,Ore Dは南米産のペレットフィードである。Ore D中のバナジウム濃度は0.23 wt%と他の鉄鉱石に比べて高い為,造粒粒子中のペレットフィードの賦存状態を検討する為のトレーサーとして使用した。全ての原料は,縮分および乾燥(105°C,24時間)させて実験に供試した。

Table 1.  Chemical compositions of iron ores used in experiments. (wt%)
Material T.Fe FeO SiO2 CaO Al2O3 MgO LOI –125 μm
Ore A 58.6 0.3 4.5 0.1 1.5 0.1 9.6 2.0
Ore B 65.4 0.1 1.9 0.03 1.1 0.03 1.9 16.0
Ore C 69.1 0.3 1.2 0.2 0.3 0.07 0.3 99.8
Ore D 61.5 22.8 6.4 1.5 1.5 1.6 1.0 98.9
Silica sand 0.3 98.6 0.3 0.2
Burnt lime 85.0 20.2
Limestone 0.1 0.5 54.9 0.2 1.1 43.9 7.2
Return fine 56.4 7.1 5.2 10.7 1.8 1.1 7.4
Coke breeze 0.6 0.8 6.2 0.3 3.6 0.1 87.9 11.6

Table 2に原料配合組成を示す。配合比率は全て乾燥重量ベースである。配合B1,B3はOre AおよびOre Bのみを使用し,配合B2,B4ではOre Dで40 wt%振替えた。配合B5ではOre AとOre Bを同配合比率とし,Ore Cを全鉱石に対して30 wt%配合した。またOre Cを除く配合B5中の粒径125 μm以下の重量比率を調節する為に,粒径1 mm以下に粉砕したOre Bを用いた。生石灰配合率は,撹拌操作以外の造粒影響因子を極力除外する為,通常の焼結原料配合相当とした。焼結鉱中のSiO2濃度が5.0 wt%となるよう珪石粉配合率を,塩基度が2.0となるよう石灰石配合率を設定した。造粒水分については,冷間通気性に及ぼす造粒水分の影響を事前に検討し,通気性を最大とする水分値を用いた。

Table 2.  Blending condition for granulation or sintering test. (wt%)
Blending condition B1 B2 B3 B4 B5
Water contents (wt%) 8.7 9.3 6.3 7.3 8.2
Ore A (–8 mm) 100 60 0 0 21.9
Ore B (–8 mm) 0 0 100 60 17.5
Ore B (–1 mm) 0 0 0 0 4.3
Ore C 0 0 0 0 19.0
Ore D 0 40 0 40 0.0
Silica sand 0 0 0 0 1.8
Burnt lime 0 0 0 0 1.9
Limestone 0 0 0 0 9.8
Return fine 0 0 0 0 19.0
Coke breeze 0 0 0 0 4.8

2・2 実験装置と試験手順

Fig.1に実験装置と試験手順を示す。最初に粉コークスを除く乾燥原料を180秒間混合した。その後,ドラムミキサー(直径1 m,幅300 mm)で水を添加しながら120秒間造粒し,ペレタイザー(直径1.2 m,深さ300 mm)で更に水を添加しながら造粒した。最後にドラムミキサーで60秒間造粒した後一旦停止して粉コークスを投入し,更に30秒間造粒した。ペレタイザーで与える造粒水分値を1.1 wt%で一定とし,設定水分との差分量をドラムミキサーで添加した。乾燥原料の混合操作およびペレタイザー造粒時間を除き,各々の造粒時間は実機HPSプロセスを模擬し,ドラムミキサーおよびペレタイザー回転数は実機と同一のフルード数となるように設定した。Table 3にラボと実機のペレタイザー運転条件を示す。フルード数Frは,回転数N(rpm),直径D(m),重力加速度g(m/s2)とすると,式(1)で表される4)。   

F r = D ( N / 60 ) 2 g (1)

Fig. 1.

 Schematic image of granulation test and sintering test at laboratory scale.

Table 3.  Comparison of pelletizer dimensions between laboratory and actual plant.
Item Unit Lab. Actual
Rim depth m 0.3 0.5
Diameter m 1.2 7.5
Rotation speed rpm 17.5 7.0
Fr. number (×10–3) 10.4 10.4

本試験機は点火装置,試験鍋(内径280 mm,高さ400 mm),吸引設備,計測機器で構成される。試験鍋底部に原料落下防止用の火格子と,その上に床敷焼結鉱(粒径10-15 mm)を2 kg装入し,造粒粒子を装入した。通気度測定および吸引風量の測定には,試験鍋直上に設置したオリフィス型流量計を用いた。吸引差圧の測定には,試験鍋下方の風箱内に設置された差圧計を用いた。点火開始後,焼結反応中の吸引差圧が一定値(6.9 kPa)となるよう排ガスダンパー開度を制御した。焼結反応中に発生するCO,CO2,O2ガスを,排ガス管内に設置されたガス分析用プローブにてサンプリングし,分析計で測定した。

ペレタイザーにおける整粒効果を検証する為に,Fig.2(a)に示す撹拌装置をペレタイザー内に設置した。撹拌羽根の埋没深さ(原料堆積表面から40 mm)と回転方向(ペレタイザー回転方向の逆方向)は一定とした。後述する事前測定により,粗大粒子の存在比率が最も高い箇所を検討し,撹拌羽根の設置位置を決定した。撹拌羽根の形状については,Fig.2(b)-(e)に示すように,回転直径80 mmの4種類の羽根を使用した。羽根の総厚みは約16 mmとなるように調整した。

Fig. 2.

 Photographs of (a) pelletizer and (b-e) impellers for granulation test.

2・3 試験水準

Table 4に試験水準を示す。造粒粒子中のPF賦存状態を評価する為に,配合B1からB4を造粒し,ペレタイザー後の造粒粒子の粒度および水分分布,微粉鉱の賦存状態をT1からT4で評価した。造粒性に及ぼす羽根形状の影響を評価する為に,水準T5に対してT7の4水準を比較した。造粒性に及ぼす撹拌回転数の影響を評価する為に,水準T5に対してT6からT8の3水準を比較した。これらの試験条件では,ペレタイザーでの造粒・撹拌時間を180秒間とした。焼結性状の評価には,撹拌羽根の回転数を500 rpm,羽根形状をType1とし,T9と,羽根径40 mm, 80 mmの3水準を比較した。ペレタイザー造粒時間180秒間では焼成不良が著しく発生した為,焼結試験ではペレタイザーでの造粒および撹拌時間を300秒と長めに設定した。

Table 4.  Experimental condition.
Test No. Blending Condition Agitator condition Pelletizer Purpose
Speed (rpm) Impeller Diameter (mm) Impeller type Granulation time (s)
T1 B1 180 Granulation test
T2 B2
T3 B3
T4 B4
T5 B5
T6 B5 250 80 Type1
T7 B5 500 80 Type1, 2, 3, 4
T8 B5 750 80 Type1
T9 B5 300 Sintering Test
T10 B5 500 40 Type1
T11 B5 500 80 Type1

2・4 造粒性状評価方法

造粒性状の評価指標として,平均粒径,水分および粒度分布指数を用いた。ペレタイザー造粒後および粉コークス外装造粒後(装入前粒度)の2箇所で原料をサンプリングし,湿潤擬似粒度又は乾燥擬似粒度を測定した。湿潤擬似粒度の測定には,篩目11.2 mm,9.52 mm,8.0 mm,4.75 mm,2.8 mm,1.0 mm,0.5 mmのスクリーンを用いた。代表粒径には目開きの算術平均値を用いた。湿潤算術平均径は,代表粒径と各粒度の重量比率を加重平均して算出し,ペレタイザー後の造粒粒子の物理的なサイズを評価する際に用いた(以降Wet-AMDとする)。乾燥擬似粒度の測定には,篩目9.52 mm,8.0 mm,4.75 mm,2.8 mm,1.0 mm,0.5 mm,0.25 mmのスクリーンを用いた。乾燥調和平均径は,代表粒径の逆数と各粒度の重量比率の積を総和してその逆数として求め,通気性に影響を及ぼす比表面積の大小関係を評価する際に用いた(以降Dry-HMDとする)。粒度分布指数については,粒度分布がRosin-Rammler分布に従うと仮定し,式(2)により,積算篩上質量R(di)と篩目間の代表粒径の対数プロットより均等数nを算出した6)。   

R ( d i ) = 100 exp ( ( D p / D e ) n ) log ( log 100 R ( d i ) ) = n log D p + log ( log e ) n log D e (2)

ここで,R(di):積算篩上質量比率(wt%),di:粒度分析の篩目間の代表粒径 (mm),Dp:調和平均径(mm),De:粒度特性数(−),n:均等数(−)

更に,既往の研究結果と比較する為,Fukutake and Okabe7)の提案した粒度分布構成指数Ispも評価した。   

I SP = 100 I S I P I S = D P 2 { w i ( 1 / d i 1 / D p ) 2 } I P = ( 1 / D P ) 2 { w i ( d i D p ) 2 } (3)

ここで,wi:粒度分析でdiの占める重量比率(wt%)

粒度分布構成指数Ispは,均等数nと同様に粒度分布の幅を表現しており,Ispが小さい程nは大きく,粒度分布の幅が小さく均一となる事を示す。また,造粒粒子の水分値は,乾燥前後の重量差を乾燥前重量で除した値とした。

2・5 ペレタイザー内の粒子転動状態の解析方法

ペレタイザー内に存在する目的サイズの粗大粒子を効率的に解砕する為に,粒度偏析の動的変化を調査した。ペレタイザー造粒中の原料堆積部分を10秒毎に撮影した。画像解析により1画像を40 mm四方のメッシュ区画に分割し,造粒180秒間(画像数18枚)で各メッシュ内に観測された粗大粒子(粒径8 mm以上)の総面積を算出した。メッシュ面積に対する粗大粒子の総観測面積割合を層別し,高頻度で偏析している箇所を特定した。

2・6 焼結性評価方法

焼結試験鍋への原料装入密度は,原料の装入体積(280 mmφ×高さ380 mm)と湿潤原料の装入重量から求めた。通気性の評価にはJPU(Japan Permeability Unit)を用いた。   

J . P . U . = F A ( h Δ P ) 0.6 (4)

ここで,F:実風量(m3/min),A:断面積(m2),h:装入原料層厚(mm),ΔP:装入原料層の圧力損失(mmH2O)

焼結試験後,焼結ケーキの重量を測定し,全量を2 mの高さから1回落下させ,粒径10 mm以上の成品と定義した。成品歩留は成品合計重量を焼結ケーキの重量で除して求めた。焼結時間は,点火開始時間を0秒とし,排ガス温度が最高温度に到達後,再び温度低下する直前の時間を焼結完了時間と定義した。焼結生産率は,成品重量を焼結時間および断面積で除して求めた。焼結鉱の強度は,JIS-M8711に基づきシャッター強度で評価し,2 m高さから4回落下させた後の粒径10 mm以上の重量比率を算出した。

3. 実験結果

3・1 造粒粒子中のペレットフィードの賦存状態

Fig.3(a)に,Ore AとOre Dの造粒試験結果を示す。Ore A単味では,粒径4.75 mm以上8.0 mm未満の粒度比率が最大となった。Ore Dを添加すると,粒径0.25 mm未満の比率が若干増加し,粒径8.0 mm以上の存在比率が著しく増加した。Fig.3(b)にOre Bの場合を示す。Ore Aに比べて,広い粒度分布幅となり,粒径1.0 mm以上2.8 mm未満の比率が最も大きくなった。Ore Dを添加すると,粒径0.25 mm未満,4.75 mm以上および8.0 mm以上の比率が著しく増加した。Fig.3(c)に,各粒度の平均バナジウム濃度より推算したペレットフィードの存在比率を示す。T2では,粒径8 mm以上の領域にペレットフィードが濃縮されており,Fig.3(a)で見られた粒径8 mm以上の粗大粒子の増加原因は,ペレットフィードの偏在によるものと言える。また,T4では,粒径0.25 mm未満と,粒径4.75 mm以上の領域にペレットフィードが偏在しており,Fig.3(b)で見られる傾向は,ペレットフィードの偏在に起因するものと言える。Fig.3(d)に,水準T2とT4の水分分布を示す。粒径1 mm未満については,各粒度を混合して測定した平均水分値を示した。どちらのケースにおいても,粒子径の増加に伴い水分が増加する傾向が見られ,Ore Aで顕著な変化を示した。以上の事から,粗大粒子を構成する主要な因子は高水分のペレットフィードであり,細粒側の粒度群は低水分の付着性に乏しい未造粒粉である。微粉および水分が,粗粒側と細粒側で大きく偏っている状態と言える。

Fig. 3.

 Granulation test results. (a), (b): Size distributions of dried quasi-particle in the case of T1 to T4 (c): Contained pellet feed ratios in the case of T2 and T4, (d): Water contents in the case of T2 and T4

3・2 ペレタイザーにおける粗大粒子の偏析状態

次に,配合B5を用いて造粒試験を行い,ペレタイザー内の粗大粒子の偏析状態を調査した。Fig.4(a)に,ペレタイザー右下部(600 mm四方領域)の原料転動状態のスナップショット例を示す。パン回転運動に伴って,堆積原料はペレタイザー上方に持ち上げられ,その途中で壁面より離脱して落下流を成す。細粒に比べて粗大粒子の離脱点は比較的低く,ペレタイザー上方に持ち上げられる事なく,原料堆積斜面の表層部を転動して落下した。その結果,滞留原料中に粗大粒子が集中的に偏析する箇所が観察された。Fig.4(b)に,造粒180秒間における堆積原料表面の粗大粒子(粒径8 mm以上)の観測比率を示す。画像解析はFig.4(a)の破線領域に限定した。存在確率100%の領域は11メッシュ分(横120 mm縦160 mm)有り,この領域では造粒180秒間中,常に粗大粒子が堆積表面に観測された。画像解析結果には,堆積原料内部の粒度分布は含まれていないが,パン型造粒機内の粒度偏析5)は滞留原料内部でも発生する事が知られており,Haqueら8)は,堆積原料表層および内部の原料を選択的に排出する事で,比重差および粒度差による分級が可能である事を報告している。従って粗大粒子の偏析領域に撹拌羽根を埋没させる事で,選択的な解砕効果が期待できる。そこで,ペレタイザー中心から水平X軸方向340 mm,垂直Y軸方向320 mmの位置に撹拌羽根の中心軸を定めた。装入深さに関しては,堆積層厚と回転体同士の干渉防止の観点から,表層から40 mmとした。

Fig. 4.

 Segregation phenomena of quasi-particles in laboratory scale pelletizer. (a) Top view of pelletizer (b) Image analysis results. (White circle indicates the setting position of impeller)

3・3 造粒および装入特性に及ぼす撹拌操作の影響

配合B5を用いてType1からType4の4種類の羽根の効果を検討した。撹拌羽根径は80 mm,回転数は500 rpmとした。Fig.5(a)に,ペレタイザー後の湿潤算術平均径(Wet-AMD)と装入前の乾燥調和平均径(Dry-HMD)との関係を示す。撹拌によりペレタイザー後のWet-AMDが低下すると,装入前のDry-HMDは増加する傾向が見られた。Fig.5(b)に,装入前原料の均等数との関係を示す。水準T5に対して撹拌後では,同等かそれ以上の値を示し,粒度分布が均一化する傾向が見られた。Fig.5(c),(d)に,装入密度および点火前風量に及ぼす影響を示す。水準T5に対して撹拌後では,ペレタイザー後Wet-AMDの低下により装入密度が低下し,点火前風量が増加する傾向が見られた。以上の結果を総括すると,撹拌条件での点火前風量の増加要因としては,(1)装入前のDry-HMDの増加による比表面積の低減効果,(2)粒度分布の均一化および装入密度の低下による空隙率の増加効果,の2つに依るものと考えられる。羽根形状の効果に関しては,Type2,Type3,Type4に対して,Type1のWet-AMDは最も低位となった。この原因としては,衝突断面積や羽根枚数,羽根角度等の種々の要因が考えられる。本研究では最も解砕効果が大きく,通気性改善効果の大きいType1をベース条件とした。

Fig. 5.

 Influence of agitation in pelletizer on granulation and charging properties. T5: conventional HPS process, T7: HPS+agitation process (500 rpm, 80 mmφ, various impeller type) (HMD: Harmonic mean diameter, AMD: Arithmetic mean diameter)

Fig.6(a)に,水準T5と水準T7(Type1)のペレタイザー後の湿潤粒度分布を示す。T5で多数存在した粒径8 mm以上の粗大粒子は,撹拌操作により半減し,中間粒度の比率が増加した。従って,狙い通りの解砕効果が得られる事が確認された。Fig.6(b)に,装入前の乾燥粒度分布を示す。撹拌操作により,通気性に悪影響を及ぼす粒径0.5 mm未満の細粒比率が低下し,粒径4.75 mm以上の比率が増加した。Fig.6(c)に,造粒粒子中の微粉比率(−250 μm)を示す。測定には,篩分け後の乾燥粒子をアルミナボールと一緒に再篩いを実施し,核に付着した微粉を剥離させて評価した。撹拌操作に伴い粗大粒子中の微粉は減少し,中間粒度に分配された。

Fig. 6.

 Influence of agitation in pelletizer on size distribution and fine component of quasi-particle. T5: Conventional HPS process, T7: HPS+agitation process (500 rpm, 80 mmφ, Type1) (a) Wet screening result of granules after pelletizing (b) Dry screened result of granules before charging (c) Distribution ratio of –250 µm portion of granules before charging

Fig.7に,水準T5と水準T7(Type1)で得られたペレタイザー造粒後の擬似粒子外観写真を示す。T5で数多く見られた粒径8 mm以上の粗大粒子は,T7では殆ど見られず,代わりに粒径8 mm未満の中間粒子が多く観測された。

Fig. 7.

 Overview of quasi-particles sampled after pelletizing. (a) Conventional HPS process (T5) (b) HPS+agitation process (T7) (500 rpm, 80 mmφ, Type1)

Fig.8に,種々の羽根回転数での装入前のDry-HMDおよび装入密度の比較を示す。調和平均径は,従来HPS法に対して回転数250 rpmと500 rpmの2水準でそれぞれ優位となり,装入密度については,500 rpmと750 rpmの2水準で従来HPS法を下回る優位な傾向となった。通気度を左右する装入密度の観点では,500 rpmを焼成のベース条件とした。

Fig. 8.

 Influences of agitator speed on (a) quasi-particle size before charging and (b) charging density.

3・4 焼結性状に及ぼす撹拌操作の影響

Table 5Fig.9に,配合B5における焼結試験結果を示す。撹拌操作により,装入前のDry-HMDは同程度又は上回る値となり,均等数nは撹拌2水準ともに従来HPS法を上回る結果となった。装入密度はベースに対して減少し,点火前JPUは増加した。粗大粒子の解砕に伴い,粗粒の偏析領域は縮小する事も考えられるが,今回の羽根径の範囲では,回転面の投影面積の増加に伴い,粗大粒子の解砕効率が向上し,冷間通気性が向上したと言える。熱間性状については,Fig.9に示すように,装入密度の低下により熱間通気性が増加し,焼結生産率も増加した。通気性の増加と同時に歩留も増加し,シャッター強度も概ね一定であった。一般的に空塔風速の増加に伴い,焼結層内における高温保持時間が短縮され歩留や強度は低下する。しかし,本試験では撹拌操作により収縮量は若干増加しており,溶融反応の促進により歩留低下が抑制されたものと推察される。

Table 5.  Experimental results of sintering test.
Item Unit Test No.
T9 T10 T11
Impeller diameter mm 40 80
Particle size*) mm 2.45 2.68 2.45
Uniformity number (n) 1.51 1.56 1.59
Uniformity number (Isp) 358 311 303
Charging density t/m3 1.88 1.84 1.81
Permeability before ignition J.P.U. 42.3 43.5 46.6
Permeability during sintering J.P.U. 20.6 20.9 22.5
Average shrinkage mm 30 33 36
Maximum exhaust gas temp. ºC 412 401 402
Weight of sintered ore kg 40.6 40.1 39.4
Shatter index % 80.2 80.4 79.8
Product yield (+10 mm) % 58.2 60.7 61.9
Sintering time min 16.1 15.1 14.8
Productivity t/h·m2 1.33 1.47 1.49

*) Harmonic mean diameter of dried quasi-particle before charging

Fig. 9.

 Influences of agitation effect on sintering properties. (Impeller diameter: 40 mm (T10), 80 mm (T11), at 500 rpm, Type 1)

Fig.10(a)に排ガス温度の推移を示す。撹拌条件では650秒より排ガス温度が上昇し,従来HPS条件に比べて燃焼前線の降下速度(FFS)が大きい。更に,撹拌条件では比較的短時間で排ガス温度が降下を開始しており,燃焼帯が均一に降下したと考えられる。Fig.10(b)の風量変化については,撹拌条件は,従来HPS条件よりも高い値を示した。Fig.10(c)の排ガス成分推移については,点火後100秒付近まではO2濃度の急激な低下,CO2およびCO濃度の急激な増加が見られたが,その後燃焼状態は一時的に不良となり,175秒付近より再び燃焼状態が回復した。一般的に焼結ベッド上層部の層内最高温度は中層および下層部よりも低く,歩留および強度が低下する。ペレットフィードを使用した本試験では,いずれの条件でも焼結ベッド上層部にて燃焼不良が発生したが,撹拌操作によりその影響は緩和される事がわかった。

Fig. 10.

 Comparison of exhaust gas properties in sintering test.

4. 考察

これまでの実験結果では,ペレタイザー内に偏析する粗大粒子を撹拌解砕する事で,通気性および歩留向上により焼結生産率が向上したが,その効果は撹拌条件に依存し,適正な値が存在するものと考えられる。ここでは,整粒効果および焼結生産率に及ぼす羽根形状,撹拌回転数,羽根径の効果を考察する。

4・1 粗大粒子の解砕効果に及ぼす撹拌回転数の影響

造粒粒子の解砕に及ぼす撹拌羽根の衝撃圧の影響を検討する為に,ペレタイザー造粒後の粒子を用いて一軸圧壊強度試験を実施し,引張強度を算出した。造粒粒子の引張強度S(Pa)を,Hiramatsuら9)の提案した式(5)式を用いて評価した。   

S = 2.8 P π d 2 (5)

ここで,P:粒子の圧壊強度(N),d:粒子直径(m)。

撹拌羽根による衝撃力Pmax(N)に関しては,式(6),(7)に示されるHongoら10)の提案式を用いて算出し,式(5)により衝撃圧に変換した。   

P max = K ( 5 M 8 K V 0 2 ) 3 / 5 (6)
  
K = 4 r 3 ( 1 ν s 2 E s + 1 ν w 2 E w ) 1 (7)

ここで,M:粒子重量(kg),r:粒子半径(m),V0:衝突時相対速度(m/s),ν:ポアソン比(−),E:ヤング率(Pa),(添字s:粒子,w:撹拌羽根)

圧壊強度試験結果に基づき,粒子のポアソン比νsに0.3~0.45,ヤング率Esに50~100 MPaを与えた。普通鋼の物性値については,ポアソン比0.3,ヤング率210 GPa11)を用いた。

Fig.11に,配合B5の造粒粒子の引張強度と,衝撃圧の計算結果を示す。造粒粒子径の増加に伴い引張強度は低下し,撹拌羽根と造粒粒子の衝撃圧も低下した。前者は粗粒ほど高水分であり充填密度が低い事が原因と考えられる。後者は,粒子の衝突断面積当たりの衝撃力が低下する為である。粒径10 mmの引張強度は羽根回転数500 rpmの衝撃圧よりも低く,回転数250 rpmとは拮抗した。引張強度試験の荷重印加速度は,撹拌羽根の回転速度に比べて十分に小さい為,羽根の衝撃圧が引張強度値を上回る場合,実際の撹拌操作でも造粒粒子が破壊される可能性が高いと考えられる。

Fig. 11.

 Relationship between tensile strength of quasi-particle and impact force by agitator.

以上の検討は,造粒粒子1個と撹拌羽根が垂直に衝突する理想的な場合を想定した。しかし,撹拌羽根の運動によって,羽根の周囲に存在する造粒粒子の転動運動も影響を受ける可能性が有る。そこで,撹拌羽根周囲の粒子の流動と撹拌羽根と粒子の衝突挙動を検討する為に,離散要素法(DEM:Discrete Element Method)により解析した。

Fig.12(a)に,計算領域,Table 6に計算条件を示す。計算ソフトには,EDEM® version 2.4を使用した。ペレタイザーと同じ大きさのスケールで計算メッシュを設定し,計算負荷軽減の為,粒子径を3種類(10,20,30 mm)に限定した。ヤング率の大小が粒子挙動に大きな影響を及ぼさない事を確認した上で,計算時間を短縮化する為に実測よりも小さいヤング率を用いた。ペレタイザー内全体の転動運動を再現する様に各パラメーターを設定した上で,Fig.12(a)に示される撹拌羽根近傍の箇所に着目し,粒子の速度ベクトル解析を行なった。Fig.12(b)に,回転数毎の粒子群のベクトル要素のスナップショットを示す。造粒粒子はペレタイザーの回転方向と同じ向き(紙面左から右)に移動し,撹拌羽根の回転方向は時計回りである。撹拌回転数が250 rpmの時,撹拌羽根の近傍では,粒子群の進行方向が羽根回転方向に沿って変化しており,その影響により後続の粒子群の一部も,進行方向が大きく変化した。撹拌回転数が500 rpmの時も同様に,羽根近傍での粒子群の渋滞が増加し,粒子群全体にわたって撹拌羽根を回避するように移動した。撹拌回転数750 rpmの時は,撹拌羽根から離れた場所でも粒子群の進行方向が大きく変化し,羽根遠方に広く飛散する粒子が多く見られた。撹拌羽根の左側に造粒粒子の存在密度が極端に低い領域が有るが,これは撹拌羽根を横切って通過する粒子数が減少した為と考えられる。

Fig. 12.

 Effect of agitator speed on particle motion around impeller. (Online version in color.)

Table 6.  DEM simulation condition.
Item Unit Range
Granule density kg/m3 4500
Granule diameter mm 10, 20, 30
Number of particles 4720
Elastic modulus MPa 6.7
Poisson's ratio 0.45
Coefficient of restitution 0.05
Coefficient of friction between particle and wall 0.4 (static)
1.0 (rotation)
between particles 0.4 (static)
0.09 (rotation)

従って,ペレタイザー内部の造粒粒子の運動は撹拌羽根の回転によって変化し,撹拌羽根との接触状態にも影響を及ぼす可能性を示唆している。そこで次に,粗大粒子の解砕効率について検討した。Fig.11より,粒径10 mmの引張強度は0.2-0.3 MPa程度であり,球形粒子を仮定すると圧壊力は20 Nとなる。そこで,DEM計算結果を基に,20 N以上の衝撃力を以って撹拌羽根と衝突した造粒粒子数の比率を解砕効率と定義した。Fig.13に結果を示す。回転数250 rpmに対して500 rpmでは解砕効率が増加したが,回転数750 rpmでは低下した。これは撹拌羽根と接触せずに羽根後方に移動する粒子が多数存在する事を意味しており,所謂空回りの状態を模擬していると考えられる。Fig.8に示した,羽根回転数250 rpmから500 rpmにおける装入前Dry-HMDの低下原因は,衝撃圧および解砕効率の増加の2つの効果が重畳していると推定される。一方,羽根回転数500 rpmから750 rpmにおけるDry-HMDの低下原因は,衝撃圧の影響の他に,解砕効率の低下による未造粒粉の増加の影響も考えられる。

Fig. 13.

 Comparison of contact probability with certain level of impact force between various agitator speeds.

Fig.5で示される羽根形状の効果については,Type 1の羽根形状は階段状に配置されており粒子の流れを阻害する影響は小さいと予想される。一方,Type 4では,衝撃圧を効率的に加えられる反面,粒子の流れを大きく阻害する可能性がある。また,Type 2やType 3の羽根では,粒子との衝突方向が垂直ではない為,粒子の流れを阻害する影響は小さい反面,十分な衝撃圧が得られない可能性がある。DEM計算では粒度分布を3種類の粒度に簡略化して計算している為,解砕効率の絶対値は実現象とは必ずしも一致はしない。しかし,撹拌羽根近傍における粒子と羽根間の複雑な衝突挙動を予測する上で有効な評価手法12)であると言える。

以上の事から,撹拌羽根の回転数の増加に伴い衝撃圧は増加するが,造粒粒子との接触確率は逆に低下する可能性が有る為,粒子との接触状態や,粒子群の流動挙動への影響を考慮した適正な回転数の選択と形状設計が必要であると言える。

4・2 焼結生産率および歩留に及ぼす撹拌の影響

HPSプロセスにおける充填層内のガス流れ,擬似粒子内部への伝熱特性および生産率影響については,Sakamotoら13)が詳細に報告しており,HPS法においても適正な風量値以上では歩留は低下する。また,Kamijoら14)は,粗大粒子を焼結層内に配した焼結実験により,熱間通気性と収縮量および歩留の間には負の相関が認められるが,粗大粒子の緻密化(高強度化)および熱補償により同一熱間通気性条件下でも歩留を維持できる可能性を示した。撹拌HPSプロセスでは通気性の向上と歩留向上が両立したが,これは従来HPSプロセスに対して(1)脆弱な粗大粒子の低減による焼結層構造の安定化(2)粒度分布の均一化(3)粉コークス外装状態の適正化にともなう造粒性・燃焼性の改善効果,によるものと推察される。(1)については,Fig.11に示されるように,粗大粒子ほど低強度であり,解砕によってその割合が低下すると,造粒粒子群としての平均強度は向上する。(2)については,Konishiら15)は,粒度分布の均一化により生産率と歩留が向上する事を報告している。Fig.14に,焼結生産率に及ぼす装入前の乾燥調和平均径(Dry-HMD)およびIspの影響を示す。図中の白抜きプロットおよび生産率等高線は過去報告値15)を示し,生産率はベースに対する増分で表記した。これによると,低生産率の範囲では,生産率変化に及ぼすIspと調和平均径の影響は同程度であるが,高生産率においては,Ispの影響が大きい。本実験における造粒粒度分布は,粒径2~10 mmの比率は80 wt%以上であり,高生産率領域にプロットされる。T9とT10およびT9とT11で生産率変化に及ぼすIspの影響係数を計算すると,どちらも3.0×10−3 t/h・m2/Ispと同程度である。つまり,撹拌操作による焼結生産率の向上効果は,装入前粒度分布の均一化による影響が大きいと言える。Ispは,比表面積および粒径分布のバラつきを示しており,Ispが小さい条件程,中間粒度に整粒されている。歩留は+10 mmの成品比率で定義されるため,中間粒度が増加するほど,成品を構成するのに必要な擬似粒子の溶融接触点数が低下し,歩留に優位に働くものと考えられる。

Fig. 14.

 Effect of harmonic mean diameter and Isp on productivity.

次に,先の(3)で示した粉コークス外装状態の適正化については,外装時間の適正化16,17)および外装前の造粒強度の向上が必要である。本撹拌HPSプロセスでは脆弱な粗大粒子を排除して造粒粒子群の平均強度を向上させた上で粉コークスを外装する為,後者による効果により被覆状態が適正化されたものと考えられる。

そこで,焼結鍋試験のカーボン物質収支を取り,従来HPS法と撹拌HPS法の燃焼効率を比較した。Table 7に水準T9からT11のカーボン物質収支を示す。Input C量の計算には,点火バーナー,助燃材,粉コークス,石灰石の使用量を用い,Output C量の計算には排ガス風量,排ガス中COおよびCO2ガス濃度を用いた。排ガス風量の算出には,焼結反応前後で流通窒素量が変化しないものと仮定し,式(8)に示す窒素バランスより算出した。   

F o u t = F i n [ N 2 ] i n ( 100 [ C O 2 ] o u t [ C O ] o u t [ O 2 ] o u t ) (8)

Table 7.  Comparison of carbon mass balance between conventional HPS and agitation process.
Item Unit Test No.
T9 T10 T11
Impeller diameter mm 40 80
Input LPG gas kg 0.04 0.04 0.04
Coal kg 0.13 0.13 0.13
Coke breeze kg 1.83 1.78 1.75
Limestone, burnt lime kg 0.51 0.50 0.49
(1) Total kg 2.51 2.45 2.41
Output CO2 in exhaust gas kg 1.48 1.50 1.54
CO in exhaust gas kg 0.19 0.22 0.21
(2) Total kg 1.67 1.72 1.75
ηC (=Output C/Input C) 0.67 0.70 0.73

ここで,Fout:排ガス風量(m3/min),Fin:入側で測定した吸引風量(m3/min),[N2]in:大気中N2濃度(vol%),[CO2]out:排ガス中CO2濃度(vol%),[CO]out:排ガス中CO濃度(vol%),[O2]out:排ガス中O2濃度(vol%)

Table 7に示すように,各水準のInput C合計に対して,Output C合計は3割程低く,燃焼効率ηC18)(Output C/Input C)は,7割程度となった。撹拌HPS法の効果としては,装入密度の低下によりInput C量は減少したが,Output C量は増加しており,燃焼効率ηCも向上した。Katayama and Kasamaの報告18)では,ηCは0.9程度であるが,本試験結果との相違は,Fig.10(c)に示したようなペレットフィード使用時の焼成不良の影響および実験条件の違いによる。充填層中の粗大粒子近傍には低充填密度領域14)が形成され易い。その結果,粗大粒子近傍で通過風量が増加し,粒子・流体間の伝熱係数およびガス境膜物質係数の低下13,19)により,焼成不良を助長したものと考えられる。

次に,熱収支を検討し,焼結ケーキの着熱効率を評価した。着熱効率は,入熱量合計に対する焼結ケーキ顕熱の比率と定義した。焼結ケーキの温度は焼結試験鍋の高さ・幅方向で異なり,焼結ケーキ顕熱を直接評価する事は困難である。従って,入熱量の合計から焼結ケーキ顕熱以外の出熱項を減じて,焼結ケーキ顕熱を算出した。粉コークスの有効燃焼カーボン量に関しては,Table 7のInput CとOutput Cの差が投入粉コークス中の未燃カーボンであると仮定し,装入粉コークス中のカーボン量から未燃カーボン量を差し引いて計算した。粉コークスおよび木炭燃焼熱は,JIS-M8814により高位発熱量を測定し,それぞれ30.1 MJ/kg-coke,28.6 MJ/kg-coalを用いた。標準生成熱の文献値20)より,プロパンガス燃焼熱(99.5 MJ/m3),水蒸発熱(2.5 MJ/kg-H2O),石灰石分解熱(1.8 MJ/kg-CaCO3)を用いた。COガス燃焼熱(12.7 MJ/m3)を出熱項として扱い,カーボンの不完全燃焼による入熱量の低下を考慮した。結晶水分解熱は,Kasaiらの報告値2.0 MJ/kg-H2O21)と,配合B5の結晶水2.5 wt%より算出した。排ガス比重を平均排ガス組成と,標準状態のN2,O2,CO,CO2のガス比重22)より算出し,各水準1.34 kg/m3を使用した。排ガス比熱を,前述の排ガス比重,平均排ガス組成および平均排ガス温度,定圧分子熱23)を用いて算出し,各ケースとも1.0 kJ/kg・Kを使用した。炉体抜熱は不明項であり,今回の試験では十分に評価できていない為,計算から除外した。熱量は全て単位焼結ケーキ重量(ton)当たりの値とした。

Fig.15に熱収支の計算結果を示す。従来HPS法に対して,撹拌羽根径の増加に伴い,入熱量が増加した。出熱項に関しては,COガス燃焼熱および焼結ケーキ顕熱以外は概ね同程度の値となった。焼結ケーキ顕熱項,COガス項の増加については,燃焼性向上に伴う効果である。焼結ケーキの顕熱増加については,撹拌条件では焼結時間が短縮した事から,最高到達温度の上昇による影響が大きいものと推察される。焼結鉱比熱をMuchi and Higuchiの報告した鉱石の比熱推定式19)を用いて計算し,焼結ケーキの平均温度を求めると,それぞれ515°C(T9),576°C(T10),617°C(T11)となった。すなわち,撹拌操作により燃焼効率が向上するとともに,粉コークスの燃焼熱はガス側ではなく固体側に優先的に移行し,溶融反応に寄与したものと推察される。

Fig. 15.

 Comparison of heat balances between conventional HPS and HPS with agitation.

Fig.16に,着熱効率(焼結ケーキ顕熱/入熱量合計)と成品歩留の関係を示す。着熱効率の増加に伴い成品歩留は増加し,双方には良好な相関関係が見られた。

Fig. 16.

 Relationship between product yield and heat efficiency.

4・3 撹拌HPS法と他の造粒プロセスの比較

本撹拌HPSプロセスと他の造粒プロセスを比較する。HPSプロセス3)では,造粒機能の強化により冷間通気性を改善し,伝熱効率の低下を微粉コークス外装による燃焼性改善により補償する。石灰コークス外装法16)では,更に石灰石を外装する事で,融液流動性を改善し,歩留の向上効果を担保する。また,粗大粒子による焼結法14)およびアニオン性高分子分散剤を用いた焼結法24)ではミニペレットの強度を向上させて焼結ベッド層の気孔構造を安定化し,歩留・強度を向上させる。本HPS撹拌プロセスではペレットフィード使用時に生成する脆弱な粗大粒子を解砕して通気性を改善すると共に燃焼性および着熱効率を向上させる。造粒粒子の平均強度を向上させる点,燃焼性の改善により歩留・強度低下を抑制する点では他のプロセスと共通しているが,原料および操業変動に対して造粒粒度分布構成をリアルタイムかつ能動的に制御出来る可能性を有する点では異なる。Shimakawaらは,ドラムミキサー内部に撹拌羽根25)を設置する事で,ミキサー内の転動および飛散領域を拡大させ,撹拌能力を向上させる技術を報告した。しかし,ペレタイザーと比較してドラムミキサー内の粒度偏析は小さく,目的とする粗大粒子を精度良く解砕する為には,設備的な課題が残っていると考えられる。

ペレタイザーでの撹拌操作は物理的に核粉比を制御する一つの方法であり,種々のプロセスと組み合わせる事で,更にペレットフィード使用量を増加させ,生産率向上に寄与するものと思われる。ただし,撹拌操作の与え方次第で,造粒粒度分布が大きく変化する為,原料の変化に応じた適正な撹拌条件の検討が課題である。

5. 結言

HPSプロセスにおける粗大粒子の整粒効果を検証し,次の知見を得た。

1)ペレットフィードを配合すると,高水分のペレットフィード同士が凝集して粗大粒子を形成し,未造粒のペレットフィードが細粒側に残存した。粗大粒子はペレタイザー内の特定箇所に偏析し,回転型の撹拌羽根を用いて選択的に解砕し,粒度分布を均一化出来る。

2)ペレタイザー内で粗大粒子を解砕する事により,粉コークス外装後の造粒粒子径が増加し粒度分布の幅も狭くなった。従来HPS法に比べて撹拌HPS法では装入密度が低減し,通気性改善および歩留向上効果により焼結生産率が増加した。歩留・生産性向上効果は,造粒強度向上,粒度分布均一化,粉コークス燃焼率向上と焼結ケーキ着熱効率の向上によるものと考えられる。

3)撹拌羽根の回転数を増加させると,粒子への衝撃力が増加し解砕可能な粒度範囲が拡大した。DEM計算の結果,高回転領域では,羽根近傍の粒子群の運動が著しく変化し粒子との接触確率が低下した。衝撃圧と解砕効率の観点から撹拌羽根には適正形状および適正運転条件が存在する事がわかった。

文献
 
© 2017 The Iron and Steel Institute of Japan

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