Tetsu-to-Hagane
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Ironmaking
Effective Utilization Technique for Coal Having High Fluidity and Long Maximum Permeation Distance by Coal Size Adjustment
Yusuke Dohi Kiyoshi FukadaTetsuya YamamotoTakashi MatsuiHiroyuki SumiIzumi Shimoyama
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2018 Volume 104 Issue 10 Pages 525-534

Details
Synopsis:

In our previous paper, a new measurement method for coal thermoplasticity, “permeation distance method”, was devised. Permeation distance of thermally plastic coal into glass beads layer adjacently placed on the coal sample was measured as a unique caking property. The maximum permeation distance measured is roughly correlated with Gieseler fluidity, however large deviation is observed especially in high fluidity coals. Moreover, it was revealed that high MF coal having longer maximum permeation distance forms thinner pore-wall structures in coke and that coke strength deteriorated when the coal blend included longer maximum permeation distance coal. Therefore, technique for reducing the adverse effects of long maximum permeation distance coal on coke strength is necessary so as to utilize the coal more efficiently.

In this paper, influence of grain size mainly of high MF coal on permeation distance and coke strength were investigated for clarifying possibility of controlling permeation distance. As a result, measured maximum permeation distance became shorter with decreasing coal size. Moreover, the coke strength deterioration caused by long maximum permeation distance coal in coal blend was suppressed as the size of the long maximum permeation distance coal became smaller. Consequently, designs and control techniques of coal size were proposed for more effective utilization of long maximum permeation distance coal.

1. 諸言

従来,石炭の軟化溶融特性測定法(JIS M 88011))による粘結性指標(最高流動度 (Maximum Fluidity,MF),全膨張率(Total Dilatation,TD))は,コークス強度を制御するための石炭配合理論において,最重要の支配因子に位置づけられている2)。しかし,従来指標はコークス強度と対応しない場合もあることが指摘されてきた。前報3)において,著者らは,従来法の測定上の問題点を踏まえ,軟化溶融した試料石炭が隣接配置されたガラスビーズの充填層に浸透する距離(「浸透距離」:Permeation distance)を測定し,石炭の軟化溶融特性を評価する方法を新開発した。本評価法の特徴は,コークス炉内で起こると想定される,軟化溶融した石炭粒子が周辺の空隙に浸透する現象を,コークス炉内環境を再現しつつ評価する点である。開発指標である浸透距離の最大値(以下,最大浸透距離)は,従来の粘結性指標(MF)との間に概ね正の相関関係があるが,特に,log MFで凡そ3.0を超える高MF炭において,相関関係から大きく逸脱する場合があることが判明した。したがって,最大浸透距離は,従来の粘結性指標とは異なる軟化溶融特性を表す独自指標であることを示した。また,最大浸透距離の長い高MF炭(以下,長浸透距離炭)は,歪な形状の気孔と薄い気孔壁を有するコークスを形成するため,配合炭の構成炭として使用するとコークス強度の低下を招くことを報告した。すなわち,配合炭中の長浸透距離炭の配合割合を減らす配合設計を行うことで,コークス強度を高めることが可能となる。このように,浸透距離に基づく評価法は,特に高MF炭を評価するための粘結性の評価法として有効であり,ギーセラープラストメータ法のMFによる評価を補完し,コークス強度の予測,ひいては配合技術の高度化が期待できることを示した。

昨今,高炉の低還元材比操業が指向されており,強度の高いコークスを製造することが強く求められている。一方で,資源の有効活用の観点からは,強度低下を招く長浸透距離炭であっても,原料炭として使用できることが望ましい。すなわち,コークス強度に対する長浸透距離炭の悪影響を緩和可能な技術の開発が必要である。前報で3),長浸透距離炭の配合によるコークス強度の低下影響を,配合炭を細粒化することで緩和できる可能性を指摘した。しかし,そのメカニズムは十分に検討されていなかった。そこで本研究では,配合炭の細粒化により,長浸透距離炭がコークス強度に及ぼす悪影響が緩和するメカニズムを明らかにし,実用的に有効な石炭粒度の調整方法を明示することを研究の主目的とした。

Fig.1(a)に,長浸透距離炭の粒子が乾留中に気孔を形成する過程を模式的に示す。石炭は,昇温すると約400-500°Cで軟化溶融状態となり,熱分解ガスの発生に伴い気泡を粒子内に形成する。その際,長浸透距離炭の粒子は,周囲の空隙に過剰に浸透する。それと同時に,気泡同士の連結が起こり,歪な気孔および薄い気孔壁を形成する。これらがコークス中の欠陥として残存し,コークス強度低下の原因となると推察される。長浸透距離炭を含む配合炭の細粒化により,長浸透距離炭のコークス強度に対する悪影響が抑えられるメカニズムについて,長浸透距離炭自体が細粒化するケース1(Fig.1(b)),長浸透距離炭に該当しない石炭(以下,非長浸透距離炭),すなわち長浸透距離炭の周囲の石炭粒子が細粒化するケース2(Fig.1(c))に分けて考えた。それぞれのケースで発現しうる効果とそのメカニズムについて,Fig.2の系統図および,以下に整理して示す。

Fig. 1.

Presumed suppression mechanisms of negative effect caused by long maximum permeation distance coal on coke strength by reducing grain size of coal blend. ((a) mechanism of negative effect, (b) suppression mechanism of negative effect by reducing grain size of coal with long maximum permeation distance, (c) suppression mechanism of negative effect by reducing grain size of coal with not long maximum permeation distance)

Fig. 2.

System diagram in relation to the mechanisms of positive effects of long maximum permeation distance coal on coke strength by reducing grain size of coal.

【ケース1】長浸透距離炭の最大浸透距離が短縮,かつ長浸透距離炭が形成する欠陥領域が減少し,欠陥の生成を抑制する効果(効果①),および長浸透距離炭の均一分散による均質性の向上効果(効果②)(Fig.1(b)Fig.2)

粘結性に及ぼす粒度の影響を調査した既往の研究によると,石炭の細粒化に伴い流動性(MF)が減少する4,5)。最大浸透距離は,MFとの間に概ね正の相関が存在する粘結性のひとつの指標であるため,細粒化により減少する可能性がある。また,前報3)の考察で示した通り,浸透現象の主たる影響因子と考えられる膨張圧も細粒化により減少6)するため,最大浸透距離が減少すると推察される。加えて,長浸透距離炭の1粒子に着目すると,そのサイズの低下に伴い,浸透する物質の量が減少することで,浸透距離が短縮することも考えられる。さらには,長浸透距離炭中に形成される連結した気孔欠陥の領域も減少するため,コークス強度の低下影響が緩和されると想定される。

一方で,石炭の細粒化により,均質性が向上し,乾留後のコークス強度が向上する7,8)効果も一般的に知られている。均質性とは,材料をある一定の大きさを有する複数のブロックで仮想的に分割した際の,ブロック毎の品位バラツキの程度である。バラツキが小さいほど,その材料の均質性が高いと言える。コークスの均質性は,原料である石炭の均質性に主として依存すると考えられる。石炭は,単一の銘柄であっても,ビトリニットやイナーチニット等の特徴の異なる種々の微細組織で構成されており,不均質である。加えて,工業的にコークス製造に用いる配合炭は,品位の異なる複数の石炭銘柄の粒子を配合して構成されるため,さらに不均質である。したがって,配合炭の均質性は,仮想ブロック毎の微細組織および粒子構成に支配されると理解できる。石炭粒子を細かくすると,併せて微細組織も細かくなり,仮想ブロックに含まれる微細組織や粒子の存在数が増加する。そのため,仮想ブロックの微細組織,粒子構成は確率的に配合炭全体の微細組織,粒子構成に近づく。すなわち,何れの仮想ブロックの品位も配合炭の平均品位に揃う方向に向かう。最終的に,ブロック毎の品位バラツキが低下し,均質化される。Suginobeらは,コークス強度がRoとMFで決定することを前提として,コークス強度と装入炭の均質性および粒度構成との関係を統計的なアプローチから理論化し,配合炭のRoおよびMFの加重平均値からの偏差が大きい石炭銘柄を粉砕強化し,均一に分散することで,コークス強度が向上することを指摘している7)。長浸透距離炭は,一般的な配合炭よりもMFの高い石炭でもあることから,細粒化による均質化の効果も大きいと考えられる。

したがって,長浸透距離炭を細粒化した場合,流動性の低下影響よりも,欠陥の生成抑制(効果①)および均質化(効果②)の効果の方が大きければ,コークス強度の低下を抑えられる可能性がある。なお,効果②は存在が一般的に知られているが,効果①は従来十分には確認されていない効果である。

【ケース2】長浸透距離炭の周囲の透過係数の減少により,長浸透距離炭の浸透が抑制され,欠陥の生成を低減する効果(効果③),非長浸透距離炭に由来する欠陥生成の低減効果(効果④),および非長浸透距離炭の均一分散による均質性の向上効果(効果⑤)(Fig.1(c)Fig.2)

前報3)の実験で,試料石炭に隣接配置したガラスビーズ充填層のビーズ径を変更すると,最大浸透距離が変化することを報告した。その実験結果から,石炭の浸透挙動は浸透領域の透過係数に依存するため,石炭粒度の変更に伴う石炭充填層の透過係数の変化によって,最大浸透距離を制御しうることを考察で示した。すなわち,長浸透距離炭の周囲の非長浸透距離炭を細粒化すると,その部分の透過係数が減少する。それに伴って,長浸透距離炭の周囲への浸透が抑制されると推察される。その結果,欠陥の生成を抑制し,コークス強度の低下が緩和されると考えられる(効果③)。

加えて,非長浸透距離炭を細粒化すると,非長浸透距離炭が形成する欠陥の生成を抑制する効果(効果④),および非長浸透距離炭の均一分散による均質化効果(効果⑤)も,コークス強度の向上に寄与する可能性がある。非長浸透距離炭由来の欠陥として,例えば,軟化溶融性を示さないイナーチニット組織の周辺に形成する微細亀裂が考えられる。イナーチニットを多く含有する石炭を細かく粉砕すると,併せて微細亀裂も減少し,コークス強度が向上することが広く知られている912)。イナーチニット組織はあらゆる石炭に一般的に含まれており,非長浸透距離炭にも存在することから,効果の大小はあれど,効果④が起こりうると考えられる。さらに,非長浸透距離炭も種々の微細組織で構成されており,不均質であることから,効果⑤も起こると推察される。上記効果のうち,効果④および⑤の存在は従来より既知であるが,効果③はあまり検討されていない効果である。

本研究では,上記考察を踏まえて種々の試験を実施し,細粒化により長浸透距離炭のコークス強度の低下影響が抑制される効果の明確化,整理,およびメカニズムの解明を試みた。さらに,最大浸透距離を制御し,長浸透距離炭を有効利用するための,粒度調整方法を検討した。

2. 基礎検討

2・1 実験

本研究では,全部で4種類のラボ試験を実施した(Test1-4)。Test1では石炭粒度が最大浸透距離に及ぼす影響を調査した。Test2-4では,主に長浸透距離炭を含む粘結性の高い石炭を配合した配合炭の粒度を種々の条件で変更し,コークス強度に及ぼす影響を調査した。各試験に使用した単味の石炭銘柄の性状値をTable 1に示す。サンプル名の後の数字はロットの違いを表している。ビトリニットの平均反射率(Ro),総イナート量(Total Inert,TI)13),最高流動度(MF)および工業分析値は,それぞれJIS M 881614),M 88011)およびM 881215)に準拠して測定した。さらに,最大浸透距離の測定は,前報の方法3)を踏襲し,2 mm以下100 wt%に粉砕した2.5 gの気乾石炭を試料とし,標準測定条件(ガラスビーズ粒径:2.0 mm,重り荷重:1.6 kgf)で,ガラスビーズの重量から計算して測定する方法で実施した。

Table 1. Single coal properties and measurement results.
Test No. Coal brand Ro*1
(%)
log MF*2
(log ddpm)
TI*3
(%)
Ash
(wt% d.b.)
VM*4
(wt% d.b.)
Maximum permeation distance (mm)
Test1 CoalA1 0.79 3.96 13.5 7.9 37.2 21.3
CoalB1 0.63 4.36 20.6 7.6 41.5 10.6
CoalC1 0.90 3.39 14.9 7.3 34.5 20.0
CoalD1 0.99 2.84 35.0 8.7 29.1 6.8
Test2 CoalE1 0.71 4.78 8.0 0.4 43.6 32.4
CoalF1 0.72 4.09 14.3 9.5 40.1 14.9
CoalG1 0.90 3.48 29.3 8.2 31.1 11.5
CoalH1 0.96 2.67 34.9 9.5 28.0 7.5
CoalD2 1.00 2.61 34.9 8.4 27.8 6.3
CoalI1 1.11 3.04 31.1 8.8 24.5 9.7
CoalJ1 1.37 1.04 44.3 7.2 19.3 0.9
Test3 CoalA2 0.80 3.17 14.5 10.0 35.9 20.8
CoalB2 0.66 3.55 18.3 5.4 44.0 8.2
CoalD3 1.02 2.48 33.9 8.1 27.7 6.3
CoalJ2 1.31 1.26 45.6 7.2 20.4 0.9
CoalK1 1.60 0.70 20.1 9.2 17.6 3.0
CoalL1 1.14 1.77 35.0 9.2 24.2 4.9
CoalM1 1.00 2.20 33.3 11.6 27.7 4.6
CoalN1 0.67 1.00 23.0 10.7 36.6 0.0
CoalO1 1.38 2.49 29.4 10.9 20.9 8.7
Test4 CoalC2 0.87 3.63 17.2 7.6 34.5 18.7
CoalH2 0.93 2.82 27.7 9.0 28.6 11.7
CoalP2 1.00 2.29 38.6 9.6 26.3 2.2
CoalJ3 1.29 1.11 33.6 7.6 20.1 0.9
CoalQ1 1.51 1.85 29.1 10.2 19.1 7.0

*1 Mean maximum reflectance of vitrinite in oil *2 Maximum Fluidity *3 Total Inert *4 Volatile Matter

Test1では,石炭粒度と浸透距離の関係を明らかにするため,石炭の粒度を変更して浸透距離の測定を行った。石炭粒度を0.25,1.0,2.0 mm以下100 wt%に変更した石炭A1,B1,C1,D1を試料とし,石炭粒度以外の条件を前報3)の標準測定条件に揃えて,最大浸透距離を測定した。

Test2では,長浸透距離炭を含む配合炭および含まない配合炭全体の粒度を変更した場合の,コークス強度の変化を調査した。この試験では細粒化に伴い,長浸透距離炭を含む配合炭の場合,上述の効果①−⑤の全てが,含まない配合炭の場合,効果④,⑤が起こる可能性がある。試験に供した配合炭の配合割合および性状値をTable 2に示す。Test2では,石炭E1を長浸透距離炭として選定し,石炭E1の配合割合を0 wt%(Blend1,2),10 wt%(Blend3,4)と変更しつつ,配合炭全体の粒度を3.0,6.0 mm以下100 wt%に調製した水準を設定した。配合炭の加重平均のRo,log MFは一定とした。調製した配合炭をTable 3の乾留条件で乾留し,窒素雰囲気で消火した。冷却後,得られたコークスのドラム強度をJIS K 215116)に従って測定した。

Table 2. Coal blending and size conditions (Test2).
Coal brand Blending ratio (wt%)
Blend1 Blend2 Blend3 Blend4
CoalE1 0.0 0.0 10.0 10.0
CoalF1 15.0 15.0 5.0 5.0
CoalG1 15.0 15.0 15.0 15.0
CoalH1 20.0 20.0 20.0 20.0
CoalD2 25.0 25.0 25.0 25.0
CoalI1 10.0 10.0 6.0 6.0
CoalJ1 15.0 15.0 19.0 19.0
Ro (%) 1.00 1.00 1.01 1.01
log MF
(log ddpm)
2.8 2.8 2.8 2.8
Coal size Each coal:
–3 mm
100 wt%
Each coal:
–6 mm
100 wt%
Each coal:
–3 mm
100 wt%
Each coal:
–6 mm
100 wt%
Table 3. Carbonization test conditions (Test2-4).
Test2, 3 Test4
Moisture content (wt%) 8 8
Bulk density (kg-dry/m3) 750 775
Dimensions of test coke oven (mm) W270 × H220 × L263 W273 × H300 × L260
Wall temperature (°C) 1050 1150
Coking time (min) 360 360

Test3では,配合炭中に含まれる最大浸透距離の異なる高MF炭のみの粒度を変更し,コークス強度に及ぼす影響を調査した。この試験では,高MF炭の細粒化につれて,高MF炭が長浸透距離炭の場合には上述の効果①,②が,高MF炭が非長浸透距離炭の場合には効果④,⑤が起こる可能性がある。試験に使用した石炭,その配合割合および配合炭の性状値をTable 4に示す。Test3では,石炭A2を長浸透距離・高MF炭として,B2を非長浸透距離・高MF炭として選定し,配合炭全体に対してそれぞれの高MF炭を20 wt%配合した。Blend5-7およびBlend8-10はそれぞれ同一の配合であり,石炭A2およびB2の粒度を1.0,3.0,6.0 mm以下100 wt%,それ以外の石炭は3 mm以下100 wt%に調製した。配合炭を,Table 3の乾留条件で乾留し,消火・冷却後,得られたコークスの強度を測定した。

Table 4. Coal blending and size conditions (Test3).
Coal brand Blending ratio (wt%)
Blend5 Blend6 Blend7 Blend8 Blend9 Blend10
CoalA2 20.0 20.0 20.0 0.0 0.0 0.0
CoalB2 0.0 0.0 0.0 20.0 20.0 20.0
CoalD3 20.0 20.0 20.0 19.0 19.0 19.0
CoalJ2 7.0 7.0 7.0 11.0 11.0 11.0
CoalK1 0.0 0.0 0.0 4.0 4.0 4.0
CoalL1 11.0 11.0 11.0 11.0 11.0 11.0
CoalM1 20.0 20.0 20.0 13.0 13.0 13.0
CoalN1 13.0 13.0 13.0 14.0 14.0 14.0
CoalO1 9.0 9.0 9.0 8.0 8.0 8.0
Ro (%) 0.99 0.99 0.99 0.99 0.99 0.99
log MF
(log ddpm)
2.2 2.2 2.2 2.2 2.2 2.2
Coal size CoalA2: –6 mm
100 wt%
Others: –3 mm
100 wt%
CoalA2: –3 mm
100 wt%
Others: –3 mm
100 wt%
CoalA2: –1 mm
100 wt%
Others: –3 mm
100 wt%
CoalB2: –6 mm
100 wt%
Others: –3 mm
100 wt%
CoalB2: –3 mm
100 wt%
Others: –3 mm
100 wt%
CoalB2: –1 mm
100 wt%
Others: –3 mm
100 wt%

Test4では,配合炭全体の粒度は固定し,長浸透距離炭の粒度がコークス強度に及ぼす影響を調査した。この試験では,長浸透距離炭の粒度を細粒化する変更を行いつつ,相対的に配合炭の加重平均品位に近い非長浸透距離炭の粒度を粗く変更する操作を行った。そのため,長浸透距離炭の粒径を細かくすると,上述の効果①,②が起こる代わりに,③,④,⑤の逆効果が起こる。逆に,長浸透距離炭の粒径を粗くすると,①,②の逆効果が起こる一方で,効果③,④,⑤が起こる可能性がある。加えて,Suginobeらの均質化の理論7)より,相対的に配合炭の加重平均品位に近い石炭の細粒化による均質化効果は比較的小さい,換言すれば,粒度変更に伴う均質性の変化は比較的小さいと考えられるため,効果⑤は相対的に小さいと想定している。試験に使用した石炭,その配合割合および配合炭の性状値をTable 5に示す。Test4では,石炭C2を長浸透距離炭として選定し,配合炭全体に対して10 wt%配合した。Test4で使用した何れの水準の配合炭(Blend11-13)も,使用銘柄およびその配合割合は同一である。Blend11がBase条件であり,全ての銘柄を3 mm以下70 wt%に調製した。Blend12,13は,長浸透距離炭C2の粒度を3 mm以下90,45 wt%に調整する一方で,全体の粒度をBase条件と揃える目的で,配合炭の平均品位に相対的に近い非長浸透距離炭H2の粒度を3 mm以下67,74 wt%に調整し,それ以外の銘柄は3 mm以下70 wt%に調製した。この調製により,Blend11-13の全体の粒度をBase条件とほぼ同等の3 mm以下70 wt%とした。得られた配合炭を,Table 3の乾留条件で乾留し,消火・冷却後,コークスの強度を測定した。

Table 5. Coal blending and size conditions (Test4).
Coal brand Blending ratio (wt%)
Blend11 Blend12 Blend13
CoalC2 10.0 10.0 10.0
CoalH2 60.0 60.0 60.0
CoalP2 10.0 10.0 10.0
CoalJ3 10.0 10.0 10.0
CoalQ1 10.0 10.0 10.0
Ro (%) 1.02 1.02 1.02
log MF
(log ddpm)
2.6 2.6 2.6
Coal size Each coal:
–3 mm
70 wt%
CoalC2: –3 mm
90 wt%
CoalH2: –3 mm
67 wt%
Others: –3 mm
70 wt%
CoalC2: –3 mm
45 wt%
CoalH2: –3 mm
74 wt%
Others: –3 mm
70 wt%

Test4で製造したコークスの気孔構造の定量化を画像処理ソフト(日本ローパー:Image-Pro PlusTM version7.0)を用いて,下記の手順で実施した。まず,コークスを各水準につき2個サンプリングし,樹脂埋め・研磨後,倍率50倍の光学顕微鏡(OLYMPUS製:BX51M)で写真撮影(60枚)した。全ての撮影画像(2000×1500 µm)をRGBの所定の閾値に基づいて2値化処理し,コークス基質と気孔に分類した。その後,気孔壁厚みおよび気孔部分の径,円形度を,それぞれ以下の画像処理方法で求めた。気孔壁厚みは,前報3,17)同様,撮影画像上に平行な測定ライン(幅5 µm)を100 µm間隔で設け,ライン上に位置する全てのコークス基質に対して測定ラインに平行および垂直な辺を有する外接四角形で囲み,この外接四角形の測定ラインに平行な辺の長さを求めた。全解析領域で測定した前記長さの平均値を,気孔壁厚みとして算出した。気孔径は,個々の気孔に対して,外周の2点を結びかつ重心を通る径を2度刻みに測定した平均値を測定値とした。気孔の円形度は,下記(1)式で示される。

  
R = 4 π S / P e (1)

ここで,Rは円形度(−),Sは気孔面積(mm2),Peは気孔周囲長(mm)である。円形度は0から1の範囲を取り,1に近づくほど形状が真円に近づく。円形度が低い気孔は鋭い形状を有する。外力が作用した際,鋭い形状の部分には応力が集中し,破壊の起点となるため,円形度が低い気孔はコークス強度を低下させることが知られている1820)。Kubotaらは,主に表面破壊に起因するコークス強度の指標であるDI1506と気孔構造の関係を定量的に調査した結果,DI1506と円形度の低い気孔の総面積との間に良好な相関関係が成立することを示し,円形度が0.2以下の気孔をコークス中の連結気孔欠陥として抽出することが適当であると報告している18)。本報でも,連結気孔を円形度0.2以下の低円形度気孔と定義して,全解析領域に占める低円形度気孔の面積を測定し,コークス強度指標DI1506との関係を調べた。

2・2 結果と考察

Test1の結果として,石炭の粒度と最大浸透距離の関係をFig.3に示す。何れの石炭の最大浸透距離も,細粒化に伴い減少する傾向を示した。この結果は,前報3)の考察からの予想と一致する。すなわち,石炭の粒度の変更によって,最大浸透距離の制御が可能であることが示された。また,効果①の中の,細粒化により長浸透距離炭の浸透距離が短縮し,長浸透距離炭由来の欠陥生成が抑制されるメカニズムが起こりうることが推察された。

Fig. 3.

Influence of coal size on maximum permeation distance. (Test1)

Fig.4に,Test2の乾留試験で得たコークスについて,配合炭全体の粒度とドラム強度の関係を,長浸透距離炭E1の配合割合で層別して示す。同一粒度水準で比較した場合,配合炭のRo,log MFはほぼ等しいにも関わらず,長浸透距離炭E1を10 wt%配合した配合炭のコークス強度が,E1を含まない配合炭よりも低いことを確認した。同一の配合条件で比較(Blend1と2,Blend3と4)すると,配合炭の粒度が細かい水準でコークス強度が高位となった。また,細粒化に伴う強度の向上幅は,長浸透距離炭E1を配合したBlend3,4の方が,長浸透距離炭E1を配合していないBlend1,2に比べて大きかった。細粒化によりBlend1,2は,非長浸透距離炭の効果④,⑤が起こるのに対し,Blend3,4は効果④,⑤に加えて長浸透距離炭に対する効果①,②,③が起こりうる。したがって,長浸透距離炭の有無によって配合炭全体の細粒化がコークス強度に与える影響の度合いが変わり,効果①+②+③が効果④+⑤よりも相対的に大きい可能性が示唆される。

Fig. 4.

Relationship between grain size of coal blend including or excluding CoalE1 and coke strength. (Test2, CoalE1: Long maximum permeation distance coal)

Fig.5に,Test3の乾留試験で得たコークスについて,長浸透距離・高MF炭A2または非長浸透距離・高MF炭B2の粒度とドラム強度の関係を示す。高MF炭(石炭A2,B2)の粒度が同じ条件において,長浸透距離炭A2を配合したBlend5-7の方が非長浸透距離炭B2を配合したBlend8-10に比べて強度が低く,高MF炭の粒度が細かいほど配合炭間の強度差が縮小した。また,Blend5-7またはBlend8-10は,それぞれ配合構成は同じだが,A2またはB2を細かくするほど強度が向上し,その向上幅は,長浸透距離炭A2を配合したBlend5-7の方が,非長浸透距離炭B2を配合したBlend8-10に比べて大きかった。本試験においては,高MF炭の細粒化により,長浸透距離炭A2を配合したBlend5-7は,効果①,②が起こるのに対し,非長浸透距離炭B2を配合したBlend8-10は効果④,⑤が起こりうる。したがって,長浸透距離炭の細粒化の効果①+②が,非長浸透距離炭の細粒化の効果④+⑤に比較して大きいと考えられる(効果①+②>効果④+⑤)。

Fig. 5.

Relationship between grain size of CoalA2 or B2 in coal blend and coke strength. (Test3, CoalA2: Long maximum permeation distance coal, CoalB2: Not long maximum permeation distance coal)

次に,Test3のそれぞれの効果の有無の確認および大小関係の整理を試みた。Suginobeらの粉砕による均質化の考え方7)に基づくと,配合炭のRo,MFの加重平均値からの偏差が大きい石炭ほど,細粒化による均質化の効果が大きい。本試験で使用した配合炭Blend5-10の品位は全てRo=0.99(%),logMF=2.2(log ddpm)であり,粒度を変更した長浸透距離炭A2の品位はRo=0.80(%),logMF=3.17(log ddpm),非長浸透距離炭B2の品位はRo=0.66(%),logMF=3.55(log ddpm)である。すなわち,非長浸透距離炭B2の方が,配合炭の加重平均の品位からの偏差が大きいため,細粒化による均質化の効果が大きいと想定される(効果②<効果⑤)。実際には,効果①+②>効果④+⑤であることから,長浸透距離炭を細粒化した際に,長浸透距離炭の均質化の効果②のみならず長浸透距離炭の欠陥生成の抑制効果①が少なからず存在することが示唆される。さらに,効果①と効果②の大小の比較を考察する。Blend8-10で,非長浸透距離炭B2の細粒化による強度向上効果のうち,均質化に伴う効果⑤の大きさは,最大に見積もってもFig.5に示すBlend8-10のプロットの回帰直線の傾き(効果④+⑤のうち,効果④が0の場合)と考えられる。また,先に述べたとおり,本試験の場合,効果②<効果⑤であることから,Blend5-7において,長浸透距離炭A2の細粒化に伴う均質化の効果②は,最大でもBlend8-10のプロットの回帰直線の傾きである。すなわち,長浸透距離炭A2の粒度が最も粗いBlend5を起点に考えた場合,Blend8-10のプロットの回帰直線の傾きを持った直線上(Fig.5に破線で図示)の変化が,長浸透距離炭A2の効果②の最大限の影響度と言える。逆に言うと,長浸透距離炭A2の細粒化に伴う強度向上効果(Fig.5のBlend5-7のプロットの回帰直線。効果①+②)と前記破線(効果②の最大限)の差が,長浸透距離炭A2を細粒化した際の欠陥抑制の効果①の最小限と考えられる。したがって,想定される最小限の効果①と最大限の効果②を比較しても,効果①の方が大きいことが理解される。

Fig.6に,Test4で得られたBlend11-13中に含まれる長浸透距離炭C2の粒度とドラム強度の関係を示す。配合構成および配合炭全体の粒度は同一にも関わらず,長浸透距離炭C2を細かくするほど強度が向上する傾向を確認した。より詳細には,Blend13→Blend11→Blend12の変化をみると,長浸透距離炭C2の細粒化による効果①+②が得られる反面,非長浸透距離炭H2の粗粒化により,③+④+⑤の逆効果が同時に起こっていると想定されるが,実際には強度が向上する方向に変化している。したがって,効果①+②の強度向上効果が③+④+⑤の逆効果を凌駕して大きいと言える。すなわち,Fig1.(c)のように,長浸透距離炭の周囲の石炭粒子を細粒化して,長浸透距離炭の浸透を短縮し,欠陥の生成を抑制する効果③は,効果①+②に比べて限定的である。Blend12,13の気孔構造を撮影した結果をFig.7に,Blend11-13の気孔径分布をFig.8に,石炭C2の粒度とコークスの気孔壁厚み,低円形度気孔面積との関係をFig.9に示す。Fig.7が示すように,長浸透距離炭C2を細かくしたBlend12の方が,石炭C2を粗くしたBlend13に比べて気孔壁が厚く,歪な形状の気孔も少ない傾向が観察された。また,Fig.89の画像処理結果が示す通り,長浸透距離炭C2の細粒化により,気孔径分布に顕著な差は見られないものの,気孔壁が厚くなり,低円形度の気孔の面積も減少することが確かめられた。これら気孔構造解析の結果からも,長浸透距離炭C2を細粒化した際,長浸透距離炭由来の欠陥の生成が抑制される効果①が,コークス強度向上の一つの要因と判断される。

Fig. 6.

Relationship between grain size of CoalC2 and coke strength. (Test4, CoalC2: Long maximum permeation distance coal)

Fig. 7.

Optical microscope images of coke structure. (Test4, (a) Blend12, (b) Blend13)

Fig. 8.

Cumulative frequency distribution of mean pore diameter. (Test4)

Fig. 9.

Effect of grain size of CoalC2 on pore-wall thickness and area of low roundness pores. (Test4, CoalC2: Long maximum permeation distance coal)

以上の実験結果および考察より,長浸透距離炭を含む配合炭の場合,Fig.1(b)に示すように,長浸透距離炭自体を細粒化することで,従来十分には確認されていなかった長浸透距離炭由来の欠陥の生成を抑制する効果(効果①)と既知の均質化効果(効果②)が起こり,長浸透距離炭によるコークス強度に対する悪影響を抑制できることが明らかになった。特に,効果②よりも効果①の方が相対的に大きいことが示された。すなわち,長浸透距離炭を配合炭として使用しつつコークス強度を維持するためには,長浸透距離炭自体を細粒化することが効果的である。長浸透距離炭を含む配合炭全体を細粒化した場合も,長浸透距離炭が併せて細粒化されるため,同様の効果①,②が起こり,長浸透距離炭の悪影響の主たる抑制効果として働くと考えられる。

3. 実機検証

3・1 実機データ解析

細粒化が長浸透距離炭のコークス強度低下を抑制する効果を実炉スケールで検証するために,福山3コークス炉(窯数:104窯,W0.43×H6.5×L15.4 m)の操業データの解析を実施した。当工場では,石炭を配合槽にて配合後,粉砕機で粉砕し,配合炭を調製している。また,配合炭の粒度は,配合炭全体の3 mm以下の粒子の重量割合(−3 mm)を管理指標として,目標値となるように粉砕管理を行っている。解析対象のデータは,2010年11月から2013年9月までの,CDQ処理後コークスのドラム強度とした。最大浸透距離および粒度以外の影響を排除する目的で,配合炭の品位(Ro:1.00-1.05%,log MF:2.3-2.7 log ddpm)および乾留条件(総炭化時間:18-21 h)の範囲に解析対象のデータを絞り込み,配合炭の加重平均の最大浸透距離および粒度がドラム強度に及ぼす影響を解析した。解析データの層別条件および基本統計情報はTable 6に示すとおりである。

Table 6. Stratification factors and basic statistics data in operation analysis.
Stratification factors Basic statistics
Weighted averaged maximum permeation distance –3 mm Number of data
(–)
Mean value of weighted averaged maximum permeation distance (mm) Mean value of –3 mm
(wt%)
< 6.5 mm < 75 wt% 45 5.8 72.5
< 6.5 mm 75 wt% ≦ 26 5.7 78.0
9.0 mm ≦ < 75 wt% 19 9.5 73.1
9.0 mm ≦ 75 wt% ≦ 34 9.8 77.7

3・2 結果と考察

最大浸透距離,粒度の条件で分類したドラム強度をFig.10に示す。同じ粒度条件のデータで,最大浸透距離が長い(9.0 mm以上)配合炭と短い(6.5 mm未満)配合炭を比較すると,何れの粒度においても,最大浸透距離が長い配合炭のドラム強度が低かった。両側95%の信頼区間を用いた2水準間のt検定の結果,粒度−3 mm<75 wt%の場合,このドラム強度差は統計的に有意であった。各々同じ最大浸透距離の条件のデータで粒度とドラム強度の関係を比べると,−3 mm≧75 wt%と細粒側の場合にドラム強度が高かった。それぞれ同一の最大浸透距離の条件において,粒度が異なるグループ間のドラム強度の差は,統計的に有意であった。特に,最大浸透距離が長い配合炭は,細粒側のコークス強度が粗粒側に比べて顕著に高位となった。したがって,実操業においてもラボの試験結果と同様の傾向が見られた。すなわち,最大浸透距離がコークス強度に及ぼす影響度が粒度によって変化し,最大浸透距離が長い配合炭であっても,細粒の場合にはコークス強度の低下が緩和されることが確認された。以上より,長浸透距離炭の配合により,配合炭の加重平均の最大浸透距離が長くなり,ドラム強度が低下する場合であっても,配合炭全体の粒度を細かくすることでコークス強度の低下を抑止可能であると結論した。

Fig. 10.

Relationship among weighted averaged maximum permeation distance, coal size (–3 mm) and drum index at actual plant.

4. 長浸透距離炭の有効活用方法

上述の試験結果および考察を踏まえ,長浸透距離炭を有効に使用可能とする粒度調整の実用化方法をまとめると,Table 7および以下の通りである。

Table 7. Options of coal size adjustment at actual coke plant for effective utilization of long maximum permeation distance coal.
Crushing pattern (1) Overall crushing (2) Selective crushing
Grain size Long maximum permeation distance coal ·Finer ·Finer
Other coal ·Finer ·Constant or partly lager
Advantages ·Additional crushing equipment is not necessary ·Maintaining size of total coal blend
Disadvantages ·Decreasing of coal amount charged into oven chamber
·Increasing of dust generation
·Increasing of carbon deposit in oven chamber
·Additional crushing equipment is necessary

(1)配合炭全体を細粒化する方法

Test2や操業データ解析の例のように,配合炭全体を細粒化する方法は,何れのコークス工場にも標準的に具備されている粉砕,粒度調整ラインを使用し,目標の粉砕粒度を細粒側に設定すれば良く,実施するうえで特別な設備を必要としない。但し,配合炭中の細粒が増加すると,発塵の増加による環境問題21),炉上カーボンの成長促進による操業トラブルの増加22)などの悪影響が懸念される。そのため,悪影響の程度を見極めつつ,適切な範囲に全体の粒度を設定することで,適用が可能な方法である。

(2)長浸透距離炭を単体で細粒化する方法

Test3,4のように長浸透距離炭を単体で細粒化する方法は,コークス工場内で実施する場合,石炭を銘柄別に粉砕できる特別なラインが必要である。しかし,長浸透距離炭の粉砕のみを強化する,あるいは長浸透距離炭を細粒化する代わりに別の石炭銘柄の粉砕を緩和することで,配合炭全体の細粒化を最小限にでき,上述のような細粒増加による悪影響を抑制可能となる。一部の石炭銘柄の粒度を粗くする場合,その銘柄を適切に選定することが重要となる。Test4では,長浸透距離炭(CoalC2)を細粒化する代わりに比較的中間の品位である非長浸透距離炭(CoalH2)を粗粒化し,配合炭全体の粒度を維持しつつ,コークス強度を高めることが出来ることを示した。前述のとおり,平均品位に近い石炭銘柄の粉砕を緩和することで,均質性悪化の影響を極小化できると推察される。一方で,細粒化操作には欠陥生成の抑制効果も存在するが,その効果に関して,銘柄毎の体系的な整理,あるいは均質化効果と切り分けた整理を試みた例は限られており,未解明の部分も多く残されている。つまり現状,総合的に考えて,配合炭を構成する銘柄毎の粉砕粒度をどのように最適化するべきかが明らかでない。したがって,理想的には,細粒化および粗粒化がコークス強度に及ぼす影響を炭種銘柄毎および配合条件毎に整理,序列化したうえで,粒度を細かくする,または粗くする銘柄を選定することが望ましいが,今後の検討課題である。コークス工場内に銘柄別の粉砕ラインを導入することが困難な場合,コークス工場への入荷前に,すなわち山元等で,長浸透距離炭を予め細粒に調製する方法も考えられる。それによって,コークス工場においては配合炭全体の粒度を通常通りに管理すれば,長浸透距離炭の粒度を相対的に細かくできるため,長浸透距離炭のコークス強度の低下影響が抑制できると推察される。

以上の通り,コークス強度の低下を招く長浸透距離炭であっても,種々の粒度調整方法によって細粒化することで,コークス強度の低下を抑制可能であることを明らかにした。本知見が,長浸透距離炭の有効活用および,長浸透距離炭の使用を前提とした場合の高強度コークスの製造に貢献することが期待される。

5. 結論

コークス強度の低下を引き起こす最大浸透距離の長い石炭(長浸透距離炭)の有効利用技術の開発を目指し,長浸透距離炭の粒度が最大浸透距離およびコークス強度に及ぼす影響を調査し,以下の知見を得た。

(1)石炭の粒度は最大浸透距離の制御支配因子であり,細粒化により,最大浸透距離が減少する傾向を確認した。

(2)配合炭中に長浸透距離炭が含まれる場合,長浸透距離炭を単独で,または長浸透距離炭を含めて配合炭全体を細粒化することで,コークス強度が向上した。長浸透距離炭を細粒化すると,最大浸透距離の減少,欠陥を形成する領域である長浸透距離炭粒子の縮小により,欠陥の生成が抑制され,かつ長浸透距離炭自身の均一分散に伴う均質化効果で,長浸透距離炭のコークス強度に対する低下影響が緩和されることが明らかになった。

(3)実操業においても,長浸透距離炭を含む配合炭を細粒化した場合に,長浸透距離炭を使用しつつ,コークス強度を維持できることを示した。

(4)実験および操業解析の事実に基づいて考察を行い,長浸透距離炭を利用するうえで,実用的に有効な粒度調整の方法を提案した。

文献
 
© 2018 The Iron and Steel Institute of Japan

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https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
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