Tetsu-to-Hagane
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Numerical Simulation of Sintering Process – Effects of Containing Ratios of Magnetite Ores on Large Scale Cracks –
Toshihiko UmekageShinichi Yuu
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2017 Volume 103 Issue 6 Pages 305-314

Details
Synopsis:

The motions of particles and gas in the nearly full scale sintering beds were simulated to elucidate the effect of the magnetite ore blending on the particle agglomeration and the large scale crack formation by the simultaneous calculation of the Navier-Stokes equations and the Lagrangian DEM equations based on the sintering model in which the phase change of particles and the cohesion forces and the resistance forces due to the liquid films among particles were considered. In this study containing ratios of magnetite ores are varied from 0 mass% to 19.3 mass%. Calculated results show that the large agglomerates and cracks are not formed and the homogeneous configurations of particles are produced when the containing ratio of magnetite ores is 19.3 mass%. In the sintering bed with high magnetite containing ratio, for example 19.3 mass%, two or more magnetite ore particles contact to one hematite ore particle on average. This increases the liquid region in which the large viscous interaction forces act among close particles and those forces reduce the particle relative velocities which cause the particle collisions and agglomerations. Magnetite ore particles go into voids by their relatively high mobility in the melting zone and produce the uniform sintering beds. In this condition the final bed shrink ratio which is defined as the ratio of the final bed height and the initial bed height is 85% and it is considered that the sintering cake has the sufficient porosity for air flows.

1. 緒言

近年,ヘマタイト鉱石を主体とした高品位鉱石の枯渇などの鉄鉱石の資源動向を踏まえて,マグネタイト微粉を含む鉱石の高効率利用が製銑技術における課題のひとつとなっている。高溶融率のマグネタイト鉱石粒子が含まれることによって焼結鉱の状態は変化すると考えられるが,現在のところ,焼結原料中の鉱石粒子の一部をマグネタイト鉱石粒子としたときの焼結層の構造形成(大規模クラックの発生など)に関する研究はまだあまり行われていない。そこで,本研究では,ヘマタイト鉱石粒子よりも高溶融率となるマグネタイト鉱石粒子の配合が焼結層の構造形成に及ぼす影響を明らかにすることを試みた。

焼結プロセスにおける粒子群の構造形成メカニズムを解明するうえで,数値シミュレーションは有用な手段のひとつと考えられる。Ramosら1)は鉱石粒子の焼結層の構造変化を表現するために離散要素法(DEM)2)を用いたガス流れを考慮しない数値シミュレーションを行い,小規模な粒子層の構造変化を計算した結果から炭素含有量と溶融温度が粒子層の構造に影響を与えることを示した。Yamaoka and Kawaguchi3)は焼結プロセスの最適化設計を行うために3次元数学モデルによる検討を行い,鍋試験における焼結層内のガスの温度と組成,気孔率などの分布を予測できることを示した。Aizawa and Suwa4)はフェーズ・フィールド法と有限要素法に基づく計算モデルを提案し,メソスケールの細孔の大きさと形状および分布を予測できることを示した。また,近年の著者らの一連の研究5,6,7)では,粒子間の多体接触による相互作用をDEMで計算し,粒子のLagrangian型運動方程式と気流のNavier-Stokes方程式を連成して解く数値シミュレーションによって,粒子群の凝集と粒子層の収縮をともなう焼結層の構造形成のメカニズムを明らかにしてきた。すなわち,焼結時の粒子群の層構造に関しては,著者らの計算結果を実際の焼結鉱のCTスキャン画像と比較して大規模亀裂の形成等が正しく表現されていることを示し6,7),粒子群中に径が鉱石粒子の平均径の約3.6倍の大粒子を配合した場合には大粒子の存在が大規模亀裂の発生を抑制することおよび大粒子の下部に空隙領域が形成されるという実験結果と一致する計算結果が得られたことを示している5)。また,焼結時の層収縮に関しても,粒子群の層高の低下は焼結開始後の初期の段階で大きく,最終的な層高は初期層高から10数%程度低下することを確かめて,実際の焼結層の挙動を表現していることを示している5,6,7)

そこで,本研究では,実際の焼結層の現象をよく表現できる既報5,6,7)と同じ計算方法・手順を用いて,ヘマタイト鉱石粒子(本計算では溶融帯通過中の体積溶融率50%)よりも高溶融率となるマグネタイト鉱石粒子(同88%)を配合した場合の焼結プロセスにおける粒子充填層の粒子と気流の運動の数値シミュレーションを行った。すなわち,焼結が進む際に溶融帯が通過するときの各原料粒子の相変化による液化・消滅および固着等は本シミュレーションで重要な役割を果たすと考えられるが,本解析ではそれらをモデル化(ヘマタイト鉱石粒子およびマグネタイト鉱石粒子は,溶融帯通過中にそれぞれ所定の体積比で表層が液化すると仮定して,粒子間の液膜による付着力と抗力を作用させ,溶融帯が通過した後は各接触点に固着の条件を与えた。石灰石粒子は,溶融帯通過時に液化すると仮定した所定の体積を直接接触している鉱石粒子の液膜に等配分して消滅させた。コークス粒子は溶融帯通過後に燃え尽きると仮定して消滅させた)して表した。また,本解析では,実際の焼結炉内の粒子群が凝集・塊成化するときの層収縮と大規模亀裂の発生などを表現するために,高さ方向には実炉の層高(約600 mm),横幅方向にも可能な限り広い領域(288 mm)を設定して数値シミュレーションを行った。

著者らの数値シミュレーションの結果,ヘマタイト鉱石粒子よりも高溶融率のマグネタイト鉱石粒子を配合した場合には,大規模亀裂の成長が抑制され,焼結層の構造が均一化された。本報では高溶融率のマグネタイト鉱石粒子の配合割合が焼結層の構造形成に及ぼす影響について報告する。

2. 計算方法

2・1 気流の運動

気流の運動の基礎方程式は,空隙率および粒子との相互干渉を考慮したNavier-Stokes方程式と連続の式で,それぞれ次式で表される。   

ε u t + ( ε u u ) = ε p + ε Re [ 2 u + 1 3 ( u ) ] S t S t L (1)
  
ε t + ε u = 0 (2)

u,p,t,Re,ε,∇はそれぞれ気流の無次元速度ベクトル,無次元静圧,無次元時間,レイノルズ数(=ρDU0/μ,ただしD,U0ρ,μはそれぞれ計算領域の横幅,気流空塔速度,空気の密度,空気の粘度),空隙率,ナブラ演算子を表し,式(1)中のStStLは気流と粒子の間の相対速度によって作用する抗力と回転揚力による相互干渉項を表す。StStLはそれぞれ後述の粒子の運動方程式(式(8))における粒子に作用する抗力FDと回転揚力FLと作用・反作用力の関係にあり,両者を相互に考慮することによって気流の運動と粒子の運動を連成した解を求める。なお,本計算では粒子表面が溶融している場合でも融液面の変形等は考慮せず,融液層を含む粒子の形状は常に球形と仮定してStStLを計算した(FDとFLに関しても同様)。

気流と粒子の間で作用する抗力による相互干渉項Stは,粒子周りレイノルズ数Rep(=ρDpU0|uup|/μ,ただしDpupはそれぞれ粒子の直径,無次元粒子速度ベクトル)が1,000以下の場合にはShiller and Naumann8)の実験式に基づく式(3)で,粒子周りレイノルズ数Repが1,000よりも大きい場合にはNewton域の抗力係数に基づく式(4)でそれぞれ計算した。   

S t = 3 π μ D p N D ( 1 + 0.15 R e p 0.687 ) U 0 ρ ( u u p ) ξ ( ε ) ( 0 R e p 1000 ) (3)
  
S t = 0.055 π D p 2 N D ( u u p ) 2 ξ ( ε ) ( 1000 < R e p ) (4)

式(3),(4)中のNは単位体積当たりの粒子数,ξ(ε)は粒子が集団を形成することによる流体抗力の増大を表す空隙率の関数で本計算ではUmekage and Yuu9)の実験結果に基づく次式を用いた。   

ξ ( ε ) = 3.8 5.4 ε + 2.6 ε 2 (5)

気流と粒子の間で作用する回転揚力による相互干渉項StLは,揚力係数CLを用いた次式で計算した。   

S t L = π 16 ( C L Ω * ) D p 3 N ( u u p ) × ( 1 2 × u ω p ) ξ L ( ε ) (6)

式中のωp,Ω*はそれぞれ,粒子の無次元角速度ベクトル,粒子と気流の間の回転と並進の相対速度の比(=(Dp/D)|(1/2)∇×uωp|/(2|uup|))である。本計算ではKurose and Komori10)が数値計算によって求めた揚力係数CLを著者らが数式で表した式5)を用いた。Re>1,000の場合には,Magnus揚力を表す次式を用いた。   

S t L = π 32 D p 3 N ( u u p ) × ( 1 2 × u ω p ) ξ L ( ε ) (7)

式(6),(7)中のξL(ε)は粒子が集団を形成することによる回転揚力の増大を表す補正関数で,本計算では近似的に抗力の場合の式(式(5))を用いた。

なお,実際の数値計算では,Navier-Stokes方程式(式(1))の慣性項の計算には4次の中心差分を,その他の空間微分項の計算には2次の中心差分を適用し,Navier-Stokes方程式の発散を取って得られる圧力に関するポアソンの式を緩和法によって解いた11)

2・2 粒子の運動

粒子の運動の基礎方程式は,直交座標系における並進および回転に関するLagrangian型運動方程式で,それぞれ次式で表される。   

m p d ( U p i ) d T = j ( F i j + D i j + F C i j + F R i j ) + F D i + F L i + F G i (8)
  
I p d ( Ω p i ) d T = j ( M i j + M D i j ) + M F i (9)

式(8)の右辺第1項のFijDijはそれぞれ着目粒子iと相手粒子jの接触点における弾性変形の反力ベクトルと減衰力ベクトル,式(9)の右辺第1項のMijMDijはそれぞれFijDijの接線方向成分による反力モーメントと減衰力モーメントで,それらをDEM2)によって計算した。式(8)のFDiFLiはそれぞれ着目粒子iと気流の相対速度によって作用する抗力ベクトルと回転揚力ベクトルで,本解析では粒子表面が溶融している場合でも融液面の変形は考慮せず,融液層を含む粒子の形状は常に球形と仮定して,式(3)~(7)と同様の式を用いて計算した。FGiは重力ベクトルである。式(9)のMFiは粒子が気流から受ける摩擦トルクで,Takagi12)の式を用いて計算5)した。

式(8)のFCijFRijはそれぞれ粒子の表面が溶融した際に融液層どうしが接触する2粒子間に作用する液架橋による付着力ベクトルと融液による抵力ベクトルである。

液架橋による付着力FCijの計算には次式13)を用いた。   

F Cij = π γ d sin α [ sin ( α + θ ) + d 4 ( 1 R 1 1 R 2 ) sin α ] (10)

このとき,R1=[d(1−cosα)+L]/[2cos(α+θ)],R2=(d/2)sinα+R1[sin(α+θ)−1]である。式中のdは粒子が溶融帯内部にあるときの固体表面の直径で,2粒子の大きさが異なる場合には両者の平均値を用いた。Lは液膜を介した2粒子の固体表面間の距離,αθは液架橋の接触角,γは融液の表面張力である。本解析ではθ=0として2粒子の球形の固体表面の共通内接線からαを求め,融液の表面張力をγ=0.63 N/mとして計算を行った。

また,2粒子の固体表面間距離が小さい場合には,粒子間の融液による抵力FRは著しく増大する。それを表現するために,本解析では2粒子間に融液層が存在するときの抗力をHappel and Brenner14)の次式を用いて計算した。   

F R i j = 3 π μ l d u p n β β = 4 3 sinh ϕ n = 1 n ( n + 1 ) ( 2 n 1 ) ( 2 n + 3 ) [ 2 sinh ( 2 n + 1 ) ϕ + ( 2 n + 1 ) sinh 2 ϕ 4 sinh 2 ( n + 1 / 2 ) ϕ ( 2 n + 1 ) 2 sinh 2 ϕ 1 ] (11)

ここで,φ=sinh−1(4L/d)で,式中のupnとμlはそれぞれ2粒子の法線方向相対速度と融液の粘度を表す。本解析では融液の粘度μl=0.06Pa・sを用いた。

2・3 計算領域と計算条件

Fig.1Table 1はそれぞれ計算領域と計算条件を示す。実際の焼結プロセスにおける粒子の塊成化時の層収縮と大規模亀裂の発生などの粒子層の構造形成が表現できるように,粒子の層高と横幅がそれぞれ600 mmおよび288 mmの広い計算領域(奥行き方向には12 mm)を対象として,高さ方向の粒径偏析(粒径2.7 mm~3.9 mm)を考慮した85,000個の粒子を用いた数値シミュレーションを行った。気流の計算格子数はX,Y,Z各方向に48×6×480=1.38×105で,実炉のデータに基づいて,空塔速度0.68 m/sで気流を上部から粒子層下面へ向かって吸引した。このとき,計算領域の底面には,粒子については固体壁境界条件を,気流については一様な空塔速度(0.68 m/s)による吸引の境界条件をそれぞれ適用した。また,横幅(X)方向の垂直面と前後(Y)方向の垂直面には,粒子と気流の両者に対して,それぞれ周期境界条件と固体壁境界条件を適用した。なお,計算領域の上面には長時間の計算が可能なように十分遠方(Z=2,880 mm)に気流の自由流入境界条件を設けた。

Fig. 1.

 Computational domain.

Table 1.  Computational conditions.
Particle diameters, Dp 2.7 mm~3.9 mm
Number of particles 8.5×104
Particle density, ρp Iron ore (Magnetite) 3.15 × 103 kg/m3
Iron ore (Hematite) 3.15 × 103 kg/m3
Coke 1.05 × 103 kg/m3
Limestone 2.57 × 103 kg/m3
Modulus of elasticity, E 1.0 × 107 N/m2
Poisson ratio, ν 0.25
Friction coefficients Particle-Particle, μ 0.45 (before sintering)
0.45 (melting zone)
1.00 (after sintering)
Particle-Wall, μw 0.45 (before sintering)
0.45 (melting zone)
1.00 (after sintering)
Superficial suction air velocity, U0 0.68 m/s
Time Step, Δt 5.0 × 10–6 s
Melting volume fraction of iron ore Magnetite 88%
Hematite 50%
Computational cell sizes of air velocities, ΔX 12 mm
ΔY 2 mm
ΔZ 12 mm

2・4 溶融帯の移動と溶融帯通過時の粒子の状態変化のモデル化

本シミュレーションでは,焼結が進行する際の溶融帯の移動と溶融帯通過時の各粒子の状態の変化を下記のようなモデルによって表現した。

2・4・1 溶融帯の移動

焼結では粒子層の表面で着火した燃焼が下方へ進むにしたがって溶融帯の上下方向幅が大きくなる。そこで,本解析ではFig.2に示すように,溶融帯上限の下降速度を23.6 mm/s,同下限の下降速度を25.6 mm/sに設定して,溶融帯の上下方向幅が粒子層の最上部で25 mm,同最下部で75 mmとなるようにした。なお,実際の焼結は数十分の時間をかけて進行する現象であるが,本数値シミュレーションで安定な計算を行うことができる時間ステップ幅は非常に小さい(⊿T=5×10−6 s)ため,実時間での解析では膨大な計算時間が必要となり実際にはほぼ不可能である。そこで,本研究では,このように溶融帯の移動速度を実現象の約100倍として計算を行った。

Fig. 2.

 Schematic diagram and descending velocity of melting zone.

2・4・2 溶融帯通過時の粒子の状態変化の表現

・鉱石粒子(ヘマタイト鉱石粒子・マグネタイト鉱石粒子)

着目粒子の中心座標を溶融帯下限が通過した瞬間に,ヘマタイト鉱石粒子の場合は体積比50%,マグネタイト鉱石粒子の場合は体積比88%となる粒子表層のみが球形のまま液化する(このとき,体積溶融率が50%のヘマタイト鉱石粒子の場合は中心部の固体部分の直径は溶融前の粒径Dpに対して0.794 Dpに減少,体積溶融率が88%のマグネタイト鉱石粒子の場合は同様に0.493 Dpに減少するとしてDEMによる接触力の計算を行った。粒子の体積,質量,慣性モーメント,気流との相互作用は融液層を含む粒径Dpの球形粒子として計算した)と仮定して,融液層どうしが接触している粒子間には液架橋による付着力と融液による抗力を作用させた(融液による付着力と抗力の計算には前述の式(10),(11)を用いた)。融液層どうしが重なり合った場合には,重複した体積の1/2ずつを2つの鉱石粒子に等分配してそれぞれの融液層を厚くした。その後,時間が進行して着目粒子の中心座標を溶融帯上限が通過した瞬間に,着目粒子の角速度をゼロとし,着目粒子周りの溶融帯上限よりも上の各接触点で作用していた液架橋による付着力を10倍,粒子の固体表面どうしの摩擦係数を1.0として,それぞれの接触点をソフトな固着状態(各接触点に付着力や摩擦力を上回る力が作用した場合には破断や変形が発生する。このような溶融帯通過後の粒子どうしの固着状態を表現するために,本数値シミュレーションでは種々の場合を試行した結果,現実の焼結層の大規模亀裂の発生等を最もよく表現できた溶融状態における液架橋力の10倍と摩擦係数1.0(クーロン摩擦の定義における最大値)を用いて固着状態のモデル化した。なお,溶融帯通過後に粒子どうしが固着する力を液架橋力の20倍,30倍とした場合には,DEM計算における粒子間の各接触点の固着後の変形量が大きくなるため焼結後の層構造が実際の現象を表現しなくなること,過大な作用力のためDEM計算が不安定になること等の問題が発生する。また,溶融帯通過後に粒子どうしが固着する力を液架橋力の10倍よりかなり小さくした場合には,重力や粒子層を透過する気流の抗力によって粒子群が圧密され,どのような条件でも凝集体は形成されなくなるため,実際の現象を表現できなくなる)とした。このとき,固着後のDEMの接触力計算で用いる着目粒子の直径は,着目粒子の中心を溶融帯上限が通過した瞬間に溶融帯上限よりも上で着目粒子の融液層と接触している全ての相手粒子との中心間距離の平均値とした。

・石灰石粒子

粒子の中心座標を溶融帯下限が通過した瞬間に,CO2ガス化等により体積比で45%が消失するとし,残り55%の体積を融液として直接接触している鉱石粒子に等分配して鉱石粒子の融液層を厚くした(鉱石粒子の液膜層を含む直径Dpを大きくした)。このとき,石灰石粒子は鉱石粒子に同化したものとして,瞬時に計算領域から取り除いた。

・コークス粒子

粒子の中心座標を溶融帯上限が通過した瞬間に燃焼を終えるとして,瞬時に計算領域から取り除いた。

2・5 粒子の初期充填状態の作成

本計算では,ヘマタイト鉱石粒子(溶融帯通過中の体積溶融率:50%),マグネタイト鉱石粒子(同:88%),石灰石粒子,コークス粒子の配合割合をそれぞれTables 2~5のように変化(全粒子に占めるマグネタイト鉱石粒子の質量比を0%,5%,10%,19.3%に変化)させて,マグネタイト鉱石粒子の配合割合が焼結後の粒子層の構造に及ぼす影響を検討した。このとき,マグネタイト鉱石粒子を配合した場合(Tables 3~5)については,マグネタイト鉱石粒子を配合しない場合(Table 2)よりもコークス粒子を減配(全粒子に対する質量比を3.766%から3.507%に減少)した。本計算では各粒子の初期充填状態にFig.3に示すような高さ方向の粒径偏析を与えた。

Table 2.  Compositions of materials in initial packing states (T=0 s) which contains 0 mass% magnetite ore particles.
[mass%] [number%]
Iron ore (Magnetite) 0 0
Iron ore (Hematite) 82.427 74.495
Limestone 13.807 15.294
Coke 3.766 10.211
Total 100 100
Table 3.  Compositions of materials in initial packing states (T=0 s) which contains 5 mass% magnetite ore particles.
[mass%] [number%]
Iron ore (Magnetite) 5.0 4.540
Iron ore (Hematite) 77.649 70.501
Limestone 13.844 15.406
Coke 3.507 9.553
Total 100 100
Table 4.  Compositions of materials in initial packing states (T=0 s) which contains 10 mass% magnetite ore particles.
[mass%] [number%]
Iron ore (Magnetite) 10.0 9.079
Iron ore (Hematite) 72.649 65.962
Limestone 13.844 15.406
Coke 3.507 9.553
Total 100 100
Table 5.  Compositions of materials in initial packing states (T=0 s) which contains 19.3 mass% magnetite ore particles.
[mass%] [number%]
Iron ore (Magnetite) 19.298 17.522
Iron ore (Hematite) 63.351 57.519
Limestone 13.844 15.406
Coke 3.507 9.553
Total 100 100
Fig. 3.

 Calculated particle size distributions in initial packing states.

Fig.4は,マグネタイト鉱石粒子(体積溶融率:88%)の質量配合割合が(a)0%(鉱石粒子は体積溶融率50%のヘマタイト鉱石粒子のみ),(b)5%,(c)10%,(d)19.3%の場合の,各初期充填状態(この状態をT=0 sとして焼結の計算を開始)における原料粒子の種類別分布を示す。計算領域に粒子を充填する際には,それらの最大粒子径基準の単純立方格子で規則配置した粒子群から一様乱数を用いてランダムに個数基準で10%の粒子を抜き取って85,000個の粒子群とし,各原料粒子をそれらの質量比に応じて一様乱数によって分布させた状態から約10 s間の重力沈降の計算を行って,全粒子の速度の絶対値が1 mm/s未満となった状態を初期充填状態とした。

Fig. 4.

 Locations of iron ore (hematite and magnetite), limestone and coke particles in initial packing states: (a) calculated results without magnetite ore particle, (b) calculated results with 5 mass% magnetite ore particles, (c) calculated results with 10 mass% magnetite ore particles and (d) calculated results with 19.3 mass% magnetite ore particles.

3. 計算結果と考察

3・1 瞬時粒子位置図の計算結果

Fig.5は,溶融帯通過時の体積溶融率が88%となるマグネタイト鉱石粒子の配合割合を質量比0%((a)i),同5%((b)i),同10%((c)i),同19.3%((d)i)に変化させたときの,それぞれ焼結開始後T=8 sからT=28 sまで(i=1~4)の瞬時粒子位置図の計算結果を示す。これらの粒子位置図では,計算領域のy=6 mmの断面(奥行き方向の中央断面)に存在するDEM粒子をその断面における切り口の大きさでプロットし,移動する溶融帯の上限と下限を図中に2本の直線(以降の図も同様)で表している。なお,後述のFigs.6~8についても,本図(Fig.5)と同様に(a)i,(b)i,(c)i,(d)i(i=1~4)で各計算条件と焼結開始からの経過時間を表している。

Fig. 5.

 Locations of iron ore (hematite and magnetite), limestone and coke particles in sintering beds: (a) i calculated results without magnetite ore particle, (b) i calculated results with 5 mass% magnetite ore particles, (c) i calculated results with 10 mass% magnetite ore particles and (d) i calculated results with 19.3 mass% magnetite ore particles, where i=1, 2, 3 and 4 denote T=8 s, 16 s, 20 s and 28 s, respectively.

計算開始直後のT=8 s((a)1,(b)1,(c)1,(d)1)では,焼結のプロセスが始まってから未だあまり時間が経過していないため,溶融帯通過後の粒子群の層構造にマグネタイト鉱石粒子の配合割合の影響はほとんど現れていない。このときの層収縮による初期状態からの層高低下は,いずれの場合も35 mm程度である。T=16 s((a)2,(b)2,(c)2,(d)2)になると,いずれの場合も溶融帯の通過による粒子群の収縮のため層高の低下がさらに進むとともに,粒子群の層構造にマグネタイト鉱石粒子の配合割合による差が現れ始める。すなわち,マグネタイト鉱石粒子を配合しない場合((a)2)にはT=16 sで粒子層上部に既に多数の亀裂の成長が始まっているのに対して,マグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比5%,10%の場合((b)2,(c)2)にはやや遅れて亀裂の成長が始まっており,マグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比19.3%の場合((d)2)にはT=8 sの状態からほとんど変化していない。さらに時間が経過してT=20 s((a)3,(b)3,(c)3,(d)3)になると,いずれの場合も引き続き層高の低下が進み,マグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比5%,10%の場合((b)3,(c)3)でも大規模亀裂が成長する。最終的にT=28 s((a)4,(b)4,(c)4,(d)4)では,マグネタイト鉱石粒子を配合しない場合((a)4)とマグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比5%,10%の場合((b)4,(c)4)には粒子層上部にほぼ同程度の大規模亀裂が発生したが,マグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比19.3%とした場合((d)4)には最後まで大規模亀裂は発生せずほぼ均一な粒子層が形成された。

溶融帯の粘度が高い融液(常温の水の粘度の約60倍)中では,粒子どうしが接近したり離れたりする際には大きな抗力が作用する。高溶融のマグネタイト鉱石の配合割合が高い場合ほど,粒子充填層内では抗力の大きな融液の領域が増加し,粒子が移動しやすい気流のみの領域は減少するため,粒子どうしの相対運動が減少して粒子群の凝集は起こりにくくなる。それゆえ,Fig.5の一連の計算結果が示すように,高溶融のマグネタイト鉱石の配合割合が高い場合ほど,粒子充填層内に形成された大規模凝集体が発達したときにそれらの境界付近で成長する大規模亀裂の発生は減少する。

大規模亀裂が粒子充填層内に形成された凝集体の境界付近で成長する際には,石灰石粒子やコークス粒子が溶融や燃焼によって消滅した空孔の周囲に応力が集中するので,亀裂はそれらを連ねるように進展していく(Fig.5(a)iの粒子層上部に発生する大規模亀裂はいずれもそのようにして成長している)。前述のように,高溶融率のマグネタイト鉱石粒子の配合によって溶融帯における粒子間の液相率が向上すると凝集は起こりにくくなるが,マグネタイト鉱石粒子そのものは厚い融液層を持っているため周囲の粒子との固体表面間距離が大きく,ヘマタイト鉱石粒子にくらべると固体表面どうしが接近することによる抗力増加の作用は小さいので,融液中の粒子としては動きやすい状態(ただし,他の粒子と衝突・接触して凝集を引き起こすほどではない)になっている。このとき,石灰石粒子の溶融やコークス粒子の燃焼によってできた空孔の近傍に高溶融率のマグネタイト鉱石粒子が存在すれば,それらはヘマタイト鉱石粒子よりも容易に空孔へ移動することができるので,それらは空孔を埋める働きをする。このようにして,高溶融率のマグネタイト鉱石粒子は,それ自身が粒子充填層にできる空孔を塞ぐことによっても大規模亀裂の成長を制御する働きをしていることも考えられる。

Tables 35からわかるようにマグネタイト鉱石とヘマタイト鉱石の個数比は,マグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比5%のとき1:15.5,同10%のとき1:7.3,同19.3%のとき1:3.3となっている。溶融帯内で各粒子の周りに接触している平均の粒子数は約8.1なので,マグネタイト鉱石とヘマタイト鉱石の個数比が1:8よりマグネタイト鉱石の個数が多ければ平均的に1個のヘマタイト鉱石の周りに1個のマグネタイト鉱石の粒子が接触していると考えられ,これが倍の1:4よりもマグネタイト鉱石の個数比が大きくなると平均的に2個以上のマグネタイト鉱石がヘマタイト鉱石に接触していることになる。マグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比19.3%の場合には個数比が1:3.3なので,その場合,すべてのヘマタイト鉱石粒子は平均的に2個以上の厚い融液層を持つマグネタイト鉱石粒子と接触しており,これにより,局所的な凝集が起こりにくい,より均質な粒子層内の融液増加が起こっていると考えられる。したがって,平均的に1個以下のマグネタイト鉱石粒子がヘマタイト鉱石粒子の周りに接触している場合よりも2個以上のマグネタイト粒子が接触している場合の方が格段に凝集を防ぐ作用があるようだ。また,Tables 35に示すように,溶融帯が通過する際に体積比55%が融液となって消滅する石灰石粒子の全粒子に占める個数比は約15%で,それらが溶融して消滅した箇所は空孔となる。マグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比19.3%になると,Table 5に示すように,それらが全粒子に占める個数比は17.5%となって石灰石粒子の個数を上回り,前述のマグネタイト鉱石粒子によって空孔が埋められる作用が大きく現れる。これらのことから,マグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比19.3%の場合には,それらが5%や10%の場合にくらべると,マグネタイト鉱石粒子が粒子層全体でより均一に融液を増加させる作用と空孔を減少させる作用の両者が大きくなるため,大規模凝集体と大規模亀裂の発生を抑制する作用が顕著になっていると考えられる。

ほぼ均質な焼結層が形成されたマグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比19.3%の場合のT=28 s((d)4)における最終的な層高に着目すると,初期層高((d)1,T=0 s)からの低下は15%程度である。著者らは既報7)で,すべての鉱石粒子が体積溶融率88%の高溶融鉱石粒子の場合の数値シミュレーションを行って大規模亀裂が発生しない均一な層構造となることを示したが,その場合には焼結後の粒子群の層高は初期層高から30%以上も低下した。このように,高溶融(本計算では体積比88%)となる鉱石粒子の配合割合を一定量以上(本計算では質量比19.3%以上)にすれば大規模亀裂が発生しない均一な層構造とすることが可能となるが,それを過度に配合すると焼結層の通気性を低下させる層高の減少が起こるので,焼結層の層構造の健全化(大規模亀裂の防止)と通気性の確保を両立させるための適切な配合割合があると考えられる。

3・2 粒子速度分布図の計算結果

Fig.6は,粒子の上下(Z)方向速度分布の計算結果を示す。これらは,計算領域のy=6 mmの断面(奥行き方向の中央断面)に存在するDEM粒子の上下(Z)方向速度のカラー・コンタを表している。

Fig. 6.

 Iso-contours of particle vertical velocities in sintering beds: (a) i calculated results without magnetite ore particle, (b) i calculated results with 5 mass% magnetite ore particles, (c) i calculated results with 10 mass% magnetite ore particles and (d) i calculated results with 19.3 mass% magnetite ore particles, where i=1, 2, 3 and 4 denote T=8 s, 16 s, 20 s and 28 s, respectively.

溶融帯が粒子層の上部から下部へ移動していくときには,石灰石粒子とコークス粒子の消滅および鉱石粒子表層の溶融による層収縮のため,溶融帯よりも上の粒子群は全体的に下向きの速度分布を持つ(溶融帯より下の領域は焼結前の静止充填層であるため,粒子群の速度は(a)i,(b)i,(c)i,(d)iのいずれの場合もほぼゼロである)。

このとき,マグネタイト鉱石粒子を配合していない場合((a)i)およびマグネタイト鉱石粒子の配合割合を質量比 5%,10%とした場合((b)i,(c)i)には,溶融帯通過後の領域の速度分布が局所的に大きく変化している。粒子群中に凝集体が形成されると,粒子群は凝集体ごとに一体となって移動するので,速度分布が変化している領域の境界は各凝集体の境界を表している。(a)i,(b)i,(c)iの場合には,そのような速度分布が既にT=8 sで溶融帯より上の領域に形成されており,凝集体は焼結の開始直後から形成されていることがわかる。その後,時間の経過とともに,(a)i,(b)i,(c)iの場合には,それぞれの凝集体間の速度差によって空隙が拡大して大規模亀裂が成長していく。

それに対して,マグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比19.3%((d)i)の場合には,粒子群の速度分布は溶融帯を境として,その上と下の領域でそれぞれほぼ均一になっている。これは,前節で述べたように,(d)iの場合にはマグネタイト鉱石粒子の配合割合を大きくしたことによって粒子群の融液量が増加し,かつ均質になって局所的な大規模凝集体が形成されなくなった結果,溶融帯より上の領域でも,凝集体ごとに分かれた運動をするのではなく,固着した粒子群が一体となって沈降・層収縮するためである。

このときの溶融帯内の速度分布に着目すると,(a)i,(b)i,(c)iの場合には溶融帯通過中に比較的大きな局所的な速度変動(これによる粒子間衝突によって凝集体が形成される)が生じており,それらは溶融帯上限が通過して粒子群が固着した後も凝集体間の速度差として残り続けて大規模亀裂を拡大させているが,(d)iの場合には粒子層内の融液率が高く,しかもそれがより均一になっているため,溶融帯内での粒子の速度分布の変動は小さくなっている。

3・3 粒子間作用力分布図の計算結果

Fig.7は,粒子間作用力分布図の計算結果を示す。これらは,計算領域のy=6 mmの断面(奥行き方向の中央断面)に存在する粒子周りの接触点における作用力をそのスカラー値の大きさに応じた色で表している。

Fig. 7.

 Iso-contours of contact forces between particles in sintering beds: (a) i calculated results without magnetite ore particle, (b) i calculated results with 5 mass% magnetite ore particles, (c) i calculated results with 10 mass% magnetite ore particles and (d) i calculated results with 19.3 mass% magnetite ore particles, where i=1, 2, 3 and 4 denote T=8 s, 16 s, 20 s and 28 s, respectively.

マグネタイト鉱石粒子を配合していない場合((a)i)およびマグネタイト鉱石粒子の配合割合を質量比 5%,10%とした場合((b)i,(c)i)には,既にT=8 sから溶融帯が通過したあとの領域に作用力の局所的な変化が現れている(溶融帯がまだ通過していない領域ではそれぞれ差はほとんどない)。すなわち,(a)i,(b)i,(c)iの場合には,溶融帯が通過して凝集体が形成されると,それらの境界付近の粒子が疎な領域では,少ない接触点に大きな作用力が集中している(例えば,(a)1,(b)1,(c)1の溶融帯上限よりも上(Z>440 mm)の水色以上の領域。それらは前節で述べた凝集体間で粒子の速度分布が大きく変化する位置とほぼ一致する)。いったん亀裂の成長が始まると,亀裂拡大の先端部では周囲の粒子群の凝集や収縮にともなう作用力が集中して局所的に大きな力が働く。これは亀裂が成長しつつある個所(例えば,(a)1の(X=90 mm,Z=540 mm)付近,(a)2の(X=265 mm,Z=435 mm)付近,(a)3の(X=80 mm,Z=305 mm)付近など)で顕著である。

マグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比19.3%の場合には,焼結開始から終了までのいずれの時刻でも粒子層内の作用力分布はほぼ均一となった。これは,前節の粒子速度分布で述べたのと同様に,溶融帯通過時の粒子層中の融液量が増加した場合には粒子どうしの相対運動が融液層の流体抗力の作用によって減少することで凝集が起こりにくくなることや,厚い融液層を持つマグネタイト鉱石粒子がそれらの近傍の空孔が埋めることにより,焼結後の粒子群の層構造が均一になった結果,固着後の各接触点における作用力もほぼ一様になるためである。

3・4 気流の速度ベクトル線図の計算結果

Fig.8は,気流の瞬時速度ベクトル線図の計算結果を示す。これらは,計算領域のy=6 mmの断面(奥行き方向の中央断面)における気流の速度ベクトルを表している。

Fig. 8.

 Vector diagrams of air velocities in sintering beds: (a) i calculated results without magnetite ore particle, (b) i calculated results with 5 mass% magnetite ore particles, (c) i calculated results with 10 mass% magnetite ore particles and (d) i calculated results with 19.3 mass% magnetite ore particles, where i=1, 2, 3 and 4 denote T=8 s, 16 s, 20 s and 28 s, respectively.

マグネタイト鉱石粒子を配合しない場合((a)i)には粒子層にできた大規模亀裂の周囲で空気の流れは大きく変化し,空隙率が低い(より空間に近い)亀裂に気流が集中するのに対して,その周囲の凝集体を形成している粒子群の内部には流速がほぼゼロとなる領域が現れている。亀裂に気流が集中すると,その周囲では粒子群と気流の相対速度による抗力で亀裂の拡大や粒子群の圧密が起こるため,粒子群の層構造の不均一はさらに拡大する(実際の焼結プロセスでは,このような気流の不均一によって溶融帯の移動速度や温度分布などにも大きな差が生じると考えられるので,現実の焼結後の粒子群の層構造は本解析の結果よりもさらに複雑なものになる可能性がある)。このように粒子群中の気流は粒子の充填状態の影響を大きく受けるため,マグネタイト鉱石粒子の配合割合によらず大規模亀裂が発生した場合には,その周囲で気流は大きく変化する(最大速度と最小速度の差は断面平均速度の+310%~−95%)。しかし,焼結後の粒子群がほぼ均一な層構造となるマグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比19.3%の場合((d)1~(d)4)には,粒子群中の気流速度はほぼ一様な分布(最大速度と最小速度の差は断面平均速度の±15%以内)となっている。

4. 結言

配合したマグネタイト鉱石の高溶融率が焼結層の構造に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,焼結の際に溶融帯が通過するときの各原料粒子の相変化に伴う液化・消滅および固着等をモデル化して表現し,粒子のLagrangian型運動方程式と気流のNavier-Stokes方程式を連成して行った焼結過程の数値シミュレーションの結果から以下の結論を得た。

(1)高溶融率のマグネタイト鉱石粒子を含まない場合(鉱石粒子は体積溶融率50%のヘマタイト鉱石粒子のみ)の焼結層には大規模亀裂が発生したのに対して,高溶融率のマグネタイト鉱石粒子を配合した場合には大規模凝集体や大規模亀裂は発生しにくくなった。これは,高溶融のマグネタイト鉱石粒子の配合によって,粒子充填層内の粒子が移動しやすい気流のみの領域が減少し,抗力の大きな融液の領域が増加することで,粒子どうしの相対運動が起こりにくくなるためである。その効果は,マグネタイト鉱石粒子の質量配合割合が5%, 10%の場合には比較的小さいが,19.3%の場合には顕著に現れた。粒子層内のヘマタイト鉱石粒子に厚い融液層を持つマグネタイト鉱石粒子が常に平均的に2個以上接触するような状態(19.3%ほどの多量のマグネタイト鉱石を付加すると,このような状態が現出する)として融液の増加が粒子層全体で均一に起こるようにすること,溶融帯通過中に消滅して空孔を形成する石灰石粒子を上回る数のマグネタイト鉱石粒子(厚い融液層を持っており周囲の粒子との固体表面間距離が大きいため,溶融率が低いヘマタイト鉱石粒子にくらべると固体表面どうしが接近することによる抗力増加の作用が相対的に小さくヘマタイト鉱石粒子よりも動きやすいので空孔を塞ぐ作用がある)を配合することで,大規模凝集体と大規模亀裂の発生を抑制する作用はより顕著になると考えられる。

(2)高溶融率(本計算では体積比88%が溶融)となるマグネタイト鉱石粒子の配合割合を一定量以上(本計算では質量比19.3%以上)にすれば大規模亀裂が発生しない均一な層構造(このときの初期状態からの層高の低下は15%程度であった)とすることができるが,高溶融の鉱石粒子を過度に配合すると焼結層の通気性を低下させる層高の著しい減少が起こるので,焼結層の層構造の健全化(大規模亀裂の防止)と通気性の確保を両立させるための適切な配合割合がある。

(3)焼結層中の気流は大規模亀裂の存在によって大きく影響を受ける。大規模亀裂が発生した場合には,気流は大規模亀裂の領域に集中(そこでの気流速度は空塔速度の約4.1倍に達した)し,その周囲の粒子群が存在する箇所には流速がほぼゼロとなる領域が現れた。一方,焼結後の粒子群がほぼ均一な層構造となるマグネタイト鉱石粒子の配合割合が質量比19.3%の場合の粒子群中では,気流速度はほぼ一様(各高さにおける最大速度と最小速度の差は断面平均速度の±15%以内)となった。

文献
 
© 2017 The Iron and Steel Institute of Japan

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