2018 Volume 104 Issue 2 Pages 107-116
The problems on the alkali dissolution from steelmaking slag sometime occurred in the location of slag recycling. It is important to clarify the alkali dissolution mechanism and develop the method to inhibit an alkali dissolution. There might be many approaches for decreasing the alkali dissolution, the decrease of basicity (CaO/SiO2) is best and easy way for complete melting and inhibition of the alkali dissolution.
In this study, dephosphorization slag was modified by addition of reagent, fly ash (FA) and brown bottle (BB). Basicity was changed from 2.0 to 0.53. Dissolution experiments were carried out according to the condition developed by Kitamura, et al. based on JIS method.
Ca content in dissolution experiment, which analyzed by ICP, was highest compare to Al, Si, Mg, Fe and P. It was found that the relationship between the content of Ca dissolved and modified basicity (C/(S+F)=CaO/(SiO2+FeOx)) showed good correlation.
On the other hand, the pH value was excellent correlation with the content of Ca, although the value of pH saturated around 11 over 20 ppm of Ca. Then, using the relationship of ion product, Kw=[H+][OH–], the equation between Ca and [OH-] was derived. Finally, the following equation successfully calculates the calcium content [Ca2+] ppm dissolved using pH value.
[Ca2+] = 3.0 × 10(pH–10)
鉄鋼製造過程において副産物として発生する鉄鋼スラグは,高炉スラグ(Blast furnace slag, BF slag)と製鋼スラグ(Steelmaking slag)の二つに大別される。
高炉スラグは高炉プロセスにおいて発生するものである。高炉スラグは冷却方法により徐冷スラグと水砕スラグに大別され,平成27年度における生産量は年間約2400万トン,主な用途としてはセメント原料,路盤材,コンクリート骨材が挙げられる1)。70%以上がセメント原料として用いられているが,これは主に水砕スラグがその強い潜在水硬性により長期にわたり高い強度を保つ高炉セメントの原料として使われることによるものである。また,最終処分としての埋立への使用は無く,ほぼ100%有効利用されている。
また,高炉スラグの有効利用を念頭においた,TTT線図およびCCT線図の作成は,Kashiwayaら2)が報告しており,各種スラグの有効利用において結晶化現象の把握と制御が重要であることを示した。また,脱燐スラグ,脱硫スラグの結晶化についても同様の手法を用いた研究がなされている3–5)。
一方,製鋼過程で発生する製鋼スラグには,転炉スラグ(LD slag)と電気炉スラグ(EAF slag)に大別され,転炉スラグは,脱炭スラグ(Decarburization slag),脱リンスラグ(Dephosphorization slag, DeP slag)および脱ケイスラグ(Desiliconization slag)などに分類される。平成27年度における生産量は年間約1420万トンで,主な用途としては路盤材,土木工事用材料,自社での再使用となっており90%以上が再利用されているが,最終処分として埋立に使われるものに加えて,外販されず主に焼結鉱製造プロセスで再使用されているものも21.6%と比較的大きいというのが現状である1)。
近年では,製鋼スラグの新たな利用価値についての可能性も多く研究されており6),高い水硬性をもつことから地質改良材としてや,鉄イオンを多く含むことから藻場造成用として,また浚渫土との混合による海域の環境修復用などとしても活用が期待されている。さらには排出された製鋼スラグに含まれるリンを分離回収し,資源化するといった研究もなされている6,7)。
しかしながら,製鋼スラグは融点が高く完全溶融していないため,本来不安定であり,特定の成分が大量に溶出し,環境問題を引き起こす可能性がある。その中でも,未溶解のアルカリ成分が存在し,地下水や周辺水のpH上昇を引き起こすアルカリ溶出という問題を起こすリスクを有している。そのため,工事現場などに使用された盛り土からスラグによる高いアルカリ性が示されたという事例も稀に発生し社会問題となっている8)。
したがって,製鋼スラグに含まれる不安定成分の安定化が求められており,これまでにも多くの研究機関によって精力的に研究が行われている9,10)。その中の一つの解決方法としては,製鋼スラグを完全溶融させることが挙げられる。しかし,そのためには余分なエネルギーを投入しなければならず,経済的な視点からは敬遠される傾向にあり,実操業での実現は難しいのが現状である。しかしながら,成分調整で得られるスラグに付加価値が付けられれば,ある程度の処理費用も問題にはならず,さらに多くの需要が見込まれる条件が整えば,積極的に製鋼スラグを改質していく状況が生まれてくるものと考えられる。
そこで本研究では,製鋼スラグのうち脱リンスラグに着目して,排出された脱リンスラグの成分調整を行い,低融点スラグを作成した。そして溶出実験を行うことでこの低融点スラグのアルカリ溶出挙動を調査し,その溶出抑制効果を評価した。さらに,成分調整に対しては,各種廃棄物の有効利用を考え,石炭灰(Fly Ash)やガラスびんの利用について検討した。
(1)共試料
実験に用いた脱リンスラグ(以後DeP slagと表記)の化学組成と塩基度(C/S)をTable 1に示した。その組成をCaO-SiO2-MgO-5mass%Al2O3擬四元系状態図11)上にプロットしFig.1に示す。DeP slagは,塩基度2.67で,free-lime(f-CaO)が5.5%存在する。この値は,保存状態によって徐々に増加する可能性があり,実験に用いた時点では,ある程度変化している可能性がある。Fig.1における,DeP slagの位置は,融点が約1900°Cで,lime(CaO),tricalcium silicate(3CaO・SiO2),dicalcium silicate(2CaO・SiO2)の初晶領域の間に位置する。実際にはFeOx等他の成分の存在により融点は下がるがそれでも完全溶融は難しい。
CaO | f-CaO | SiO2 | Al2O3 | MgO | MnO | P2O5 | T-Fe | C/S |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
45.82 | 5.50 | 17.17 | 5.52 | 4.2 | 3.84 | 4.23 | 14.35 | 2.67 |
Pseudo-quaternary phase diagram of CaO-SiO2-MgO-5%Al2O3 system.11)
また,比較用として,BF slagを用い,その化学組成をTable 2に示した。これは実際のBF slagを試験的に乾式冷却したもので,塩基度は,1.28で,Al2O3が約14%,MgOが約6%である。
CaO | SiO2 | Al2O3 | MgO | Fe2O3 | MnO | P2O5 | C/S |
---|---|---|---|---|---|---|---|
44.0 | 34.3 | 14.2 | 6.1 | 0.35 | 0.31 | < 0.02 | 1.28 |
成分調整用の試薬は,CaCO3,SiO2,Al2O3およびMgOを用いた(特級)。さらに,実際のプロセスを念頭に成分調整用の添加物として,石炭灰(FA:Fly ash)と茶色の瓶(BB:Brown Bottle)を用いた。これらの化学組成を,それぞれTable 3およびTable 4に示した。XRDでの解析結果から,FAの鉱物相は,SiO2とMullite(2SiO2・3Al2O3)で構成されており,BBは,完全なアモルファス相であった。
CaO | SiO2 | Al2O3 | MgO | FeO | Fe2O3 |
---|---|---|---|---|---|
1.80 | 71.2 | 23.4 | 0.88 | 0.94 | 1.72 |
CaO | SiO2 | Al2O3 | MgO | Na2O | K2O | Fe2O3 | SO3 | TiO2 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
10.6 | 71.4 | 2.4 | 0.47 | 13.4 | 1.1 | 0.25 | 0.066 | 0.059 |
(2)成分調整による目的組成の決定
Fig.1で5mass%Al2O3の擬四元系状態図11)を示したが,これを15mass%Al2O3まで増加させると,融点は1300°Cまで低下する(Fig.211))。本研究では,成分調整後の目的組成として,Fig.2におけるSlag1~Slag4の位置を採用した。それらの化学組成を,Table 5に示す。Slag1は,高炉スラグに近い組成で,Merwinite(Ca3Mg(SiO4)2)の位置にある。融点は約1450°Cである。Slag2~Slag4は,PyroxeneとAnorthiteの境界に位置する組成で,融点は約1300°Cの領域に存在する。また,Slag2からSlag4へと塩基度(C/S)は0.68から0.27へと低下し,Slag4が最も低い。これらの組成は,DeP slagに対して主にSiO2とAl2O3を混合するものであり,石炭灰(FA)を混合することを目的としている。本研究では,Slag2の目的組成に対して,試薬(Reag.:Reagent)と石炭灰(FA)をDeP slagに混合し,それぞれSlag2-ReおよびSlag2-FAとし,化学組成をTable 6に示した。
Aimed chemical compositions of the slags adjusted by addition of reagents and wastes.11)
CaO | SiO2 | Al2O3 | MgO | C/S | |
---|---|---|---|---|---|
slag1 | 40.9 | 31.8 | 15.0 | 12.3 | 1.29 |
slag2 | 31.2 | 46.1 | 15.0 | 7.7 | 0.68 |
slag3 | 22.6 | 53.9 | 15.0 | 8.5 | 0.42 |
slag4 | 17.1 | 62.2 | 15.0 | 5.7 | 0.27 |
CaO | SiO2 | Al2O3 | MgO | MnO | P2O5 | Na2O | K2O | T-Fe | C/S | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Slag2-Re | DeP slag + Reag. | 22.7 | 43.0 | 13.9 | 6.9 | 1.9 | 2.1 | – | – | 7.1 | 0.5 |
Slag2-FA | Dep slag + FA | 27.7 | 39.5 | 12.9 | 2.8 | 2.3 | 2.5 | – | – | 9.5 | 0.7 |
Slag B1 | DeP slag + 9.6mass%BB | 43.0 | 21.5 | 5.3 | 3.9 | 3.5 | 3.9 | 1.1 | 0.1 | 13.2 | 2.0 |
Slag B2 | Dep slag + 26.4mass%BB | 37.9 | 29.4 | 4.8 | 3.4 | 3.0 | 3.3 | 3.0 | 0.3 | 11.1 | 1.3 |
Slag B3 | DeP slag + 36.6mass%BB | 34.6 | 34.5 | 4.5 | 3.0 | 2.6 | 2.9 | 4.3 | 0.4 | 9.8 | 1.0 |
Reag.: Reagents (CaCO3, SiO2, Al2O3, MgO), FA: Fly ash, BB: Brown Bottle
一方,ガラス瓶の有効利用を念頭においた場合,再利用率の低い茶色の瓶(BB:Brown Bottle)の利用が有効であると考えた12)。この場合Na2Oを13%ほど含むので,CaO-SiO2-Na2O-5mass%Al2O3擬四元系状態図11)上で考え,目的の組成をFig.3(灰色の領域は1400°C以下)上で決定し,Slag B1,Slag B2,Slag B3とし,それぞれDeP slagに9.6mass%BB,26.4mass%BBおよび36.6mass%BBを添加した。それらの化学組成をTable 6に示した。単一のBB slagの融点は,約1100°Cである。また,Slag B2およびSlag B3の組成は,1400°C以下の領域近傍に位置しているものと考えられる。DeP+B1だけは,状態図上では,1400°C以上と予想されたが,実際に溶融させると,1400°Cで完全に溶融した。DeP slagにBB slagを混合することは,大きく融点を下げることが出来,製鋼スラグの成分調整には有効であることが分かった。
Pseudo-quarternary phase diagram and positions of Slag B1, Slag B2 and Slag B3.11)
上述の出発試料および成分調整用試料を用いて,Slag1~Slag4,Slag2-Re,Slag2-FAおよびSlag B1~Slag B3を作成した。それらの組み合わせを,Table 7にまとめた。
Notation | Kind of mixing | ||
---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | |
DeP slag | – | – | – |
BF slag | – | – | – |
Slag1 | Reag. | – | – |
Slag2 | Reag. | DeP+Reag. (Slag2-Re) | Dep+FA (Slag2-FA) |
Slag3 | Reag. | – | – |
Slag4 | Reag. | – | – |
Slag B1 | DeP+BB | – | – |
Slag B2 | DeP+BB | – | – |
Slag B3 | DeP+BB | – | – |
Reag.: Reagents (CaCO3, SiO2, Al2O3, MgO), FA: Fly ash, BB: Brown bottle
(3)各種スラグの調整
まず試薬のみを混合しSlag1~Slag4を作成した(Fig.2,Table 5)。試薬CaCO3,SiO2,Al2O3,およびMgOを所定量秤量し,アルミナ乳鉢およびアルミナ乳棒を用いて,均一に混合粉砕した。これを内径20 mmφの特殊鋼製のダイスに入れ,約3 MPaで圧縮成形し,ペレット化した。この混合示量3 gをPt製の皿に乗せて,マッフル炉で大気雰囲気において1400°Cに加熱,完全溶融して後述する溶出実験用の試料とした。冷却方法は,室温のレンガ上に試料を白金皿ごと引き出すことで行い,冷却速度は,約1000°C/min(17°C/s)である。溶融後冷却した際,Slag2~Slag4は完全にガラス化したが,slag1は一部が白く結晶化し,アモルファス相と結晶相の二相共存となった。slag1の状態図上での融点は約1450°Cである。しかし,溶融過程において目視で完全溶融していることを確認した。冷却時に結晶が析出したものと考えられ,今後,冷却速度を制御して結晶相の量を制御する必要がある。TTT線図,CCT線図が必要となり,ホットサーモカップル法の利用が不可欠となる。この組成slag1に近い組成は,BF slagであり,Kashiwayaら2)がTTT線図,CCT線図を報告している。本研究では,今後,同様の方法を用いて,Slag1とBF slagのTTT線図の違いを明らかにし,さらに結晶相の量を制御して,溶出実験を行い結晶相とアモルファス相の溶出挙動を明らかにする予定である。
またここで,この加熱によって予想されるスラグの質量変化∆Wc(g)は式(1)によって計算され,実験値との差ΔEは式(2)によって計算した。示す計算の結果,実験値と計算値は2%以内で一致していた。このことから,試料内のCaCO3は完全にCaOに変化したと考えられる。
(1) |
(2) |
ここで,∆Wm(=Wf−Wi)は溶融後のスラグ質量Wf(g)から溶融前のスラグ質量Wi(g)の差(g)である。WCaCO3は溶融前のCaCO3の質量(g),MCaO,MCaCO3はCaO,CaCO3の分子量である。
一方,DeP slagに種々の試料を混合して,成分調整する場合は,不純物元素の存在があるので,あくまで近似的な成分調整になる。基本的には,上述した,分析表を基に,状態図上の目的組成に近づくように成分調整を行った(Table 6)。
(i)Slag2-Re
DeP slagに試薬SiO2,Al2O3,MgOを添加し,slag2とおよそ同じになるように調整した。
(ii)Slag2-FA
石炭灰での成分調整は,DeP slagにTable 3で示した組成のFAを加え,同様にslag2の組成に近くなるように調整した。
(iii)Slag B1~Slag B3
茶色ガラスびん(BB)での成分調整は,DeP slagにTable 4で示した組成のガラスびんを加え,同様に完全溶融させた。ガラスびんは,−53 μmに粉砕しDeP slagに混合してた。添加量は三段階に変化させ,DeP slagに対して,9.6mass%BB,26.4mass%BB,36.6mass%BBとし,それらの組成をCaO-SiO2-Na2O-5mass%Al2O3擬四元系状態図11)上にプロットした(Fig.3)に示した。これらは1400°Cで完全溶融後冷却した。この際,試料は結晶化せず,完全にガラス化していた。また,色は黒色であった。
2・2 溶出実験実験手順の概要をFig.4に示し,さらに溶出実験の装置図をFig.5に示す。試料は,溶出実験の前にXRDにより相同定を行い,溶出実験に濾過した残渣物は,140°Cで乾燥した後,XRDにより相同定し,前後で比較した。
Experimental procedure for measurement of pH.
Setup of dissolution experiment.
本研究での溶出実験の条件は,JIS法によって定められている溶出試験13)を基に,北村らの方法6)と同様の条件で行われた。しかし,JIS法では,試料量が50 gであり,大学での研究には不向きであったため,Kitamuraらは,−53 μmに粉砕したスラグを1 g使用する方法を用いた。本研究でもその方法に準じた条件で行い,詳細をTable 8に示した。
Items | Condition. |
---|---|
Vessel | Teflon Beaker: 500 ml |
Solvent (L) | Distilled water |
Solute (S) | –53 μm |
L/S | 400 |
L | 400 ml |
S | 1.00 g |
Agitation | Magnetic stirrer: 140 rpm Teflon stir bar |
Temperature | 23.8-26 °C |
Time | 3 h |
まず,試料を粉砕し,ステンレス製の篩いを用いて−53 μmに整粒した。500 mLテフロンビーカーに400 mLの蒸留水を入れ,2つの穴をあけた蓋をして,その穴からpHおよび水温を測定するためのセンサーを挿入した。空調にて室温を一定に保ち水温が23.8°C~26.0°Cの間で一定になるように調整し,magnetic stirrerとテフロン製攪拌子を用いて攪拌(140 rpm)を続けながら数分保持し,pHが安定させたところで粉砕した試料を投入し,実験開始とした。実験時間は3 h(180 min)とし,その間pH計で連続的に水溶液のpHおよび温度を測定した。
3 h経過後,ビーカー内の水溶液を濾過(濾紙:ADVANTEC No.1,保持粒子6 μm以上:1種濾紙JIS P 3801相当)し,残留物を濾紙上で乾燥させ,その後,140°Cに保った恒温槽内で乾燥させた。濾過した水溶液は誘導結合プラズマ発光分光(ICP)を用いて,Ca,Mg,Fe,Al,Si,Pを分析した。
(1)DeP slag
実験前DeP slagのXRDパターンをFig.6に示す。実験前DeP slagの主な鉱物相は,非常に複雑であり,また,操業によっても異なるものと予想される。さらに,時間的ファクターと保存状態(雰囲気,気温など)によっても,が大きく異なる。本研究で用いた,脱燐スラグは,実プロセスから採取されたもので,1年以上経過しており,室温でビニール袋に入れられて保存された。XRD測定に供する場合に,粉砕の度合いが大きく結果に影響を与えることが分かった。当初,試料をあまり粉砕せず(篩を使わず,100 μm以上の荒い粒子が残った状態で),XRD測定を行った場合,Ca(OH)2とCaCO3のピ−クは明確に確認出来た。しかし,今回,−53 μmに粒度調整した場合,これらのピ−クは観測されなかった。Ca(OH)2とCaCO3の粒子は,主にスラグの保存期間に生成したもので,量的に少なく,さらに強度が弱いことから,最初に粉砕されるため,微粒化し,通常のXRDの測定には検出されなかったものと考えられる。
XRD profile of DeP slag before dissolution experiment.
Fig.6で検出された鉱物相はDicalcium silicate(●:2CaO・SiO2,C2Sと表記,01-089-0399),Tricalcium silicate(◆:Ca3SiO5,01-031-0301),Hematite(□:Fe2O3,01-076-3168),Magnetite(▲:Fe3O4,00-026-1136),Calcium aluminate(■:12CaO・7Al2O3,C12A7と表記,01-073-6332),リン酸カルシウム(○:Ca3(PO4)2,01-086-1585),Hematite(□:Fe2O3そ01-076-3168),Tricalcium phosphate(3CaO・P2O5,C3Pと表記,01-031-0301),さらに,C2SとC3Pのモル比約5.6:1.2の固溶体(▽:Ca14.92(PO4)2.35(SiO4)5.65,01-083-1494),など多くの結晶相が存在していた(なお,XX-OOO-PPPPは,ICDD(International Centre Diffraction Data)番号)。Dep slag単独で溶出実験を行うと,特定の相の溶出,および新相の析出など複雑である。本報告の主題からずれるため,詳細は他で報告する。一部の挙動を説明すると,実験前に存在していたC12A7が優先的に溶出すると考えられる。この化合物は包摂化合14)物であり,様々な物質をその籠構造の中に取り込むことが知られている。特に一般的なものが,OH基であり,水蒸気を高温まで取り込む性質がある。室温では逆に水溶液に溶解しやすい性質があるものと考えられる。
(2)BF slag
図には示していないが,溶出実験前のBF slagのXRDパターンはCa2(Mg0.5Al0.5)(Si1.5Al0.5O7)(01-079-2423)に一致していた。これはAkermanite(2CaO・MgO・2SiO2)とgehlenite(2CaO・Al2O3・SiO2)が1:1で固溶したものと考えられる。また,溶出実験前後でピークにほとんど変化がなく,XRDでは判別できない程度の少量の成分が溶出したということがわかった。
(3)Slag1~Slag4
溶出実験前のSlag1のXRDパターンと,溶出実験後に得られた残留物のXRDパターンをFig.7に示す。Merwinite(Ca3Mg(SiO4)2)のピークが見られる一方で,バックグラウンドはアモルファス相特有のブロードなピーク(20゜~35゜)を示しており,Merwiniteとアモルファス相の二相共存であることがわかる。また溶出実験前のSlag2~4のXRDパターンはそれぞれアモルファス相特有のブロードなピークを示しており,均一にガラス化したことを示している。
Comparison of XRD profiles of Slag1 before and after dissolution experiment.
Slag2の溶出実験前後のXRDパターンをFig.8に示す。また,これらのピークは溶出実験前後においてほとんど変化がなく,これらのスラグからもXRDでは判別できない程度の少量の成分が溶出したということがわかった。
Comparison of XRD profiles of Slag2 before and after dissolution experiment.
(4)Slag B1~Slag B3
図には示していないが,Slag B1~Slag B3の溶出実験前後のXRDパターンもそれぞれアモルファス相特有のブロードなピークを示しており,均一にガラス化したことがわかる。また,実験前後でピークにほとんど変化がなく,これらのスラグからもXRDでは判別できない程度の少量の成分が溶出したということがわかった。
3・2 溶出実験におけるpHの変化溶出実験においてpHを180 min間連続的に測定した結果について,試薬のみで作成したスラグ(Slag1~4)とDeP slagおよびBF slagとの比較をFig.9に示す。また,DeP slag,BF slagおよびSlag 1について,pH=10.80~11.20の範囲で拡大しグラフにしたものをFig.10に示す。
Change of pH in dissolution experiments on DeP slag, BF slag and Slag1-Slag4.
Change of pH in dissolution experiments on DeP slag, BF slag and Slag1.
Fig.10から分かるように,DeP slagは試料添加後急激にpH値が上昇し,約15 minで11.0,約40 minで11.1に達した。その後ほぼ一定の値を示し,最終的に180 minで11.14となった。一方,BF slagのpH変化はDeP slagより遅く,約45 minで11.0に達し,約60 minで11.03に達した後ほぼ一定の値を示した。
Slag1は180 minでは一定にならず徐々に上昇し,180 minで11.08とBF slagを追い越した。また,Fig.9に示されるようにSlag2はpH値は9.60と低く,これはC/S=1.34とSlag1と比較して低いためであると考えられる。また試料投入後約5 minで9.60に達してその後ほとんど変化がなかった。この挙動は,Slag3,Slag4のpHの変化と合わせて,後述する。
Slag3,Slag4はそれぞれC/S=0.89,0.67と塩基度の低い試料である。これらの試料のpH値の変化は遅く,10 min後に最大値に達した後,徐々に減少した。この結果はCaの溶出量が少ないため,溶出したCa2+が水中に存在するCO32−とイオン結合して沈殿した影響が出たものと予想された。この予想は,補助実験(ここにはデータを示していない)として,Arバブリングを行った試験によって検証され,正しいことが確認された。後述のICPの結果とあわせて考察する。
また,Slag2-Re,Slag2-FA,Slag B1~Slag B3およびDeP slagを比較した結果をFig.11に示す。
Change of pH in dissolution experiments on the slags modified by reagents and wastes.
DeP slagに茶色ガラスびん(BB)を添加したスラグ(Slag B1~Slag B3)について,ガラスびんの添加量が9.6%,26.4%,36.6%と増加するにしたがって,pH値は180 minでそれぞれ10.67,10.13,9.41と低下した。また,実験初期の溶出速度もガラス添加量の増加にしたがって遅くなった。
石炭灰を添加しC/S=0.7とした試料(Slag2-FA)とガラスびんを36.6%添加しC/S=1.0とした試料(Slag B3)ではpH値の変化はほぼ同等となった。溶出Ca量との関係は後述する。
DeP slagに試薬を添加した場合(Slag2-Re)が最もpH値が低く,C/Sが最も低いSlag4のpH値に近い挙動を示した。
3・3 ICPによる濃度分析結果それぞれの溶出実験後の水溶液について,ICPで測定したCa,Si,Al,Mg,P,Feの濃度をTable 9にまとめた。各水溶液におけるP,Fe濃度はごくわずかまたは検出限界以下で,本実験条件ではP,Feはほとんど溶出しないことがわかった。またMgはすべての試料について1 ppm以下であった。これらのことから,本研究では主にCa,Si,Alについて考察を行った。
Ca | Si | Al | Mg | P | Fe | |
---|---|---|---|---|---|---|
DeP slag | 48.08 | 1.70 | 21.87 | 0.22 | 0.09 | – |
BF slag | 33.82 | 4.37 | 1.18 | 0.49 | – | – |
Slag1 | 28.10 | 4.92 | 2.70 | 0.52 | – | – |
Slag2 | 1.95 | 0.48 | 0.04 | 0.32 | – | – |
Slag3 | 1.34 | 0.08 | 0.06 | 0.12 | – | – |
Slag4 | 0.90 | 0.30 | 0.08 | 0.22 | – | – |
Slag2-Re | 0.74 | 0.20 | 0.04 | 0.15 | – | – |
Slag2-FA | 1.27 | 0.49 | 0.07 | 0.49 | – | – |
Slag B1 | 13.37 | 2.50 | 2.69 | 0.92 | 0.07 | 0.02 |
Slag B2 | 4.42 | 1.33 | 1.17 | 0.39 | 0.06 | 0.04 |
Slag B3 | 2.36 | 0.52 | 0.16 | 0.16 | – | 0.06 |
試薬のみで作成したスラグ(Slag1~Slag4)とDeP slag,BF slagからの各元素の溶出量をFig.12に比較した。Caについて,DeP slagからの溶出量が一番多く,次に多いBF slagと比べて約1.4倍の溶出量であった。Slag2~Slag4ではCaの溶出量はかなり低く抑えられた。Siについて,SiO2の含有量が高い影響からSlag1,BF slagの方がDeP slagよりも溶出量が多かったが,すべて5 ppm以下と低い値であった。AlについてはDeP slagからの溶出量が多かったが,上述のXRDパターンの解析で述べたようにC12A7が分解しCa,Alが溶出した影響によるものと考えられる。
Relationships among content of Ca, Si, Al, Mg and pH in dissolution experiments at 180 min.
またCaの濃度について,試薬(Reag.)または廃棄物(FA,BB)の添加によってDeP slagの成分調整を行った場合のスラグ(Slag2-Re.,Slag2-FA,Slag B1~Slag B3)とDeP slagとの比較を行うと,C/S=2.00のSlag B1でCa溶出量は1/3以下に,C/S<1.28であるそれ以外の成分調整スラグ(Slag B2,Slag B3)でCa溶出量は1/10以下に抑えられていた。すべての条件においてDeP slagの成分調整を行ったことで各成分の溶出量は低く抑えられ,さらに,塩基度(C/S)を低く調整すればするほど各成分の溶出量は低くなった。これらの値は現在有効利用されているBF slagのCa溶出量の値よりも小さく,アルカリ溶出問題(pH値の上昇)をおこさない範囲だといえる(環境省,排水基準:5.0 pH~9.0 pH(海域))。
溶出実験後の溶液試料についてICPにより溶出元素(Ca,Si,Al,Mg)を測定し,それぞれの濃度とpHの関係をFig.12に示す。Alの溶出量についてはDeP slagからの溶出量が最も多かったが,上述のXRDパターンの解析で述べたようにC12A7が溶出した影響によるものと考えられる。Dep slagを除くとAlの範囲は,3 ppm以下と小さい。Siは,Slag1およびBF slagで,4~5 ppmの範囲で高く,その他の試料では2.5 ppm以下である。Mgはすべての試料で0.5 ppm以下であった。
これらに比較してCaの溶出量が最も多く,また特にCa溶出量とpHの相関が強く,基本的にCaが溶出することでpHが高くなっているといえる。Ca溶出量が大きいところ(Ca>20 ppm)で見かけ上pHの変化が小さいことに関しては,Ca溶出量と水溶液中の[OH−]濃度の関係とあわせて後述する。
ここで,Caの溶出量[Ca](g)とC/Sの相関を見る場合,もともとスラグ中に存在するカルシウム,[Ca]slag(g)によって規格化し,式(3)を用いて,溶出カルシウム量[Ca]elute(%)を計算した。
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ここで,[Ca]ICPは,ICPで測定した水溶液中のCa濃度(ppm),XCaOは試料中のCaO質量分率(mass%),Mは分子量を表す。
実験を行った試料について,塩基度(C/S)とCa溶出量の関係をFig.13に示す。DeP slagからのCa溶出量が最も高いことが分かる。DeP slagを含むもの(with DeP slag)と含まないもの(without DeP slag)では,それぞれに別の相関があるが,塩基度(C/S)を下げることでアルカリ(Ca)溶出が抑制されたことがわかった。一般的にCaOは,SiO2ネットワーク構造を切断し,低融点化,彽粘性化をもたらすと考えられている。一方,Ca元素の溶出の観点から見ると,Ca元素は,SiO2ネットワークの周辺に配位され,C/Sが下がるほど,Caの量は相対的に低下し安定化されるため,溶出し難くなったと考えられる。ただし,結晶相が析出する場合はこれには当てはまらず,その析出した鉱物相の性質に影響されるものと考えられ,詳細は4・2節において述べる。
Relationship between C/S and eluted Ca (%).
また,Fig.13から二つの相関があることが分かり,他の元素の影響も存在すると考えられ,詳細は以下に述べた。
4・2 Caの溶出に対するスラグ中FeOxの影響DeP slagを含む試料と含まない試料において,二つの相間があることから,Ca溶出量に対する他成分の影響について考えた。種々の成分の影響を調査した結果,最終的に酸化鉄の影響が大きいことが明らかとなった。
DeP slagには酸化鉄(FeOx:Fe2O3,Fe3O4,FeO,今回の試料にはFeOは無し)が多く含まれており,CaOとSiO2の質量比で表される塩基度(C/S)の代わりにその分母にFeOxの質量を加え,XCaO/(XSiO2+XFeOx)(XFeOxはFeOxの質量割合)(今後C/(S+F)と表記)の値を用いて整理した。DeP slagを含む試料のXFeOxはTotal-Fe(T-Fe)の値から式(4)を用いて概算した。
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ここでMFeOx,MFeはそれぞれFeOx,Feの分子量であり,FeOxは,DeP slagではXRDパターンの解析からFe3O4(n=3)として計算し,DeP slagの成分調整により作成したスラグでは,その作成過程において大気雰囲気下で溶融したためFe2O3(n=2)として計算した。
C/(S+F)と上記式(3)より求めたCa溶出量([Ca]elute,mass%)の関係をFig.14に示す。一つの相関として整理されたことが分かり,C/(S+F)が下がるとCa溶出量が下がることがわかった。
Relationship between C/(S+F) (=CaO/(SiO2+Fe2O3)) and eluted Ca (%).
また,C/(S+F)と[Ca]eluteの関係は,次式で表される。
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また,DeP slagは完全には溶融していないスラグであるため,溶出量は多いものと考えられる。DeP slagも,もし単独で完全溶融させることが出来,凝固させることができれば,実線で示されるようなCaの溶出量まで低下させることができると予想される。しかし,融点が非常に高い(>1900°C)だけで無く,たとえ完全溶融出来たとしても,それほど大きなCa溶出抑制効果が得られないこともこのプロットから分かり,限界があることも示された。また,費用対効果の面から考えると,成分調整によって低融点化することの方が有効であるとも考えられる。今回実験した塩基度(C/(S+F))の範囲では,スラグに含まれるFeOxは,SiO2とともに,スラグ中のCaOを安定化し,Caの溶出を抑制するものと考えられる。しかしながら,Fe歩留まりの観点からは,FeOxの存在は好ましくなく,積極的な意味でのFeOx添加は望めない。
一方,本研究で用いたスラグの内,結晶化しているスラグは,DeP slagを除いてBF slagとSlag1のみである。これらのスラグは,修正塩基度で1.2~1.3の間に存在しているが,そのCa溶出量は,Fig.14の実線を挟んで上下にばらついている。結晶化は,溶出挙動に大きな影響を与えることが分かっており(今後発表予定),もしこれらのスラグもさらに早い冷却速度で急冷し,完全にガラス化出来たとしたら,さらに良い相関が得られたものと思われる。
4・3 Ca溶出量と水溶液中の[OH−]濃度の関係Fig.12において,Ca溶出量が約20 ppmを超えるとpHの値は飽和し,見かけ上Ca溶出量とpHは1対1に対応していないように見える。そこで,以下のようにpH値から水溶液中の[OH−]濃度に変換して,Ca溶出量との関係を調査した。Kwは水のイオン積でありKw=[H+][OH−]で表される。
(6) |
Ca溶出の仕組みとしては,スラグ中のCaOが水に溶解する反応であり,次式によって表される。
(7) |
そこで,水溶液中の[OH−]はすべて式(7)の反応によるものと仮定して,[OH−](mol/L)の値から[Ca2+](mg/L≅ppm)の値を見積もると次式のようになる。MCa2+はCa2+のイオン式量であり,MCa2+=40.08である。
(8) |
式(6)を用いて式(8)を変換するとpHから計算されるCa2+濃度[Ca2+]pHは
(9) |
となる。純粋な水のイオン積はKw=1.0×10−14(at 25°C)であり,その値を用いると式(9)は次のようになる。
(10) |
しかし,水のイオン積Kwの値は水溶液に含まれるイオンの影響を受けるということが知られており14),本実験では式(5)の反応で表されるもの以外にも様々な成分が溶出している。そこで他成分の溶出の影響も考慮して,水のイオン積をKw'と置きかえると式(9)は次のようになる。
(11) |
Kw'の値を求めるために,測定したpHの値からKw=1.010−14を用いて式(8)で求めたCa濃度[Ca2+]pH,pureとICPで分析した実際のCa濃度[Ca2+]ICP(ppm)の関係をFig.15に示した。かなり良い線形関係にあり,次式で表されることがわかった。
(12) |
Relationship between [Ca2+]ICP and [Ca2+]pH.
Fig.15では,Slag1が,直線から大きく外れているが,これは,一部結晶化したことによる影響と考えられる。上述のように現在結晶化率をコントロールして,溶出実験を行っており,結果を報告する予定である。また,DeP slagは,完全溶融しておらずその影響が出ている。
式(10),(11),および式(12)を比較することにより,Kw'=1.5×10−14と設定することでpHの値から実際に溶出したCaの濃度を推測することができるということがわかった。
この値は,水溶液中のイオン濃度と水のイオン積の関係についての先行研究15)において調査されたKw'の範囲9.5×10−16<Kw'<1.6×10−14にあり,その中でもイオン濃度の低い方がKw'の値が大きいという結果と良く一致している。Kw'=1.5×10−14を式(11)に代入し,次の結果が得られた。
(13) |
式(13)は,pHを測定するだけで,溶出カルシウム量[Ca](ppm)を推定出来る有用な式である。本研究では,試薬を用いて作成したスラグだけでなく,不純物の多い実際のDeP slag,石炭灰(FA)およびガラス瓶(BB)を用いて,広い範囲で成分調整を行った。それにも関わらず,一つの式で,pHと溶出[Ca]量を関係づけることが出来たことは意味があるものと考えている。しかしながら,用いた溶媒は蒸留水であるため,この点において,式の有用性は限定的である。たとえば,海水,酸性雨などの影響は別の関係が存在するはずである。特に,pH一定の条件で行う条件では,酸を添加することによって,pHを一定にコントロールするため,溶出メカニズムは本研究のものと異なるものと考えられる7,16)。
本研究では,脱リンスラグの成分調整により低融点スラグを作成し,蒸留水への溶出実験を行い,アルカリ溶出抑制効果を調査した。さらに成分調整に対して,石炭灰やガラスびんの利用について検討した。その結果を用いて考察し,以下のことが明らかになった。
(1)脱リンスラグおよびその成分調整スラグから溶出する成分は,Caが最も多く,Alは,12CaO・7Al2O3が存在する場合,多くなるが,完全溶融した場合には5 ppm以下と少ない。
(2)Siは,BF slagおよびSlag1で多く溶出し,4 ppm~5 ppmである。
(3)Mgは,全試料において,溶出量は,0.6 ppm以下で非常に少なく,FeおよびPは,検出限界以下であった。
(4)脱リンスラグに対し,石炭灰やガラスびんの添加による成分調整および完全溶融を行うことでアルカリ(Ca)溶出が大きく抑制された。さらに,CaO,SiO2およびFeOxの質量比を用いた修正塩基度C/(S+F)は,Ca溶出量と非常に良い相関を持ち,C/(S+F)を下げるほど抑制効果は大きくなった。
(5)pH値から求めた[OH−]と溶出したCaの量はよい直線関係があり,pHを測定することでCaの溶出量を予測することができる。またその値[Ca2+]は,測定したpH値から反応式CaO+H2O=Ca2++2OH−を利用し,さらに溶出したイオンの影響を受けて変化する水のイオン積の値をKw'=1.5×10−14と設定することで算出でき,次式で予測できるということを明らかにした。
本研究は,一般社団法人日本鉄鋼協会の下に設置された「アルカリ溶出抑制のための製鋼スラグ凝固組織制御研究会」の援助のもとに行われたものである。また,関係者の有益な議論に感謝いたします。