Tetsu-to-Hagane
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Effect of Adhering Particle and Nuclei Particle Ratio at Separate Granulation Process on the Granule Structure
Yasuhide YamaguchiChikashi KamijoMasaru MatsumuraTakazo KawaguchiKenichi HiguchiSeiji Nomura
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2017 Volume 103 Issue 6 Pages 254-261

Details
Synopsis:

In order to decrease slag (SiO2, Al2O3 etc.) contents in sinter ore, it is an effective option to increase ratio of ultra fine iron ores called as Concentrate (Conc.) or Pellet Feeds (PF) in sintering mixture owing to its relatively lower slag contents than typical Sinter Feeds (SF), which, however, has a drawback to decrease the permeability of the sintering bed and sinter productivity.

This report has investigated the optimal ratio of PF/SF in a separate granulation process in terms of the productivity by means of pot sintering test with granules observation, and plant trial.

The pot test (300 mm diameter), where approximately 20% of raw materials, which include the PF, were mixed by high speed intensive mixer and then granulated by pan pelletizer, showed that the optimal PF/SF ratio was 3/1. The observation of granules revealed that P-type granules began to increase from the optimal ratio on up.

The plant trial of 8 hours at Wakayama No.5 sinter plant confirmed that the productivity came to maximum at the PF/SF ratio of 3/1 under using 20 mass% of PF in the sinter mix.

1. 緒言

世界的な鉄鋼生産量増大に伴い,鉄鉱石資源の中で焼結原料(Sinter Feed:SF)として利用される直接船積み鉱石(Direct Shipping Ore:DSO)の劣質化,具体的には鉄品位低下およびSiO2,Al2O3等の脈石成分上昇が顕著となっている。粉鉱石,ひいては焼結鉱の脈石成分上昇は,高炉操業における生産コストの悪化やCO2排出量増加といった悪影響を及ぼすことが懸念される。

一方,DSOとしての資源価値を有さないT.Fe 20~50 mass%程度の低品位鉄鉱床は,世界中に多量に賦存している。低品位鉄鉱床から選鉱処理によって脈石成分を分離除去し鉄品位を高めた精鉱(Concentrate:Conc.)は,DSOと比較して高鉄品位かつ長期的な品位安定が見込まれる。

Conc.は選鉱処理を経る際に微粉となる為,従来はペレット原料(Pellet Feed:PF)として用いられてきた。しかしConc.を焼結原料として用いることにより,粉鉱石の鉄品位低下影響を相殺可能となると期待される。しかしながら,焼結プロセスにおける微粉鉱石の多量使用は,焼結機内に形成される原料層の通気性を阻害し,生産性を低下させる問題点が存在する。

微粉鉱石の焼結利用を目的とした造粒処理技術として,HPS(Hybrid Pelletized Sinter)法1,2)や,MEBIOS(Mosaic Embedding Iron Ore Sintering:複合造粒・層設計焼結)法3)(Fig.1),SPExII4)といった種々のハード,ソフト面での研究開発が産学の多方面からなされてきた。前述知見の実焼結機への展開例として,和歌山No.5焼結機においては,MEBIOS法で志向する粗大・緻密造粒物を製造するべく,原料の一部を高速撹拌ミキサーおよびパンペレタイザーで処理するP型分割造粒ラインを2009年に設置した5,6,7)。造粒機をパンペレタイザーとした理由は,一般的にパンペレタイザーはドラムミキサーに比べて造粒性能が高いとされる為である8)

Fig. 1.

 Concept of MEBIOS process.

ここで,通常のペレット造粒プロセスにおいては,パンペレタイザーには微粉原料のみが供給され,一部が微粉同士の凝集体を形成し(核生成)その周囲を微粉が被覆して造粒が進行していく。また,パンペレタイザーの出口にはローラースクリーン等の分級機構が存在し,所定の粒径範囲内のパンペレタイザー造粒物(以降グリーンボールまたはGBと呼称)が焼成される。

一方焼結プロセスの場合,焼成後にシンターケーキの破砕分級機構が存在する為,和歌山No.5焼結機のパンペレタイザー出口は分級機構を有しておらず,パンペレタイザー通過後のGBは全て焼結機へ装入される。従って,所定の造粒時間内に十分に成長しなかった小径GBや未造粒粉が排出されると焼結機内において通気性悪化要因となると懸念される。そこで核生成工程の省略によるGB成長時間短縮を狙い,原料の一部に粉鉱石を配合した擬似粒子型のGBを製造している。以上より,P型分割造粒ラインにて処理する微粉鉱石および粉鉱石の配合比率には適正値が存在するものと予想される。

本報告では,複数の造粒処理ラインを有する造粒プロセス(以降,複合造粒と呼称)における,微粉鉱石の配合比率が造粒物構造に及ぼす影響の基礎検討,ならびに実焼結機での短期検証試験結果に関して報告する。

2. 実験

2・1 実験条件

複合造粒処理プロセスとして,高速撹拌ミキサーとパンペレタイザーからなる造粒処理ライン(以下,E-Pライン)にて全原料の約20 mass%,2機のドラムミキサーからなる造粒処理ライン(以下,D-Dライン)にて残る約80 mass%の原料を各々処理し,両ラインの造粒物がベルトコンベア上で合流し,搬送過程で数回のベルト乗り継ぎを経て軽混合された後,サージホッパーに装入され焼結機内へ装入される造粒工程を,実験条件の前提とした。本処理フローおよび各ラインにおける原料処理比率は,和歌山No.5焼結機の造粒処理ライン5)を模擬したものである(Fig.2)。

Fig. 2.

 Granulation process of Wakayama No.5 sinter plant.

なお,和歌山No.5焼結機のD-Dラインは,2機のドラムミキサーがベルトコンベアを介さずに連結している構造(1次ミキサー後端と2次ミキサー先端が重なっている)を採用しており,Fig.2の表記もそれに倣った。

2・2 鍋試験

E-Pラインにて処理される粉鉱石と微粉鉱石の比率が焼結生産性に及ぼす影響の検討として,鍋試験による基礎検討を実施した。

2・2・1 試料

微粉鉱石として,ブラジル産微粉鉱石PF.Aを用いた。レーザー回折散乱法にて測定した平均粒径は約90 μmであった(Fig.3)。

Fig. 3.

 Size distribution of PF.A.

原料配合条件は,凝結材である粉コークスを外数で示し,それ以外の原料の合計を100%として整理した。試験水準は,PF.Aを13.2 mass%配合したBaseと,PF.Aを20.0 mass%配合したCase1から3の合計4水準とした。配合条件をTable 1に示す。

Table 1.  Blending conditions of sinter pot test (mass%).
Base Case1 Case2 Case3
E-P Line
PF.A 9.35 9.35 12.47 14.03
SF.A 9.35 9.35 6.23 4.67
BF Dust 0.50 0.50 0.50 0.50
Quick Lime 0.80 0.80 0.80 0.80
Subtotal 20.00 20.00 20.00 20.00
(PF/SF) 1/1 1/1 2/1 3/1
D-D Line
PF.A 3.85 10.65 7.53 5.97
SF.A 16.65 11.65 14.77 16.33
Other Ores 37.20 34.50 34.50 34.50
Submaterials 12.70 12.50 12.50 12.50
Return Fine 9.60 10.70 10.70 10.70
Subtotal 80.00 80.00 80.00 80.00
Fine Coke 4.80 4.80 4.80 4.80
Total 104.80 104.80 104.80 104.80

E-Pライン原料には,付着粉としてPF.A,核として豪州産粉鉱石SF.A,バインダーとして生石灰,熱源として高炉ダストの4種を配合した。E-Pラインで全原料の20.0 mass%を処理し,生石灰0.8 mass%および高炉ダスト0.5 mass%を全水準一定で配合し,残る18.7 mass%に占めるSF.AおよびPF.Aの比率を変更した。Base配合条件においては,E-Pライン中のPF.AとSF.Aの混合比が1/1となる様,各々9.35 mass%ずつ配合した。Case1から3の配合条件においてはPF/SF比率を1/1,2/1,3/1の3水準となる様に配合した。

D-Dラインで造粒する80 mass%の原料は,E-Pラインに配合しなかったPF.AおよびSF.Aの残部,その他豪州産もしくはブラジル産粉鉱石,副原料(石灰石,ドロマイト,珪石),返鉱,粉コークスとした。BaseとCase1から3ではPF.A配合率が異なる為,焼結鉱成分が一定となる様に,粉鉱石,副原料,返鉱比率を調整した。また,上述Case1から3の配合条件においては,E-PラインのPF/SF比率を1/1,2/1,3/1と増加させるのに伴い,逆にD-DラインからはPF.A量が減少することとなる。

2・2・2 実験手順

鍋試験の操作手順について以下に詳述する。まず,E-PラインおよびD-Dライン各々の造粒を実施した。E-Pラインの造粒は,事前に水分0 mass%まで乾燥処理した原料を,パン直径325 mmの高速撹拌ミキサーに装入し,パン回転数35 rpm,撹拌羽根(ロータ)回転数1200 rpmの条件で1分間混合し,水分が10 mass%(E-Pライン原料重量を100%とした場合の内数%)になる様に所定量の水を添加し,さらに1分間前述運転条件で混合調湿した。混合調湿後の原料を直径550 mm深さ93 mmのパンペレタイザーに1 wet-kg/minで供給して連続的に造粒し,排出されるグリーンボールを回収した。

パンペレタイザーの運転条件は,パン内の原料滞留状態を目視観察し適正な原料渦が形成された条件である,傾斜角度49°,回転数31 rpmとした。フルード数における重力項を傾斜角度で補正した下記(1)式に示す修正フルード数(Fr’)で表すと19.9×10−3である。   

Fr ' = D ( n / 60 ) 2 / ( g sin a ) (1)

D:パン径(m),n:回転速度(rpm),g:重力加速度(m/s2),α:傾斜角度(°)

混合調湿した原料のパンへの供給を開始し,生成したGBがパン内に滞留していきやがて溢れて排出が開始してから10分経過する迄の間に回収されたGBは鍋試験には供さず,定常状態に達したと考えられる排出開始から10分経過以降のGBを回収し鍋試験に供した。

回収したGBから,インクリメントスコップにて一部を縮分採取し,粒度分布と水分を測定した。粒度分布は,試料を105°Cで2時間以上保持して完全に乾燥させた後,ロータップ振とう機でタップせずに15秒間篩い,各粒度区分の重量比率を評価した。特に,造粒状態の指標として,0.25 mm以下の重量比率(以降,−0.25 mm%とする)を評価した。

D-Dラインの造粒は,原料を直径600 mm,長さ800 mm,傾斜角0°のバッチ式のドラムミキサーに装入して4分間混合し,水分が7 mass%(粉コークスを含む84.8 mass%のD-Dライン原料を100とした場合の内数%)になる様に水を添加して,さらに4分間造粒した。

造粒後のD-DラインおよびE-Pライン原料重量を計量し,それぞれが乾燥質量基準で84.8 mass%および20 mass%の比率となる様に重量を調整した。重量調整後,両者をドラムミキサーに装入し,15秒間混合した。本操作は,2・1節で説明した,和歌山No.5焼結機において両者がベルトコンベア上で合流し,数回の乗り継ぎの後サージホッパーを経て焼結機内に装入されるまでの混合を模擬したものである。

試験鍋は,直径300 mm,深さ500 mmの円筒容器を用いた。鍋を風箱上に設置し,直径10-20 mmの床敷焼結鉱を2.0 kg装入した。造粒後原料を,底部に仕切りを持つホッパーに装入し,鍋上に設置し,仕切りを引き抜いて鍋内に落下装入した。装入後の原料を鍋口で擦り切り,床敷込み高さ500 mmの充填層とした。

鍋内に入りきらず上述の擦り切り操作で回収された配合原料は,水分および粒度分布の測定に用いた。本鍋試験ではD-Dライン造粒物の採取・評価は実施しなかったため,E-PラインGBおよび配合原料の−0.25 mm%とそれぞれの混合比率から,D-Dライン出側の−0.25 mm%を推算した。

焼成は,鍋下圧力5.0 kPaにて吸引しながらLPGバーナーで充填層上部を1分間点火し,バーナー消火後は鍋下圧力9.8 kPaに切り替え,鍋下圧力一定での焼成を行った。排ガス温度が最高値に達してから3分後まで吸引を継続し,3分経過後直ちにブロワーを停止して焼成を終了した。点火開始から排ガス温度上昇開始までの時間で初期層厚500 mmを除した燃焼前線降下速度(Flame Front Speed,以下FFSと呼称)を焼成速度の指標とした。

焼成後の焼結ケーキ重量を計量し,高さ2 mから計4回落下させて破砕した。破砕後の焼結ケーキを目開き5 mmの角篩で分級し,篩上重量から床敷重量を引いた重量を成品重量とした。

成品重量を,焼結ケーキ重量から床敷重量を引いた値で除して成品歩留とした。点火開始から排ガス最高温度到達の3分後までの時間を焼成時間とし,成品重量を焼成時間および鍋面積で除した値を生産率とした。鍋試験は1水準あたり2回行い,平均値で評価した。

2・3 実焼結機における短期検証試験

前述の如く,和歌山No.5焼結機のE-Pラインは,焼結生産率によっても変動するが全原料の約20 mass%相当を造粒処理可能である。

実焼結機においても2・2節と同様に,PF.A配合比率およびE-Pライン処理比率一定条件下におけるE-PラインPF/SF比率の変更試験を実施した。ただし,実機試験では,鍋試験のBaseに相当するPF.A配合量が少ない水準は実施しなかった。一方PF/SF比率は,鍋試験で実施した1/1,2/1,3/1に加えて,4/1も実施した。試験期間中の配合実績値をTable 2に示す。

Table 2.  Blending conditions of commercial sinter plant trial (mass%).
Case1 Case2 Case3 Case4
E-P Line
PF.A 10.98 14.64 16.47 17.57
SF.A 10.98 7.32 5.49 4.39
BF Dust 0.36 0.36 0.36 0.36
Quicklime 0.46 0.46 0.37 0.37
Subtotal 22.78 22.78 22.69 22.69
(PF/SF) 1/1 2/1 3/1 4/1
D-D Line
PF.A 10.98 7.32 5.49 4.39
SF.A 9.79 13.45 15.28 16.38
Other Ores 38.52 39.43 39.43 39.43
Submaterials 17.93 17.02 17.11 17.11
Subtotal 77.22 77.22 77.31 77.31
Fine Coke 3.30 3.21 3.24 3.34
Total 103.30 103.21 103.24 103.34

各試験水準は8時間ずつ合計32時間連続で実施した。試験期間中は層厚を一定とし,焼成完了点(Burn Through Point,以下BTP)が一定となる様にパレット速度を変更した。すなわち,排鉱部直前の風箱下もしくは下降管に設置した熱電対で測定している排ガス温度が,ある基準値より上昇した(すなわち焼成速度が上昇し焼成完了点が手前に移動したと判断される)場合は加速,逆に低下した(すなわち焼成速度が低下し焼成完了点が後方に移動したと判断される)場合は減速する様に調整した。

和歌山No.5焼結機は,造粒処理を経た後2機のストランドに原料が振り分けられ各々焼成される5,6)が,本試験では代表としてNo.5-2ストランドにおけるパレット速度,排ガス風量,鍋下圧力,生産率,生産量あたりの風量原単位の相対値(Case1を100として整理),等のデータについて30分間の平均値を記録し,評価した。ただし,試験以外の要因による短時間の減速等が発生した時間帯のデータは除外した。

造粒物のサンプリングを,E-Pライン出口,D-Dライン出口,両者が合流したサージホッパー出側給鉱部の3ヶ所で実施し,鍋試験と同指標(−0.25 mm%)で評価した。

2・4 造粒物構造解析試験

造粒物の構造解析に用いるべく,PF/SF比を変更した造粒試験を実施した。PF/SF比が1/1から5.7/1まで異なる,Case1からCase5までの5水準の試料を各4 kg準備した。Table 3に配合比率を示す。これらの試料に,所定水分を添加して撹拌羽根付きのミキサーで1分間混練した後に,2・2節の鍋試験で用いたものと同じ装置,条件で造粒した。

Table 3.  Blending conditions of granulation test (mass %).
Case1 Case2 Case3 Case4 Case5
PF.A 50.00 67.00 75.00 80.00 85.00
SF.A 50.00 33.00 25.00 20.00 15.00
Subtotal 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00
Quicklime 2.00 2.00 2.00 2.00 2.00
Total 102.00 102.00 102.00 102.00 102.00
(PF/SF) 1/1 2/1 3/1 4/1 5.7/1

得られたGBを,篩網への付着抑制の為に105°Cで7分間保持して表面付近のみ乾燥させ,10,8,5,2,1 mmの区分で,造粒物が崩壊しないように手で軽く叩いて篩分級した。各粒度区分に篩分級した試料を各々について更に5,3,2,1,0.5,0.25,0.125 mmの区分で水洗して,構成粒子の粒度区分と重量比率を更に細分化して測定した。なお,表面付近を乾燥させ分級した段階を擬似粒度,水洗後に分級し造粒前本来の粒度を測定した段階を真粒度と称する。

3. 結果

3・1 鍋試験

造粒物の評価結果をFig.4に示す。E-Pラインで造粒されたGBの−0.25 mm%は,PF/SF比が1/1と配合条件が同一のBaseおよびCase1に対し,Case2は同等,Case3は若干上昇し造粒悪化傾向を示した。

Fig. 4.

 Effect of PF/SF ratio on granulation at each line.

給鉱部の−0.25 mm%は,Baseにおいて最も低位で,PF.A配合量がBaseと比べて多いCase1から3はいずれも高位であった。Case1から3を比較するとCase1が最も高く,次いでCase2,Case3と低下した。

本鍋試験ではD-Dライン造粒物のサンプリングを実施しなかった為,E-PラインおよびD-Dライン各々の重量比率と−0.25 mm%の積の合計が給鉱部の−0.25 mm%に等しい,すなわち各々のラインの造粒物はベルトコンベア乗り継ぎを模擬した15秒間の混合操作による衝撃で崩壊しなかったと仮定し,E-Pラインと給鉱部の測定結果からD-Dライン−0.25 mm%を逆算した。ここから,E-Pライン−0.25 mm%の変化量と比較してD-Dライン−0.25 mm%の変化量が大きく,給鉱部における−0.25 mm%の上昇は大部分がD-Dライン造粒物に由来し,ドラムミキサーへのPF.A配合量増加が大きく造粒を悪化させたと推測される。

焼成速度(FFS),成品歩留,生産率の結果をそれぞれFig.5に示す。焼成速度は,Baseが最も高く,Case1から3はいずれもBaseと比べ低下した。Case1の低下が最も大きく,Case2および3はCase1に対して上昇しBaseとの差が縮小した。Case2とCase3の差は僅かにCase2の方が低いものの,差は小さかった。成品歩留は,Baseに対しCase1から3は若干低下したが,Case1から3の間,すなわちPF/SF比率による差は小さかった。

Fig. 5.

 Effect of PF/SF ratio on sintering conditions.

生産率は,Baseに対してCase1が最も低く,E-PラインPF/SF比を上昇させたCase2および3はCase1より上昇したがBaseには届かなかった。本結果は,上述した給鉱部の−0.25 mm%測定結果と定性的に対応が見られ,造粒改善の結果,通気性,ひいては焼成速度が改善したと推察される。

3・2 実機試験

実機においても鍋試験と同様の結果が得られ,E-PラインPF/SF比を2/1や3/1に上昇した際に,パレット速度上昇が可能となり,焼結鉱生産量の増加を確認した。この時,生産量あたりの風量原単位が低下していた。しかしながら,PF/SF比率を4/1まで上昇させると,生産量は逆に低下に転じた(Fig.6)。

Fig. 6.

 Changes of operation by changing PF/SF ratio at Wakayama No.5 sinter plant.

造粒物の変化に関しても,鍋試験と同様の傾向が得られた(Fig.7)。すなわち,E-PラインにおけるPF/SF比率上昇に伴いE-Pラインの造粒は悪化し,逆にPF量が減少するD-Dライン側の造粒は改善した。両者が合流した給鉱部においては鍋試験と比較すると明確な差は得られなかったものの,PF/SF比率が3/1のCase3にて改善しており,造粒および通気性改善を介して生産率改善に繋がったと示唆される。

Fig. 7.

 Effect of PF/SF ratio on granulation at Wakayama No.5 Sinter Plant.

4. 考察

焼結プロセスの造粒工程では,1 mm以上の粒子を核として,その周囲に0.25 mm以下の微粉を付着させた擬似粒子を形成している。この様な,核粒子と付着粉層からなる擬似粒子を,Hidaら9)の分類に従い,以降C型(Composite型)粒子と呼ぶ。

緒言にて述べた様に,和歌山E-Pラインにおいては粉鉱石を配合しており,C型粒子の核を成していると推察されるが,従来の焼結原料の粒度構成と比較すると,核と微粉の比率が大きく異なる。微粉鉱石を多量配合する場合,C型粒子のみならず,微粉鉱石のみで形成された粒子(以降P型(Pellet型)と呼ぶ)も形成され,それが造粒物強度,ひいては通気性や生産性に影響する可能性が考えられる。

実焼結機での試験(3・2節)において,E-PラインのPF/SF比には適正域が存在し,PF/SF比率を3/1から4/1とした場合に低下に転じるという結果が得られた。PF/SFの最適比率は,微粉鉱石の配合量,微粉鉱石自身の性状,造粒水分,バインダー添加量,混練機および造粒装置の能力等が複雑に関係すると考えられ,体系的な解明にはいまだ多数の課題が存在すると言えるが,ここでは今回用いたSF.AおよびPF.Aにて形成される擬似粒子における,PF/SF比と造粒物構造の観点から考察を実施した。

4・1 マイクロフォーカスX線CTによる粒子構造観察

マイクロフォーカスX線CTを用いてGBの構造観察を実施した。上述2・4節の操作で作成したGBのうち,PF/SFが3/1の試料を4.0から6.7 mmに縮分採取し,約15 mm径,50 mm高さの樹脂製容器に装入後,CT装置に設置して200 kV,50 μAにて測定した。測定したCT像を約0.2 mm刻みの断面図として出力し,上記容器に装入された全28個のGBについて,密度差を表す輝度や形状等に基づき断面図の目視にて核粒子の有無を判断した。

結果をFig.8に示す。左側(a)が容器全体像の断面図の一つ,右側(b)(c)がそこから各々1個のGBを拡大した断面図である。目視判断した核粒子と付着粉層の境界を(b)(c)中に破線で示した。CT観察からは,28個中22個と80%以上の粒子は(c)に代表される様な核粒子の周囲に付着粉層を有するC型粒子であることが確認できた。また,1.0から1.5 mm程度の核粒子を複数個有する,造粒過程でC型粒子が複数合体した様に思われる(b)の様な粒子も約28個中6個観察された。一方,核粒子を有しておらず全量1 mm未満の粒子のみから構成されるP型粒子は観察されなかった。

Fig. 8.

 Cross section observation of granules by using micro-focus X-ray CT.

以上より,少なくともPF/SF比が3/1の条件までは,微粉鉱石を多量使用したE-Pライン造粒物において,C型粒子構造を主体としている事が観察された。

4・2 PF/SF比が擬似粒子構造に及ぼす影響の解析

前節は1水準のPF/SF比の,限られた個数および粒径範囲の観察であるが,PF/SF比の影響や疑似粒子径の影響を評価するべく更なる解析を実施した。具体的には,2・4節に示した実験で得た,PF/SF比を1/1から5.7/1まで変更し造粒したGBを擬似粒度別に水洗解体し,粒度構成を測定した結果を用い,下記仮定をおいて解析を行った。

・全ての粒子は,篩分級した粒度区分の代表径を元に球形近似する。

・1 mm以上の粒径の核粒子1個を有する擬似粒子をC型造粒物とする。

・造粒物はP型とC型の二種類のいずれかに分類しその中間形態は存在しない。

・P型造粒物およびC型造粒物の付着粉層部分は1 mm未満の粒子のみで構成される。

より具体的な造粒物構造解析手順を以下に示す。

(1)疑似粒度区分別の代表径における体積および鉱石密度から疑似粒子1個あたりの質量を算出し,測定された質量から除して疑似粒子個数を算出した。

(2)擬似粒度区分別の真粒度区分各々に対しての平均径を代表径とし,核粒子の個数を算出した。疑似粒子個数と核粒子個数の比を算出した。

(3)上記仮定より,核粒子数とC型粒子数が等しいと見なし,疑似粒子個数と核粒子すなわちC型粒子個数との差分を求めた。

(4)上記差分の余剰個数をP型粒子個数とした。

(5)P型粒子個数を全粒子個数で除し,P型粒子比率とした。

疑似粒度別の真粒度測定結果の一例として,PF/SF比3/1で造粒したCase3の結果をTable 4に示し,本結果を基に,上記解析手順を補足説明する。左側3列が,疑似粒度測定結果であり,左から粒度区分,質量,比率を示している。疑似粒度測定結果の右側に,疑似粒度区分別の真粒度測定結果を示す。一例として,一段目は,疑似粒子全体の4.26 mass%を占めていた10-8 mmのGBを100%とした時の真粒度分布を示している。ここから,10-8 mmのGBは,10-5,0.25-0.125,−0.125 mmの粒子が主体で構成されており,10-5 mmの粒子を核とし,0.25 mm以下の粒子が付着粉層を形成していたと推察される。

Table 4.  Pseudo-particle structure analysis of granulation test Case3 (mass %).

同様に,二段目に示す8-5 mmのGBは3 mm以上,三段目に示す5-2 mmのGBは1 mm以上,四段目に示す2-1 mmGBは0.5 mm以上と,各々の疑似粒子径の一つ下の区分の粒子までが核粒子となり,付着粉層を取り込んで粒径成長し,一つ上の区分のGBを形成していたことが見て取れる。一方,付着粉となっていた粒度は,いずれの疑似粒度区分においても0.25 mm以下の粒子であった。本結果から,各GBの一つ下の粒度区分までの真粒度を(a)核粒子と判断し,−0.25 mmの粒子を(b)付着粉とした。該当部分をそれぞれTable 4中の太枠で囲んで示した。なお,核粒子および付着粉と判断した粒度の間にも少量の粒子が測定されたが,本解析では簡単のため無視することとした。

各疑似粒度区分別の付着粉層と核粒子の質量比率をFig.9に示す。核粒子に対する付着粉層の質量比率はPF/SF配合比に伴い上昇していることが確認できる。また,疑似粒径別では,10-8 mmおよび8-5 mmと比較して,5-2 mmおよび2-1 mmの粒子により多くの付着粉が存在する傾向が見られた。

Fig. 9.

 Relationship between PF/SF and Adhering particle/Nuclei ratio.

上記(2)で求めた疑似粒子と核粒子の個数比率をFig.10に示す。いずれの粒度区分においてもPF/SF比の上昇に伴い個数比率は上昇傾向であった。しかしPF/SF比2まではいずれの粒度区分も1.0未満で,核粒子個数の方が多く存在するという解析結果であった。PF/SF比3以上において,特に粒径の大きい区分において核粒子よりも疑似粒子数が多く存在し始めるという解析となった。これをP型粒子であったと仮定し,全疑似粒子数に対するP型粒子比として表した結果をFig.11に示す。10-8 mmのGBはPF/SFが3以降,8-5 mmのGBは4以降P型粒子が出現し,5.7では5-2 mm粒子にも出現するという解析結果であった。

Fig. 10.

 Relationship between PF/SF ratio and GB/Nuclei ratio.

Fig. 11.

 Relationship between PF/SF ratio and granule structure.

疑似粒径が大きいほど,高PF/SF配合時にP型粒子が生成し易くなる理由としては,局所的に水分を多く含有した部分が,多量の付着粉を取り込んで粗大に成長した等の仮説が考えられる。一方,本解析手法では核粒子を球形と仮定して粒子体積から個数を算出したが,実際の鉄鉱石粒子は非球形の為,球形と比べて等体積当たりの粒子個数は多くなり,それが影響した可能性も考えられる。

4・1のマイクロフォーカスX線CT測定結果と比較すると,CT測定を実施した4.0-6.7 mmのGBは本解析における8-5 mmと5-2 mmの中間に位置するが,8-5 mmまでは造粒物個数よりも核粒子個数が多く存在していたという本解析結果と,P型粒子が見られなかった,あるいは複数核粒子がみられたという観察結果と概ね一致していると判断できる。

以上より,実焼結機での試験(3・2節)における,PF/SF比を4/1まで上昇させた場合に生産率が低下に転じた結果は,核粒子数が不足し,P型粒子が生成し始める様な疑似粒子構造変化が起り始めた為である可能性が示唆される。微分鉱石を多配合した疑似粒子における,上述してきた様な粒子構造変化が焼結における通気性や焼結反応性に及ぼす影響は,今後さらに調査したい。

5. 結言

高速撹拌ミキサーおよびパンペレタイザーからなる複合造粒ラインを有する造粒処理プロセスにおいて,複合造粒ラインへの微粉鉱石の配合比率が造粒物構造や焼結生産性に及ぼす影響に関し,鍋試験による基礎検討ならびに実焼結機での短期試験を行い,以下の知見を得た。

(1)複合造粒ラインで全原料の20 mass%を造粒処理し,かつ全原量に占める微粉鉱石の配合量が20 mass%の場合において,複合造粒ラインにおける微粉鉱石の適正配合比率が存在し,PF/SF比率が2/1および3/1で焼結生産性が最大となり,4/1では低下に転じた。

(2)複合造粒ラインにおけるPF/SF配合比が造粒物構造に及ぼす影響として,疑似粒度別の真粒度解析の結果,PF/SF比率が3/1以上になるとP型造粒物の割合が増加し始めることが示唆された。

(3)疑似粒径によって,粒子構造が変化するPF/SF比率が異なることが示唆された。

文献
 
© 2017 The Iron and Steel Institute of Japan

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