Tetsu-to-Hagane
Online ISSN : 1883-2954
Print ISSN : 0021-1575
ISSN-L : 0021-1575
Surface Treatment and Corrosion
Characterization of Liquid Metal Embrittlement for the Hot Stamped Galvannealed Boron Steel Sheets
Masaru Takahashi Masahiro NakataNobusato KojimaNobuo Otsuka
Author information
JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2018 Volume 104 Issue 4 Pages 218-226

Details
Synopsis:

SEM observation was conducted on cross-sections of galvannealed (GA) boron-steel sheet specimens, subjected to direct hot-stamping tests (V-bending), to study liquid metal embrittlement (LME), caused by liquid zinc in the coating. Specimens were heated to 1173 K (900°C) in a combustion gas furnace, and subsequently hot stamped in a cooled, V-shaped die. The locus of intersections between the Fe-Zn ferrite grain-boundaries (expected to be filled with liquid zinc) of the coating layer, prior austenitic grain boundaries of the steel substrate, and the coating interface, were examined. Specimen cracking originated at the coating/steel interface, and propagated along prior austenitic grain boundaries, where liquid zinc directly contacted the steel substrate. These prior austenitic grain boundaries were considered to be “geometrically favored” sites for initiating LME cracking. Cracking did not occur at sites where direct contact with liquid zinc was not established. There were numerous sites where cracking did not occur despite contact between liquid zinc and prior austenitic grain boundaries, at the coating/steel interface. In heavily cracked specimens, there were 4.7 to 5.9 cracks per mm of coating interface. Cracking occurred in only 23 to 36% of the “geometrically favored” sites at the coating interface. At the bottom of large cracks, cracks were round-bottomed. Vickers hardness at the bottom was lower than that at the sidewall. Therefore, ferrite or bainite transformation, enhanced by plastic deformation, was indicated. This suggested an absence of zinc propagation at deeper austenitic grain boundaries, terminating crack propagation despite the plastic deformation.

1. 緒言

自動車用部材には衝突安全性向上と,燃費向上のための軽量化が求められ,鋼板および部材の高強度化,薄肉化が進められている。ホットスタンプ(以下 HS)は鋼板を約1173 K(900°C)に加熱後,金型成形を行い同時に冷却を行うことで,成形と焼入を同工程で行う工法であり,高強度および形状精度の良好な部材が得られる1)。一方自動車用部材はスポット溶接や塗装密着性等への適合のため表面品質が求められる。そのため加熱時の表面スケールを抑制する目的で溶融アルミニウムめっき鋼板2),合金化溶融亜鉛めっき鋼板3)(以下 GA),溶融亜鉛めっき鋼板(以下 GI)が開発され,工業的に幅広く使用されている。

液体金属脆性(以下 LME,Liquid Metal Embrittlement)は,固体金属表面に液体金属が接触した状態で引張応力を付与すると,本来延性を示す固体金属が脆化する現象であり,鉄(鋼)と亜鉛はLMEを起こす組合せとして知られている411)。この組合せでLMEが課題となる工業例として,送電鉄塔用鋼に溶融亜鉛めっきを施す際の溶接熱影響部(以下 HAZ部)の割れがある9,10)。これは溶接部の残留応力とめっき時の熱応力がHAZ部に重畳した状態で液体亜鉛が接触することによりHAZ部の旧オーステナイト粒界(以下 旧γ粒界)に沿って割れる現象である。まためっき種がLMEに及ぼす例として,稲垣らは冷延鋼管の溶融めっき時において,アルミニウムめっき時には割れが生じず,亜鉛めっきでは割れが生じることがあるとしている11)

HS用亜鉛めっき鋼板に関して,DrilletらはHS後のGIおよびGA表面に発生する「マクロクラック」が,地鉄の旧γ粒界への液体亜鉛の侵入によるものと指摘し12),以後LMEに関する研究が進められている1320)。Lee13)らはGIを用いて,Akioka14),Kojima15),Nakata16),Takahashi17)らはGAを用いて適切な条件で加熱を行えば,めっき層の一部が液体状態となる包晶反応温度(1055 K(782°C))を超える温度で成形加工を行ってもLMEによるクラックを防止できることを示した。著者らはGAで発生するクラックの解析とクラック深さに及ぼす加熱時間の影響を調査した18)。クラックは旧γ粒界に沿って伝播し,その側壁に亜鉛濃化が見られること。クラック発生条件はFe-Zn二元状態図21)における液体亜鉛生成域に対応することを示した。また加熱時間を長くすることで最大クラック深さが徐々に減少すること,その深さの減少はX線回折強度から求めためっき層の亜鉛と亜鉛−鉄金属間化合物の含有比の減少と対応していたことから,加熱時間経過により地鉄からめっき層に鉄が拡散し,液体亜鉛が固体のフェライトの亜鉛固溶体(以下 Fe-Zn ferrite)に変化することで,LMEが抑制されたと説明した。

HS用亜鉛めっき鋼板のLME によるクラック発生・伝播に関する研究は,いずれもGIを用いて前記Leeら13)およびChoら19)が報告している。また,HS用鋼ではないが高Mn TWIP(Twinning-Induced Plasticity)鋼を用いたKangらの報告20)もある。LeeらはGIを1123 K(850°C)で加熱後,または973 K(700°C)まで冷却した後,引張を行い,強制空冷した試料を作成した。彼らは1123 K(850°C)で引張を行った試料のみが脆化することと断面観察の結果から,包晶反応温度を超える温度に加熱されためっき層内に液体亜鉛が生成し,その後引張を行うことで,γ粒界強度が低下し結果クラックを発生させると推察した13)。Choらは,GIを加熱後引張を行った試料に発生したクラックのTEM観察およびEBSD解析を行った。クラック側壁の薄いFe-Zn ferrite膜の存在から,地鉄のγ粒界に亜鉛が侵入しFe-Zn ferrite膜を形成するとし,その強度が地鉄のγ相より小さいので,引張によりクラックになるとした19)。Kangらはクラック最先端部でГ相((Fe,Mn)3Zn10)を検出し,その先の粒界に亜鉛の拡散痕跡を確認した。この結果は亜鉛のγ粒界への侵入は液体亜鉛の侵入説および亜鉛の拡散侵入説のいずれにも整合するとした20)。一方で工業的に広く使用されているGAに関するクラック発生,ならびに重要なクラック頻度,伝播停止に関する研究はまだ少ないのが現状である。

そこで本研究ではホットスタンプにおけるGAのLMEクラック発生,頻度,伝播停止についての知見を得ることを目的とした。ホットスタンプを行ったGAを試料として,主に液体亜鉛と地鉄のγ粒界が接触しうる界面付近とクラック周辺部の地鉄の金属組織の断面観察,解析を行いその特徴を考察した。

2. 実験方法

2・1 供試鋼板および試料作製時の加熱成形条件

0.21 wt.%C-0.24 wt.%Si-1.3 wt.%Mn-0.0018 wt.%Bを含む板厚2.6 mmのGAを供試鋼板とした。めっき付着量は61 g/m2で,めっき層の鉄濃度は12 wt.%でありめっき層の厚みはおよそ10 μmであった。供試鋼板を60 mm×40 mmに切断し鋼板試料とした。1173 K(900°C)に設定した燃焼ガス炉内に鋼板試料を挿入し,90 s,120 s,150 s,180 s,195 s,210 s,225 s,240 s加熱した。その後加熱炉から鋼板試料を取り出し,速やかに油圧式プレス機に設置したパンチ先端Rが0.5 mmのV字金型を用いてV曲げを行った。鋼板試料には熱電対を接続し一連の実験工程における温度履歴を計測した。鋼板試料の加熱時間と到達温度および成形開始温度の関係をTable 1に示す。試料の温度履歴およびV曲げに使用した金型,成形条件は前報18)に記載した通りである。

Table 1. Maximum specimen temperatures during heating, and specimen temperatures at the start of hot stamping, for the respective tests18).
Heating time in the combustion gas furnace (s) Maximum specimen temperature (°C) Specimen temperature at the start of stamping (°C)
90 763 726
120 834 750
150 878 761
180 892 785
195 887 800
210 885 787
225 891 799
240 896 785

2・2 試料の断面観察,金属組織調査および硬さ測定

V曲げ試料(以下 試料)をエポキシ樹脂に埋込後,断面研磨,カーボン蒸着を行い観察試料とした。試料のV曲げ外面側1/4円周部に沿い,SEMにてBSE(Back Scattering Electron)像を得た。その後蒸着したカーボンを除去するためバフ研磨を行ってから,金属組織現出のためピクリン酸エッチングを行い,再度カーボン蒸着を行って観察試料とした。その後SEMにて二次電子像を観察した。またクラック近傍の金属組織の推定を行うためビッカース硬さを測定した。荷重は0.294 Nとしビッカース圧痕の直交対角線長の平均値からビッカース硬さを算出した。

2・3 金属組織の解析

めっき層および地鉄の旧γ粒界の位置関係を示す模式図としてFig.1Fig.2を示す。金属組織および皮膜構造として特徴的な箇所・点・長さについて以下にて説明する。Fig.1に試料のV曲げ頂部に,LMEにより発生した顕著なクラック近傍の模式図を示す。めっき層は主にFe-Zn ferrite粒から形成されている。“L”は加熱時に液体亜鉛が存在していたと考えられるFe-Zn ferrite粒間の隙間である。液体亜鉛が成形時に急冷,固化された亜鉛および亜鉛-鉄金属間化合物が,ピクリン酸による腐食により溶出し,隙間となった箇所に相当する(以下 “L”:液体亜鉛痕跡部)。“A”は図の左側の地鉄内に侵入したクラックの起点となった点である(以下 “A”:クラック侵入起点)。この点はめっき層と地鉄の界面(以下 界面)で地鉄の旧γ粒界と“L”とが接する点でもある。“B”は界面で旧γ粒界と“L”が一致するが,クラック発生のない点(以下 “B”:一致点)である。“C”は旧γ粒界が界面に接する点だが“L”と接しない点である(以下 “C”:旧γ粒界接点)。“D”は界面で“L”と接するが旧γ粒界と接しない点である(以下 “D”:液体亜鉛痕跡部接点)。またクラック側壁部および底部付近にかけて金属組織推定のため図中に示すように,クラック周辺に沿って地鉄のビッカース硬さを測定した。

Fig. 1.

Schematic of location at the Zn-coating/steel-substrate interface, of heavily-cracked specimen, examined by SEM.

Fig. 2.

Schematic of location at the Zn-coating/steel-substrate interface, of moderately-cracked specimen, examined by SEM.

Fig.2にLMEにより発生した軽微なクラック近傍の模式図を示す。“P”は深さが5 μmを超えるクラックの開口幅である(“P”:クラックの開口幅)。“Q”はめっき層のFe-Zn ferriteが成形時の引張応力により図の水平方向に開いた開口幅である(“Q”:めっき層分離部開口幅)。“R”はめっき層と地鉄とが成形後も界面を形成している部分である。

3. 実験結果

3・1 クラックの深さおよび形状に及ぼす加熱時間の影響

各試料のV曲げ外面側1/4円周部において,めっき層と地鉄の界面から地鉄内部に侵入したすべてのクラック深さを計測した。加熱時間と最大クラック深さの関係をFig.3に示す18)。加熱時間が90 sでは試料の到達温度が1036 K(763°C)であり,包晶反応温度の1055 K(782°C)未満であるためLMEは起こっていないと考えられる。そのため最大クラック深さは約5 μmと小さい。一方到達温度が包晶反応温度を超える加熱時間が120 s~180 sの試料では,LMEにより深さ100 μmを超えるクラックが発生した。その後の加熱時間増加により最大クラック深さが徐々に減少し,加熱時間240 sにて5 μm未満となり,加熱時間90 sの最大クラック深さより小さくなった。この試料でLMEを示す明瞭な結果は得られなかったことから,本研究では5 μmを超えるクラックが発生した加熱時間120 s~225 sの試料について詳細な調査を行うこととした。加熱時間経過による最大クラック深さの減少は,地鉄中の鉄がめっき層に拡散移行することでめっき層の液体亜鉛の鉄濃度が上昇し,Fe-Zn ferriteが析出した結果,めっき層の液体亜鉛量が減少したことによると考えられる18)。SengokuらはGAを1173 K(900°C)に設定した炉内で加熱し,加熱時のめっき層の変化を詳細に調査した。それによるとFe-Zn ferriteは2種類の析出状態があるとしており,地鉄表面を析出サイトとして成長するものと,液体亜鉛中に核生成が起こり球状粒子として析出するものがあるとしている22)

Fig. 3.

Maximum crack depth of the V-bent specimens, as a function of heating time.

加熱時間が120 s~225 sの試料のうち,クラック深さが最大となった加熱時間150 sの試料と,クラック深さが小さい加熱時間210 sの試料について,V曲げ外面側の断面BSE像をFig.4に示す。加熱時間が150 sの場合,深さが100 μm超の大きなクラックがV曲げ外面側全体にわたり発生している。加熱時間210 sの試料では,めっき層の凹凸と深さが小さいクラックが混在している。両試料のクラックは,それぞれその深さは異なるものの,LMEによる典型的な稲妻形状のクラック(例えば参考文献10) の図2参照)ではなく,その底部は滑らかな円弧状を呈しており,クラック底部より深部への亜鉛侵入およびクラック伝播が停止したことが示唆される。また図示していないが加熱時間が90 s~225 sのいずれの試料において,試料端部側のV曲げ加工がなされない部分では,クラックは発生していなかった18)Fig.4に図示した試料を含めた断面研磨試料をバフ研磨後ピクリン酸エッチングを行い,SEMにて二次電子像を撮影した。

Fig. 4.

Cross-sectional BSE (backscattered electron) images of the tip-surfaces of V-bent specimens, heated for (a) 150 s, and (b) 210 s.

3・2 クラック近傍の金属組織解析

加熱時間150 sの試料の表面付近を拡大した二次電子像をFig.5に示す。対応する模式図はFig.1である。めっき層と地鉄の界面は明瞭で,地鉄にはマルテンサイトとそれを取り囲む旧γ粒界が観察された。めっき層は粒径約10 μm超の等軸晶とその隙間からなっていた。等軸晶の亜鉛濃度は33~34 wt.%であり,Fe-Zn二元状態図21)からFe-Zn ferriteと判断される。なおFe-Zn ferrite粒間で観察される隙間は,エッチング前には観察されなかった。試料温度が包晶反応温度を超える場合,成形後低融点のη相やδ相がX線回折分析にて検出されること18),Sengokuらの研究でもGAを1173 K(900°C)にて加熱した試料のEBSD解析でFe-Zn ferrite粒間にΓ相が確認されていること22)等を踏まえると,Fe-Zn ferrite粒間はFig.1で説明した“L”に相当する箇所と考えられ,そこにはHS加熱時に液体亜鉛が存在したと考えて自然と思われる13,18)。液体亜鉛が成形時に冷却されてできる亜鉛および亜鉛−鉄金属間化合物相は鉄およびにFe-Zn ferriteに比べ卑な電位を示す23,24)ことから,これらがピクリン酸により溶損しFig.5で隙間として観察されたものと考えられる。

Fig. 5.

Cross-section of the Zn-coating/steel-substrate interface, adjacent to an open crack, of the specimen heated for 150 s. The specimen was etched by picric acid to highlight prior austenite grain boundaries.

Fig.5で“A”,“B”,“C”,“D”として示した点は,Fig.1の模式図で説明したクラック侵入起点,一致点,旧γ粒界接点,液体亜鉛痕跡部接点の各点に相当する。Fig.5の左側のクラックの側壁形状と現出した旧γ粒界の形状とから,クラックは地鉄の旧γ粒界に沿って伝播したことがわかる。“A”は“L”と旧γ粒界が界面で一致した点であることから,加熱時に“L”に存在する液体亜鉛を亜鉛供給源として,亜鉛が地鉄のγ粒界に侵入してクラックを発生させたと考えられる。クラックに侵入した亜鉛は“A”点からクラック側壁を介して連結している旧γ粒界にも侵入していることが確認できる(Fig.5矢印)。本結果から,加熱時にFe-Zn ferrite粒間に存在する液体亜鉛が,地鉄のγ粒界と界面で一致することがLMEによるクラック発生の必要条件の1つと考えられた。本研究ではクラック側壁周辺の物理分析を実施していないので,γ粒界に侵入した亜鉛がFe-Zn ferrite膜を形成し,粒界強度が弱められた結果,クラックが発生したとするChoらの研究結果19)と合致するものかどうかは判断できなかった。一方Fig.5に示す“B”点は界面で“L”と旧γ粒界が一致するというLMEの必要条件を満たすがクラック発生の無い点である。Fig.5中にも“B”に相当する点は複数存在することが判る。

加熱時間が150 sの試料のクラック側壁部から底部付近を拡大した二次電子像をFig.6に示す。前述のようにクラック底部は稲妻形状ではなく滑らかな円弧状を呈した。図左側のクラック側壁部の金属組織は,旧γ粒界とマルテンサイトが明瞭に観察される一方,クラック底部では図の左右方向,すなわち試料の引張応力方向に伸びた層状組織となっており,旧γ粒界およびマルテンサイトも不明瞭である。クラック側壁部と底部の金属組織の違いを推定するため,ビッカース硬さを測定した。その結果をFig.6内に示した。側壁部では硬さが418~438と22MnB5に相当する一般的な1500 MPa級のHS用鋼板で得られる約450に近い硬さ1)であるのに対し,底部では309~347と小さくなった。金属組織と硬さの結果から,クラック底部では冷却時の塑性変形によりフェライト変態あるいはベイナイト変態のいずれかあるいは両方がクラックの側壁部に対して促進された25)ことが推察された。

Fig. 6.

Cross-section of a crack-bottom area in the specimen heated for 150 s. The specimen was etched by picric acid to highlight prior austenite grain boundaries.

加熱時間210 sの試料について,めっき層と地鉄界面の一例をFig.7に示す。対応する模式図はFig.2である。図に示すようにFig.5およびFig.6に比べてクラック深さは小さかった。図左のクラック“p”は少し開口しており深さが約10 μm強で,クラックが旧γ粒界に沿って伝播していた。Fig.5と同様LMEにより軽微なクラックが発生したと判断される。なお図中の“P”はFig.2にて説明したクラック開口幅に相当するものである。一方Fig.7のクラック“q1”,“q2”,“q3”は深さが1 μmに満たないためLMEによるものでないと判断した。これらはめっき層が成形時の引張応力によりFe-Zn ferrite粒界に沿って図の左右方向にめっき層が分離し地鉄が露出した部分と推定された。“Q”はFig.2にて説明しためっき層分離部開口幅に相当するものである。またFig.6のクラック底部で観察された層状組織に似た組織が,地鉄の界面付近に観察されている。

Fig. 7.

Cross-section of the Zn-coating/steel-substrate interface in the specimen heated for 210 s. The specimen was etched by picric acid to highlight prior austenite grain boundaries.

加熱時間を120 s~225 sに変化させた6個の試料断面を観察して,めっき層と地鉄の界面において(a)クラック深さが5 μmを超えるクラック部開口幅(Fig.2およびFig.7にて“P”に相当する長さ)と(b)クラック深さが5 μm以下のめっき層分離部開口幅(Fig.2およびFig.7にて“Q”に相当する長さ) を,V曲げ外面側1/4円周部全長にて計測しその総和を求めた。加熱時間との関係を整理した結果をFig.8に示す。“P”+“Q”,すなわち開口幅の総和は加熱時間を変化させてもほぼ一定であった。この結果はV曲げによる周長増加を開口により緩和したことを示唆している。加熱時間120 sおよび150 sの試料では“P”+“Q”はほぼ“P”で占められたが,210 sより長時間加熱した試料では“P”が大きく減少し“Q”に置き換わった。これは加熱時間に対する最大クラック深さの減少(Fig.3参照)に対応するものと考えられる。本研究ではLMEによるクラックに着目するので,以下加熱時間120 s,150 sの試料の詳細調査を進めることとした。

Fig. 8.

Total width of crack opening, and coating separation as a function of specimen heating time.

LMEクラックの発生は成形時にめっき層内のFe-Zn ferrite粒間の亜鉛が,地鉄のγ粒界に侵入し割れる現象と考えられる。したがいLMEが生じるには液体亜鉛が界面で地鉄のγ粒界と物理的に接することが必要と思われる。そこでHS後の試料のV曲げ外面側1/4円周部全長の金属組織を観察し,Fig.1に示した“A”,“B”,“C”,“D”に相当するクラック侵入起点,一致点,旧γ粒界接点,液体亜鉛痕跡部接点をすべてカウントした。さらにFig.2に“R”として例示した加工後のめっき層と地鉄の界面長さも計測した。

結果をTable 2に示す。界面長さ“R”の総和は,加熱時間120 sおよび150 sの試料でそれぞれ4.65 mm,4.38 mmとおおよそ同程度なので,各測定点数を単位界面長さ当りの数値としておよそ比較可能である。“A”のクラック侵入起点は加熱時間120 s, 150 sの試料でそれぞれ20点,21点とほぼ同じであった。“A”はそのすべてが,“L”に相当する液体亜鉛痕跡部と旧γ粒界が界面で接する箇所であった。それに対し“L”と旧γ粒界が界面で一致するにもかかわらずクラック発生が見られない“B”の一致点は,加熱時間120 s,150 sの試料でそれぞれ76点, 51点存在し,“A”より多かった。LMEクラックが生じる可能性があるものの実際にクラックが発生しない点が多く存在することがわかった。

Table 2. The number of characteristic points at the Zn-coating/steel-substrate interface of heavily-cracked specimens. See Fig.1 and Fig.2 for nomenclature.
Heating time
s
Maximum crack depth
μm
Total length of “R”
mm
The number of chracteristic points
“A”
pts
“B”
pts
“C”
pts
“D”
pts
120 116 4.65 20 76 707 194
150 127 4.38 21 51 626 137

“C”の旧γ粒界接点の数は加熱時間120 s,150 sで,それぞれ707点,626点存在した。これらの点で地鉄側への亜鉛侵入,クラック発生は見られなかった。すなわち固相のFe-Zn ferrite粒内からγ粒界への亜鉛侵入およびクラック発生は生じていなかった。

“D”の液体亜鉛痕跡部接点の数は加熱時間120 s,150 sそれぞれ194点,137点存在した。これらの点で地鉄側への亜鉛侵入,クラック発生は生じていなかった。すなわち地鉄のγ粒界を介さずγ粒内に亜鉛が拡散して粒内にクラックが発生する事象は生じなかった。したがってクラック発生には,めっき層の“L”液体亜鉛痕跡部と地鉄の旧γ粒界が界面で接すること,すなわちめっき層のFe-Zn ferrite粒間の液体亜鉛から,亜鉛が地鉄のγ粒界に侵入する幾何学的条件が成立する必要があることが判明した。

ところで加熱時間150 sの試料において,クラック発生には至らないものの,地鉄のγ粒界への亜鉛侵入を示唆する箇所がクラック周辺部で散見された様子をFig.9内の“Z”として示す。この点は“B”の一致点の一部でありクラックは開口していないが,“L”の液体亜鉛痕跡部から亜鉛が旧γ粒界に侵入した様子が観察された(以下 “Z”:亜鉛侵入点とする)。したがい“Z”に相当する点も同様に試料のV曲げ外面側1/4円周部全長で同様にカウントした。本研究ではLMEは“A”と“Z”で生じたと考え,Table 2の一部数値を再整理した結果をTable 3に示す。“Z”は加熱時間120 s,150 sでそれぞれで2点,5点に留まり,前記の“A”に比べると少なかった。したがい本研究の実験条件にてγ粒界に亜鉛が侵入する場合はクラック発生を伴う場合がほとんどであり,亜鉛侵入箇所が開口しないケースは少ないと考えられる。“A”と“Z”の合計は加熱時間120 s,150 sでそれぞれ22点,26点存在した。LMEが生じる可能性のある箇所,すなわち“A”と“B”の和は加熱時間120 s,150 sでそれぞれ96点,72点になった。この数値を単位界面長さあたりの点数に換算するとそれぞれ21点/mm,16点/mmとなった。一方“A”と“Z”の和をここでLMEによるクラック数とし換算したクラック発生頻度はそれぞれ4.7点/mm,5.9点/mmであった。めっき層の液体亜鉛が地鉄のγ粒界に侵入できる幾何学的条件を満たす箇所の中で実際にLMEによるクラックが発生したのはそれぞれ23%,36%であることが判った。

Fig. 9.

An example of Zn penetration into prior austenite grain boundaries of the steel substrate, without accompanying crack-opening. The specimen was heated for 150 s, and etched by picric acid to highlight prior austenite grain boundaries.

Table 3. LME-cracking frequency at the interfaces of heavily-cracked specimens. See Fig.1, Fig.2, and Fig.9 for nomenclature.
Heating time
s
Total length of “R”
mm
The number of characteristic points (“A”+”Z”) / “R”
pts/mm
(“A”+”B”) / “R”
pts/mm
(“A”+“Z”)
/ (“A”+“B”)
“B”
pts
“A”
pts
“Z”
pts
120 4.65 76 2 20 4.7 21 23%
150 4.38 51 5 21 5.9 16 36%

4. 考察

4・1 特定のγ粒界におけるクラックの発生について

まずTable 3に結果を示しためっき層と地鉄界面にて旧γ粒界と液体亜鉛痕跡部が接する箇所のうち,実際LMEによるクラックが生じたのは約2~3割強に留まっていた結果,すなわち特定のγ粒界においてクラックが発生したことについて以下で考察する。

まず本研究で得られたクラック発生頻度は4.7,5.9点/mmであった。この数値について他の研究例と比較する。Kangらは22MnB5にGIめっきを施した試料を1123 K(850°C)で30 s加熱後,ひずみ40%で一軸引張を行った後冷却した試料のクラック発生頻度をおよそ1点/mmと評価している20)。また一軸引張でなく本研究と同様に成形を行った例として,Drilletらの研究があり,めっき厚みが13 μmのGAを短時間加熱後に成形を行っている12)。その試料の断面写真から,クラック発生頻度が確認できる。結果およそ3点/mmと読み取られた。Schwinghammerらもめっき付着量が70 g/m2のGAを用いた成形試験を行っている24)。同様に断面写真からクラック発生頻度を読み取るとこれもおよそ3点/mmであった。いずれも本研究のクラック発生頻度よりは若干少ないが大差はなかった。Drilletらの研究12)とKangらの研究20)は本研究と同様22MnB5に相当する一般的な1500 MPa級のHS用鋼板1)を使用しており,Schwinghammerらの研究もHS用の鋼板を使用したとしていることから鋼板成分や金属組織,すなわち旧γ粒界接点数,旧γ粒径等の特徴は,本研究と大差が無いものと考えられる。なお今回用いた鋼板の加熱時間120 sおよび150 sの試料において,鋼板断面10箇所にて旧γ粒径を切断法で測定しその平均値を求めた結果は,それぞれ6.4 μmおよび8.8 μmであった。これらはクラック発生頻度と比べると非常に小さい。したがい本研究と同様他の研究でもLMEが生じる可能性のある箇所すべてでクラックは発生しなかったと推定される。

LMEクラックが発生するには液体亜鉛がγ粒界に接触する条件が必要であることは先に述べた。一方,本研究で得られた「特定の」γ粒界にてクラックが発生すなわち亜鉛が侵入する理由として以下の二点考察を行った。

一つ目はめっき層と地鉄界面でFe-Zn ferrite粒間とγ粒界との重なり面積が異なる可能性である。本研究では一断面の観察にてFe-Zn ferrite粒間とγ粒界の一致有無を議論してきた。しかし液体亜鉛が存在していると考えられるFe-Zn ferrite粒間およびγ粒界とも鋼板表面方向からの投影で考えれば,それぞれある面積で接触していると考えられる。それらの重なり面積が大きくなれば,亜鉛のγ粒界への侵入はより容易になると推察される。各箇所で重なる面積が異なることは十分考えられるため,「特定」のγ粒界に亜鉛が侵入する可能性はあるという考え方である。

二つ目は亜鉛侵入を受けるγ粒界の粒界性格により亜鉛の侵入しやすさが異なる可能性である。Smithにより提唱されている機構では,液体金属と固体金属界面における二面角が0°の場合,固体金属と液体金属の界面エネルギーの2倍が,固体金属の粒界の界面エネルギーに等しいかそれ以下のとき,粒界に液体金属が侵入するとされる26)。このとき固体金属の粒界の界面エネルギーは,粒界毎に異なり一様ではないと考えられる。例えばShibutaらは鉄のbcc相およびfcc相について,対称粒界の界面エネルギーに及ぼす各結晶軸の傾き角の影響の計算結果を示している27)。その結果では傾き角の大きさにより粒界の界面エネルギーは大きく異なっている。LMEクラックが生じる引張応力下でも同様に各粒界の界面エネルギーは異なるものと考えられ,液体金属の各粒界への侵入しやすさも粒界により異なる可能性がある。現時点で液体亜鉛と鉄の界面自由エネルギーは明らかでないが,LMEを生じる幾何学的要件を満たしたγ粒界の中で,一部の「特定の」γ粒界だけに亜鉛が侵入してクラックを発生させた本研究の結果から,LMEに粒界性格が影響を及ぼす可能性は一つの考え方として今後の検討が必要と思われる。

4・2 クラックの伝播停止について

次にFig.6で見られたクラック底部の形状から推察された,クラック伝播停止に係る現象について考察する。本研究の試料で発生したクラックは,前述の鋼管の溶融亜鉛めっきの際に生じた割れのように稲妻形状ではなく(参考文献11)の写真4を参照),底部が滑らかな円弧状を呈していた。また引張応力方向に伸びた層状組織も確認されたことから,LMEによるクラック伝播が停止し,クラック底部に引張応力が作用した結果,塑性変形を受けたことが示唆される。すなわち,クラック伝播が停止したのは,伝播にともなって亀裂先端の応力が緩和されたからというよりは,塑性変形を引き起こす応力が作用しているにもかかわらず,伝播できなかったと考える方が自然と考えられる。この結果と類似の現象について,Fisherらは銃用鋼の丸棒に銅めっきした試料を1323 K(1050°C)にて引張を行い,その試料をSEM観察により確認している28)。すなわち丸棒表面近傍は,加熱により液化した銅のLMEにより脆化するが,表面から深い部分では塑性変形を受けた様子が観察されている(参考文献28)Fig.9)。これは液化した銅が丸棒表面から粒界に侵入するものの,その量が少ないため,表面から深い部分まで行き渡らず枯渇したためと考えられる。したがい本研究で見られたクラックについても,亜鉛がクラック底部より深部まで侵入しなかったものと考えられる。なお,LMEでみられるクラック先端が鋭い形状のまま伝播が停止している場合については,応力緩和がクラック伝播停止に及ぼす影響を含め今後考慮する必要がある。

次にFig.6のクラック底部の硬さが,クラック側壁部のそれに比べ低下した現象について考察する。MinらはGleeble試験機を用いて,22MnB5のオーステナイト化後の冷却途中で加えた塑性ひずみとその時の温度が,金属組織と硬さに及ぼす影響を調べた25)。具体的には1173 K(900°C)で5分間加熱後,30 K/sでそのまま室温まで冷却した試料と,冷却途中の923 K(650°C)あるいは693 K(420°C)で,ひずみ約0.04,約0.08~0.11,約0.2の3水準の引張を行い,再び30 K/sで室温まで冷却した試料を作成した。923 K(650°C)で引張を行った場合,マルテンサイトにフェライトが混入した組織となり,ひずみが大きいほどフェライトが増加した。また硬さも引張なしの試料に比べて小さくなり,ひずみが大きくなるにつれて,より小さくなったとしている。693 K(420°C)で引張を行った場合,マルテンサイトにベイナイトが混入した組織となりひずみが大きいほどベイナイトが増加した。またひずみが約0.1,約0.2の場合,硬さも引張なしの試料に比べて小さく,かつひずみが大きくなるにつれて,より小さくなったとしている。

本研究の試料に発生したクラックの底部に見られたマルテンサイト以外の組織は特定できていないが,クラック側壁部と底部の硬さの違いからフェライトまたはベイナイトを含むものと考えられる。これはV曲げの途中でγ粒界に沿ったクラック伝播が停止したため,クラック底部が塑性変形し,加工ひずみによって変態ノーズが短時間側にシフトした結果,その後の冷却においてマルテンサイト変態に先立ち一部がフェライトまたはベイナイト変態したものと推定される。すなわち,円弧状のクラック底部は,LMEではなく塑性変形によって形成されたことを金属組織的に裏付けるものである。

4・3 ホットスタンプされたGAのγ粒界脆化,クラック発生,伝播について

LMEによる亜鉛のγ粒界侵入,γ粒界脆化,クラック発生,伝播,停止に至る過程で不明確である粒界脆化に関して,以下(1),(2)の仮説に基づき議論する。

(1)γ粒界へ亜鉛が拡散により侵入することで粒界が脆化しクラックが発生・伝播する。

(2)γ粒界の先端に供給される液体亜鉛により粒界が脆化しクラックが発生・伝播する。

まず(1)の仮説について考える。液体亜鉛が接したγ粒界は亜鉛の濃度勾配も大きく,粒界拡散により拡散速度も大きいため,亜鉛はγ粒界深く侵入するものと考えられる。それによりγ粒界強度の低下が推測される。この拡散は加熱時には無応力でも起こるとされている10)。侵入した亜鉛の粒界濃度によりクラック深さが決定されるのであれば,加熱時間が長い試料のクラック深さが大きくなると予想されるが,本研究の結果はそれに反していた(Fig.3参照)。またLeeらの研究13)では,GIを1123 K(850°C)まで加熱後そのまま引張を行った場合LMEによるクラックが発生する,一方で973 K(700°C)まで冷却後引張を行ってもクラック発生が見られないとしており,この結果も(1)の仮説に反している。

次に(2)の仮説について考える。著者らは前報18)にてクラック深さの減少が液体亜鉛量の減少と対応する結果を得ている。すなわちγ粒界に供給される液体亜鉛量によりクラック深さが決定されるとすると,(2)の仮説が成り立つものと考えられる。二面角の小さいクラック侵入開始部(先端部)に液体亜鉛が供給されることで前述のSmith が提示した条件26)が成立し,液体亜鉛の侵入とクラック伝播が進むものと考えられる。クラック側壁部のμmオーダーの厚みの亜鉛濃化部の存在(著者らの前報18)Fig.6参照)も,粒界への亜鉛の拡散痕ではなくクラックが開口後流れ込んだ液体亜鉛であることを示唆しており仮説(2)を支持するものである。

前述のように地鉄のγ粒界に発生したクラックはその底部より深部のγ粒界に伝播しなかったものと考えられた。本研究で発生したLMEクラックの最大深さは,おおよそ130 μmで飽和しており(Fig.3参照),さらに加熱時間経過によりクラックを抑制できた。液体亜鉛を供給源とする亜鉛の減少に応じてクラック深さを小さくできかつ抑制し得る点は,地鉄のγ粒界への亜鉛の侵入深さが,めっき層の亜鉛供給量に依存するとも言える結果であり,クラック発生・伝播が条件により亜鉛の供給律速の一面を有することも示唆している。この点は工業的にも重要でありかつ,HS用亜鉛めっき鋼板のLMEを理解する上でも参考になるものと考えられる。

5. 結論

ホットスタンプ用GA鋼板のLME現象の解析を目的として,GAを1173 K(900°C)に設定した炉内で90 s~240 s加熱後,V曲げを行うとともに焼入れ処理を行った試料を作成し,その断面金属組織を調べた。約4 mm超に及ぶV曲げ外面側1/4円周部全長についてピクリン酸エッチング前後で断面のSEM観察を行った。クラック深さが100 μmを超えた試料のクラック近傍部のめっき層および地鉄の金属組織の観察結果を解析し以下の結果を得た。

1.LMEによるクラックが旧γ粒界に沿って発生したことが明瞭に観察された。クラックの地鉄への侵入起点は,加熱時にめっき層に形成したFe-Zn ferrite粒間と地鉄の旧γ粒界が,めっき層と地鉄界面で一致するという幾何学的条件をすべて満たしていた。ホットスタンプの成形時にFe-Zn ferrite粒間に存在した液体亜鉛が供給源となり,亜鉛が地鉄のγ粒界に侵入しクラックを発生させたと考えられた。幾何学的条件を満たしていない箇所ではクラックは見られなかった。

2.LMEによるクラックの発生頻度は,めっき層と地鉄界面の単位長さ当たり4.7~5.9点/mmであった。めっき層のFe-Zn ferrite粒間と地鉄のγ粒界の一致した箇所のすべてでクラックは発生したわけではなく,その2~3割強の箇所でしか発生は見られなかった。

3.LMEによるクラック底部の多くは円弧状を呈し,引張方向に伸びた層状組織となっていた。そのビッカース硬さは側壁部に比べ小さくなっていた。これら結果からクラック底部は成形時に塑性変形を受けたことが示唆され,その組織はフェライトまたはベイナイトを含むと考えられた。すなわち成形時にγ粒界に沿ったクラック伝播が停止し,クラック底部が塑性変形したため,その後の冷却においてマルテンサイト変態に先立ち一部がフェライトまたはベイナイト変態したものと考えられた。塑性変形を生じるに足る引張応力がクラック底部に作用した状態でも,底部より深部への亜鉛の侵入およびクラック伝播が起きなかったことを意味すると考えられた。

4.本研究で得られた実験結果は,亜鉛めっき鋼板のホットスタンプ時におけるLMEによるクラックの伝播が,地鉄のγ粒界の先端に供給される液体亜鉛により粒界が脆化することに起因することを示唆した。

文献
 
© 2018 The Iron and Steel Institute of Japan

This article is licensed under a Creative Commons [Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International] license.
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
feedback
Top