Tetsu-to-Hagane
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Improvement of Sinter Strength and Reducibility through Promotion of Magnetite Ore Oxidation by Use of Separate Granulating Method
Masaru MatsumuraToru TakayamaKyosuke HaraYasuhide YamaguchiOsamu IshiyamaKenichi HiguchiSeiji NomuraTaichi MurakamiMiyuki HayashiKo-ichiro Ohno
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2017 Volume 103 Issue 6 Pages 388-396

Details
Synopsis:

In general, Fe content in iron ore is gradually decreasing. This fact affects worse performance of BF operation, for example, increase of RAR and Slag ratio. Depletion of high grade iron ore deposits is moving us to use concentrates in sintering process.

Through magnetite concentration deteriorates reducibility because of high FeO content in sinter product. Such situation makes it to promote oxidation of magnetite iron ore during sintering process for improving sinter reducibility. In addition, promoting oxidation of magnetite possibly increases sinter strength with using oxidation heat is exothermal reaction.

ISIJ sinter research group for utilization of magnetite concentration suggests that restricting melt formation is critical for promoting oxidation of magnetite concentration.

In this paper, It is confirmed that “Separate Granulation” has been examined to apply their suggestion by sinter pot test.

The main results obtained are described as follows:

(1) “Separate Granulation” in case that magnetite is pre-granulated with high Al2O3 iron ore without limestone and coke breeze resulted in decrease of FeO in sinter and improvement of both sinter reducibility and sinter strength.

(2) Sinter micro structure featured restriction of pore, low circle factor and small mineral texture, which supported that melting restriction worked during sintering.

(3) Magnetite decreased and hematite increased as sinter mineral, which corresponded with decrease of FeO content.

(4) These facts shown (1) to (3) concluded that “Separate Granulation” is effective to improve both sinter reducibility and sinter strength due to restriction of melting during sinter reaction.

1. 緒言

銑鉄製造において,焼結鉱は世界で最も多く使用されている高炉用鉄源である。日本では,その生産量は年間8000万トンを超え,その製造工程からのCO2排出量は国内総排出量の約3%を占める。ここで,焼結原料として使用される鉄鉱石の鉄品位は徐々に低下しつつある。そのため,鉄鉱石山元であらかじめ選鉱処理し鉄分が濃化されたいわゆるConc.が将来的に増加する。選鉱処理プロセスには,さまざまな手法があるが,磁性を有する酸化鉄を磁力で選別する方法が,比重差を利用した浮遊選鉱と比較して容易である。磁性を有する鉄鉱石は,一般的にマグネタイト(Fe3O4)であるので,まずはこれに着目した使用技術確立を目指す。従来,マグネタイト鉱石多配合すると,焼結鉱中のFe2+が増加し被還元性が悪化すること1)が知られている。従って,焼結過程においてマグネタイトのヘマタイトへの酸化促進が重要である。酸化促進は上記効果の他,生成熱量増を享受できるため,焼結鉱の強度を改善できる。よって,従来は焼結用熱源を操作因子とした場合には相反因子とされる焼結鉱の強度と被還元性の両立を,マグネタイト鉱石の酸化促進により達成する可能性が高い。

上記背景に基づいて,マグネタイトの酸化促進による日本本鉄鋼協会研究会「資源対応型高品質焼結鉱製造プロセス研究会」おいて,大学側の研究において,下記知見が得られた。

1)マグネタイト鉱石の酸化促進のためには,鉱石近傍の酸素ポテンシャルを高めて液相生成を抑制する2)。これを達成するには,マグネタイトはフラックス(CaO源)および炭素系凝結材(粉コークス等)から遠隔配置する。

2)大気雰囲気下おいて試薬ヘマタイトと比較して試薬マグネタイトはCaOとの反応による液相生成温度が低い3)。よって,上記1)記載の液相生成抑制のためには,マグネタイトはフラックス(CaO源)から遠隔配置する。

3)FeOx-CaO-SiO2系状態図のFeOx飽和領域において,Al2O3添加は液相比を低下せしめる4)。よって液相生成抑制には,Al2O3濃度上昇が有効である。

遠隔・近接手段として,二種造粒物の作り込み可能な,二系列で造粒する分割造粒5),および二層構造の造粒物の作り込み可能な,一部の原料を別系統で造粒し合流後再造粒する選択造粒6)の活用が有効である。本研究では,より遠隔配置が可能な分割造粒5)を採用し,マグネタイト鉱石の酸化促進を介した被還元性および冷間強度の向上を,60 kg規模の焼結鍋試験で評価した。

2.マグネタイト酸化促進に関するISIJ研究会基礎的知見

まず,緒言で述べた「資源対応型高品質焼結鉱製造プロセス研究会」におけるマグネタイトの酸化挙動に及ぼす液相生成の影響に関する基礎的知見を本章で総括する。

マグネタイトの酸化促進において,液相生成との関連を評価することは,焼結プロセス上重要である。ここで,液相生成の関連とは,マグネタイト酸化と液相生成との時系列的順序の適正化である。液相がマグネタイト鉱石表層を濡らして,酸素との接触を妨害するのであれば,液相生成前の昇温段階でヘマタイトまで酸化させておく必要がある。一方,液相生成により粒子内部の未酸化領域を順次露出させて酸化していくのであれば,液相生成と酸化反応は同時進行させる必要がある。さらに,第三として,マグネタイトとフラックスとを積極的に反応させ,液相を生成せしめた後に,液相段階または冷却過程の固相析出段階で酸化させるのであれば,マグネタイト酸化以前に積極的に液相生成させるべきである。

Fujinoら2)は,アルミナ球充填層中にグリーンボール(直径1-2 mm)を配置し,空気流通下で酸化反応挙動を調査した。その結果,Fig.1に示すように,900°C空気流通下において,マグネタイト微粉と共にCaOを20 mass%添加したグリーンボールは,マグネタイト微粉だけのグリーンボールと比較して,酸化率が低下した。CaO添加したグリーンボールの冷却後の組織観察結果より,グリーンボールの内部に未酸化のマグネタイトが確認されており,グリーンボール表層には,カルシウムフェライト系鉱物が生成しており高温下における液相の存在を示唆する。よって,生成した液相が空気を遮断して特にグリーンボール内部のマグネタイト酸化を抑制したものと考えられる。また,結果は掲載しないが,マグネタイ微粉グリーンボールとコークス粒子を混合配置するとグリーンボール単味と比較して酸化率が低くなった。これは,コークス燃焼ガスの酸素ポテンシャルが低いため,またはコークスとの固相反応により,ヘマタイト生成が抑制されると考察している。さらに,マグネタイト微粉鉱と微粉コークスの混合物をマグネタイト安定雰囲気下で昇温した際の重量変化を測定した。その結果,Fig.2に示す通り,400°C以上で重量増加し700°C以上で重量減少した。400°C以上の重量増加はマグネタイトの酸化反応,700°C以上の重量減少は粉コークスの酸化(燃焼)と一部のマグネタイト微粉鉱の還元反応と考えられる。従って,マグネタイトは400°C以上で酸化可能であり,粉コークス燃焼までに可能な限り酸化促進させておくことが重要である。さらに粉コークスと遠隔配置することで,低酸素ポテンシャルガスや直接反応によるマグネタイト酸化抑制が回避できる。

Fig. 1.

 Change in reaction ratio of green ball of magnetite concentrate with and without CaO2).

Fig. 2.

 Normalized weight change of magnetite concentrate and coke breeze with temperature2).

Ohgiら3)は,CaOとの化学反応の視点で,マグネタイト試薬とヘマタイト試薬を比較した。

Fig.3に示す通り,空気気流中においては,マグネタイト−CaO間で形成する鉱物は,4CaO・FeO・8Fe2O3および3CaO・FeO・7Fe2O3で,いずれも1200°C以下で溶融する。従って,ヘマタイトと比較してマグネタイトは,CaOとの反応により,より低温で液相を生成する結論に至った。

Fig. 3.

 Mineral phase of quenched sample and melting temperature during increasing temperature under reaction with CaO component3).

Hayashiら4)は,FeOx-CaO-SiO2-Al2O3系平衡状態図におけるFeOx飽和領域における液相線上の組成を分析した。その結果,Fig.4に示す通り,Al2O3濃度上昇とともに,FeOx濃度が低下した。FeOx濃度低下は,三成分系状態図のFeOx頂点から液相線への距離が増加することと同義である。これは,FeOx飽和領域において液相領域が縮小すること,すなわち,同一温度では,液相率が低下することを意味する。工業的には,マグネタイト鉱石近傍に高Al2O3鉱石配置が,マグネタイト溶融抑制において重要であることを示唆する。焼結プロセスにおけるAl2O3成分の液相生成に及ぼす影響については,溶融抑制の報告7,8,9,10)が多く,本知見4)は,これら過去知見を基礎的に傍証した。

Fig. 4.

 Influence of Al2O3 content on equivalent FeOx content on liquidas composition at FeOx-SIO2-CaO-Al2O3 Phase diagram4).

以上の研究会基礎知見2,3,4)を踏まえると,焼結操業への指針として,焼結原料層において溶融までのマグネタイトの酸化促進にはマグネタイトをCaOと近接させず,高酸素ポテンシャル維持のため,粉コークスとも近接させないことが重要である。さらに,液相生成抑制のため,マグネタイト鉱石へAl2O3含有率の高い鉄鉱石を近接させることが有効である結論にいたった。

近接・遠隔の手段として,マグネタイト鉱石に対する遠隔・近接原料設計を実焼結プロセスにおいて実施するには,二系列で造粒する“分割造粒法”5)の採用が有効である。即ち,焼結原料を2系統に分割し,マグネタイト鉱石を主体とする系統とフラックス・粉コークスを主体とする系統とをそれぞれ造粒したのちに配合して焼結する。次章以降に本手法の効果について評価する。

3. 実験方法

3・1 鍋試験方法

Table 1に焼結原料配合条件および焼結鉱ベースの成分を示す。鉄鉱石については,マグネタイトConc.の他,日本で使用されている主要鉄鉱石4種類を用いた。粉コークス配合比率は4.5 mass%~6.0 mass%の範囲で変更した。ケース0Aおよび0Bは,マグネタイト配合比がそれぞれ15 mass%および0 mass%で,双方ともに全原料一括造粒を採用した。一方,ケース1およびケース2は,マグネタイト鉱石15 mass%配合において,原料を二系統に分けて別々に造粒する分割造粒を採用した。ケース1においては,マグネタイト鉱石を配合する予備造粒(Table 1表記のSep.)には,ヘマタイトD鉱石の他,CaO源としては造粒に必要な最小限の生石灰のみ配合し,本造粒(Table 1表記上のMain)には残りの原料を配合したが,大部分のCaO源(生石灰,石灰石)と粉コークスが含まれる。ケース2では,予備造粒(Table 1表記のSep.)に配合したヘマタイトD鉱石の代わりに高Al2O3ゲーサイトBを配合した。即ち,ケース1ではマグネタイト鉱石をCaO源および粉コークスと遠隔配置し,ケース2ではさらにマグネタイト鉱石と高Al2O3鉱石を近接配置した。

Table 1.  Blending condition and calculated chemical composition.

造粒方法については,一括造粒および分割造粒の本造粒(Table 1表記上のMain)については,ドラムミキサー(直径600 mm 長さ800 mm)で4分間混合後,水分を添加しさらに4分間造粒した。一方,分割造粒の予備造粒(Table 1表記のSep.)については,高速攪拌ミキサーで1分間処理し,水分添加後,再度1分間処理し,パンペレタイザー(パン径800 mm 深さ200 mm)で5分間処理した。

焼結鍋は直径300 mm高さ500 mmであり,同一直径の風箱上に固定した。原料装入後,熱電対を鍋上面より&240 mmおよび430 mmの高さの位置の垂直断面円中央部にセットした。なお,風箱中央部にも熱電対をセットした。

点火は風箱内圧力−5.2 kPaで吸引しながらLPGを燃料とするバーナーで1分間燃焼させた。点火後は風箱内圧力−10.3 kPa一定で行った。風箱内圧力は,風箱から送風機間のダクトに設置したダンパー開度で調整した。風箱内中央部に設置した熱電対で排ガス温度を計測し,焼結時間は排ガス温度ピーク時刻までの時間と定義した。点火終了から焼結終了まで,排ガスの一部を連続採取し,除湿除塵処理した後に,CO,CO2およびO2を分析した。COおよびCO2は赤外吸収法,O2は磁化法による方法で,ポータブル分析計を用いた。焼成中の通気性は,排ガスダクトに設置した流速計より風量を連続測定して,焼結原料層を流通するガス流量とした。

焼結鍋から排出した焼結ケーキは,重量計測後に落差2.0 mで4回落下させ5 mmで篩分けし,成品焼結鉱を得た。

3・2 焼結鉱品質指標

成品焼結鉱を篩分けし,大塊は破砕・整粒して,10-40 mm 15 kgを200回転処理し,+6 mm比率で冷間強度とした。一方19-21 mm試料500 gを旧JIS法に基づいたRI試験を行い,その指標を被還元性とした。

3・3 光学顕微鏡断面観察および画像解析による気孔評価

焼結鉱15-19 mmを,樹脂へ埋込・切断して2次元断面の気孔を観察した。画像解析法11)に断面中の気孔数をカウントした。

気孔毎に気孔面積を計測して,等面積の円相当径を算出した。円相当径の度数分布で気孔の微細化を評価した。一方,気孔毎に周長を測定し周囲長Aと定義し,等面積の円相当直径を周囲長Bと定義して,円形度=周囲長B/周囲長Aを求めた。円形度は凹凸度の指標であり,液相生成下では,気孔が丸みを帯びるため,円形度が上昇する。一方,液相が生成しない場合,焼成前の気孔形状が維持されるため,一般的には円形度が小さくなる。

3・4 粉末X線回折による鉱物同定

焼結鉱15-19 mmを粉砕し粒度を数10 μm以下にした。これを,ディフラクトメーター法によりXRD測定を実施した(X線源:CuKα,検出器:シンチレーションカウンタ)。X線光学系は集中法を用い,測定法は2θ-θスキャンで測定した。リートベルト解析を行うには,できる限り広い2θ範囲のS/N比の高いデータが必要である。そこで2θの範囲をある一定間隔刻み(Δ2θ)で動かし,指定した時間の回折ピークを検出するステップスキャンという手法で測定を行った。その際の測定条件は,2θ=10~120°,Δ2θ=0.04°,露光時間20 sである。

なお,リートベルト法12)についての詳細説明は省略するが,粉末回折パターン全体に含まれている情報を最大限に抽出するため,実測パターンとできるだけよく一致するように近似構造モデルに基づいて計算した回折パターンを最適化する手法である。

4. 実験結果

4・1 焼結鉱被還元性および冷間強度

Fig.5に,粉コークス配合比と焼結鉱FeO濃度との関係を示す。一括造粒ケース(0A,0B)ともに,粉コークス配合比の上昇と共に,FeOが上昇する。ケース0Aと0Bを比較すると,マグネタイト配合比の高いケース0Aの方がFeOは高く,配合したマグネタイトがヘマタイトまですべては酸化していないことを意味する。ケース0Aとマグネタイト配合比が等しく分割造粒を採用したケース1およびケース2は,FeO値が低い。粉コークス配合比5.5 mass%条件同士で比較すると,ケース1およびケース2は,マグネタイト配合比0 mass%のケース0Bと同等のFeO値であった。即ち,本研究の技術思想に基いた配合条件での分割造粒を採用すると,マグネタイトの酸化が促進される結果が得られた。

Fig. 5.

 Influence of coke breeze ratio and granulation method on FeO in sinter.

Fig.6およびFig.7に,粉コークス配合と被還元性(RI)および冷間強度(TI)との関係を示す。マグネタイトを配合し一括造粒ケースである0Aの傾向をみると,粉コークス配合量上昇と共に,被還元性が低下し冷間強度が上昇する。

Fig. 6.

 Influence of coke breeze ratio and granulation method on reducibility.

Fig. 7.

 Influence of coke breeze ratio and granulation method on sinter strength.

さらに一括造粒でのマグネタイト鉱石配合比0 mass%配合のケース0Bは,ケース0Aと比較して被還元性が高く冷間冷間強度が等しい。これは,マグネタイト配合によるFeO増が被還元性を悪化せしめるが,マグネタイトの酸化熱も少ないため,冷間強度は向上しないことを意味する。

粉コークス配合比5.5 mass%のケース1を除いて,マグネタイト配合下で分割造粒法を採用すると被還元性および冷間強度の双方が向上した。これは,マグネタイト酸化促進により,焼結鉱FeO濃度が低下して被還元性が向上すると共に,酸化熱量上昇による焼結過程における熱量上昇を介した冷間強度向上である。

Fig.8に,粉コークス配合比5.0 mass%におけるマグネタイト配合条件であるケース0A,1,2,における充填層上面から100 mm位置および250 mm位置におけるヒートパターンを示す。Fig.8において上段が100 mm位置下段が250 mm位置である。なお,上段下段共に,右側が左側の1000°C以上を拡大した図面である。一括造粒と比較して分割造粒のケースは,最高到達温度の差異は小さかったが1200°C以上の高温保持時間が伸延した。

Fig. 8.

 Increasing high temperature (>1200°C) holding time by use of separating granulation method.

4・2 光学顕微鏡断面観察および画像解析による気孔評価

Fig.9に,粉コークス配合比5.0 mass%でマグネタイト鉱石を15 mass%配合条件における分割造粒(Case2)および一括造粒(Case0A)の焼結鉱断面の組織を比較する。まず,気孔の点では,分割造粒のケースでは,100 μm以下の気孔が多く存在していたが,一括造粒のケースでは,50 μm前後の気孔が多く100 μm以上の気孔もみられる。さらに気孔も丸みを帯びているため,溶融を介して気孔統合が促進したものと推察する。次に,鉱物の点では,分割造粒のケースでは,斑状ヘマタイトが多く存在していたが,一括造粒のケースでは,骸晶状ヘマタイトが多くみられる。一般的に,骸晶状ヘマタイトは液相から析出し斑状へマタイトは固相から析出する。斑状ヘマタイトは液相生成源である石灰石から遠隔配置されているマグネタイト微粉と高Al2O3ゲーサイト鉱石由来と考えられる。即ち,マグネタイトが酸化して斑状ヘマタイトへ変化したものと考えられる。

Fig. 9.

 Comparison of microscope image between at ordinary granulation and at separate granulation under blending magnetite fine.

以上,気孔および鉱物の特徴より,一括造粒のケースは分割造粒のケースと比較して,焼結過程において多量の液相を生じていたと考えられる。

Fig.10に,粉コークス配合比5.0 mass%でマグネタイト鉱石を15 mass%配合条件における分割造粒(Case2)および一括造粒(Case0A)の円相当径分布を示す。なお,各ケースサンプル2個ずつ供した。分割造粒を採用したケース2および一括造粒を採用したケース0Aは,それぞれ円相当径のピークが40-70 μmおよび100-250 μmであり,分割造粒のケースの方が円相当径が小さい。また,円相当径での積分値が気孔量を意味するが,分割造粒のケースは気孔量が多い。

Fig. 10.

 Increasing number of pore and decreasing pore size by use of separate granulation method.

Fig.11に,円形度分布を示す。分割造粒のケースでは,円形度0.5~0.8の気孔が多い。一方,一括造粒のケースでは,円形度0.8未満の気孔が少なく0.8以上の気孔が大半を示す。

Fig. 11.

 Decreasing pore circle factor by use of separate granulation method.

以上,Fig.9-11より,一括造粒のケースと比較して分割造粒のケースは,溶融抑制により骸晶状ヘマタイト減少,気孔統合の抑制,気孔円形度低下に結びついたと考える。ここで,気孔統合の抑制や気孔円形度減少は,還元反応促進にとって有利である。

4・3 粉末X線回折による鉱物同定

Fig.12に,リートベルト解析に基づいて得られた鉱物定量結果を示す。分割造粒のケースは,一括造粒のケースと比較して,ヘマタイトが上昇しマグネタイトが減少した。つまり,分割造粒によるFe2+からFe3+への酸化が促進された。SFCA(多成分カルシウムフェライト)およびシリケート系鉱物については,造粒方法の相違による差異が小さかった。

Fig. 12.

 Influence of granulation method on mineral constitution.

5. 考察

5・1 消費熱量の考え方

マグネタイト酸化熱等の生成熱量変化が焼結鉱の冷間強度と被還元性の双方に関与した。ここでは,焼結層熱量について,焼結層生成熱量と焼結層を流通するガス顕熱を入出考慮した焼結層内消費熱量として層高別に定量評価した。Fig.13に,その考え方を示す。焼結層内を3層に分割して,焼結層消費熱量を,入熱量+生成熱量−出熱量で算出した。ここで,入熱量および出熱量は,上中下層それぞれ該当する焼結層上面および下面に設置された熱電対で計測される温度をガス温度として,風量およびガス比熱を乗じ時間積分した。積分時間帯は,燃焼前線が3層それぞれの領域に存在する時間帯とした。燃焼前線到達時刻は,熱電対温度70°Cに到達した時刻とした。

Fig. 13.

 Concept of heat generation in sintering bed.

5・2 焼結層生成熱量

焼結層生成熱量は粉コークスに燃焼効率を考慮した燃焼熱およびマグネタイトからヘマタイトへの酸化熱である。燃焼効率は風量および排ガス組成(CO,CO2,O2)に基づいて算出した。Fig.14に,焼結層入側および出側のガス量およびその組成の概略を示す。ガス組成については,H2Oの他,数百ppmと微量なSOx,NOxを無視し,CO,CO2,O2,N2の4成分でバランス計算した。入側ガス組成はO2濃度21%,N2濃度79%とした。出側のN2濃度はCO,CO2,O2濃度の和を100%から引いて求まる。この出側N2濃度より,入側ガスと出側ガスとの量比が定まる。そして,出側ガス量は入側ガス量よりも多く,その差分は,石灰石等炭酸物から生成するCO2量およびコークス燃焼で生じるCOの半量である。前者は酸素ガスを消費しない固体からの脱離ガスのため,後者は1モルの酸素分子から2モルのCOが生成するためである。そして,炭酸物から生成するCO2が求まれば,コークス燃焼によって生成するCO2が求まる。コークス配合量およびコークスに含有される固定炭素濃度から原料層中の固定炭素量が判り,コークス燃焼由来のCOおよびCO2も判るので,焼結後の未燃炭素量が求まる。本実験では,出側ガス量を連続分析しているので,粉コークスの完全燃焼(C+O2→CO2),不完全燃焼(C+1/2O2→CO)および未燃の各量が求まる。ここで,完全燃焼および不完全燃焼における発熱量13)は下記式の通り,408 J/molおよび125 J/molである。本論文では,コークス燃焼に関するパラメータとして,1)コークス燃焼効率は全固定炭素が完全燃焼した際に得られる熱量に対する比率,2)コークス燃焼熱はコークス燃焼効率を考慮した値とした。

Fig. 14.

 Volume balance between inlet and outlet gas.

C+O2 =CO2+408 kJ/mol:完全燃焼

C+1/2・O2 =CO+125 kJ/mol:不完全燃焼

一方,マグネタイトからヘマタイトへの酸化熱13)は下記式の通り,マグネタイト1モルあたり115 kJ/molであたえた。   

Fe 3 O 4 + 1 / 4 O 2 = 3 / 2 Fe 2 O 3 + 115 kJ / mol (1)

マグネタイトからヘマタイトへの酸化熱については,焼結鉱FeO値からは熱量の絶対値を算出するのが難しい。それは,上記マグネタイトの酸素による酸化反応の他,CO,CO2が関与する酸化還元反応も考慮する必要があるためである。そのため,本検討においては,実験ケース間の熱量差なる相対評価した。即ち,焼結鉱FeO濃度差⊿FeOをマグネタイトからヘマタイトへの酸素による酸化反応差と仮定した。Table 2に,粉コークス燃焼熱およびマグネタイト酸化熱を比較する。一括造粒と比較して,分割造粒を採用したケースは,粉コークスの燃焼効率が向上した。熱量換算すると,配合原料1 tあたり15~30 MJの増熱であるが,この値は,粉コークス燃焼熱量全体に対して,1.2~2.4%に相当する。一方,成品FeOが低減した分,マグネタイトからヘマタイトへの酸化熱を享受した。この増熱は配合原料1 tあたり17~30 MJであった。即ち,分割造粒の採用により,粉コークスの燃焼性向上およびマグネタイト酸化促進の双方の効果で,配合原料1 tあたりの増熱が45~47 MJと評価された。この増熱により,高温保持時間が伸延したものと考えられる。

Table 2.  Increasing heat generation of coke combustion and magnetite oxidation by use of separating granulation method.

5・3 焼結層流通ガス顕熱

ガス顕熱は,流通ガス量,ガス密度,ガス比熱,ガス温度の積である。ここで,流通ガス量は,鍋試験装置出側以降の排ガス配管オリフィスで計測した排ガス量とした。但し,焼結層を流通するガスがオリフィスを通過するまで2秒要するので,この時間差を考慮した。ガス密度は排ガス温度における密度値とした。留るガス比熱はガス組成と温度に依存するが,ガス組成は焼結層へ挿入した熱電対の計測情報を採用した。顕熱計算におけるガス温度は焼結層上部入側ガス温度を基準とした差異とした。従って,上層における入側ガス顕熱量は0となる。Table 3に,各ケース層高方向3層における入側ガス顕熱および出側ガス顕熱を示す。入側ガス顕熱は,上層で0,中下層は,上部の高温ガスが供給されるので600 MJ/t程度の値となる。一方,出側ガス顕熱は,上中下層いずれも60-70°C程度のため,20-30 MJ/t程度の値となる。

Table 3.  Gas sensible heat at each vertical position.
Gas sensible heat (MJ/t)
Integlation period Flame front in upper zone Flame front in middle zone Flame front in bottom zone
Inlet and outlet position inlet outlet inlet outlet inlet outlet
surface (a) in Fig.14 (a) in Fig.14 (b) in Fig.14 (b) in Fig.14 (c) in Fig.14
0A 0 24 642 93 617 23
1 0 20 680 32 690 24
2 0 23 698 30 577 26

5・4 焼結層消費熱量

Table 4に消費熱量試算結果を示す。上層と比較して,中下層で600 MJ/t程度高かった。これは,焼結層入側ガス顕熱の差である。次にケース間の比較では,上層および中層では,一括造粒のケース0Aに対して,分割造粒を採用したケース1,さらに,マグネタイト微粉鉱石と高Al2O3ヘマタイト鉱石を同一造粒系で処理したケース2において,焼結層の上中下層いずれの層でも高くなった。下層では,ケース0Aに対して,ケース1で高くなりケース2は同等であった。ケース0Aに対するケース1の消費熱量増加量は,上層50 MJ/tに対して,中層150 MJ/t,下層120 MJ/tと高い。これは,上層から中層へのガス顕熱供給増加および中層から下層へのガス顕熱供給増加の影響である。

Table 4.  Heat consumption at each vertical position.
Heat consumption in sintering bed (MJ/t)
Upper Middle Bottom Average
0A 1213 1786 1831 1610
1 1264 1932 1950 1715
2 1259 1950 1832 1680

以上の本検討結果および考察を踏まえ,焼結鉱の冷間強度および被還元性改善要因をFig.15に総括する。

Fig. 15.

 Mechanism of promoting magnetite ore oxidation and Improving sinter strength and reducibility.

マグネタイト鉱石をCaO源である石灰石から遠隔配置し,高Al2O3鉱石と近接配置すべく,マグネタイト鉱石と高Al2O3鉱石および造粒に必要最小限の生石灰を別系統で造粒する分割造粒法を採用すると,溶融反応が抑制され,マグネタイトが酸化促進される。この酸化促進により,焼結鉱中のヘマタイト比率の上昇とマグネタイト比率の低下が確認され,被還元性が向上した。一方,マグネタイト鉱石の酸化促進は,焼結層の高温保持時間を上昇せしめ,冷間強度向上に結び付く。ここで,溶融抑制は,焼結鉱組織において,気孔統合の抑制,鉱物の微細化,低円形度で示された。

6. 結言

本研究では,マグネタイト鉱石配合における焼結鉱被還元性および冷間強度の双方の改善を目的として,マグネタイト鉱石と高Al2O3鉱石および造粒に必要最小限の生石灰を別系統で造粒する分割造粒法の効果を焼結鍋試験で評価し,以下の知見が得られた。

(1)上記配合による分割造粒を採用すると,焼結鉱中FeOが低下し,焼結鉱被還元性および冷間強度の双方が向上した。

(2)焼結鉱組織より,気孔統合抑制,気孔低円形度,鉱物微細化が確認された。これは,焼結反応時の溶融抑制を傍証するものと考える。

(3)焼結鉱鉱物中のマグネタイト減少およびヘマタイト上昇が確認された。この結果は上記(1)のFeO低下と対応する。

(4)上記(1)~(3)より,本分割造粒法により,溶融反応抑制がマグネタイト鉱石酸化を促進し,その結果,焼結鉱被還元性および冷間強度の改善に結び付いたと考えられる。

文献
 
© 2017 The Iron and Steel Institute of Japan

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